2024/06/15 のログ
Dr.イーリス > 不良D「痛い目みせてやるぞ……!」
不良B「今に思い知らせてやる……!」

先生に今にも殴りかかろうとしている不良達。だが、その不良達の頭にげんこつを決める者が現れる。

不良達「「「痛いっ!!」」」

いや現れたというより、最初からそこにいた。イーリスが従えている漆黒のアンドロイドである。

「学園で事を大きくするのは、あまりよくはありませんよ。とは言え、そうですね……教師相手という事もありますから穏便に済ませたくはありましたが、私達にとってこの場で先生と嘘の口約束をする事にあまり意味はありません。どうせ、今後の私達の行いで嘘はばれてしまうものです。さて、口約束を拒む私達をどうしますか? 扉を塞いだまま風紀委員に通報するのであれば、私達はあの閉ざされた非常階段の扉を突き破って逃亡するのみです。私達としても、あまり校舎の物を壊したくはありませんが、やむをえませんね。あなたと本格的に揉めるならば、器物破損を選びます」

覚悟を決めて、開き直った返答をする。

如月 槐徒 > 「…」

意外にも、彼らを止めたのは少女に付き添っていたロボットであった。
そのロボットがどういうものかは分からないが、少女が口を開いた様子を見るに、彼女の所有物なのだろうか。

「そうかそうか…」

顎に手を当てて少女の言葉を纏める。
約束するつもりはない。だけど通してくれないのなら何としてでも逃げおおせる。
何て我儘な生徒たちだろう。まあ、生徒とはこういうものだとは思っているが、にしても随分と余裕がない。
別に実害があった訳でもないのに、風紀を呼ばれる事をひどく恐れている。
前科でもあるのか、もしくは…

「俺としては君たちにあまり間違った事はしないでほしいし、誰かを傷つけるような事はしないでほしい、というだけなんだ。
人の人生も、自分の人生も壊して欲しくない。それだけなんだ」

根負けするには少し早いが、今日はここで折れる事としよう。
0.5ため息ぐらいの感覚で息を吐き、苦笑いで少女を見る。

「今日はそれだけわかって帰ってくれればいい。
だけど、次見つけたら風紀を呼ぶ。ここは変わらないからね」

そういえば屋上のドアを開けて出ていくように促すだろう。

Dr.イーリス > 嘘の口約束をすれば、揉める可能性を消去できただろうか。それ程に、先生は寛大な処置をしてくれている。
だからこそ、というのもあるだろうか。先程の被害者からお金を借りるという程度の言い訳と違い、こちらの返答でどうするかを決断しようとしている。
そのような場面で嘘をつくならば、それはあまりに仁義に欠ける。アウトローの世界で生きるからこその矜持というのもまたあるものだ。

「先生の見解は、この人間社会で生きていく術として正しいものなのでしょう。しかし、世の中そのような綺麗事だけでは生きていけない人なんてごまんといますよ。明日生きるのに必死な人々にとって、あなたのその意見は所詮、詭弁に成り下がります」

ドアを開けてくれれば、まず不良達が逃げるように屋上から降りていく。
それを眺めてから、イーリスは先生の方に向き直りつつ、変な形状の鍵を取り出した。

「本当は、あなたがどかなくても非常階段の扉を潰す気はありませんでした。私が開発したこの鍵を使えば、頑丈に閉められた扉は突破できずとも非常階段の扉の施錠程度なら無傷で開けられますからね」

非常階段の扉を開ける鍵を持っているのもそれはそれで問題ではあるが。

「それにしても、あなたは良い人ですね。もし次に会う機会がありましたら、私の事はDr.イーリスと呼んでください。縁がありましたら、またどこかで会いましょう」

如月 槐徒 > 「君の言う通りだ。俺の言う事は詭弁だよ。」

少女の言い分に何も否定する事なくうなずく。
俺の考えに共感して欲しいとは言わない。そもそも、俺が俺の理想から外れている。
だからこそ、俺の目の届く範囲の皆にはそうあって欲しいと伝えるのだ。
常世学園の生徒として在れば、それくらいはそれほど難しい事ではない筈、と思っているという事もある。

「いい技術だね」

否定しない。本当はその技術をいい方向に役立ててほしいし、その力があれば明日を生きるのに必死になる必要はないだろう。だが、それは伝えない。

「ありがとう。俺は霊薬学を教えている如月だ。興味があったら授業に来てくれ、ドクターイーリス」

また会う事があるのかは分からない。だが、次はもっといい形で会いたいものだ。
次もこのような出会い方をしない事を願うばかりだ。

Dr.イーリス > 「過度にご自分のご意見を卑下しすぎる事もないです。ちゃんと人間社会で生きていける人達にとっては、そういった調和のとり方は大事な事なのでしょう」

あくまでイーリスの立場にとっては詭弁になるというだけで、一般的には間違っていないだろう、という事をフォローする。共感とは違うが、先生の意見を全否定するつもりもない。

「お褒めにあずかり光栄です。如月先生でございますね。分かりました、先生の授業には興味があります」

普段あんまり授業に出ないが、如月先生の授業に出てみるのもいいものかもしれない、と考えてみる。

「それでは失礼しますね」

如月先生に一礼して、漆黒のアンドロイドと共に屋上を後にするのだった。

如月 槐徒 > 「気を付けて帰るんだよ」

去っていく少女に手を振り、姿が見えなくなるまで見送る。
カツアゲをしていたとはいえ、生徒である事には変わりない。
心配はするし、頼られる事があれば無下にするようなことはない。


…少女が去った事を確認すれば、元々いたフェンスの辺りへと戻り再び両手をついて学生通りの方を眺めながら自嘲的な笑みを浮かべる。

「詭弁だよ。イーリス」

普通に生きるだけであれば、教師であることを諦めれば俺はあんなことをしなくてもいい。
それなのに、誰かを傷つけるようなことをして、自分の人生を壊しかねないことをしている。

明日を生きる事に必死な人間にとっては到底詭弁だとして、普通に生きる事の出来る人間にとっては半ば当たり前の筈だ。だが、俺は後者でありながら望みを叶える為に悪行に手を染めている。
だから、詭弁だ。語っている本人が成し遂げられない理想など…詭弁以外の何物でもないだろう。

「さて、俺もそろそろ職員室に戻るとするかな」

そろそろ彼女らも校舎から出たころだろう。
名残惜しそうに学生通りの方を見ながら屋上から去った。

ご案内:「第一教室棟 屋上」からDr.イーリスさんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 屋上」から如月 槐徒さんが去りました。