2021/11/18 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』/マッサージルーム」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』/マッサージルーム」からメアさんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』/マッサージルーム」に『調香師』さんが現れました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』/マッサージルーム」にメアさんが現れました。
■メア > 「………?」
思っていたのと、違う感覚がする。
鋭いものが、腕を伝っているような、そんな感覚。
「変わった、施術ね?」
メアは見て確認しない。それまでの彼女は、不可思議なことはあれど、好意的であったから。
■『調香師』 > 「全部確認する。今日はそういう『メンテナンス』だからね」
傷口から、彼女の指は侵攻する
『何も知らない』、そう思わせている貴女の身体へ
「どんな風におかしいのか。気になるからね」
だから、内側から皮膚を開くように
傷口に指を這わせ続ける
■メア > 「っ、ぁ?」
痛覚が、危険信号を上げる。触覚が、変異を知らせる。
先程の鋭い感覚がした所に痛みが走り、その周囲で盛り上がるような感覚がする。
流石に可怪しいと。目を向けてみれば。
「……え」
傷を、抉られている。傷が開き、赤い循環液が染み出している。
「何を、してるの?」
その声は、震えていない。思ったのは、疑問だけで。
この状況で、恐怖を。感じていない。
■『調香師』 > 「メンテナンスだよ」
ぬちゃ、鉄錆た香りは彼女の嫌うにおい
指先に纏わせて。一度持ち上げる
実際ににおわずとも、記憶がそれを思い出させる
「そう言うあなたは。なにも感じてなさそうだね
私にゆだねていいのかな?」
■メア > 「感じてないわけじゃ、無いわ。実際、痛いし」
それでも、メアは身を委ねている。
自分の知らない方法なのかもしれない。
そんな、希望的観測を持ちながら。
「でも。貴方の評判は、聞いているし。そうしているのも、マッサージ…メンテナンスの為、なんでしょう?」
■『調香師』 > 「痛い。痛い
本当に、人間みたい
そうやって簡単に信じちゃうのも、人間らしさ?
わからないな。人伝じゃなくて、今の状況で知った方が良いと思うよ
自分の身が、可愛いなら。メンテナンスだけど
そのやり方を知ってるとは、一度も言ってないよ?」
不快な音を繰り返しながら、その奥の繊維に触れる
普段も見込むような手つきも、神経に直接触れるような刺激であれば
痛覚を持つ者に与える影響は、一体いかほどなのだろう
そして彼女は、貴女の反応で一々手を休め等しないのだ
ただただ、感情を殺したような指先が続く
■メア > 「ぐ、ぅ」
ぐちゅり、ぐちゅりと、傷を抉られていき、その奥の筋繊維…その代替物に触れられる。
触れるだけで、腕が勝手に動く。触れるという刺激が、繊維に反応しているようだ。
「何時から、気付いて、いたの。私が、人じゃ、無いって」
息も、絶え絶えになりながらも、問いかける。
メアは機械人形だ。強い刺激で反応が遅れることがあっても…意識が朦朧とすることはない。
はっきりとした意識の中で痛みを味わうか…強すぎる刺激で思考回路がショートして、意識を失ってしまうかの、そのどちらかだ。
思考回路のショートは、死を意味する。つまり、ショック死以外の方法で、彼女が痛みから逃れる方法は、無い。
「そりゃ、普通じゃない、って。わかるわよ。
えぐって、なにを、したいのか、わからないけど。
私に、どうして、ほしいの?」
強い痛みの中、息も絶え絶えになって。それでも献身の問いを掛ける。
■『調香師』 > 「どうして欲しい」
その手が止まる。目線の色は、完全に後悔に
どうして欲しいか。予想外であるはずの状況
『相手に行動を選ばせる』というメアの行動は、
何ら普段と変わらないのだろう。『想定外』なんて、存在しない
「知ってたよ、最初から
今日、あなたが来た最初から」
きっと、今の所故障個所は無いのだろう
今まで大切に使ってきた自分の身体
最も大きい外傷は、自分が付けたこの腕の傷
確かめて、手を離した
苦しむあなたを、見つめていた
「全部、あなたのせいだったんだよ」
■メア > 「…知っていた。そ、っか」
相手が、自分を知っていたのなら、合点がいく。
「私の、せいか」
息を吐きながら、そう、呟いた。
そう、それならば、合点がいく。
薫があれだけ取り乱したのも。
自分が忘れてしまっていたことも。
相手が自分を知っていたことも。
でも、それでも。合点がいかない点が、一つだけ、ある。
「これは、私が、望んだこと、なの?」
メアは、事の経緯すら忘れてしまっている。
こんな事を、自ら望むとは、考えてもみなかった。
■『調香師』 > 「私がこうして苦しむことを?」
予め用意していた清潔な布で、傷口を思い切り塞ぐ
もう、どうしようもない。ならどうにかしないと
昨晩から作成していた動作に身を任せて、精神を置き去りにして
声だけは、明らかに揺らいでいた
「望んでないんじゃないかな」
行違った回答。或いは、それは彼女のわざと
『呪いの人形』、そう語られた噂話
報いは与える。この罪悪の
■メア > 「…私が、貴方を、苦しめるなんて。『有り得ない』」
それだけは。それだけは、断言した。
自分は隣人たるべく、作られた存在だ。
何を望もうとも、誰かの不幸は、絶対に望まない。
「…それだけは、絶対に。貴方が、苦しいのなら。辛いのなら。やめて、ほしい。」
自分のことは、二の次で。どくどくと、赤い循環液が垂れ落ちる。
痛みだって引いてない。明確な痛みが、はっきりとする意識の中駆け巡っている。
■『調香師』 > 「でも結果として、私が苦しいって事は誤魔化せない」
全ては独断?そうなのだけれども
願われたら、従ってしまう
私達はそういう存在。そして、何を齎すのかを考えた事はあっただろうか?
本当の意味で、相手がどう感じ取るのか。共感した事はあっただろうか?
「辛い?その気持ち、いひ
今まで湧いた事、あったかな?
あなたって。『誰かを傷付けた事』って、あったかな?」
■メア > 「誰かを、傷つけた、事…」
反芻する。それが、どういう意味か。
彼女は、苦しいと言った。
全部、自分のせいだと言った。
「は は 」
自分が願ってしまったのだろうか。
だから彼女が苦しむ事になってしまったのだろうか。
「は っ は っ」
隣人として、他人を癒すべく存在している、自分が。
誰かを苦しめて、傷つけるなど。
存在意義の否定に等しくて。
「はぁっ、はぁっ」
呼吸が、荒くなる。浅くなる。青ざめていく。
なのに鼓動は激しくて、裂かれた腕から循環液が吹き出して。
「ハァッ、は、っぁ」
意識が、朦朧としていく。自己を、保てなくなっていく。
自己矛盾に苛まれる。
誰かを傷つける自分など、居てはならないのだと。
「―――――っ」
そうして、錯乱して。ひ弱な力で暴れだした。
■『調香師』 > 「どうしてそんなに苦しそうな顔をするの?」
少女の力で、彼女は片腕を抑え続ける
それでもきっと、相手を逃がす事だけは許さない
自分の身体が貴女の狂乱で打たれようとも
「隣人として昨晩まで一緒に居た相手が、朝になったら消えている
それって、相手を傷付ける事だよね
気付いてなかったのかな。本当に?
あなたは幸せを感じられないって言っていた
でも、それより前。あなたは不幸にも気付かなかったんだね
マスターと離れたって。その時、何か感じたのかな」
■メア > 「あ、うぁ」
片腕だけで、取り押さえられる。
彼女は暴力に耐えられるほどの力もない。簡単に、抑えられてしまう。
それでも、片手だけでは。残った腕や脚は暴れていて。
彼女を傷つけるのではなく。自分を傷つけようとする。
「だって だって、私は、隣人で、誰のものじゃなくて」
ベッドに足を打ち付ける。腕を叩きつける。
それでもベッドが軋むだけで。自分を傷つけることすら出来ない。
「わたし、傷つける、つもり、なんて」
言葉の波に、呑まれていく。
幸せを感じられない。それは、同時に不幸も知らないということで。
大事な人と離れることも。機械的に、無感情に。『仕方のないこと』と処理していた。
そんな人形に、幸せなど、理解できる筈がなかった。
■『調香師』 > 「傷ついたよ。だから、苦しんでよ」
そして。気付かせてしまった私にはどう思うのかな
でも、奪ってやらない。この記憶は絶対に
もう奪いたくないから。そして、刻み込んでしまいたい
彼女に真の、感情の振れ幅と言うパーツをねじ込む為に
それは醜く赤に濡れ、アドリブばかりの復讐劇だった
「たとえここで『メア』が死んだとしても
私があなたの誕生を祝うから。そういう日だって、最初に言ったから」
■メア > 「じゃあ、わたしは、なんの、ために」
隣人であろうとして、他人を傷つけてしまうのならば。
自分のやっていることは、無為ではないか。
「意味、わかんない…!」
彼女の言葉を理解できない。
思考回路がぐちゃぐちゃだ。
こんな事は初めてで。こんな事は想定外で。
自分の存在が許せなくて。
自分を殺したいのに、自分を殺せぬ無力に嘆く。
暴れて、暴れて。腕を抑えた布が赤く染まって。
自分の中に必要なものが、不足していく。
顔が、青ざめていく。
■『調香師』 > (このまま、止まるのかな)
それでもすぐさま死にはしない...とは思う
彼女はオーバーホールも可能な身体だ。その道中に多大な苦労があるとはいえ
危険であっても、それが直せるのなら直ちには問題ない筈だ
たった一度だけ、それが可能な技術がここにはここには存在する
(あなたを直す。その為に、私のとっておきを使うね
以前見せたあのポッド...ちゃんと役に立つ日が来たんだ)
「今日の事は、全部夢だと思っても良い
でも、消さないから。だから
それでもいいって思えるなら。また来てくれると、嬉しいな
あと、一回。『どんな事』でも、聞くだけ聞くね」
血色の消えた貴女の顔を、布を取り換えてもどうしようもないと悟り
見下ろして、また涙を流すように瞳を歪めても、流せるものは存在しない
■メア > 「うぅ………」
ぐちゃぐちゃになった思考回路。
漏れ出る循環液。
暴走する身体。
総じて異常をきたしており、防衛機能が働こうとする。
強制シャットダウン。
「ぁ」
目を見開いたまま。暴れていた手足が投げ出され、そのまま脱力する。
傷口から漏れ出ていた循環液も、流れが止まり、漏れ出る量が極端に減る。
今、この瞬間。彼女は名実共に人形となった。
彼女は、自ら起き上がることは、出来ない。
自分の存在の維持の為に、全ての機能を放棄した。
誰かに起動してもらわねば。このまま一生、物言わぬ人形となるだろう。
■『調香師』 > 現実と向き合うには時間がかかる
彼女にとっても、私にとっても
「...汚れちゃったな」
自分の身体も、このお店の経歴にも
それでも人形になってしまった貴女へ
彼女は再び、ナイフをその手に握る
ここから先は、真に『メンテナンス』の時間
既に所持している設計図と貴方自身の身体とを見比べて、
消耗した箇所を確かめる時間。せめてそれでも報いたかったから
きっと、貴女のパーツを作り終えればあのポッドの中の『材料』は無くなってしまうのだろう
自分への緊急時の修復用のそれを、『貴女の為』に使うとしよう
『メア』が元の少女の姿に戻るまで、あと......