2021/10/08 のログ
ご案内:「◆何処かの雑踏」に黛 薫さんが現れました。
■黛 薫 >
直接いじめに加担しなくても、行われていることを
知っていて傍観したなら加害者と同等の責任がある。
ふと、常世島を訪れるより前に通っていた小学校で
先生が言った言葉を思い出した。
非道徳的、非人道的行為は実行した者は当然だが
知っていて止めなかった者もまた同罪である、と。
(あーしも……そうなんだよな)
昼行灯の如く当て所なくふらふらと歩き続ける最中、
自分と共同研究者のスタンスについて考えていた。
例えば、1人撃ち殺せば願いが叶うと言われた場合。
自分はきっと引き金を引く手を止められないだろう。
100人でも、1000人でも、10000人でも変わらない。
けれど、現状は自分の意思で人を殺したことはない。
力が無いのは勿論だが、殺せば近道が出来た機会は
一度二度ではなく、たくさんあった。
殺したくなかったからやらなかった。それだけ。
■黛 薫 >
天秤の片方に自身の願望……魔術の素養が乗れば
もう片側に何が乗っていてもそれを捨ててしまう。
そう自覚出来てしまうことが何より恐ろしい。
だからひたすら、そういった道を避けてきた。
禁書庫や黄泉の穴など危険な場所の探索は他者に
任せず、大怪我を負うリスクを負ってでも自力で
行なった。非人道的な試みが必要になったときは
被験体として自分の身体を差し出した。
しかし、効率より心情を優先するそのスタンスと
効率を重視する共同研究者のスタンスは異なる。
彼女は自分の手の届かないところで幾人もの犠牲を
出しているだろう。そもそもが根本から人間と理解
し合えない怪異。彼女の行為だけでなく、存在を
黙認している自身の行いは紛れもなく『罪』だ。
(分かってる。……分かってる)
もしも彼女の協力を受け入れなかったら。
存在を告発し、彼女が退治されていたなら。
どれだけの人が命を落とさずに済んでいたか。
それを理解しながら拒めない自分が気持ち悪い。
協力者にそんな感情を抱く自分の不徳が悍ましい。
■黛 薫 >
良心の呵責、罪を見過ごす自責、渇望と罪悪感の
板挟み、己の行いへの葛藤、それらを振り切れない
自分への失望と、自罰感情。
『お前のせいだ』
ありもしない声が自分を責めるのが感じられる。
犠牲になった誰かの手が足首を掴んでいる。
ひたひたと冷たい死者の手が全身を撫でていく。
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
幻聴で頭が割れそうになる。幻覚が周囲の景色を
覆い隠す。幻触が胸を、首を締め付けて息が詰まる。
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
■黛 薫 >
突き刺すような『視線』を感じた。
誰かが自分を責めている。誰かが自分を嘲っている。
蔑まれている。見下されている。貶められている。
『視線』の感触が肌の上を這い回っている。
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
「う ぇ 」
冷や汗が止まらない。無理に呼吸をしようとして
嘔吐した。喉を掻き毟る。包帯が破れて血が出た。
懐で錆びたナイフを握りしめる。一欠片の正気は
痛みが幻覚を振り払ってくれると信じた。
けれど、その期待が叶うことはなく。
ざわざわと幻聴に混じって人の声が聞こえた。
何を言っている?分からない。笑われているかも。
蔑まれているかも。それも仕方ない。当然の罰だ。
だってずっと声が聞こえる。ずっと見られている。
触れられている。触れられている。触れられている。
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
■黛 薫 >
背後から手が伸びてきた。握るように肩を掴まれる。
「っ、ひ──!」
咄嗟にナイフを引き抜いて切り付けた。
何かに刃がぶつかる感触。温かい液体で手が濡れた。
滲んだ視界の先、知らない誰かが目の前にいた。
浅く切り付けられ、血の滲んだ腕を押さえている。
「ぁ──」
すっと血が冷たくなる感触。自分は今何をした?
此処は何処?目の前にいるのは誰?怪我をさせた?
『お前の』『せいだ』
「あああアアぁあアあ゛っっっ!!」
狂乱の悲鳴を引き金に、周囲からも悲鳴が上がった。
からん、と音を立てて錆びついたナイフが落ちる。
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
■黛 薫 >
誰かに腕を掴まれた。それとも、これも幻覚?
咄嗟に振り払う。誰かが倒れるのが視界に映る。
『視線』が集まる。突き刺すような痛みが走る。
見られている。見られている。見られている。
「 ご ェ 」
吐瀉物が喉に詰まる。転びながら逃げ出した矢先、
誰かに衝突した。怒鳴るような声が降ってくる。
殴りつけ、振り払って逃げる、逃げる、逃げる。
悲鳴が聞こえた。周囲の誰かの声なのか幻聴か、
自分が上げた声なのかすら分からない。
何処まで逃げても粘つく『視線』が纏わりついて
離れない。全身を這い回り、時に噛み付くような
突き刺すような痛みを伴って自分を嘲っている。
聞き取れないほどの罵倒の声が頭の中から響いて
頭蓋が割れそうなほど痛む。
本能的に『視線』から逃れるように逃げたため、
途中から人にぶつかることは無くなった。
それなのにずっと『視線』から逃れられない。
ずっと見られている。ずっと触れられている。
ずっと、ずっとずっとずっとずっと──。
■黛 薫 >
幻覚に覆い隠された視界が暗くなる。息が出来ない。
何処まで逃げてきた?まだ立ち止まってはいけない。
『視線』が感じられる。見られて、責められている。
逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて。
……冷たい手に足首を掴まれて転んだ。
落第街の汚れた道路に顔面を強かに打ち付ける。
「げ、ほっ」
砕けた歯と血を吐き出しながら、涙と鼻血で汚れた
顔を拭う。酷使した肺と心臓が痛くて立ち上がれない。
『お前のせいだ』
耳元で誰かが囁いている。冷たい手が頭を掴み、
叩きつけるように地面に押し付けた。どろりと
気持ち悪い感触がのしかかってくる。
■黛 薫 >
──落第街は、常世島の中で特に『負の感情』
『陰の気』が吹き溜まりやすい環境にある。
怨み辛みが溢れ、血が流され、時に人が死ぬ。
更につい先日、常世学園には幽霊を放つという
声明が届いたばかり。犯行予告の真偽はどうあれ、
存在を信じ、人が噂すれば容易く霊は寄せられる。
それを踏まえた上で。
正気を失い、狂乱するほどの負の感情に支配された
霊媒体質の少女が怨念の坩堝に足を踏み入れた場合
どうなるだろうか?
『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
『お前のせいだ』『お前のせいだ』『お前のせいだ』
■黛 薫 >
どこまでが幻覚で、どこまでが現実なのか。
分からない。分からないけれど自分が『何か』に
押さえ付けられて『見られている』のは理解した。
「は、っ……」
骨が軋む感触、目眩がするほどの虚脱感。
どろり、どろりと怨念の塊が集まってくる。
冷たい手に全身を押さえ付けられている。
死者の残留思念、未練、怨嗟、絶望、復讐心。
生者の抱く負の想念、残酷な悦楽、仄暗い欲望。
ひとつひとつは微弱なそれらが集まり形を成す。
『どうして自分が』『憎い』『恨めしい』『怖い』
『あいつの所為だ』『殺してやる』『もうやめて』
『死んでしまえ』『もう嫌だ』『憎い』『愉しい』
『痛め付けたい』『犯したい』『お前が悪いんだ』
『呪ってやる』『良い気味だ』『憎い』『死ね』
『殺す』『殺してやる』『憎い』『憎い』『憎い』
(逃、げ……)
這うように手を伸ばす。腕を踏みつけられる感触。
抜け出そうともがくと、足に鈍く重い痛みが走る。
押さえ付けられて見えないが、逃げられないよう
足を折られたのだと理解する。
ご案内:「◆何処かの雑踏」にモノ・クロさんが現れました。
■モノ・クロ > 「なにやら騒がしいと思ったら…へぇ」
視線から逃げ行く先。数多の視線から逃げ得る場所。
そうして逃げた先は、大抵人が『近寄ってはいけない場所』であり…怪異か何かが潜んでいるものである。
「何したらそんなに恨まれるんだ、お前」
斃れている顔の前に、姿を表す。
よく目を凝らせば、かの人型スライムに似た姿であり…同時に、かけ離れた存在であることに気づくだろう。
左目は異形の瞳、その四肢の先は、暗ければよくわからないかもしれないが……呪いの紋様があるだけで、肉は無いのだ。
覗き込む。『悪魔の瞳』が。
■黛 薫 >
見覚えのある姿のようで異なる『何か』が自分を
見ている。懇願するように弱々しく手が動いたが、
言葉は取り憑いた霊体の所為で遮られた。
集まったのが道連れを求める死者の怨念だけなら
既に殺されていたかもしれない。しかし、怨念に
混じった不純物──落第街に溜まる澱んだ想念が
憑いた相手を『苦しめるために』それを阻んだ。
怨霊の群体はその大半が落第街で命を落とした者の
残留思念から出来ており、それらが落第街に生きる
人々の悪意なき悪意に影響されて行動していると
見るべきか。
怨み辛みはあろうが、群体故に対象は極めて曖昧。
子供のように無邪気に、シリアルキラーのように
悪辣に『誰でも良いから』害する怨霊。
発生要因が揃っていたとはいえ、取り憑かれた
少女はその発生に一役買ってしまったがために
真っ先に目をつけられたと言ったところか。
憑かれた少女は意思疎通のためか助けを求めようと
したか、何度か貴女の言葉に反応を返そうと試みた。
しかし弱々しい動作は再び首を絞められてすぐに
途切れ、骨の軋む音と凌辱の音に置き換えられる。
意味のある言葉はついぞ発せなかった。
■モノ・クロ > 「………あー。めんどくせぇな。」
集り集って、怨嗟をぶつける姿。
たとえ怨霊と言えど…元々が『呪い』である彼女達にとっては、気分の良いものではなかった。
他人の願いの受け皿にされる姿は、何度も、何度も見た。
決まって願われた者は怨嗟を吐くのだ。例外は…あるにはあるが。
「この子の為になる、っていうのは癪にさわるが…」
勿論、どういう因果でこの子を恨む事になったかは知らない。ただ、明確に恨んでいるのも少なくともいるのは事実で。それを遮るのは、呪いたる彼女達にとってはあまりやりたくないことだった。
「………『失せろ』」
だが、それ以上に、それに便乗するやつが許せず、言霊を発する。
呪いの権化たる存在からの言祝。有象無象の霊であるならば耐えること無く霧散するだろう。
■黛 薫 >
怨霊が散っていく。消えていく。
群体であるがために大きく、恐ろしく映るものの
個体で見れば自然発生レベルの霊体が各々自我を
得た程度。ある程度の力があれば祓うのは容易い。
異常だったのは数とそれらが一斉に発生したこと、
そしてターゲットが集中し過ぎていたことだろう。
考えられる最も簡単な原因は取り憑かれた彼女が
霊体が自己を確立するための依代、霊媒として……
もう少し踏み込むなら『犠牲者』としての適正が
高過ぎたからか。
ともあれ、凌辱の限りを尽くされて無惨な姿に
なってはいるものの、これでようやく霊媒体質の
少女と意思疎通が取れるようになるはずだった。
けれど。
「やめて、やめて、みないで、ごめんなさい、
みないで、みないで、みないで、みないで……」
呪われた視線、離れない視線に怯えるように。
少女は酷く震えるばかりだった。
■モノ・クロ > 「別に取って喰ったりはしねぇよ。『あんたが何もしてなけりゃ』な。」
呪いは誰かの意志によって成り立つものだ。彼女個人への特別な意志があるのなら、呪いは当然のように機能するだろう。
それが善意であるか悪意であるかは関係がない。
「それにしても、酷いことをされるより視線が怖いか。感知系の異能かなにかかね…?」
取り敢えずそのまま寝かすのも良くないので、腕の先の呪紋で薫を持ち上げ、適当に座らせる。
呪紋に触れられれば『一番感じたくない感覚』に苛まれるだろう。
■黛 薫 >
「っ、ひ……いや、いやだ、みないで……」
座らせる際に触れられた場所を酷く掻き毟る。
どうも彼女は触れられた場所も『見られている』と
感じているようだ。彼女にとって『見られる』と
いう行為は何らかの感覚を伴うものであり、かつ
(無条件で嫌悪するかは不明だが)見られる感覚は
他のどの感覚よりも感じたくないものらしい。
霊媒としての適性が高いことを考慮してもなお
激し過ぎる衰弱も恐らくはそれに起因している。
霊からの『視線』が彼女を追い詰めていた。
とはいえ、憑いていた怨霊は既に散らされている。
時間こそかかったものの、最低限意思疎通出来る
程度の正気は取り戻した。
「……っ、誰、あーた……フィーナ、じゃなぃ、な?」
■モノ・クロ > 「…………あぁ?お前、あいつの知り合いか?」
バツが悪そうに言う。
怪異同士が知り合いである…というのは、珍しい話だ。
大抵は常識の相違であったり縄張り争いであったり、そもそも敵対関係であったりなど。
そういう点で言えば、まだこの怪異はフィーナと同じく理知的であることが伺えるだろう。
それをもってしても、この怪異と仲良く出来るのは本当に限られているが。
「…しょうがねぇなぁ。俺はクロだ。あんたは………」
少し、思考する。あのクソッタレをフィーナと認識しつつ、嫌悪を示さないのは…
「…黛薫、で合ってるか?」
あのクソッタレに出来た、唯一心を許していると言っていい存在。あの感情は、好意と食欲が混じった奇妙なものだったが…なにはともあれ、大切にしているのは違いない。
「俺のことは………多分、聞いてないよな。」
呪いの塊である以上、伝聞すら憚られる存在だ。伝えられているとは思えない。
■黛 薫 >
「……あぁ、知り合い……か。姉妹……じゃなぃか。
そーゆーのだったら、もっと……同期、共有とか、
出来そーだもんな……」
見た目が近しいから単なる知り合いというだけでは
なさそうだ。けれど同居人の生態的に、血縁という
線はまずない。
「クロ。……クロ、ね。フィーナに、似て……。
逆に、あーしのことは……聞いてんだ、な。
はぁ、あーしは別に、あーたのこととか、何も、
知らねーし……聞ぃても、ねーですが。
いぁ、そうじゃねーな……いちお、助けて貰って、
だから……うん、先に、ありがとって、言わねーと」
警戒が薄いのは同居人の知り合いと聞いたからか、
助けて貰った恩があるからか、余力がないだけか。
いずれにせよ対話の意思はある。
■モノ・クロ > 「…………ありがとう、ね」
その言葉を、聞くのは。本当に久しぶりだ。
罵詈雑言や怨嗟の念は途方もなく聞かされてきたが。
「こりゃ、モノは出さんほうが良いな…」
一人ごちながら、落ちている材木等に呪紋を伸ばす。
呪いが影響を及ぼすのは精神だけで、物質にたいしては大した影響は殆ど及ぼさない。
とはいえ、呪紋として形になっている分には物理的な影響は及ぼすが。
「しかし…あのクソッタレの言うことにも真実はあるもんなんだな。『こうも甘露が漂ってくる』とは」
左目の底にある、甘露たる資質を見抜く。
呪いの媒体としても最高峰であるようにも思える、彼女の資質。
舌舐めずりをしてしまいそうになる。
基礎が人間とは言え、今発現しているのは呪いの塊、怪異であり…その身体は、とても魅力的に思える。
「よく喰われずに済んでるもんだ」