2022/01/15 のログ
■ノア >
鉄のボルトで頭蓋を穿ち、焔のボルトで苗床を焼き。
自分の殺めた命の前に、膝をつく。
ただ、謝罪の言葉と鎮魂の祈りを捧げる為に。
救える命では無いと知っていて、捨て置けば誰かの命を殺めかねないと知っている。
それならば、怨嗟の声が聴こえようと。ありえたはずの平和な日常を見せられようとも、手折る必要がそこにはあった。
添えた鎮魂の言葉で許されるなどと思っていない。
「――どうか、安らかに」
己で殺めた命に対して、安らかであって欲しいと願う矛盾めいた光景。
葬る命の数だけ、心は削れる。
だからこそ狂わないように、違わぬように。
■ノア >
樹木に寄生した物を3つ、完全に苗床と化した者を2つ。
それらを燃やしたところで、ウェストポーチの中に拵えた焼夷榴弾の残数が気になり始める。
帰りの道中を丸腰で出歩くような真似もできない。
それに、万が一にもヘマした時に誰かの手を借りるのも気が引ける。
「……さて、いっぺん仕切り直したとして
今回散らした道中がどんだけ綺麗なままでいてくれるやら」
大がかりな編隊に混じって人探しなんざさせてもらえる訳も無く、
かといって装備も薄くなった状態で一人死地の中を歩き回れる道理も無い。
「無事だと良いんだが」
祈るのは捜索対象の無事。
この道中でそれを願う事がいかに愚かな事かを知りながらも、
結果をその眼で認めるまでは、ただ無事を祈る。
「次来るときはもちっと火種増やして来るか」
撤退、物資も人手も無い単独行軍など長く続く訳も無い。
回数を重ねて、安全なルートを確保して目的にたどり着くまで何度でも繰り返すだけ。
有志の手でバリケードの内部にシェルター紛いの物を作っている人も居るという。
もしかすると、捜し人もその内に身を寄せているかもしれない。
「おっさんに装備のアテでも聞いてみっかね……」
ぼやきながらパルクールの要領で駆けるビルの上。
自分で慣らした仮初の通行ルートは地面を歩くよりはよっぽど安全ではあった。
厳重に管理された出入口の手前、ビルを降りる前にチラリと振り返る。
遥か彼方、捜し人の足跡が地獄の内へ内へと続いている気がして。
黒い人影はまた一つ、ため息を零した。
ご案内:「落第街 閉鎖区画」からノアさんが去りました。