2021/11/21 のログ
■フィール > 「……はぁ……」
薫の寝顔が穏やかになって、漸く一息つく。
とりあえず、身体を冷やさないよう薫の服を掛け……それでも足りないような気がしたので自分の服も被せる。
「成功…したんですよね?」
フィーナに、問いかける。
■フィーナ > 「……それは、薫が目を覚まして、実際に確認しなければ、わかりません。
予定を大きく変更して、薫の魂を削ぐ結果になりました。
ただ―――――薫を苦しめていた連なりは、これで除けたと…思います。」
宝珠のなくなった杖を拾い上げ、ふよりと浮く。
近くに生えた木に近づき……そこに生る実を採り、口に含む。
今回は相当に魔力を使用した。殆ど動いてはいないが…疲労困憊であった。
■黛 薫 >
……
…………
……………………
黛薫が目を覚ますにはかなりの時間を要する。
この場で待機するか、一度寮に連れ帰るかは
2人の判断に委ねられる。或いは後遺症が残る
前提で病院に運び込むのも有りか。
■フィーナ > 「…とりあえず、一旦休む。体力、使い果たした」
木に持たれて、木の実をかじりながら。
フィーナの魔力は膨大といえど、今回は消耗しすぎた。
栄養を補給しながら、薫がおきてくるのを待つ構えだ。
■フィール > 「…私も、休むことにします」
薫が寝ている横で、座り込んで。
いつ、何が起こっても良いように。
薫が起きて、錯乱しないとも限らない。
なら、部屋の中にいるよりは、此処に居るほうがマシだろう。
そういえば、供儀体質の象徴であった、甘い香りは、どうなったのだろうか。
■黛 薫 >
『捧げるべき対象』が失われた現状、黛薫は再び
『贄』として使える状態になっている。しかし
本来の目的たる『儀式』からは既に切り離された。
その上で『使われる側』の立場を固着するために
絶たれていた『神秘の行使との縁』は取り戻した。
結果、甘い香りの誘引力は収支でプラスマイナス
ゼロといった具合。しかし供儀の対象が失われた
現状、その甘露は『誰の物でも無くなった』。
つまり『美味しそうに薫るだけで食べても旨みが
ない罠』から『実際に美味しく頂けるご馳走』に
ランクアップしている。
「……ん、ぅ」
黛薫が目を覚ます頃には随分時間が経っていた。
もしかしたら日が昇っているかもしれない。
「……あーし、どーなった?」
掠れ声で囁く言葉は少しだけ発音が曖昧だ。
満足に口を動かすだけの身体能力も残っているか
怪しいかもしれない。
■フィーナ > 「…取り敢えず、原因の縁を断つことには成功。
その際に、貴方の魂の一部を削いだ……」
ゴソゴソと、懐から魔法陣が描かれた羊皮紙…つまりは、スクロールを取り出す。
「自分で、確かめてみて。」
それを、薫に渡す。
■フィール > 「………」
薫を支えながら、固唾を呑んで、見守る。
■黛 薫 >
身体が動かない。手で受け取ることは出来ず、
身体の上に置いてもらう形になるだろうか。
目を閉じて、浅く呼吸を繰り返す。
知っているだけで実感したことのなかった感覚。
『魔力』の流れを感じて、スクロールに込めて。
それは、拙い魔力の流れだった。
スクロールの起動に必要な量をギリギリ満たす
微かな魔力の流れは、確かに生まれていて。
「ぁ」 「ぅ」
気付けば、視界が滲んでいた。泣いていた。
どれだけ望んでも手に入らなかったモノが、
自分の中にあると気付いた。
■フィール > 「…良かった……!」
薫を、抱きしめる。
長い、長い、道のりだった。
最初は、利害関係で。薫を喰らうためで。
それがいつしか、純粋に薫のことを想うようになって。
その想いが、恋だと知って。
その想い人が、報われて。
こんなに、嬉しいことは、ない。
「よかった、本当に、良かった…!」
気付けば、薫に負けないぐらい、涙を零していた。
■黛 薫 >
「は、ぁっ」
スクロールに刻まれていたのはどんな術式だろう。
発動に必要な分だけの魔力だけ注いで、力を抜く。
たったそれだけで息が上がってしまっていた。
息を吸って吐くだけがこんなに苦しかったろうか。
身体は指先に至るまで全く力が入ってくれなくて、
ぴくりとも動かせやしない。
それでも、十分だと思った。
生まれて初めての『魔術』の発動を見届けよう。
例え、涙で滲んで見えなくても。
■フィール > ぽん、と。火の玉が、打ち上がる。
そして、それが、パン、と。花開いた。
薫の事を祝うような、小さな花火。
それが、薫の行使した魔術であった。
■黛 薫 >
「あぁ」 「キレィだ」
噛み締めるように呟いて、浅く息を吸う。
煌めく火の粉が散り、消えて、見えなくなるまで。
今の感情を焼き付けるように、空を見上げていた。
「ありがと」 「フィールも、フィーナも」
首を横に倒すことも出来ず顔を見てのお礼すら
言えなかったけれど……感謝だけは伝えたくて。
締まらないな、なんて呟いて喉の奥で笑った。
「あーし、夢が叶ったらフィールに食われるって
思ってたけぉ……どーする?前に似たよーな話
したっけ?頭、ふわふわしてて、思ぃ出せなぃ」
■フィーナ > 「どういたしまして。魔力については…今体力が落ちてるのも原因だから。
元気になって、魔力錬成に慣れたら多分ちゃんとした術式も使えるようになるともう。」
そう言って、木の実を枝から採り、薫へ渡す。
■フィール > 「私は…絶対に、食べない。薫が望まない限りは。」
抱きしめたまま、宣言する。
自分の意思では、絶対に食べないと。
甘い香りは、フィールにとってもはや別の情念に置き換えられている。
それは、愛欲だ。薫を愛したいという欲だ。
そして、安心して、気が抜けて………お預けになっていた欲求がぶり返してくる。
生殖本能だ。薫を孕ませて種を残したいという。
「……でも。別の意味なら、食べたい。けど……先に、身体、診ないと」
頭を振って、情欲をかき消そうとする。でも、うまくいかない。
薫にはもう、そんな体力は残っていないというのに。
■黛 薫 >
「んぅ」
せめて手は動かせないと色々みっともないな、
とか考えつつ木の実を口で受け取っている。
飲み込むにも1回誤嚥しそうになっているし、
回復すればマシになるのだろうかと考えたり。
「……フィールもなんつーか、素直になったよな。
あーしが回復してからなら相手くらぃするし、
もしガマン出来そーになかったら使ってくれて
構わなぃから。恩返しにゃ足んねーけぉ」
ひとつ大きな区切りが付いたとはいえ、黛薫の
内面は変わっていない。相変わらず『使われる』
行為への抵抗は薄く、自分を蔑ろにする行いには
鈍いままだ。
甘露としての性質を取り戻した現状、『苗床』に
使うなら黛薫はこれ以上ないほどの逸材だろう。
正しく子を成したいなら相当な根気が必要……
それでも上手くいくかは五分五分かもしれないが。
当人は宿願叶った高揚で気にしていないものの、
ついさっきまで交わっていたから(服は被せられて
いるが)一糸纏わぬ姿、挿入が行われていた秘部も
美味しそうにほぐれている。誘っているつもりは
ないはずだが、甘い香りも相まってやはり彼女は
『ご馳走』なのだと意識せざるを得ない。
■フィール > 「…使うのは、嫌。」
それは、相手の意思を、無視する行為で。
薫と共に在りたいフィールにとっては嫌なことだ。
でも、薫から香ってくる甘い香りと、メスの匂い。
未だ出たままの、自分の核。
情欲は、膨れるばかりで。
「ねぇ、薫」
抱きしめたまま、自分の核を擦り付けている。
「私、此処に、自分を埋め込みたい。自分だけのものにしたい。」
抱きしめたまま、下腹部…子宮の位置を、撫でる。
「此処に、私の半分を、埋め込んだら。
きっと、人間の子は、産めなくなる。私の子しか、産めなくなる。
私は、そうしたい。薫との子を、作りたい。
駄目なら、駄目って、言って。そしたら、諦めるから。」
懇願するように、言う。
■黛 薫 >
思案する。子供を産むとか、欲しいかどうかとか
考えたこともなかった。結婚も出来ない年齢だし。
「……別に、産めなくなるコト自体はイィけぉ。
つーか産めてもなんか……子供に申し訳なぃ
みたぃな気になっちまぅだろーから。
ただ……単純に、子供育ててく自信がなぃ。
幸せに出来なぃのに産むのは無責任だと思ぅ。
でも、フィールが真剣なのに今の感情だけで
拒否るのも……それはそれで違ぅ気ぃする」
少し長く話すだけでも簡単に息は上がってしまう。
ゆっくり、浅く呼吸を整えてからまた口を開いた。
「あーしがこれから前向けるよーになって。
胸張って生きられるよーになったら……
そんときは……考えてもイィかなって感じ」
「つか、あーしのカラダがどんくらいダメージ
受けてっか分かんなぃし……子供を孕んだり
産んだりに耐えられるかがまず壁な気ぃする」
■フィール > 「……うん、わかった。じゃあ、我慢する」
そう言って、自らの核を、身体の中に埋めていく。
「薫が言ってることは、正しいと、思う。人間の社会じゃ、子供を育てるっていうのは、大変なんだろうし。
だから、一緒に、前を向けるように。付き添っていきたい。
今日、一歩。進めたんだから。
これから、一歩ずつ。一緒に、歩んでいきたい」
■黛 薫 >
「……」「…………」「………………」
「もしかしてあーし、外堀埋められてます……?」
フィールは人に仇成す怪異から人に近付いて。
自分は切望しつづけた魔術の素養を取り戻して。
確実に前に進んでいる……のは良いのだけれど。
立ち止まってばかりの自分に反してフィールは
どんどん先へ先へと進んでいるような気がして。
未だに恋愛感情すらはっきり理解できない黛薫は
一抹の不安を覚えないでもないのだった。
「あと、もー何か色々尽力してもらった後で
頼み事すんのもしょーじき気が引けるけぉ。
あーし、マジで力入んなくて動けないから
帰るとき運んでもらってイィ……?」
もちろん黛薫当人に悪気なんて無いのだが。
魔術を使うならともかく、物理的に運ぶ場合は
甘露の香りや彼女の体温を1番近くで感じる羽目に
なる訳で。実質的なおあずけを宣言した直後の
頼みとしては割と酷である。
■フィール > 「……外堀ってなに?」
外堀が何かを知らなかったフィール。
ただ本心を話していただけだった。
フィールは本心を隠すことはしない。特に親しくしている間柄に対しては。
悪意ある相手には辛辣ではあるが………悪意のない相手に対しては、とことん無防備になっている。
絆された、といえば、聞こえは良いが。
「ん、わかった。他に何か、気になることはない?」
薫に服を着せて、自分も服を着ながら、聞く。
流石に裸で背負う、ということはしない。
結果として薫を背負っても服が間に挟まったが…………それでも、情欲の感情は膨れるばかりだった。
■黛 薫 >
「いぁー……無意識でやってんならフィールって
やっぱ賢ぃんだなーって思っただけ。
気になるコト……全身がだるくて動かなぃのと
疲労で頭がふわふわしてんので何も分からん」
服越しに伝わる体温はやや熱い。
初冬に屋外で服を脱いだり濡れたりしたので
明日あたり風邪を引いていてもおかしくない。
痩せ細った身体は骨の感触が感じられるが、
辛うじて……本当に僅かながら女の子らしい
胸部の膨らみも実感できるかもしれない。
自分の状態を把握するほどの体力も残っては
いないし、帰ってから改めて後遺症を含めた
診察が必要になるだろう。
▼
■黛 薫 >
一通り診察する場合、黛薫の状態はお世辞にも
芳しいとは言えないと分かる。ただでさえ呪いの
権化たるクロとの接触で傷付いていた魂を更に
削り落としたのだから無理もないのだが。
まず、先の見立て通り分かりやすくダメージが
入っているのは身体機能だ。『魔術の素養』を
取り戻すのが1つの目標だった以上、その点を
出来る限り残しつつ掬い上げようとすれば
当然対極となる物理的な部分は守りきれない。
幸い不随とまでは行かなかったが、自立歩行を
はじめ、運動機能に関してはほぼ失われたと見て
差し支えない。リハビリで改善が見込めるかは
試してみないと分からない。
次に、彼女の本質を掬い上げるためとはいえど
『魂』を大きく削り落としたのは事実である。
従って呪術など、魂にダメージを与えるような
手段に関しては極端に弱くなってしまっている。
下手をすれば弱い呪いでも致命傷になりかねない。
最後に取り戻した魔術の素養についてだが……
『切り離す』上での概念的な接触面になっていた
お陰もあり、無傷で取り戻せたとは言い難い。
担当したのがフィーナでなければ『魔術の行使は
出来るけれど素養は下の下』になっていたところ、
辛うじて努力でカバーできる範囲に収まっている。
失われたモノはあまりに大きく見えるが……
本人的には満足のいく結果だったと見える。
笑うのは上手でないが、今まで見せた物と
比較すれば1番の晴れやかな表情だ。
■フィーナ > 「…まぁ、私が判断した手前、私も面倒見る」
そう言って、ふよりと浮いて、フィールと薫の横につく。
「まずは身体操作のレクチャー。資料、纏めておく」
取り敢えずで必要そうな魔術をピックアップする。
身体操作は制御こそ難しいものの、操作するのが自分の体である手前、消費する魔力は少なくて済む。
そして、自分の身体を動かすので…魔術を扱う経験を積みながら、リハビリができるという一石二鳥である。
今回、失ったものは多い。それでも、『取り返しがつかない』程ではない。
失った分は、取り戻していけばいい。
■フィール > 「…とにかく、帰りましょう。もう日も昇っちゃいましたし。ゆっくり休んで、ご飯食べて。元気になりましょう」
そう言って、帰路へつく。
フィーナは一度帰り、資料と……身体操作術式を行うための魔術刻印が刻まれたタトゥーシールを持ってきてくれた。
使うかどうかは、薫次第だ。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意) 青垣山」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意) 青垣山」からフィールさんが去りました。