2024/06/29 のログ
■Dr.イーリス > 「……そうですね。正当化自体はできません。私達は、誰かに迷惑を掛けて生きています……。人生を後悔しないために、青春というものにしがみつきながら……」
そう口にして、儚げに空を仰いだ。
私達、というのはイーリスが属する不良集団の事。
鋼先生の言う通り、誰かに迷惑をかけているという戒めは、胸に刻むべきだろう。
「バカ……う……。ば、バカと言う方がバカです……! い、いえ、申し訳ございません……立派に教師になられた方がバカというわけでは……」
またもやバカと言われ、むっとなり売り言葉に買い言葉で教師をバカ呼ばわりしてしまったが、人に物を教える立派な人がバカなわけがないという考えに至り、両手を左右に振って即座に自分の言葉を否定した。
「つ、次もまたえんぴつを転がして……。そうです、転がせば必ず正解の数値が出るえんぴつを開発すればいいのです。私は技術者ですからね、それぐらいお手の物です。い、いえ、試験に不正はよくないですよね……。それだとカンニングと変わりありません……」
■龍宮 鋼 >
「つーかオマエらアレだろ。
常世フェイルド・スチューデントだったか。
落第街でたむろしてる連中だろ」
彼女が名乗ったDr.イーリスと言う名前に聞き覚えがある。
落第街を拠点に、身寄りのない子供たちが集まったグループだったはずだ。
「バカっつー方がバカっつーならやっぱオマエがバカじゃねェか。
ッハ、バーカ」
ケラケラからかう様に笑う。
ひとしきり楽しそうに笑ったあと、再び背もたれに背を預けて。
「まァそう言うもんがあんならテストはいい点取れるわな。
んでそいつをいつまで続ける気だ?
ガッコ卒業して、社会出てもずっとエンピツ転がしてんのか?
ダチ二人のどっち助ける、みたいな○×で応えられねェ問題もあんぞ」
大事な友人二人をどちらかしか助けられない時、果たしてそのエンピツの出た目に従えるのかと。
威圧感のある鋭い視線。
「ガッコの勉強ってのァな、テストの点取るためにやるんじゃァねェんだ。
考える力付けるためにやるもんだ、覚えとけ」
■Dr.イーリス > 《常世フェイルド・スチューデント》、イーリスが属する不良集団の名称が鋼先生の口から出ると、視線を先生に戻した。
「よくご存知ですね。どうやら、私達の武勇伝も中々捨てたものではないらしいです」
こくんと首を振って肯定を示し、ついでに自分で武勇伝とか言っちゃってる。
「ぐぬぬ……。私が鋼先生をバカと言えない事を良い事に……。ぐぬぬぬ……」
表情の変化が小さいイーリスだが、とても悔しそうに歯ぎしりしている。
「さすがに、必ず正解が出るえんぴつは試験で使えませんけどね。不正すぎますから。社会に出る……という想像はあまりしていませんね。家庭事情で今を生きるのに苦労している身、先の事まであまり見通しが立てられません。友人二人のどっちを助ける、という問題はえんぴつを振るまでもなく両方助けるが基本的に最適解でしょう。少なくとも、私はそう考えます。えんぴつを振るのはあくまで筆記試験だけですので。ただし、友人の問題も状況によりけりというのは補足しますね」
先生の鋭い視線には、ほんのりと微笑みながらそう答えた。
「考える力……。そう、ですね。えんぴつの運命に頼った点数は、確かに実力不相応な点数になりますね。試験は、運命に頼らず自力で頑張ってみます」
■龍宮 鋼 >
「どーしようもねェクソガキ連中って聞いてるよ。
んなことしてねーで生徒登録すりゃ、少なくとも寝るトコは用意して貰えるってのによ」
武勇伝なんてとんでもない。
強盗にカツアゲに万引きと、やってない犯罪は殺しだけ、と言った感じの、自分から言わせればクソガキ集団だ。
そんなことしなくたって、生徒登録さえすればある程度の支援はあると言うのに。
「――つーかよ、そもそも何が正解か判断すんのに勉強する必要あるって気付いてるか?」
まずそこだ。
正解を知らない状態で正解など判別出来ないだろう。
なんならそれを作っている過程で勉強が出来る様になっている気がする。
■Dr.イーリス > 意外、と言った風貌で瞳をぱちぱちさせる。
「私達がちゃんと食べるものと寝るところを用意してもらえる方法があるのでしょうか。食べるものと寝るところがあれば不良せずに済みます。生徒登録は……何かの不備なのか過去に申請が通らなかったりはしましたが……」
二級学生なので、生活委員会にも申請し辛い……。
一応殺しの他に、麻薬取引とか詐欺のような知能犯系の犯罪には手を染めていない。正確に言えば、アホの集まりなので知能犯系の犯罪とか無理。
「……学園で勉学に励めば、何が正解なのか導き出せるという事でしょうか。単に、解答用紙に解答を書いているだけのようにも思えますが……。いえ、それが学歴を築く上で大事なのは理解しますが」
試験勉強やりたくない、というのが暗に見えてくる回答のしかたであっや。
■龍宮 鋼 >
「ま、あっちで暮らしてりゃ知らんだろうな」
知らないからそうやって暮らしているんだろう。
「基本的には申請すりゃ通るが……オマエらみてェな二級学生は身元引受人が必要だな。
通らなかったっつーのはそういうことじゃねェのか」
殺しや詐欺などはやっていないとは言え、犯罪を行っている連中の生徒登録には身元引受人がいないとまず無理だ。
「テストだけ見りゃそうだがな。
ちゃんと学生生活やってりゃわかるかもしれんぜ」
■Dr.イーリス > 「悪い事をしていた……というのは、申請が通らなかった理由にはなっているのかもしれませんね……。身元引受人は……《常世フェイルド・スチューデント》の事を把握しているならご存知だと思いますが、頼れる大人はいません……。私達は卑しい身分ですからね……」
数秒俯いた後、視線を鋼先生に戻す。
「基本的に申請すれば通ると言いますが、実際には二級学生というのは多くいますね。この学園には、様々な理由で正規に入学できない人がいるという事でもありますよ」
仮に身元引受人がいたとしても、イーリス達が実際に正規入学できるかは何ともいえないところはあるだろうか。
「……学生生活で社会性は身に着くかもしれませんね」
■龍宮 鋼 >
「悪ガキ連中の身元引受人になってやろうなんて奴ァ、そう多くねェからなァ」
一応風紀委員や生活委員はそう言う連中の引き上げに力を入れているらしいが、いかんせん数が多すぎる。
ましてや犯罪で生計を立てている奴らなんて、普通なら嫌がるだろう。
「知ってるよ。
俺だって昔は二級学生だったからな」
自身だって元二級学生だ。
不良時代だってそんな連中は多く見てきたし、だからそう言うのを集めてチームを作っていたのだ。
「悪ガキ連中の相手を屁でも思ってなくて、そいつらが悪さしねェ様に舐められずに睨み効かせられる大人なんて、そうそう居ねェもんなぁ?」
脚を組んでふんぞり返り、背もたれに腕を掛ける。
ニヤニヤと笑いながら。
■Dr.イーリス > 「……人間が差し伸べられる手の数に限界がある事は理解しています。私達は、自分達だけで生きる力を身に着けてはいますね。いえ、盗んだ物で生きている事を“自分達の力”というのは少し違うかもしれませんが……」
世界中、全ての子供を救う事なんて出来やしない。
大人に頼らず、自分達しか頼れない人が落第街で腐る程いる、というのは鋼先生も知っての事だろう。
「……この島の闇でもありますね。何らかの理由で正規の入学が出来ない人はそれなりにいるのに、偽証の二級学生は見逃されている。いえ、公的には二級学生なんていないのでしたね」
不思議なぐらい、財団は二級学生をいないものとしている。風紀委員などが二級学生の対処をする事がある程度。
「……不良相手ですら普通に睨みを効かしてくる頑強な大人というのも、私達現役不良学生としてはとてもやり辛いわけでありますが……。ええ……とても……」
ふんぞり帰る鋼先生を少しおどおどといった感じで眺める。先生というより、警察を前にする不良の如く。
■龍宮 鋼 >
おどおどしている彼女を、ニヤニヤしながらひとしきり眺めて。
「おっとォ奇遇じゃねぇか。
悪ガキ連中の相手を屁でも思ってねぇし、そいつらが悪さしねェ様に舐められずに睨み効かせられて。
ついでに落第街にそれなりに詳しいセンセーがいるわけだが」
ふんぞり返ったまま両腕を広げて見せる。
「無理にたァ言わねェがな。
これでも昔ァチームの頭張ってたんだ。
悪ガキ共の面倒ぐらいまとめてみてやれるんだわ」
彼女らがそれを望まないのなら無理強いはしない。
ただ、自身がかつてそうされたように。
何も知らない自分を拾ってくれたあの先生の様に。
そのあと荒れた自分に根気良く卒業まで付き合ってくれた先生のように。
自分もそのようにしたいと思っただけだ。
「オマエらが大きなお世話っつーならいいけどよ」
■Dr.イーリス > 「さすが、かつて数々の武勇伝を残した札付きの鋼先生に恐れるものなし……ですね」
これが、パイセンオーラというものだろうか。
不良として何か逆らい辛い何か。
しかし、だ。
それ故に、だ。
イーリス達が頼れる大人というのは、こういう人なのではないかとも思えてくる。
「ありがとうございます、鋼先生。助かります。この後の話は、後日、あなたを私達のアジトに招待して、他のメンバーにも紹介した後……という事にしてもよろしいでしょうか?」
先生の申し出は嬉しいもので、おどおどしていたイーリスだがほんのりと微笑んでみせた。
とは言え、まずはみんなを鋼先生に合わせるところからになるだろうか。
■龍宮 鋼 >
「だからそれやめろっつーの」
ただの犯罪行為を武勇伝と言うな。
苦い顔で吐き捨てる。
「なんでもいーよ
オマエらがしたいようにすりゃいい。
それでセンセーに手貸してくれって言うなら、幾らでも手ェ貸してやる。
悪いことじゃあなけりゃァな」
ひら、と手を振って。
それが先生だし、それが大人と言うものだと教えてもらった。
「――あァ、それと。
俺が今言ったこと文句があるヤツが居るならソイツも連れてこい。
幾らでも話聞いてやるからよ」
狂暴な笑みを浮かべて。
教師になっても、大人になっても、活きの良い連中は大好きなのだ。
■Dr.イーリス > 「それでは、連絡先を教えていただけないでしょうか。先生をアジトに案内する際にご連絡させていただきたいです。さすがに、先生に悪い事はお願いできませんね。全盛期ならばともかく」
全盛期、という言い方は武勇伝と同じく犯罪行為の肯定とも解釈できる言い回しになるだろうか。
連絡先を交換しようと、スマホを取り出す。
「は、はい。先生に何か不平を漏らすうちの連中がいたら、先生をアジトにご招待する時に同席させますね。ただ、うちの連中の中には、鋼先生の武勇伝を過剰に持ち上げる方もいるような気がします」
こくこく、と頷いてみせる。
■龍宮 鋼 >
「あいよ。
全盛期も何も、俺ァ昔っからケンカぐらいしかしてねェよ」
ケンカを売ってきた奴をぶちのめし、弱い者いじめしている奴を殴り飛ばし、邪魔してきた奴を叩きのめしただけだ。
それもまぁ立派な犯罪行為ではあるのだが、一応風紀委員のお世話になるようなことはしていない。
お世話になったことが無いと言うだけではあるが。
「構いやしねェけどよ……。
――俺ァただのケンカ屋だったんだがなァ……」
どうやら自分の噂は相当独り歩きしているらしい。
ちょっとげんなり。
■Dr.イーリス > 連絡先の交換を終えて。
「その喧嘩の強さはまさに武勇伝と聞き及んでおります。噂に尾鰭がつくものでもありますよ」
鋼先生がげんざりしている様子だったので、フォローも添えておく。
あくまで、イーリスの周りだけでだんだん大袈裟化しているだけという可能性もあるだろう。
スマホに映る時間を見て。
「もうこのような時間でございますか。私はそろそろ行きますね。先生をアジトに案内する時には、私の体の修理が済んでいるかと思います。私、自分で自分を改造した改造人間なので、部位欠損してちょっと悲惨なように見えても、ちゃんと義手や義足をつけて元通りになったりしますからね」
■龍宮 鋼 >
とは言えケンカが強いと言うのは、不良たちの間では英雄視される要素の一つだ。
しかも結構割合がデカい。
自業自得か、とため息を吐いて新たな連絡先が増えたスマホをしまう。
「あいよ。
あんま悪ィことすんなよ」
ひら、と手を振って。
なんか改造人間とか自分で自分を改造とかよくわからない言葉が聞こえた気がするが、気にしないでおくことにした。
この島では差して珍しいことではない。
ないはずだ。
■Dr.イーリス > 「それではまたまたご連絡しますね。では、さようなら」
先生に左手を振り、そして屋上から立ち去っていく。
なんとこの機械仕掛けの車椅子、器用にも階段を何事もなく降りていた。イーリスが開発した車椅子は、階段をも快適に上り下りできるのである。
■龍宮 鋼 >
車椅子で器用に階段を下りていく彼女。
何とまぁ便利だこと。
彼女がいなくなれば再び煙草を一本取り出し、火を付ける。
「――上手くやれてっかね、センセー」
一人きりの屋上での呟きは、紫煙と共に空へと消えていく。
その後、職員室へ戻ったらお局ババァのお説教が待っていたので、適当に聞き流しておいた。
ご案内:「第一教室棟 屋上」からDr.イーリスさんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 屋上」から龍宮 鋼さんが去りました。