2020/08/14 のログ
ご案内:「落第街裏通り とある静かなビル」に園刃 華霧さんが現れました。
園刃 華霧 >  
さて、お誘いを頂いたわけだけど……
ここ数日、クソ暑いのにネグラが定まらなくて困ってるんだよな……
いや、クソ暑いから……か。

というわけで、此処には汗だくで薄汚れた猫一匹。
こんな状態で後輩ちゃんに会うのは気が引ける。
かといって、流石にこんなことで誰かの手を煩わせんのもなあ……

しょうがない……気は進まないけど……あそこ、いくか……

園刃 華霧 >  
目の前には静かな佇まいのビルがあった。
そこにはほのかな明かりが灯り、近づけば人がいることは分かる。
しかし、決して目立たず密やかなそこ。

それは落第街にある、一部の人間だけが知っているとある娼館だった。

園刃 華霧 >  
「……」

正面はパッと見では分かりづらいが、しっかり警戒はされている。
いつ、なにが、起きてもいいようにだ。
だから、裏手に入る。
かつての通り道だ。

ぬるり、と闇の中に入り込む。


「……かっわンねー……」

ぼそりとつぶやく。
香ってくるすえたような臭い。
わずかに響く艶めかしい嬌声。
薄暗い空間。

何もかもが記憶にあるとおりだった。

この、なんともいえない生がただよう空気……

> 「ぇ……? ひょっとして、猫ちゃん?」
園刃 華霧 >  
女の声がした。
うげ、もう見つかった。
いや、隠れるつもりもなかったから当然なんだが。
しかし、心の準備くらい欲しかった。

女たち > 「みんな、猫ちゃん!猫ちゃんがいるっっ!!」
「え、本当!?」
「猫スケが来てるって!?」
「わ、何年ぶり……!?」

園刃 華霧 >  
ドヤドヤと女達がやってくる。
うわ、なんだこんなにまだいたのか……

なんか中には髪が乱れたままとかいるんだけど。
つか、そこのおまえ。途中で抜け出してきてないか?
なにか白いのついてんぞ?

心のツッコミが追いつかないウチに、
とうとう囲まれた。

うえぇ……

園刃 華霧 >  
「……ァー……よォ……」

もうこの囲みからは逃げられない。
諦めの気持ちで軽く手を上げてアイサツをした。

女たち > 「嘘……猫ちゃんが、挨拶した……」
「成長したのねえ……」
「メシ、カネ、しか言わなかった、あの猫ちゃんが……」

園刃 華霧 >  
さんざんに言ってくる、昔のアタシを知っている女達。
クソ、だから此処来たくなかったんだ……
というか、アタシはまだ数年前のままの扱いか!?

というか珍獣扱いだよな、これ?

園刃 華霧 >  
女達がわきゃわきゃしているところに、年かさの女が一人出てくる。
ただ、それだけで一同が静まりかえった。
それだけの空気を女はまとっていた。

年かさの女 > 「なにかと思ったら、猫じゃないか。どうした、おまえ。
 制服なんて着ちまってさ? …………まあ、いいさ。」

じろりとねめつける。
見透かすような視線。

「数年ぶりじゃないか。とっくに野垂れ死んだと思ってたよ。
 今日は何しに来たんだい? メシか? 寝床か? 稼ぎかい?」

女は静かに聞いてくる。

園刃 華霧 >  
取りまとめの因業ババアじゃんか。面倒なのがでてきやがって。
思わず心のなかでため息を付いた。
いや、どっちにしてもコイツを乗り越えなきゃいけないんだけど。

「……バ……っと。すマん。その……頼む。
 フロ……と。あトできレば、すコし……寝床モ」

なにかいいかけるが、機嫌を損ねないように黙り。簡単に要件を伝える。
この因業ババアに通じるかってのが問題なんだが……

年かさの女 > 「ふぅん? だいぶシツケがされたみたいじゃないか、猫。
 の割に、なってないねえ。タダで借りようってか?」

品定めするような眼で女は見る。周りの女達は心配そうに見ていた。
しかし、女達に口出しは赦されない。

園刃 華霧 >  
クソ、昔からこの女は嫌いだ。
人を見透かすような目で見てきやがる。
それに……なんだか、何かわからないけれどイラッとする。

「……やレってンなら、仕事くラいすンよ……」

仕方ない、と口に……

年かさの女 > 「あはははははは!ホントしつけられたねぇ、猫?
 いいよ。カネならやれないけど、風呂と寝床くらい貸してやるよ。なあ?」

女は突然大笑いした。ついで、周りに目配せをする。
女達は一斉に我が意を得たり、と頷いた。

女たち > 「そうよぉ、猫ちゃんが久しぶりに来てくれたんだから。それくらい、ねえ!」
「そのかわり、私と一緒にお風呂入りましょ?」
「あ、ずるい。私も!」

女達がきゃいきゃいとまた騒ぎ始めた。

園刃 華霧 >  
……は? どういうこった?
思わず、ぽかん、とする。

というか、本当に騒々しい。
ん?待て待て待て、客の何人かが寂しそうに裸でこっち見てんぞ?
おい、なんか一人で始めてんのもいる……
本当に大丈夫か?

園刃 華霧 >  
「……うルせぇ……ってイうか、やっぱヤめとキャよかッタな……」

かつて、軒先で餌を貰っていた……いや、奪っていた野良猫。
別に毎日いってたわけでもない。
いけば、かまってきたのも居たけれど、そんな程度の関係だし。
野良猫自体はなつきもしなかった。

それを、久しぶりとはいえこうも楽しく受け入れるかね、こいつら……

……けれど、これも見ないふりをしていた暖かさだったんだろうな。
まったく……やれやれ、だな。

園刃 華霧 >  
しかし――
それはそれとして、この先のことを思ってため息を付いた。

園刃 華霧 >  
しばらくの後。ほかほかさっぱりな娘が出来上がっていたという。


「……やっぱ、どーニかせンと……アタシの身がもタん気がすル……別の意味で……
 ま……そレはまず後とシて……」

空を見上げる。
そろそろ頃合いの時間だ。

園刃 華霧 >  
「……行くカ、ね」

ご案内:「落第街裏通り とある静かなビル」から園刃 華霧さんが去りました。