2022/04/08 のログ
ご案内:「◆『蟠桃会』拠点 収容区画」に『調香師』さんが現れました。
『調香師』 > 『こっちだよ。こっち』

肉咲き血飛く戦場の中。その裏方で風紀委員が救命活動を続ける陰に隠れて、一見誰にも導かれる様子もなく歩く人の列がある

誰にも記憶されない、誘いの声の主。銀より白く、蜜より甘い香り芳すその少女の姿は……

『調香師』 > (心地の良さと心地の悪さ。その両方が同居するお仕事だね)

出口を目指しながら、そう内心思う
久し振り彼からの、組織としての『お仕事』

---悪いことはしたくないよ---
彼女からの前置きは無事に肯定される事となる
その内容。正しく『人助け』。違法部活に収容された人間を陸上に逃がせという

---彼処は近い内に壊滅する。ヤバいブツの噂もあるが、今欲しいのはそっちじゃない---
表側としては壊滅的被害を受けたとされる組織『蜥蜴』
捨てた尻尾は胴まで食い込んでも尚、生きている。死に体ながらも、心臓は動く
今求めているものは生きた血、生きた手足、即ちの人材

『調香師』 > 人を攫うの?それじゃあやっぱり悪いこと
彼はその気持ちを読んでいたように、笑い声を漏らしていた

---人を攫うってのは、手間だ。今回は、そうはしない---
『帰るべき場所がある者は帰せばいい』、その時はその言葉の意味を理解してはいなかったが

(確かに。私の想定以上、たくさんの人がここに居た)

後ろを振り返れば、その数は両手なんとか足りるほど
『芳香』で誘える人数だが、まだまだ人は残されている。風紀委員の彼らの仕事は尽きない

「ふふっ」

人の命を救うお仕事。それが私の出来ること
機嫌の良さの所以は分かりやすい。乗せられたと分かっていても、『誰かの為』なら私は喜んで事を為す

ご機嫌な歩みの中、分かれ道で列は止まる
甘く、獲物を誘わんと誘う蜜、それでも隠せない獰猛な牙の湿り息、重厚な
血の赤を思わせる鉄の臭い

『調香師』 > 『次はこっち、だよ』

危険に近づく前に遠ざかる。精密な機械は誤らない、私には出来る
彼の人選は、それを踏まえたものだったのだろうか

そうであって欲しい想いとそうでない想いは半々

(常に判別し続けて、私の嫌な臭いも濃い
 分かってたなら、本当にひどい人)

機嫌が悪い所以はそこに。嗅覚を頼りに物を避けるには、不愉快なノイズが多すぎる
自身の過去をも想起させるより、遥かに濃く。四肢に軋みを幻覚させる

(……早く帰りたいなぁ。帰したいなぁ)

自身のちぐはぐな心も、帰結点が同じなのは都合が良かったのだろう
地上まであと少し。ほら、明かりが見えてきて……

『調香師』 > 以降の話は、無事に『帰ってこれた人間』の証言なのだろう

曰く、
『懐かしい香りを追うといつの間にか外に出ていた。帰ろうと思った所で、待機していた風紀委員の人達に保護をされた』と


それでは、『帰る場所のない彼ら』は一体何処へ

暗中の日々に心も暗く染まり、寄る辺のない彼らへと、『言葉』を届けられる誰かが近くに居たのでしょう。『妖精』が知っているのは、そこまで

ご案内:「◆『蟠桃会』拠点 収容区画」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「◆『蟠桃会』拠点 収容区画(過激描写注意)」に藤白 真夜さんが現れました。
藤白 真夜 >  
 植物、生物、……人間。
 全てを混ぜ合わせ、掛け合わせる実験のすえ。
 その“材料”も、出来上がった失敗作も成功作も、それらを収容する、檻。その区画。
 その全て──とはいかなくとも、その一角は痛いほどの静寂に包まれていた。
 何処かで誰かが誰かを救うために放つ銃弾の響きも、爆発音も、“無かった筈”の懐かしい香りも、そこには届かない。
 ……ただ、噎せるような血の香りが漂っていた。

 いくつかの檻は内から破られ、あるいは何かに切り刻まれていた。
 天井や壁もそれに近しい。
 何かに殴られたように砕け、血が飛び散り、切り傷の跡が。
 
 床には一面に、血が溢れ出ていた。
 墓標めいた赤い刀や槍が何本も刺さり、幾年も経ったかのように赤い砂へとちりちりと崩れ落ちていく。

 溢れた血の海と、赤い墓標。
 ──その中心。

 赤黒い花が、群れるように咲いていた。
 それは紛れもなく、“闘争の種子”の芽吹いた花だった。
 血の海から顔を出すそれらは、どこか病んで生気が無い。……それも当然、死と呪いを孕むソレから芽吹く命など無いのだから。

 それらの花に囲まれるように、一人の女が倒れている。……眠っていると表現したほうが正しいかもしれない。
 溢れる血の中央に倒れながら、しかし寝顔は安らかだった。
 服はもうボロボロで、しかし露わになった素肌に傷は一つもない。
 悪趣味な眠り姫のようでいて、しかし──致命的な結果がそこには在った。

 女の胸元に、赤黒い花が根付いていた。
 やはりどこか病んだ花で、しかし……間違いなく寄生の根を巡らせている。
 すぐさま意識を乗っ取られてもおかしくないそれを、けれど……開いた女の目はいつも通りに、赤く煌めいていた。

「あー……。
 ……私の負けかー」

 言葉とは裏腹に、何かをやりきったかのような満足気な響きとともに、目を覚ました。

藤白 真夜 >  
 さて、私は記憶力が悪い。
 何時間戦い──殺しつづけただろうか。
 1時間では無かっただろう。もしかしたら、深夜を回る頃合いだったかもしれない。

 その間──ずっと、寄生体と殺し合いを続けていた。“文字通り”に、お互いに殺すことを。

 死に近づけば近づくほど、私のカラダは、要素は、死を孕んだモノを載せられる。
 どこぞの死神のような死の概念は発揮できなくとも、命そのものである寄生体の根を斬り殺す手段は用意できた。
 植え付けられる種は死に満ちた血で誤魔化し、どうにもならないモノは聖火で燃やす。
 我が身という矛と盾がある。
 あとはそれらと、延々と殺し合っただけ。
 何体、何人、数えはしなかった。
 何度殴り殺され、何度はらわたをえぐり取られ、何度頭が潰れたかも覚えていない。
 私は死ぬと記憶が飛びがちなのだ。

 ただ──最終的に、私が殺しきった。それは覚えている。
 が……その結果が、これだった。

 胸元に、確かに闘争の種子が根付いている。
 どこか弱弱しいが、確かに頭の中身が赤く染まっていくのを確かに、感じる。

(……あいつらも結構弱ってたってことかな……)

 負け惜しみのように、そう断じる。もっと一瞬で寄生を済ませる種も居たはずだった。
 ……しかし、弱弱しくとも、確実に根が植わっている。
 この種を植えたのは、あの“観察”していた個体だ。
 でないと、私の血に種は植わらない。あの観察が、“血も私だ”と認識させたのだろう。
 ……見てるだけなんて侮らずにさっさと殺しときゃよかったんだけど。

(……聖水、もう無いし、火力も足りない。
 切り取るには、遅いし、死ぬのがしんどい。
 “契約”は、……この状況じゃ成功しないし、命も足りない。
 …………詰んだ)

 血の海に沈んだまま、状況を分析した。詰んでいる。
 死と違い、寄生による乗っ取りは私の消滅を意味する。
 ……それでも、どこかすっきりしたような表情は変わることはなかった。

ご案内:「◆『蟠桃会』拠点 収容区画(過激描写注意)」に神樹椎苗さんが現れました。
藤白 真夜 >  
 明らかに限界だった。
 私はそもそも、死──生命への致命的な損傷からの復帰という意味で──を、3回も迎えると限界が来る。
 真夜なら話は別だけど、私はそういう意味で脆い。
 すぐに意識が飛ぶ、弱い人格。
 記憶領域では上位だが、肉体としては居候に近い。9割以上が真夜のモノだから。

 それを、何回死んだだろう。
 明らかに限界を超えた死と再生。
 死に近づく呪いと、異能の限界行使。
 幾たびかの燃焼──、完全に“燃料切れ”だ。
 そこに花の寄生と来た。

(死に思いっきり近づいておけば寄生しきれず枯れないかなー……無理かなー……。
 ……ま、いっか。
 暴力に囚われて不死のカラダで暴れまわるのとか、考えてみれば私に相応しい。
 ……あー、でも異能使えないとすぐ死ぬのかなー……)

 自らの行く末に、思わず苦笑した。
 ……でも、それでいい。そのために、こいつらと殺し合いに来たのだから。
 単一の生命としては私が上かもしれない。
 でも、増え、繁殖するという意味で、私を上回った。
 私の負け。
 その結果に、私が消えるというムカつきはあっても後悔は無い。
 それは、“正しい死”なのだから。

(……どうせ死ぬなら、正しく、死なないと、ね……)

 ここに来ているであろう者。
 ここに来るまでに出会った者。
 無事は祈らない。
 ただ……それらが、正しく在れていることを……考えていた。

神樹椎苗 >  
 
 ――カサカサ

 虫が這いまわるような音が、倒れ伏した少女の聴覚を刺激するだろう。
 まるで、少女の自意識が失われないよう刺激するように、しつこく、忙しなく。
 小さな『種』から足のように根を生やしたソレは、少女の目の前まで歩いていって、その頬を足先でつつこうとする。

 ――カサカサ――トン、トン

 そんな『種』の忙しない音に混ざって、とても軽い足音が響く。
 その足音は、すぐに血の海に浸って、粘質な音を立て始めた。

『――魂の色が消え始めている。
 これでは送る事もままならんぞ』

「まあ、これだけ意地を張ってまだ消えてねーんですから、大したもんでしょう。
 消えてなければ、手がない訳じゃねーですしね」

 その粘質な足音は一組。
 けれど少女に聞こえる声は、低く中性的な静かな声と、子供らしく高いけれど抑揚の少ない声の二つ。

 ――カサカサ、ぴちゃり。

 その足音は少女の顔の前で止まると、血の中に膝をついて、少女の顔をのぞき込む。

「――意地っ張りの強情娘、まだ自我は生きてますね?」

 見下ろすのは幼い子供の顔と――黒い霧に隠れた黒いフードの姿。
 子供――椎苗の左手は、倒れる少女の頬に、ゆっくりと伸ばされる。
 

藤白 真夜 >  
 私の血に触れるものは、全て解る。
 つい、先程までの死闘のクセで反射で刃を作りそうになって、作れなかった。
 何より、それはひどく小さい。

(……虫に集られるのだけは勘弁してほしいなー……)

 嫌な想像に、しかし予想は裏切られる。お出迎え、という意味合いでは似ていたかもしれなかったが。
 声は聞こえるのに、私の感じるものは虫みたいな何かとチビの足だけ。
 
 意識はある。
 目も開いた。……ロクでもないモノを見た気がする。
 ──が、そんなことより。
 “種子”に植え付けられた暴力的な感情は、意味を為さない。
 私の根幹は元から暴力に似たもので出来ている。
 その、私の根幹が訴えている。

(──コイツ、殺していいな)

 幼いその手が触れる前に、声が応えた。

「触らないで」

 言葉と共に、赤い海から細長く──線が上に伸びた。
 それは、蛇だ。
 幾筋もの蛇が血の海から立ち上がり、その伸ばされた手を見つめている。

「あと、あんまり近づきすぎないでね。
 ……そんな、生きてるのか死んでるのかもわかんない有り様で。
 自我も吹っ飛んで殺しちゃうよ?」

 そういう自分は、体も起こせず少女のほうを見つめていた。
 流し込まれる暴力的感情よりも、“殺していい”相手への誘惑を堪えながら。
 確かに、自我の残った瞳で。
 

神樹椎苗 >  
 
「――ふむ、思ったよりも元気そうでなによりです」

 血で編まれた蛇には、さほど気に留める事もなく。
 椎苗は両膝をついて少女に近づく。
 すぐに触れられるほどに近くまで。

「構いませんよ。
 しいを何度か殺せば、それでも落ち着くでしょう。
 特に、ソレに寄生されてる今なら、しいの血とも相性がよくなってるでしょうしね」

 『種子』が持つ植物としての性質。
 それが少女の身体と混ざりだしている今の状態なら、椎苗の血は非常に甘美なモノとなるだろう。
 それこそ弱った身体も満たされるくらいには。

「一応、見ての通り害意はねーです。
 『業務』中に死にかけてるやつを見つけましたから、手を貸してやろうと思っただけです。
 ――余計なお世話、でもねーでしょう?」

 そう言いながら、しっかりと力の残っている瞳を覗き返す。
 黒い影はその後ろに佇みながら、じっと二人を見下ろしていた。
 

藤白 真夜 >  
 その小柄な少女を見る瞳は一瞬赤く煌めき、……しかし視線はふと外れた。
 今度は確かに、黒い影を見つめる。

(うーん……。
 殺していい都合の良い血液パックと見るべきか。
 真夜の感じた類似性を見るべきか。
 ……“格上”と見るべきかな)

 真夜との邂逅を通して、私もヴェールを通したかのように霞んではいるけれど、このチビを覚えている。
 あの頑固な真夜の意識をほぐしたのも、死を見送る御業を見せたのも、感謝はしている。
 でないとここで暴れられてなかったし。
 が──

「生意気ながきんちょねアナタ……。
 殺せば、なんて言われたら殺したくなくなるの。そそらないし。
 どーせ血もびみょーな味に違いないわー」

 不機嫌そうに目をとがらせて、おチビちゃんを見つめた。ふざけるように言葉を投げつけ……。
 ……それでも、その目の奥底に赤い願望は秘めたまま。

 ……ただでさえ、“殺しても死なない”予感のするものは殺したくなる。コイツには、その確信がある。
 その誘惑と、寄生された暴力の感情を堪えるのは、難しかった。小さく口元が歪む。しかし、それは皮肉るような笑みになった。

「……業務? あなた、特殊清掃の仕事でもやってるの? そのチビっぷりで?」
 
 その歳で?と言いたかったらしい。しかしこの生意気チビにはこれくらいでいいのだ。

「死にかけとは失礼ね。アンタのほうがよっぽど死んでそうなんだけど?
 ……まあ、いっそトドメでも刺してもらったら此処じゃない“濃い”所に飛ぶから助かるんだけど──」

 黒い影に目を向けた。
 ……コイツに殺されるのは洒落にならない。しかも余力があるならともかく、今。

「……“殺し”に来たわけ?
 言っとくけど私、あの花に殺されるの。その邪魔はしないでよね。今気分良く──よくはないけど、ちょっと寝転んでただけなんだから。
 それに──私“たち”に、死神に手繰れる運命が有ると思わないことね」

 その陰を見る瞳には、意思が宿っていた。……有体に言うと、コイツには負けないという、負け惜しみのような何かが。地べたに寝転がったまま。下からなのに上から目線で。