2021/10/09 のログ
黛 薫 >  
「いずれは喰われるだろーけぉ、な」

ぼそりと呟く。フィーナの目的は秘めたる甘露。
正直自分では信じ切れていないが、フィーナの
真剣さから嘘をついているとも思えない。

自身の目的は魔術の行使であり、封じられた素養が
あるならそれを解放することによって自身の目的も
達せられるのではないか、という期待から彼女と
行動を共にしている。

けれど。

どちらかの目標が成ったとして、もう片方も確実に
達成出来るとは限らない。少なくとも今まで凡ゆる
試行に裏切られ続けてきた黛薫はそう考えている。

「助けてもらった手前、こんなコト言うのも失礼
だって分かっちゃいますけぉ。あーたがフィーナと
同じようにあーしを喰うのが目的なら勘弁願ぃます。
口振りからすると知ってるっぽいですが、あーしは
既に『予約済み』なんで」

もし己の目的が成る可能性があるなら、その先に
生き延びる目が無くても構わない。けれど途中で
命を落とすのは御免被ると、ふてぶてしく宣う。

モノ・クロ > 「未だに無事、っていうのが奇妙なぐらいだよ。自分の獲物に手を出されないようにしてるのか、それとも他の理由かは知らんが…まぁ、喰うならあのクソッタレが試行錯誤する必要はないように思えるんだがな?」

呪いの矛先を向けられないが故に手持ち無沙汰になり、拾った材木を弄んでいる。呪紋の一つ一つが絡んで、見ようによってはあたかも呪物が作られているかのように見えるだろう。

「あのクソッタレと敵対するのだけは御免だが……それでも天秤が傾きかねないぐらいには魅力的だぜ、あんた」

左目の奥、その魂を覗き込んで。

やろうと思えば、呪いで雁字搦めにして、その甘露を啜り続ける事もできるだろう。

それをやらないのは、フィーナの馬鹿みたいな火力が背後にあるからだ。


もしそれがなければ、彼女は既に喰われていても可笑しくはないのだ。

黛 薫 >  
「フィーナの話を聞く限り、あーしに『そういう』
素養があっても実際の中身は空っぽみたいなんで?
喰われてねーのもそれが理由っす。残り香だけでも
美味しそうだけど食いでは無ぃってコトでしょーね。
味は……喰われたコトねーから知りませんが」

逆に言えば、嗅ぎ付けさえすればその残り香だけで
怪異を狂わせ得るだけの危険な素養だということか。
異常なほどの怨霊に憑かれたのもそれなら説明が
付くだろう。

材木を弄ぶ呪紋からはあえて目を逸らしている。
少なくとも『触れなければ大丈夫』などという
甘い考えを抱いていない点は賢明か。

「そーゆーワケなんで、食いたきゃフィーナみたく
クソ面倒な手順を踏まなきゃなんねーみたぃっすね。
それが無きゃとっくにフィーナが喰ってるかもな」

モノ・クロ > 「…そりゃ、こんな左目の奥にあればその発現は難しいだろうな。だったらそっから取り出しゃいい。多少乱雑でも形を保てば良いんだ。

それを喰うだけで一体どれだけ満たされるのやら」

魂に触れ、たとえ身体に異常が出ようとも。捕食者から見れば、些細な問題なのだ。
要は甘露たるを喰らえばいいだけで。取り出すのが無理なら中で喰えば良い。

「まぁ、一応忠告しておくが…あのクソッタレの庇護下から外れん方が良いぞ。『さっきみたいなのじゃ済まない』からな」

さっきは怨霊に集られ、肉体を陵辱されるに留まった。
しかし、この甘露を見抜いた、少しでも理知的な怪異であれば、それこそ『永遠に囚われる』ことになるだろう。

消滅することは恐らく無い。永遠にその魂を犯されるのだ。
あのクソッタレの為ではないが…応答次第じゃ、多少脅したほうが良いかもしれない。

黛 薫 >  
取り出せば良い、というのは(雑でも良いか否かと
いう差を除けば)フィーナの考案した方法と近しい。

クソッタレと呼びつつ思考が似通っているあたり、
腐れ縁的な仲の良さがあるのでは?と邪推したが
口には出さなかった。見えてる地雷は踏まぬが吉。

「あーしとて好きで離れてるワケじゃねーですし。
元から1箇所に留まるのは好きじゃなかったですが、
最近幽霊が増えて、留まるだけで憑かれるように
なっちまぃましたのーでー。ま、そんでも逃げた
お陰で余計酷い目に遭ってちゃ世話ねーですけぉ」

落第街にいれば常に下卑た視線に苛まれる。
学生街にいれば時折責める視線に苛まれる。
どちらかに耐え切れなくなったらもう片方に
逃げなければ心が持たない、なんて。

言ったところで理解されるとは思わないので、
直近の悩みだけ口にしてため息をこぼす。

モノ・クロ > 「…ほんと、世話ねーよな」

しゅる、しゅるり、と。木を弄んでいた呪紋が黛薫に近付く。
あのクソッタレに頼れば防護の一つや二つ、やってくれるだろうに。

それを頼まないのは、怠慢でしかない。


囲われているのなら、それを利用しない手は無いだろうに。


「それで俺みたいなのと出会っちゃ、ホント世話ないよな」


クロは怪異ではあるものの、物理的な強さはあまり無い。耐久も通常の人間と同等なのだ。

クロの真価は、なんと言っても『呪い』だ。物理的な影響が少ない分、質が悪い。特別な方策を取らない限り防ぐことが出来ないのだから。


「別にな。あいつには喰うなって言われたわけじゃないんだよな」


しゅるり、しゅるりと。悍ましき呪いが、薫の左目に近付く。

黛 薫 >  
黛薫自身の身体に呪いへの抵抗力はない。
いや、むしろ逆に親和性が高過ぎると言える。

元々が強力な霊媒体質、その上魔術を扱うために
非人道的な実験を受け入れ続けた所為だろうか、
持ち得たはずの人並みの耐性、抵抗力も穴だらけ。
乾いた砂に水が染み込むように呪いがよく馴染む。

それなのに黛薫本人に焦った様子は見られない。
逆転の策がある?違う。諦めている?それも違う。

「やってみろよ」

「上手くいったなら、あーしも万々歳だ。
ダメならあーたが逆上しない限り殺されない。
どっちでも構わねーんだよ、あーしは」

虚空に落ち込んだ『自分』に干渉することで
蜜を啜るなら、自身への負担を考慮しない場合
やろうとしていることはフィーナと変わらない。
死の間際でも魔術の素養が得られるなら良し。

けれど失敗すれば自分を相手する理由は無くなる。
積み重ねられた失敗から其方の可能性の方が高いと
踏んでいるが……その場合、感情に任せない限り
殺されはしないだろう。そして短時間の対話だが
言葉を交わした限り相手は理知的だと考えられる。

生存より優先される欲求がある。
黛薫はその点に於いて狂っている。破綻している。

モノ・クロ > 「……後悔しても知らないからな」

しゅる、しゅる、と。薫の左目に、呪紋が入っていく。

それ以外の所に触れないようにしているのは、慎重故だ。

下手に壊してしまったらもったいない。

「簡単に壊れてくれるなよ?」

クロの肉体―――黒塗りになっていて肉体と言って良いのかわからないが―――から、異形の目が失われる。

そして、代わりに左目に入った呪紋の先に、出現する。

呪紋を考慮しなければ、外界に対して視界が効かない、ほぼ無抵抗の状態だ。

呪紋に触れるという多少のリスクを犯せば、逃げられるかもしれない。

もしそうしないのであれば…悍ましき呪いは、薫の魂を見つけ、まず観察するだろう。

黛 薫 >  
黛薫の左眼は『虚空』として半ば異界化している。
恐らくはクロもフィーナから得ている情報だろう。
虚、或いは穴と呼べる性質により彼女の『本質』
『根幹』の全てが落ち込むようにしてその一点に
集約されている。

観測された黛薫の髄と呼ぶべき部分。
それさえ観測できれば、外からは精査しなければ
分からない『甘露』の性質は強く感じられる筈だ。
知性のない怪異なら正気も忘れて飛びつき喰らう、
それほどの甘美な蜜の香りが理性と本能を揺らす。

けれどそれはやはり『残り香』なのだ。
単に虚の奥に落ちたから見つけられなかったという
単純な話ではない。その甘美なる香りだけを残して
蜜が枯れてしまっているかのよう。

残り香、錯覚でさえ正気を保つのが難しいほどに
飢えを刺激するのだ。誘惑に負けて口にしたなら
本来あり得た甘美の欠落に飢え苦しむ羽目になる。

黛薫が貴女を受け入れた理由のひとつ。
それは(自身の本質こそ知らされていなかったが)
過去にどれほどの試行が失敗してきたかその身で
味わってきたから。簡単には望む物が得られない、
見つからないのを知っている。

モノ・クロ > 「…くく。」
嗤う。成程、あのクソッタレが手を焼くわけだ。

奴の魔術も型無しだったに違いない。この左目は結界のように魔力をなかったことにしている。

つまり、この左目の中に在る限り薫は魔術を行使することが出来ず…そして、魂だけとは言え魔術の干渉も受けない、というわけだ。

これなら物理的な手法…まぁ、それだと魂が崩壊しかねないが。そうした方が手っ取り早いに違いない。そうすることが出来るのも一部だけだろうが。

「成程な。あんた…そうまでして出来もしない魔術に傾倒するのはこれが理由か。面白い結界だな」

遮断などではない。この左目が、この魂を閉じ込める結界が、魔力の存在を許さないのだ。

「だが、魔力じゃなきゃ…こういう事もできる」

無防備な魂に、呪紋を這わす。呪いによって象られた物が、魂に触れてしまう。

黛 薫 >  
浅く呼吸を繰り返す黛薫の顔色は蒼白だ。
自身の根幹に触れられる感覚、しかも仮に丁寧に
扱われても虚空の果てに消える可能性すらある。

触れているのが呪いという、忌避せざるを得ない
代物である点まで考慮すれば、既に彼女は単なる
死より遥かに恐ろしい感覚を味わっているはず。

優先順位が狂っているだけで、恐怖も生存欲も
正常に働いている。怯え切った呼吸、溢れる涙、
血が出るほどに握りしめられた手がその証左。

それでも、やめて欲しいと言えない。

欠片でも目的が成される見込みがあり、かつ
成されず死ぬ可能性を避けられる方に賭けられる
見込みがあるなら、彼女の行動は決まっている。

狂った渇望が正気を上回るため、発狂も出来ない。
ただ、貴女の試みが終わるのをじっと待つだけだ。

呪いが、貴女の指が彼女の『本質』に到達する。
触れれば触れるほどその甘露は強く誘惑してくる。

無いはずがない。これほど強く薫るなら手掛かりは
必ず何処かにあるに決まっている。それなのに。

『見つからない』。

隠されている?封じられている?失われている?
どれもが近いようで、きっと違う。得られない。
恐らくは何らかの『条件』があるのだろう。

彼女の『本質』に生のまま触れるのは最低条件。
クロが魔力に依存しない手段で触れることにより
成功し、フィーナが召喚術を用いて成そうとする
その条件は入り口に過ぎないのか。

モノ・クロ > 「…んん?なんだこれは」

誤って潰さぬようにしていたが。香りが強くなるばかりでそのものが見つからない。

それどころか呪紋が勝手に動きそうな気配まである。

甘露たる香りに影響されたか、それとも―――薫自身の強い願いに、あてられたか。


呪いとは、願いなのである。
こうであって欲しい、こうなって欲しいという願いが形になったものなのである。

「……まぁ、後悔するなよ、とは言った。どうなっても知らないからな」

衝動のままに。願いのままに。呪紋の制御を解く。

衝動のまま薫の魂を喰らい尽くすか。
それとも、魔力の発現を願い自らの魂を暴き立て、自らの呪いによって魂を犯され抜くか。

どちらにせよ、薫にとっては過酷なものとなるだろう。

黛 薫 >  
『呪い』が『願い』であるならば、黛薫の願いは
ひとつしかない。その願いは己の意思に関わらず、
心を軋ませてでも行動に駆り立てる呪いそのもの。

良心、道徳、社会通念を理解しながら拒む。
可能性をチラつかせれば残りの全てを捨てる。
矛盾した行動。その中で唯一ブレないモノが
『願い』であり『呪い』だ。

呪紋は黛薫の全てを暴き、凌辱の限りを尽くす。
彼女自身が嫌でもそれを願わざるを得ないために、
抵抗することも出来ない。

不安定な位相で自身の全てを暴かれる感覚は
拷問という言葉ですら生緩い。身体は異常な
痙攣を繰り返し、悲鳴すら上げられない。

──その果てに、暴かれたモノ。



彼女の体質、『親霊体質』は偽りである。
限りなく高い霊媒の適正。甘露としての性質。
そしてそれらを得られない理由。

正しくは『供儀体質』。

喰われるための体質。捧げられるための身体。
これ以上の餌がないために、捧げられた者は
それ以上の、それ以外の要求権を失う。

『甘露』たる蜜を啜ることが出来ない理由は1つ。
彼女が既に『別の何かに捧げられている』から。

恐らくは彼女の左眼に内在する異界に近い空間
──『虚空』に連なる、何者かに。

モノ・クロ > 「……………ハッ」
胸糞悪い。結局こいつは…『同類』だってことか。
自分達と同じ、『人身供犠』なのだ。どこのクソ野郎かは知らないが…既にこの甘露は吸われている、ということになる。

「全く………あのクソッタレの手伝いをしたかった訳じゃないんだけどな」
ずるり、と。彼女の魂から呪紋が引き抜かれる。
そして、捜索が始まる。『彼女以外の意志』の。

なにかに捧げられている、というのならば。自分ではない誰かに求められたはずだ。その繋がりがどこかにあるはずだ。

それが文字通り呪いとなって彼女を蝕んでいるのだから。

左目の虚の中をぐるりと見回し、探す。

彼女の為ではない。甘露に狂ったわけではない。

只々、自らと境遇を同じとする『同情』から来る行動だった。

黛 薫 >  
『甘露』を目的とする場合の希望を挙げるなら、
捧げられた対象とのパスを切断出来さえすれば
所有権を奪うことは可能だろう。一度尽きた後
湧き出でねば『最上の生贄』足りえないからだ。

逆に誰かの物である限り横取り出来ない理由も
『最上の生贄』であるための制約なのだろう。

虚の中を捜索しても手掛かりは見つからない。
『虚』であり『無』である以上、広さの概念は
意味をなさず、黛薫というアンカーが機能する
彼女以外の存在が虚空の何処かにあったとて、
探すのは困難どころではない。不可能だ。

強いて手掛かりを挙げるなら『痕跡が無いこと』。
どうあれ、一般的に考えられる怪異や荒御魂なら
黛薫の髄の何処かに痕跡を残していたはずだ。

考えられる可能性のひとつはそういった常識が
一切通用しない超越存在に捧げられた場合だが、
もしそうなら黛薫の本体がやすやすと別の誰かの
手に渡るはずがない。除外して良いだろう。

モノ・クロ > 「……厄介だな」
ずるり、と。目から呪紋を引き抜き、呟く。

何に捧げられたかを確認するのは、無理だとわかっていた。あの瞳の中にあれ程の結界…いや、異界と言ったほうが正しいか。それを作り上げる程なのだ。

それを追えるのは同じく世界を作り上げられる者ぐらいだろう。

では、その存在に捧げたのは、誰だ?

彼女の魂にはそれらしい意志は見当たらなかった。彼女が『誰か』によってそうなったのであれば、その誰かの意志があって然るべきなのだ。

それが、無いということは。

「……まさか、自分から…?」

人身供犠を自ら行うなど、それこそ―――――

頭を振る。そんな異常者、一人でいい。ましてやコイツはその状況を望んでいないじゃないか。

「そんなのは、モノだけで…」

黛 薫 >  
そう、それが彼女の置かれた状況の異常性。
供儀の対象は素より『捧げた者の痕跡も無い』。
捧げた者が存在する以上、無いはずはない。

では何故か。

『痕跡すら残さず消えた』。或いは消された。
瞳の内にある『虚空』も繋げて考察するなら
供儀の対象は余程『無』に縁深いと見える。

彼女の『本質』は暴かれ、呪紋は引き抜かれた。
全てを曝け出し、魂を凌辱され尽くした黛薫は
光の消えた目で痙攣を繰り返し、失禁している。

直前まで怨霊に憑かれ、肉体も凌辱されていたのだ。
限界を迎えていない方がおかしい。それでいて未だ
壊れていない──正確には壊れることを許されて
いないのは、残酷という言葉でも軽いほど。

『本質』を暴かれた弊害として『供儀体質』は
そのプロテクトを失っている。潜航を行わずとも
甘露の残り香は人ならざる者を狂わせるだろう。

モノ・クロ > 「………ぁ」
動揺する。暴かれ、漏れた香りは理性をぐらつかせるのには十分だった。

元来、クロは人身供犠に取り付きその願いを叶えるものだった。

彼女…『モノ』と共にしている時間が長いのは、彼女の類稀なる人間性と、適応能力…そして、クロ自身の感情もあった。

それだけ強固な繋がりが、揺らぐ。

喰わずとも良い。彼女に取り込み、願いによって魂を隔離して、取り込んでしまえば……………


そう考えたところで、意識が『反転』する。


「…………浮気はいけないんだよ、『クロ』?」

先程迄の強気な口調から、まるで子供のような口調に変化する。

「とりあえず、放って置いたら不味いからー……こうだ!」

まるで子供がなにかいいことを思いついたかのように声を上げ…

ぶわり、と。

呪紋が広がっていく。ぞわぞわと増殖していき―――薫と『モノ』を中心として空間を『隔離』していく。

概念で空間を隔離すれば人外を惑わす香りは漏れないだろう、という算段だった。

1分と経たずに、薫とモノがいた場所に、馬鹿でかい黒い繭のようなものが出来上がった。

黛 薫 >  
結果として、空間の隔離は功を奏した。

甘露の誘惑は一度触れてしまえば思い出すだけでも
飢えかねない強力なものだが、逆に言えばそれだけ。
遮る手段はいくらでもあるし、本能レベルの干渉が
可能なら、振り切れずとも耐えることは難しくない。

呪紋で覆われた概念の繭の中、黛薫は夢を見る。

欠落に起因する魔術への渇望。どんな非合理的な
行動でも、心がそれを望んでいなくても逆らえない
行動の指針。願いであり、呪いであり、道標。

幼少から魔術以外に興味を持てず、孤立した。
常世学園入学後、魔術と関わる道が絶たれて
身を持ち崩した。魔術への渇望を餌にされれば
違反部活動の誘いも、怪異の誘いも断れない。

そして、また別の場所で魔術に通ず道を見出せば
それらの関わりを無に返しかねないとしてもなお
逆らうことは出来ない。

浅慮に見えるだろうか。愚昧に見えるだろうか。
考えても嫌がっても逆らえない願い/呪いがある。

(フィーナは)(怒るのかな)(今晩のこと)

怒りの視線は痛いけれど、怖いけれど。
失望と嘲笑、落胆と同情でトラウマを抉られる
くらいなら……怒られた方が良いかも、なんて。

泣きそうな夢の中で、意識を手放した。

ご案内:「◆何処かの雑踏」から黛 薫さんが去りました。
モノ・クロ > 「…とりあえず、大丈夫そうかな」
繭の中で、夢を見る薫を見ながら、呟く。

色々垂れ流しとなって酷い有様だが、落ち着いたようだ。

以前の失敗から学び、呪紋に布を纏わせて薫に触れ、色々垂流しになってしまっているものを拭き取ったり汚れてしまったものを脱がしたりする。

ハンモックのように布を吊るしてそこに寝かせ、繭は物資を求め移動を開始する。

まず水と食料。そして衣服。放棄された区画である以上ちゃんとしたものはなかったが、『無いよりはマシ』程度のものを着せておく。

後はのんびり、迎えが来るのを待つだけだった。

ご案内:「◆何処かの雑踏」からモノ・クロさんが去りました。