2024/10/13 のログ
蚕比古 玉繭 > 「ふふ、いえ、礼には及びません」

貴方の手、そっと取り。
シルクのような肌で、優しく、撫でるように。

「退魔士様にご奉仕するが我がお役目、ですから」

そう言って、手の甲へ小さく、口づけして。

そっと離して。

「またお会いしましょう」

口元隠しながら。

「雷の退魔士、様」

くすっと微笑めば、そのまま…何処かへと去ってゆく、かも。

ご案内:「第一教室棟 廊下」から蚕比古 玉繭さんが去りました。
武知一実 >  
「いや、そうは言ってもよ……」

現地に他に祭祀局の人間が居れば、場合によっては協力して怪異討伐を行う事も可、とは書いてあったけども。
詳しい説明もなく、半ば成り行きで協力して貰った事に対してはせめて謝礼の一つでも渡しておきたいところではある。
……あれ?オレが協力して貰ったっつーより、まゆがオレに協力を求めた形か?……どっちだ?

と、オレが細かいことで悩んでいたら、まゆに手を取られた。
えらい滑らかな手触りは、思わず手袋か何かしてるのかと確認しそうになるほどだ。
あまりにも突然の事で、手を取られたという事を理解するのにラグが生じる。

「退魔士っつっても、オレはあくまでもフリーランスで……ェ!?」

はたしてまゆが役目を果たすに相応しい退魔士であるという自信は無いぞ、と続けようとした矢先。
手の甲に柔らかな感触が一つ。
さすがにこの状況と体勢で、手の甲に何が触れたのかが分からない程ではない。
……ではないけど、いや、頭が理解をするのに時間を要する。
阿呆みたいに目と口を開いて佇むしか無く、その間にまゆはオレの手を離していた。

「……お、おう? またな、まゆ」

未だ呆気に取られているオレに微笑み掛けて、まゆは夜の校舎の奥へ消えていった。
……いや、手の甲にキスする必要あったか? あったか!?

武知一実 >  
「……ハッ。
 とりあえず、戻って討伐報告しねえと」

黒死蝶、だっけか……こんな蝶々で証明になるんだな。
あ、結局何だかんだで まゆの名前以外の事なーんも聞いてねえじゃねえか。
まあ、色々と怪異に慣れてそうだったし、糸を操るなんて珍しいからちょっと調べりゃすぐ分かると思うけども。

「……うう、手が落ち着かねえ」

口付けされた方の手の指をわきわきとさせながら、オレは宿直室へと荷物を取りに戻ったのだった。

結果、黒死蝶によりオレが怪異と遭遇した事は立証されたが、討伐までは証拠にするには弱いっつーことだった。
まあ、日頃の成果から今回も無事に討伐したんだと言う事にして貰えたけれども。

……うん、今度から証明関係の手段はちゃんと講じておかねえとな。

ご案内:「第一教室棟 廊下」から武知一実さんが去りました。