2020/10/21 のログ
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」に日下 葵さんが現れました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」から日下 葵さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に日下 葵さんが現れました。
日下 葵 > 「――痛ってぇ」

どれくらい時間が経っただろう。
多分そんなに時間は経っていないと思うが、
全身のだるさが時間の流れをひどく遅くしていた。

”またできてしまった”

ごろん、と寝返りをうつように身体を仰向けにすれば、
さっきまで自分がいた時計塔の足場を見上げる。
はるか上空の足場は、豆粒の様でちゃんと見ることができない。

ボロボロになったパーカーのポケットから煙草を取り出して火をつけると、
口から間抜けに煙を吐き出した>

日下 葵 > 「あの高さならさすがに脚が竦むかなぁなんて考えましたけど、ダメですねえ」

見上げた先の足場。
あそこから落ちて、このザマである。
普通の人間ならまず即死するような高さから落ちたのに、
この身体は転送されることなくこの場で回復した。

――どうせ回復するだろう。

という予想は見事に命中して、今こうして煙草を吹かしているわけである。

「もう少し、怖がると思っていたんですが」

怖くなって、ためらうと思っていた。
思っていたのに、その予想は外れた。
手すりに身体を預けて、そこから一歩出るのに何も感じなかった。
このトチ狂った感性が、時折嫌になる。
”今ならきっと”そう思って試してみて、結局ためらいなく死ねてしまう。
そんな自分の感性が時折嫌になる。

「やっぱり、まだまだ”死んでなんぼ”なんですかね」>

日下 葵 > 「はぁーあ、嫌だなぁ。
 まだまだ先輩の思い通りって感じで。
 もっと反抗的になりたいなぁ」

”躊躇いなく死ねるのがアイデンティティです”
なんて豪語したこともあったが、
よくよく考えればそれは昔受けた教育と訓練のたまものだ。
決して自分で勝ち取った個性ではない。

だから、変化を望んだ。
死ぬことに対して恐怖してみたい。
最後に恐怖の感情を抱いたのはいつだろう。
昔過ぎて思い出すこともできなくなってしまった。

「いやぁ。現れてくれませんかねえ?
 私に恐怖を思い出させてくれる人」

まるで白馬の王子様みたいに。
そんなことを考えながら、身体を起す。
着ていた服は落ちたときの衝撃であちこちがすり切れていた。
パタパタと埃を掃うと、そのまま時計塔を後にした>

ご案内:「大時計塔」から日下 葵さんが去りました。