2021/11/20 のログ
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意) 青垣山」にフィールさんが現れました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意) 青垣山」に黛 薫さんが現れました。
フィーナ > 「よ、っと」
上空から、フィーナが降りてくる。
高いところから、使えそうな場所を探し、目星がついたようだ。

「こっち」

多くは語らず、山を登っていく。一見、浮いていて足を使っていないので楽をしているように見える。

黛 薫 >  
黛薫は無言でその後をついていく。
緊張している?待ち望んでいる?それとも──

ひとつ、確実なことがあるとするならば。
彼女は怯えていて、怖がっていて、恐れていて。
しかし、最早自分の意思では足を止められない。

そういう領域に来ていた。

フィール > 「……此処に来るの、初めてですけど…中々、険しいですね…」
本来の登山ルートを外れて、鬱蒼とした森の中を突き進んでいる。

どうしてフィーナはあれだけスイスイと進んでいけるのだろうか?

その理由は、森のエルフとして、森で過ごしていたが故に、慣れているからなのだが。

フィーナ > 「ここ」
森を抜けた先には…朽ち果てた社と、祠があった。
決して大きなものではないが…確かに此処は霊脈が通っており。

今からすることを考えれば、うってつけの場所だとわかるだろう。

黛 薫 >  
黛薫は元々体力がある方ではない。
しかし、ペースを落とすことなく歩み続ける。
時折木の葉で頰に切り傷を作り、道を拓く手に
枝が刺さって血が出ても、淡々と歩いている。

渇望の果てに手が届く『かもしれない』。
それだけで黛薫の全ては支配され得るのだ。
その歩みに彼女の『意思』があるのかさえ、
今となっては分からない。

祠の前に辿り着いた。

黛薫は無言でフィーナの指示を待っている。

フィーナ > 「さて、まずは準備から…」
そう言って、祠を中心として、予めフィールに持たせていた魔道具を用いて術式を書き上げていく。

術式の構築には、正確な理論、正確な陣が求められる。

それを、フィーナは定規もコンパスも無しに書き上げていっている。

「大まかな流れ、説明するね。

最初にフィール、薫のパスを通して干渉を行う。その後、術式妨害を行い……それでも契約が切れない場合、空間転移にて大本の討伐に向かう。
吸い出す根源がいなくなれば。薫は元の才能に戻れる、ハズ。」

フィール > 「………」
フィーナの手伝いをしながら、固唾を呑む。

今から行うのは、自分が願ってやまなかった、薫の解放だ。

正直、フィーナを解放してここまでトントン拍子でいくとは、思っていなかった。

緊張が、走る。

黛 薫 >  
無言で頷く。その目は何を見ているだろう。
無感情な瞳ではない。しかしその全ては渇望の
果てに塗り潰されて見えない。『欠落』により
行動の、思考の全てを支配される人形のように。

「やろう」

小さく呟いた。感情らしい感情は見えない。

フィーナ > 「…私は、術式の構築に集中します。

二人は、縁の構築を、お願いします」

陣を書き終え、その中心…祠に、杖を立てる。

防護障壁に守られていた宝珠が、開放される。

魔力の見えない者でも、力の奔流を感じられるだろう。

フィール > 「…………」
薫に、目を向ける。

欲情はあるが…それ以上に、心配、極度の緊張がフィールを満たしている。

それでも、薫の様子がいつもと違うのは気付いていて。
「大丈夫?」

そう、問いかけるだろう。

黛 薫 >  
「大丈夫」

見つめ返した黛薫の顔は珍しく笑顔だった。
少なくとも表情は、目は笑っていた。

「やろう」

畳みもせず服を脱ぎ捨てて、地面に放り投げて。
大切にしていたパーカー、いつも丁寧に畳んで
丁寧に扱っていたそれさえも投げ捨てて。

一糸纏わぬ姿で、フィールに手を伸ばした。

「はやく」

フィール > 「………」
異常とも取れる、この変わりよう。
自分は喪失というものを知らない。
欠けることは当たり前だったから。

だから、薫の渇望に、戸惑いを覚える。

「…わかった」
それでも。薫が望むなら、と。自らも服を脱ぎ、ついでに薫の脱いだ服も畳んで、汚れないように置いて。

まず、何をするでもなく、抱きしめようとするだろう。

黛 薫 >  
抱きしめた身体から感じられるのは僅かな震え。
行われるのは自分の根幹、魂にさえ関わる儀式。
失敗した場合の喪失は『死』よりも大きい。

怖くないはずがない。

けれど、黛薫は貴女の腕を掴んで。
抱きしめられたままの姿勢でムードも何もなく
強引に唇を奪った。舌を絡める深い口付け。

『繋がる』ことを何より優先している。

フィール > 「ン、む………っ」
こんなにも、強引な薫を見るのは、初めてだ。

唇を奪われて、舌を絡められて。能動的に、動けない。

薫の顔が、見える。必死さと、恐れと。微かな震えが、薫の心情を読み取らせる。

以前まぐわった時の欲情が、全く無い。

黛 薫 >  
「ぷ、は」

酸素が足りなくなるまで舌を絡めた後、数秒の
息継ぎを挟んでまた唇を塞ぐ。貴女を押し倒し、
身体を重ねて、密着して。

そこに気遣いはない。欲情もない。
ただひたすらに『必死』だった。

理性を、感情を軛に繋ぎ止めていた『渇望』。
本来止めようがないソレを律するために黛薫の
内面はどれだけ擦り減っていただろう。

きっと渇望に身を任せていたら、黛薫はそれこそ
機械のように目的に沿うだけの存在になっていた。
今のように。

フィール > 「…薫」
見ていられなかった。
自分が望んだのは、こんなのではない。

このまま、薫が魔術を取り戻したら、どうなる?
魔術だけに傾倒してしまうのだろうか?
自分を置き去りにして。

「嫌だ」

そう、零して。自分も、薫の唇を強引に奪う。
以前まぐわった時と、同じ動きで。思い出すように。思い出させるように。

以前のまぐわいを思い出して、視線の欲情が、愛欲が、膨れ上がっていく。

黛 薫 >  
『視線』は黛薫に影響を与えていない訳ではない。
微かに身体は汗ばんでいるし、敏感な尖りは固く
なりつつある。

けれど情欲より、他の全てより優先される渇望が
全てを押し流してしまっている。黛薫の欠落は
それほどに大きく、致命的なモノだったから。

「ふ、っ……ぅ……」

涙が流れる。身体を重ねた姿勢で秘部を擦り付ける。
今の黛薫に重要なのは『縁』が繋がっているかだけ。

貴女を蔑ろにしている自覚だってあるだろう。
屋外で服を脱ぎ捨てる羞恥も感じているはず。
これから行われる儀式への恐怖も期待もある。
黛薫はそれだけの感受性を持っているのだから。

その上で、全ての感情が意味を為していない。
フィーナが執り行う『干渉』が実を結ぶか否か、
それ以外の全てが置き去りになっている。

フィール > 「ん、ん………っ」
抱きしめる手を話して、秘部と胸へと手を伸ばす。
出来得る限り、あの夜を思い起こそうとしながら。

そうしながら、頭の片隅で。冷静に、深く繋がる方法も、模索していた。

以前のように、まがい物で繋がっても…肌で触れ合っているのと変わらない。あくまで代替品であり、それは手足と変わりがないから。
と、するならば。
自分の『根源』を、使うほか無いだろう。

それを外に露出することは。
命を晒すことと同義だ。

自分の中で、『自分』の形を変えていく。

黛 薫 >  
黛薫は以前の交合を思い出しているだろうか。
それ以前に彼女の『思考』は生きているだろうか。
秘部に、胸に触れられれば反応は返ってくる。
しかしそれは単なる反射。あの夜とは決定的に
異なっている。

「はやく」「はやく」「はやく」

その言葉はフィールに向けたモノですらない。
儀式の準備を行うフィーナにせっつくように、
泣きそうな声で、血を吐くように。

フィーナ > 「――――――――――」
フィーナは、何かを言祝いでいる。
詠唱している。
構築している。

その身は、刺青に包まれている。
痛々しく刻まれたその黒が…青白く光り輝き始める。

術式の準備は、完了した。だが、まだ縁が、完全ではない。

フィール > 「……っぁ、薫……っ」
こんな、惨めなまぐわいがあるだろうか。
求められているのに。応えてあげたいのに。

その相手に、自分がいない。

「薫」
呼びかける。

「薫…っ」
胸に、秘部に、触れながら。
この先、薫が苦しまないように、慣らしながら。

苦しみながら、薫に呼びかける。

黛 薫 >  
ぐちゅり、重く粘ついた水音が聞こえた。

あの日と同じ、欲情の視線は確かに黛薫の中に
染み込んでいて、その身体を昂らせていて。
優しく慣らそうと触れる指に、待ちきれないと
催促するように吸い付く秘部。

それなのに、やっぱり違う。

身体が跳ねるほどの快楽に戸惑った声も。
羞恥と快楽が入り混じって蕩けそうな表情も。
不安混じりに求めてくる優しい手も今はない。

「う゛、ぅ゛……ぁ……っ」

泣きながら貴女を求めている。
それなのに、黛薫の瞳に貴女は映っていない。

視線が無くても貴女の心の痛みは届いている。
黛薫は性格上、それを気にしないはずがない。
その上で……やはり、彼女の行動は変わらない。

『繋がる』ためだけに、求めている。

フィール > 「う、うぅ………っ」
こんな事、早く終わらせたかった。
こんな辛そうな薫を見たかった訳じゃない。

メリメリ、と。フィールの下腹部から、以前まぐわった時と同じ形のものが生えてくる。

前回と違うのは、それがフィール自身の核だということで。

「…いれ、るよ」
それだけ言って、薫の秘部に自分自身をあてがう。

黛 薫 >  
返事より早く、貴女の『核』は温かい感触に
包まれる。全部が入り切らず奥に突き当たる
その感触もあの日と変わらない。

違うのはあの日より遥かに性急に挿入が行われた点。
そして黛薫が自分からそれを飲み込んだ点だった。

「ぅ、ぁ」

きゅう、と作り出した肉棒が強く締め付けられる。
擦れるだけで快楽に蕩けるほど敏感だった雌孔は
大き過ぎるそれを咥え込み、頭が焼けるほどの
快感を互いに感じさせて。

「は、はっ……ひ、ぃ゛、ぅ゛……!」

絶頂に息を詰まらせ、過呼吸気味に呻きながら
黛薫はとろとろと愛液を垂らしている。

フィール > 「ふっ、ぐ、ぅ」
思わず、身体を逸らせる。
陰核を代替としたときとはまた違った敏感さ。
内蔵を、心臓を、締め付けられているかのような感覚。

でも、止まったら駄目だ。深く、深く、繋がらないと。

腰を、動かして。奥へ、奥へと。突き上げていく。

フィーナ > 「…パスの開通を確認。干渉を開始」
ばちり、と。余剰魔力によって発生した赤い稲妻が、フィーナの肌を撫でる。
祠を中心とした魔法陣が光り出し…フィーナからフィール、フィールから薫、薫から、『何もない』へ。干渉術式が送り込まれていく。

黛 薫 >  
絶頂で力が抜けきっているはずの腰を持ち上げて、
強引に貴女の『核』を擦り上げる。以前の交合も
最後は快楽だけを追い求めて腰を振っていた。

今は近いようで、やっぱり違う。

自分の敏感さ、体力の限界も考慮しない淫らな音。
膣内を擦り、悲鳴のような声を漏らしながら気を
やって、潮を吹いて、それなのに一度の休憩すら
入れずに腰を振っている。

涙を流し、絶頂から降りられずまともに息すら
出来ていないのに、動きを緩めることはなくて。
抱きしめた身体から、締め付けられる肉棒から
感じられるのは黛薫の身体が上げる悲鳴。

「もっと」「もっと」「おねがぃ」

息も絶え絶えに吐き出す言葉は、本当の意味で
彼女の意思から出たモノと言えるのだろうか。

強過ぎる快感で壊れそうに収縮する膣が貴女の
肉棒を締め付けて……『繋がり』をねだっている。

黛 薫 >  
……

…………

……………………

『縁』を伝い、先へ、先へと辿っていく。
『贄』は最も効果的に対象との『縁』を繋ぐ儀式。
黛薫は当然『供儀の対象』と深く結び付いている。

縁を手繰る過程で、儀式の全貌が見えてくる。

結論から言うと、儀式そのものを破綻させるのは
難しい。大規模などという言葉ですら物足りない
連綿たる積み重ねの末に供儀は成り立っていた。

用意されるのは『最上の贄』。
『神秘の行使/抵抗』の縁を絶ってまで作られる
供儀のために特化された人身御供を用いる儀式。

そして、その『供儀体質』は継承されるモノ。
1人捧げれば次に生まれるモノが『贄』となる。
産まれ落ち、育ち、死に至るまでの営み全てが
組み込まれ、いつしか手段と目的が逆転した。

その集落は供儀によって成り立つモノではない。
供儀を成立させるためにその集落が存在する。

産まれる者全て、育つ者全て、死す者全てが
『贄』であり……『供儀体質』を継承する存在、
巫女と呼ぶべき人柱がその『要』である。

フィール > 「っぁ、かお、る、っ」
快楽と、苦しさに身悶えながら、腰を振り続ける。

薫が求めるままに。薫が壊れることも厭わずに。

繋がりを深めようと、奥へ、奥へと。

深く、深く繋がれるように。核が肥大していく。ただでさえ大きいそれが、薫の中を埋め尽くしていく。

蕩けるような快楽と、自分の根幹を締め付けられる苦しみと、薫に認識してもらえない辛さと。

頭が、どうにかなりそうで。
それでも、本能が『孕ませたい』と願っている。

フィーナ > 「縁の探査」
薫の身体は幾つもの縁―――供儀体質を連綿と作り上げてきた実績が、薫を喰らうモノを遠ざけている。

縁のパスを繋いでいく。枝分かれの先を探し出す。


本命をどうにかしなければ、薫は開放されない。

黛 薫 >  
前回の交合では、黛薫は子を孕まなかった。

いつ犯されるか分からない境遇で生にしがみ付く
彼女は避妊に気を使っていたし、それが無くても
極度のストレスと強引な交合に晒され続けた薫の
生殖器が正常に作用しているかどうかも怪しい。

少なくとも、意思を持った生殖細胞が探し回って
卵子を見つけられなかったのは事実。試行回数を
増やさねば断定は出来ないが……現状では黛薫が
子を成すのは難しいかもしれない。

「い゛……っ、ぎ、ぅ゛……っ」

今回の交合は前回と比較して些か無理が大きい。
己の身体も顧みずに繋がりを求める黛薫の執心は
明らかに異常で、それ故に身体の方も耐えきれて
いなくて。

ずぶりと、収まり切らないはずの巨根がぱっくり
沈み込んで……黛薫の子宮の最奥を抉り抜いた。

「ぉ゛……ぁ゛、ぅ゛」

重い絶頂。明らかな異常に頭の中で警鐘が鳴る。
それでも繋がりを手放すまいと、フィールの核を
飲み込むように締め付けた。 ▼

黛 薫 >  
『最上の贄』は既に幾人捧げられているだろう。
どれだけの犠牲を払ってこの儀式は続いてきた?
黛薫──否、その集落で生まれた存在は爪先から
髪の1本に至るまで、全てが儀式に組み込まれて
『贄となるためだけに』生きていた。

気の遠くなるような時間、代替わりを繰り返す
『贄』を飲み込み続けた存在とは、何なのか。
『縁』の先に、それは在る。


──在る、はずだった。『何も無い』。
違う。そうではない。『何も無いが在る』。


最早辿ることすら叶わない供儀の始まり。
それは本当に『無意味』なモノだったのだろう。
きっかけすら不明だが『存在しない何か』へと
『贄』を捧げた。何の意味もなく捧げられた。

贄が捧げられた。捧げられた。捧げられた。

一体何に捧げているかも定められぬままに。
カタチだけの儀式は永く、永く続けられた。
より良い供物を捧げるべく洗練され続けた。
『供儀体質』たる『最上の贄』を捧げても、
産まれる者全てを贄にしてもなお続いた。


黛 薫 >  
それは最早『縁』と呼ぶことすら生温い。

先人の積み重ね、妄念の結晶、執念の紬糸。
その集落で過去に産まれた者全て、これから
産まれる者全ての一生を絞り尽くした大儀式。

それが──『無』の為に行われてきたのだ。

……

…………

……………………

誰かが言った。人と神は何方が先に在ったかと。
神がその権能を振るい、人と世界を作ったのか。
人が願う為、祈る為に神たる概念を生んだのか。

あり得ざる信仰。無意味の、無価値の極地。
その果てに生まれた『何も無い』という偶像。
力を振るいもせず、祈りを受け止めもしない。
『捧げられるため』の、カタチのない『神』。


──それが『とりのこさま』だ。

フィーナ > 「…………………」
つまりは。
そんなものは存在しない。
そんなものはありえない。
ただ、人の妄念が、連なりが生み出した…『空白』。

ギン、と。宝珠が光り輝く。術式が、込められていく。

「方針変更。『縁の断絶』を行います」
フィーナ個人ではこれだけの代物を解くことは出来ず…そして討伐するべき対象も『無い』。

バチリ、バチリ、と。魔力の奔流によって生まれた紫電が走る。

今から行うは、『禁術』だ。人の縁を絶ち、今後一切の関わりを断つという…魔術でも、法術でも、錬金術でもない。

人が扱う術ではない。

それは、神が扱うべき代物で――――フィーナは、それを行おうとしている。

刺青が赤熱する。杖の宝珠がひび割れる音がする。

辛うじて保った杖の宝珠から、フィールを通して、薫へと送り込む。

その繋がりの一切を、切り取らんと。

黛 薫 >  
目的は『黛薫』を儀式から、ひいては
『とりのこさま』の下から切り離すこと。

問題は『黛薫』という存在自体が儀式の一部に
なるためのパーツであり、半端に切り離しても
容易く『道具』として取り戻されてしまうこと。

『何かを求めるなら代償が付き纏う』。
それは他ならぬフィーナが口にした言葉だ。

例えるなら、今の黛薫はバケツ一杯の絵具の中に
溶け出した1色の塊。迫られる選択は『染み』を
許容して全体を掬い取るか、黛薫の一部を削って
出来る限り『染み』を取り除くか。

溶け合っている以上、単純に切り離すでは済まない。

どちらが正解という選択ではない。
しかしそのいずれかを選ばなければならない。

前者を選べば黛薫には『無』の性質が濃く残る。
ソレはいずれ彼女を蝕み、自己を失わせる。

後者を選べば彼女は『自分自身』を取り戻すが
代償に今持っている多くのモノを取り零す。

今、それを選べるのはフィーナだけだ。

フィール > 「う、ぅぁ」
ピストンの動きは止まって、ぐり、ぐり、と。
子宮口を超えて子宮の最奥をえぐるように、押し付ける。

前回のように、射精の真似事は出来ない。
その元は、今薫の中に埋まっているのだから。

生殖本能が叫ぶ。

このまま肚の中で分かれてしまえと。
半身を宿させて苗床にしてしまえと。

頭を降る。そんなことは、出来ない。

フィーナ > 「――――――」
決断は、早かった。
元より彼女は、決死の覚悟だった。

魂を、削ぐ。
雁字搦めとなっている縁の繋がりを、完全に取り除くために。

ビキリ、と。杖の宝珠のヒビが深くなる。

薫の持っているものをできるだけ取りこぼさないよう、細心の注意を払いながら、無に染まってしまった部分を抉り取っていく。

黛 薫 >  
本能に抵抗するフィールとは対照的に、黛薫は
本能のみに突き動かされていた。

『繋がり』が必要で、それ以外は何も要らない。
失われた己の一部を取り戻すことだけを求めて
それ以外の全てを忘れてしまったかのよう。

絶頂に震える膣肉が貴女の核を締め上げる。

大切なのは『繋がっている』という事実であり、
これ以上繋がりを深めても目的には沿わない。
それなのにもっと深く、もっと強く繋がろうと
締め付け、ねだって、震えている。

そのためなら、苗床にされても構わないと。
『黛薫』の意思に反して身体が動いている。


黛 薫 >  
抵抗はない。その行いを咎める者もいない。
溶け合った魂は切り離され、深く結びついた
妄念は解けて黛薫から離れていく。

『とりのこさま』は『無』でしかないのだから、
その行いを止めることなど出来やしない。


──時に。ある国では『八百万の神』という
概念がある。万物には神が宿るという教え。
木の葉の一枚、米の一粒に至るまで『神』が
宿り……敬い、感謝して生きるのだと。

万物には『神』たる『心』があるのだと。


黛 薫 >  
 
"ごめんね" "いかないで" "さようなら"
 
 

黛 薫 >  
──『縁』の切断は、完遂された。

聞こえた声、寂しげな感情は錯覚だろうか。
『無』が何かを成すなど大いなる矛盾でしかない。
妥当な線を挙げるなら、贄として捧げられた者の
残留思念辺り……の、はずだ。

てん、てんと鞠をつくような音がした。

『何もない』色の着物をその身に纏った幼子が
黛薫の頭を撫でて、消えていった。

そんな事象は──『無かった』に決まっている。


黛薫は生まれたままの姿で気を失っていた。

彼女が何を取り零し、何を失ったかまでは
まだ分からないけれど、ひとつ確かなことがある。

願いは、果たされた。

フィーナ > 「――――――っ、はぁっ!」
ばきん!と。息を吐いた瞬間、杖の先端の宝珠が砕けた。

「はぁっ、は――――」
身体を支えられず、尻もちをつき、そのまま倒れる。

血が、巡る。横隔膜がせわしなく動き、肺に空気を送り込む。

禁術を使っている間、生命維持の一切の機能を遮断していた。

それほどまでに集中せねばならず…それでも、薫には後遺症が残るかもしれない。

「………まったく、気分が、悪い」

息も絶え絶えに。倒れたまま、そう呟いた。

フィール > 「は、ぁ…っ」
薫が気を失って、術式が終わったことを確認して。

「薫…薫?」
繋がったまま、薫に呼びかける。

黛 薫 >  
黛薫は気を失っている。
……しかし本当にそれだけだろうか。

貴女の半身を食い千切りそうなほど締め付けた
膣は緩んで、離すまいと掴んでいた手も力が
抜けてしまっていた。

顔色が青い。

呼吸はしている。しかし浅く、弱い。
力を使い果たしてしまったから?

違う。きっとフィールなら気付けるだろう。
生命活動すら魔術に依存せざるを得なかった
フィーナを苗床として飼い殺し、その身体の
反応を誰よりよく知っているフィールなら。

『今の黛薫には自力で活動する力がない』。

全てを魔術に依存するフィーナほど重症では
ないにせよ、状況としては近しいと言える。

フィール > 「……!」
青くなってしまった顔を見て、自分まで青ざめそうになる。
まず自分の半身を引き抜き、薫を仰向けに寝かせる。

そして、そのまま薫の口を咥え込み、息を吹きこむ。
青い顔が戻るまで、何度も、何度も。
時には鼓動も確認して、弱ければマッサージをする。

今、処置しなければ。脳にダメージが入るかもしれない。

黛 薫 >  
生きている。黛薫は確かに生きている。

処置の速さが功を奏して、ダメージも最低限に
抑えられた。少なくともこれ以降『欠落』には
悩まされずに済むだろう。

気が遠くなるほどの大規模な儀式からの切断。
『神』足り得る存在の贄となる祭壇の上から
引きずり下ろすために必要な代償。

フィーナが行使した禁術の反動、割れた杖の宝珠を
見ても黛薫が支払い、削り落とされた魂の大きさは
想像出来ようというもの。

現状の黛薫の様子から鑑みて、分かりやすく
残りそうな後遺症は身体機能の低下だろうか。
それだけで済むかは不明だが……その点だけに
限れば魔術の修練で補填が効くかもしれない。
何せこの場に『前例』もいるのだし。

それ以上のことは追々探っていくしかない。
黛薫の願いが叶ったのは確かなのだから。

……黛薫は、眠っている。
少しだけ苦しそうで、しかし穏やかな寝顔だった。