2024/10/06 のログ
ご案内:「第一教室棟 屋上」にジャックさんが現れました。
ジャック >  
昼休みの屋上。
入り口から一番遠い隅っこで、煙草を吸う保険医がいた。
折り畳みの椅子に座り、白い煙をもくもくさせている。
離れたところでは生徒たちがバレーボールで遊んだり遊ばなかったりしていて、それを眺め、

「――若い子は元気だねぇ」

ばばくさいことを呟きながら。

ご案内:「第一教室棟 屋上」からジャックさんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 屋上」にジャックさんが現れました。
ジャック >  
【名簿ナンバーが入っていなかったため入り直しました。
 失礼致しました。】

ご案内:「第一教室棟 屋上」に武知一実さんが現れました。
武知一実 >  
「あんパンあんパン……明日はカレーパンあたり食ってみっか……っと」

屋上であんパンキメようと内心ウキウキで屋上に上がって来たオレを出迎えたのは、バレーボールに興じる生徒集団。
幸い此方に気付いている様子はねえので、変に気付かれて委縮される前にとそそくさと屋上の奥へと向かう。
入り口近くに陣取ると、後から入って来た奴がビビるから、せめてもの気遣いという奴だ。
――誰か言われなくビビられる方にも気を遣って欲しい。

「―――あ。 えっと、アンパン……食っても?」

昼休みに球技に興じたり興じなかったりするなんて体力有り余ってんだな、と思いながら屋上の奥まったところへと来れば、先客が居た。
白煙を燻らせる姿は、確か保健室の先生だったか。名前は……えー、と……?

ジャック >  
もくもくと煙を吐き出していれば、生徒がこちらにやってきた。
おや、と思い、煙草を火が付いたままポケットにしまう。
しまう直前、煙は上がらなくなったし、ポケットも燃えたりしない。

「いいね、あんパン。
 甘いものは脳を活性化させる」

楽しそうに笑って迎え入れる。
良いとも悪いとも言っていないが、少なくとも邪魔だとは思っていないようだ。

「知っているかい、あんパンというのは明治七年に木村屋と言うパン屋が考案したものだ。
 当時イースト菌は希少だったので、代わりに酒種を使い生地を発酵させたそうだよ。
 翌明治八年の四月四日に明治天皇にそれが献上されたことで、四月四日はあんパンの日となったようだ。
 日清戦争で集められた兵士にも振舞われ、明治三十年には日本中であんパンブームが起こったとか」

そして聞かれてもいないあんパントリビアを話し出す。

武知一実 >  
「どーも。
 あ、別にタバコとか気にしねえんで、喫ってて良いっすよ」

駄目とは言われなかったので、多分良いって事だろう。
そもそも屋上での飲食が禁止されているという話は聞かねえから、伺いを立てる方が筋違いな気もしたがそれはそれ。
オレはあんパンのビニール放送をパリッと開けると、中から半分ほど取り出して口へと運んだ。

「……はぁ、へぇ……
 明治ってと、江戸の次くらいっすよね。 そんな昔からあるんすね、あんパン」

もしゃ、と一口を咀嚼して飲み込むまでの間、先に居た先生の口からはあんパンに関する雑学が流れ続けていた。
よくもまあそんな事を覚えているな、と思わんでもねえが、人によって覚えてる事なんて様々だしな。
オレだったら絶対ぇ何々何年、とかまで覚えてらんねえ。
気付けば、ぱちぱちと控えめな拍手を送っていた。

ジャック >  
「いやいや、流石に生徒の前では吸えないよ。
 ましてや君未成年だろう。
 煙草は健全な成長を阻害するからね」

そこはやはり保険の先生。
良いと言われてもそれじゃあと吸うわけには行かない。

「江戸の次、と言うと遥か昔に感じるが、大正の前、と聞けば案外近く感じるんじゃないかな。
 ――む、それでもそれなりには前になるのか。
 どうも歳を取る時間の感覚がおかしくなるね」

昭和や平成の頃ならともかく、今から数えれば大正などはるか前。
くっくっく、と笑う。

武知一実 >  
「そっすか……。
 オレとしちゃ、もう充分育ったんでここらで打ち止めで良いんすけど」

これ以上上背(タッパ)が増えたら周りから余計にビビられる。
要らん喧嘩吹っ掛けられる原因にもなるし、正直成長が止まるなら止まって欲しい。
……とは言え、そんな理由で喫煙を止めるなんて、やっぱり先生なんだなと思う。 名前は……もうちょっとで出て来そうなんだが。

「大正も十分昔じゃないっすか。
 どっちにしろ大変容よりは前なんすよね、確か」

前に授業でやった気がする。
ともかく、ゆうに100年は越えてる歴史を持つということか、あんパン。
まあ、100歳を超える異邦人とかそこらに居るから何が凄いとは言えねえけれども。

「けど、何でそんなにあんパンの雑学知ってんすか?
 普通、進んで調べでもしない限り知り様が無い気がするんすけど、調べたんすか?」

ジャック >  
「成長と言うのは、何も背が伸びることだけではないのだよ。
 例えば気管系の病気に罹りやすくなるし、また風邪も引きやすく治りにくくなる。
 単純にガンの発生率も上がるし、運動能力や肺活量なんかにも影響を与える。
 いいことは何もないよ」

煙草のデメリットを語っちゃいるが、この教師、煙草を吸っているのである。

「そうだね、はるか昔だ。
 いや懐かしいな。
 私も並んで買いに行ったものだ。
 パン屋と言うのはただでさえ朝が早いからね、それよりも更に前から並んだものだよ」

まるで見て体験して来たかのように言う。

「何故って、甘いものは好きだからね。
 初めて見た日のことは覚えているよ」

武知一実 >  
「へ、へぇ~……」

いや、今さっきまで吸ってた人が急にネガキャンし始めた時ってどんな顔すりゃ良いんだ。
元々成人してからも吸う気は無かったけど、改めて吸わないでおこうと決意するくらいしか出来ない。
後はまあ、こういう事がスラスラ出て来る辺り先生なんだなあやっぱり、って。

「ふんふ……ん?
 懐かしいとか、初めて見た日のこととかって……
 ――ああ、先生も見た目と年齢が合わないタイプっすか」

本当に見た目で年齢が分らん人ってそこらに居るんだな。
それとも単に揶揄ってるだけなのか……どっちにしろ博識で甘党だという事はマジっぽい。
ま、博識に関しては仕事に使う分野と甘いものに限るのかもしれねえけど、頭が良いって事には変わりねえだろう。

「甘いの好きなら、1つ食います?
 一応2つ買って、1つは放課後に食おうかと思ってたんすけど」

パーカーのポケットからもう一つあんパンを取り出す。
タバコ吸ってた直後だから味が変になったりしねえかな、と取り出してから思い至るが、まあ、その時は断られるだろ。

ジャック >  
「さて、どうだろうね。
 見てもいないことを知識だけでさも見てきたかのように話す紛らわしい冗談を言っているだけかもしれないし、本当に明治から生きている人外かもしれない」

ふふ、と笑いながら脚を組む。

「遠慮しておこう。
 いや、本音を言えば欲しいのだけれど、生徒からあんパンを恵んでもらうと言うのもバツが悪い。
 それに保健室に戻ればその類のものは沢山あるからね。
 それは予定通り君が放課後に食べるといい」

右手の掌を向けて丁重にお断り。
甘いものに目はないが、生徒から恵まれるほど困っているわけではない。

武知一実 >  
「冗談だったとしても、何か得のある冗談とも思えねえし。
 別に後から知っただけだろうと実際に見聞きした事だろうと、知識には変わりねえじゃねえっすか」

仮に本当に明治時代から生きてても、それを装ってるだけだとしてもあんまり印象は変わらん気がする。
……と、思い出した。保健室のジャック先生、だった。
クラスメイトが保健室にやたらエロい先生が居る、っていつか話してたのを話題ごと聞き流してたからすぐには出て来なかった。
薄らぼんやりだけど、話してた特徴とも一致する。

「そっすか。
 別にあんパン貰うくらい、先生と生徒の交流の一環だと思うんすけどね?
 何か授業担当してくれてるわけでもねえし、だから賄賂にもならんでしょ」

あんパン2号をポケットにしまいながら、あんパン1号を頬張る。
午前中に勉強で疲れた頭が糖分で回復していく感じ、確かに最初に先生が言ってた通りだ。
午後も何とか乗り切れる気がする。

ジャック >  
「はっはっは。
 確かにそうだ。
 一本取られたな、ご褒美にココアをあげよう」

ポケットから取り出すのはマグカップ。
それを彼に手渡す。
受け取れば、暖かいままのココアがマグカップの中でたぽんたぽんと揺れているのが見えるだろう。

「ルールの話ではないよ。
 私の矜持の話だ。
 これでも先生として譲れない一線と言うものは持っているつもりでね。
 生徒から施されると言うようなことは個人的に合ってはならないのだ。
 貰う時はお礼とか謝罪とか、そう言う時だけにしているのさ」

更にもう一つマグカップを取り出して、それを飲む。
どちらにも蓋は付いていない。

武知一実 >  
「どもっす……」

何でココア?そして何でポケットから??
疑問が次々湧いてくるような事象が目の前に急に出て来て、少し間の抜けた顔でマグカップを受け取ってしまった。
いや、別に貰えるもんは貰うけど。つーか、ここで断ってマグカップをそのままポケットに戻されたら疑問が増えるから受け取るけども。
……どーなってんだ、これ。と訝し気にココアを見つめるオレだった。

「ふぅん、そういう事っすか。
 施しとか、そういうんじゃないつもりだったんすけどね、ほら、よく女子がやってるじゃないっすか。お菓子交換みたいな
 今手持ちが無いなら、今度機会がある時にでもって思ってたん……すけど」

あんパン断られて、ココアを貰う。
え、じゃあ普通にあんパンとココアの交換で良かったんじゃねえ??
と、そんな事を思ってたら追加のココアが先生のポケットから出て来た。

………?

……??

……もう考えんのやーめた! とオレはココアをありがたく飲むことにしたのだった。

ジャック >  
「私はね、先生と生徒は先生と生徒であるべきだと考えていてね。
 先生によっては生徒と友達のような関係を築く先生もいるだろうけど、私は違うと言うことだよ。
 まぁ、それでももしかしたら先生と生徒の関係とは違う生徒になる子もいるかもしれないけれど、基本的にはそう言うことだ」

ずず、とココアを一口。
甘くておいしい。
うむ、と満足そうに頷いて、残りをまたポケットにしまう。

「どうかしたかね。
 なに、気にすることはない、それは普通のココアだ。
 ごく普通の、ミルクココアだよ」

間違いなくココアである。
とんでもなく甘いと言うことを除けば、全く普通のココアである。

武知一実 >  
「なるほど、理由は解ったし納得もしたっす」

思えばオレも似た様な線引きをするところはある。
先生は先生で先生によって態度は変えねえし、生徒は生徒でたとえ相手が先輩であっても態度は変えない。
……ま、オレの場合相手によって態度を変えるってのが出来るほど器用じゃねえってだけだけど。
それを明確にルールとして自分に課してるのは、思った以上にしっかりした先生なんだな、という印象になる。

「別にココアが変なもんじゃねえかって疑ってるわけじゃねっすよ。
 どっから出したんだコレ、って思っただけっす。
 
 ……あっっっっま」

あんパンの甘さが霞みそうなくらいココアは甘かった。
本当に甘党なんだな、この人。まあ、それだけ頭使う仕事とかしてるのかもしれない。
保健室の先生って頭脳労働なイメージあんまり無えけど。

「先生の方のココアもこんな甘いんすか?」

ジャック >  
「ご理解いただけたようでなによりだ」

にこりと笑う。
どこから出した、と言う言葉におや、と言う様な顔。

「どこって、君も見ていただろう。
 ポケットだよ」

そうしてもう一度取り出して見せる。

「ココアは甘い方が美味しいだろう?
 そうだよ、同じものだ。
 こっちも飲んでみるかい?」

取り出したマグカップ、さっき自身が飲んでいたそれを差し出して。

武知一実 >  
「いや見てたっすけど、そもそもココアが入ってるようには見えなかったっつーか」

そもそもそんな注視してたわけじゃねえけども。
そんなこと言いながら、再度先生がポケットに手を入れ―――

ココアが出て来た。 は???
ドラ●もんか???

「いや、確かにコーヒーじゃねえし、甘い方が美味いっすけど
 オレのだけ甘くしてからかってるとか、そういうんじゃねえっすよね?
 ………いただきます」

差し出されたマグカップを受け取り、口へ運ぶ。
そもそもこれがさっきのと同じものなのかという疑問はこの際置いておく。
同じのでも違うのでも、ココアを幾つもポケットに入れてるという事実は変わらんし。

ジャック >  
「私の白衣のポケットは色々入る様に大きくしてあってね。
 流石にそれをいつも持ち歩いていると言うわけではないけれど、このぐらいは入るよ」

ほら、と白衣を持ち上げてみせる。
白衣の内側に見えるポケットの布地は、色々入っているような膨らみが見えるだろう。

「他にも色々あるよ。
 飴玉だろ、砂糖にラムネ、クッキーも入っている。
 欲しいのがあれば持っていくと良い」

そう言ってポケットの中から次々とそれらを出してくる。
個包装されたそれらを左手の上にバラバラと広げて行って。