2024/12/13 のログ
ご案内:「第一教室棟 教室」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
放課後。
今日は委員会は休職日であるため時間が少しあった。
人の疎らになった教室の机、手元には帰ってきた小テストの答案が置いてある。
主にやるのは復習、予習。
反復して忘れないようしっかりと覚えるのは学習の基本だ。
ただ、今机に向かう少女にとっては、傍からすればそんなもの必要なの?と言われるような過程でもある。
けれど少女は勤勉で、かつ真面目だった。
不要かもしれなくても、しっかりと詰めて可能な限り穴をなくしていく。
完璧超人…なんて揶揄される少女はそうして形成されていった。
「……んー…」
でも、それはあくまで周りが言うだけのこと。少女本人は、自分が完全無欠の存在などとは思っていない。
わからないことや、考えても答えに辿り着かないことなんて幾らでもある。
―――そう、『妹』のことであるとか。
■伊都波 凛霞 >
今朝、悠薇は期限が良かった。
「何か良いことでもあったの?」と聞いたら、「何でもないよ」とだけ返ってきた。
まあ、そんな日もあるかもしれない。
久しぶりに良い天気の、晴れの日だったし。
さらさらと答案をなぞりつつ、似た文章題を問題集から探して、解く。
同時に、分割思考。
少女、伊都波凛霞の持つ異能はサイコメトリー。超能力の一つに分類される。
けれど、実際はそうではなかった。
少女に超能力…所謂超常的な能力は備わっておらず、本人不在の場ではあるが、これは優れた身体能力であるという研究結果が出ていた。
つまりは思考の速度。
それが優れた人間…所謂、天才。
IQ200を超える人間のゆうに二倍の能力が備わっていると分析された。
一般的に天才と言われる人間の能力はおよそ一般的な人間の1.25~1.3倍と言われる
頭脳に限らず、アスリート…プロで活躍する一線級の人物がそれである
それに照らし合わせれば少女の能力はゆうに2.5~4倍とされた。
才能に富んだ人間二人分の能力…なぜそんなことになっていたのかは…少し前に答えが出た。
並列思考、分割思考を可能とし、高次予測すら可能とする。
集中力を高めれば、指先から感じ取れる微細な電磁波とそれに残る情報を脳が分析し映像化することすらも。
つまり、伊都波凛霞は異能者ではなく……。
「十分、異能でしょ…っと」
ぴ、とやり終わったところまで問題集に付箋を張り、ぐぐ…っと背伸びをする。一息だ。
■伊都波 凛霞 >
『お、伊都波。ちょっといいか』
「? はい」
ふと、教室の入口から声かけられ返事を返す…その先には、一般教養の先生の姿があった。
『熱心だな。もう遅くなるぞ』
「あはは、もうそろそろ終わりにしようかなって…」
そう言いつつ、もう終わりですから~、と筆記用具を仕舞い始める。
それを見ていた先生は、何か言いにくそうに口籠りながら、でも、それを口にした。
「あー…えっとな。伊都波。
自分のことに熱心なのはいいが、少し妹の勉強なんかも見てやるといいぞ」
「え?」
思わず目をぱちくり。
そんな言葉をかけられるとは思いもしなかったからだ。
■伊都波 凛霞 >
「それってどういう…?
勉強、は…詰まったりわからないところがある…とかだと教えたりしてますけど」
『ああ、いや』
何か気まずそうな顔をする先生。
こちらも思わず不思議そうな顔をしてしまったけれど。
『いや、あんまりそっちのほうが芳しくないようだったからな』
「ああ…、でも、妹なりに頑張っていますから。
少しずつですけど、ちゃんと結果に繋がってきてるんですよ?」
そう言って、にこやかに笑って見せれば…先生はなんだか、複雑そうな顔をしていた。
それならいいんだが。そう言い残して、遅くなりすぎるなよ。と先生は廊下へと戻っていった。
「うーん…?」
なんか、様子がおかしかったような。
■伊都波 凛霞 >
「(テストの結果でもよくなかったのかな…)」
…そのわりには機嫌が良さそうだったけど。
なんだろ、と思いつつ帰り支度を整え、廊下に出る。
『お、伊都波。帰りか?』
出たところで、声をかけられる。
ふとそちらを見ると、体育科の先生だ。
今の時期は少し暇そうで、放課後の学校を見回っていたりするらしい。
オフシーズン。そういえば運動部の子なんかもこの時期は勉強に時間を割いていた。
「はい。今日は委員会もないので…」
『おっ、そうか。良かったらちょっと器具の手伝ってくれんか。先生一人だとちょっと大変でな』
ああ…見回ってたわけじゃなくて、労働力のアテを探してたのね。
まぁ、それならそれで。
「遅くなりすぎなければ大丈夫ですよ♪」
快く先生の頼みを引き受ける。
冬に間しばらく使わない器具を体育用具室に片付ける、なんてことはない作業の手伝いである。
『スマンな。男子生徒が捕まえられれば良かったんだが、俺の顔と見れば逃げおって』
「ふふ、先生おっきくて迫力があるから、ちょっと怖がられてるのかもしれないですね♪」
『おいおい…善良な教師だぞ俺は』
廊下で二人、笑い合えば、じゃあ頼めるか。と改めての頼みごとに笑顔で頷く。
『じゃあ、結束ロープとか持っていくから先にいって作業を始めててくれ、悪いな』
「いいんですよ~。先生も一人じゃ、それこそ日が暮れちゃいますもん」
それじゃあ、先に向かっていますね。と、グラウンド横の体育倉庫へと先に向かってゆく。
『……ああ、助かる』
大柄な教師はその少女の後ろ姿に視線を向け、見送っていた。
ご案内:「第一教室棟 教室」から伊都波 凛霞さんが去りました。