2024/06/04 のログ
桜 緋彩 >  
がちゃりと扉を開けて屋上に。
一歩外に踏み出して、うぅーんと伸び。

「んおぉぉ……」

ぺきぽきと背骨が音を立て、ついでに女子高生が出しちゃいけないような声が漏れる。
教室で今日の復習をしていたのだが、疲れたので散歩がてら屋上まで来てみた。

「――いま虚空から雑誌を取り出しませんでした???」

目の端で不思議な光景を目の当たりにした気がする。
こういう島だ、そう言うこともあるだろうけれど。
つい声を掛けてしまう。

落花彩晴 > 「…はい?…あ、えぇとこんにちは。」

カタログを読みながら、服装のモデルになっている男子女子のスタイルの良さにしみじみしていた所で。
靴音や声、気配に全く気付いていなかったのか、間の抜けた声で彼女に顔を向けた。
直ぐに我に返って、慌てて挨拶と会釈をきちんとする少女。

「…えぇと、隠匿術の事でしょうか?これは異能とか魔術ではなく、技能ですよ?」

暗器術の発展版みたいなものですね、と微笑みながら語るが信じてくれるかどうか。
実際、少女は技能としてこれを習得しているので嘘は欠片も無いつもり。

取り敢えず、カタログを一度右手に持って軽くスナップするように手首を捻る。
すると、手品のように忽然と右手からカタログが消えて。
…そして、制服の上に着こんだ白いパーカーの袖口を広げて丸まったカタログを取り出して見せる。

「こんな感じですね。これをもっと突き詰めたものがさっきのやつです。」

桜 緋彩 >  
「おぉ、なるほど……」

間近で見てもさっぱり理屈がわからない。
技能、と言うことは自分も習得できるのだろうか。
習得出来れば戦術に応用が出来そう。
興味は尽きないが、まずは、

「急に失礼しました、三年の桜緋彩と申します」

びし、と礼。
背中に柱が埋まっているのではないかと言う綺麗な姿勢での礼だ。

「技能、と仰いましたが、それは習得すれば誰でも使える類のものですか?」

特別な才能が必要だったりするのだろうか。

ご案内:「第二教室棟 屋上」に落花彩晴さんが現れました。
落花彩晴 > 「…まぁ、手品みたいなものかもしれません、見た目的には。」

物心付く辺りから叩き込まれたり努力してきた技能。
今は手足を動かす延長の感覚で自由自在に出来る。
少女が誇れる数少ない物の一つだ。年季が入るとある程度の自信や自負もある。

「あ、私はえぇと1年生の落花彩晴と申します。よろしくお願いしますね桜先輩。」

びしっ、とした見惚れるくらいに背筋の整った姿勢の礼に驚きつつも。
こちらも、座ったままではあるが背筋を正して名乗りを返しながら一礼。

「これですか?私は物心付いた時から叩き込まれてきましたので…ただ、特殊な何かは必要ではないはずです。」

強いて言うなら、手先の器用さなどでしょうか?と、補足をしつつも少し考え込むように。
人によっては、数年、いや数か月でかなりのレベルで隠匿術をこなせる者も居るのは聞いた事がある。

「…あの、もしかして桜先輩はご興味がおありで?」

異能や魔術に比べたらそこまで凄い何かでもないし、戦闘技術でもない。
あくまで”隠匿性”に特化した特殊技能という位置づけではるが。

桜 緋彩 >  
「手品だとしても、ここまで鮮やかに隠したり取り出したり出来るのであれば、充分誇れる技術ですよ」

なんせ間近で見てもどこにどうしまわれたのか全く分からなかった。
種も仕掛けもないと言われれば信じてしまうレベル。

「よろしくお願いします彩晴どの。――ふむ、センスは問われるものの、習得に素質が問われるものではない、と」

ならば習得すれば色々幅が広がりそうだ。
この隠匿術でどの程度のことが出来るかはわからないが、少なくとも雑誌程度のものをパーカーの袖口に隠すことは可能なのはさっき見てわかっている。
となれば短刀か匕首ぐらいを見えないところに隠し持つぐらいは出来そうだし、それだけでも戦術の幅が大いに広がる。
頭の片隅で色々シミュレートしていれば、興味があるか、と聞かれた。

「興味は勿論ありますとも! その隠匿術に限らず、修練によって誰でも身に着けられる技術など、あればあるだけ良いとさえ思っておりますので!」

使うかどうかはともかく、使える手段は多くて損をすることはない。
手段が多いと言うことは取れる択が多いと言うことなのだから。
やれることが多くて困る、と言うことはあまりないと思っている。

ご案内:「第二教室棟 屋上」に落花彩晴さんが現れました。
落花彩晴 > 「そ、そうでしょうか?…あの、ありがとうございます。」

ここまで自然と出来るまでに10数年掛かっているが、便利ではあるが地味な技能。
それでも、己が少しくらいは誇れる物を素直に称賛してくれるのは、こそばゆいけど嬉しい。

「そうですね。手先が器用…あと、武芸に秀でた人だと習得は早いかと思います。」

”体の動かし方”を心得ている者が比較的コツを掴んだり習得が早い傾向はあると聞いた事がある。
一応、少女も我流が多分に混じるが武芸はある程度収めているから、実体験込みの意見だ。

「ただ、欠点もあって取り出すのはあくまで”手”なので両腕が使えないと流石に無理ですね。」

そこは特殊とはいえ技能の限界値。魔術や異能には一歩及ばないもの。
しかし、桜先輩の食い付きが凄い…そこまで需要がある技能なのかな?と、彼女自身は疑問だった。
本人からしてみれば、物心ついた時から学んできたものだから、というのもある。

「一応、ちょっとした小さい物を隠し持つ・取り出すくらいなら多分そこまで習得に時間は掛からないと思いますよ?」

これでも武芸を齧っている端くれ少女。桜先輩が”凄い”実力者なのは感覚で朧気に感じている。
彼女の実力とセンス次第では、少なくとも小型のものを隠し持つのはそう時間も掛からない気もする。

桜 緋彩 >  
「もっと自信を持って誇っていい技術だと思いますよ」

照れているような喜んでいるような彼女に笑顔を向ける。
少なくとも、学ばなければ出来ることではないのだから。

「手先が器用かどうかは、人並みでしょうか。武芸は一応剣術を学んでおりますね」

器用さと体の動かし方を知っているかどうか。
前者はともかく、後者ならば自信がある。
お飾りかもしれないが、これでも一応剣術流派の当主だから。

「ならば問題はありませんね! 両腕を落とされているならば、どんな技術を使ったとしても勝ちにはなりますまい!」

はっはっは、と豪快に笑って見せる。
彼女は「手が空いていないと使えない」と言う意味で言ったのだろうが、それを「腕が健在でないと使えない」と解釈した。
そうなってはもう負けも同然と笑い飛ばす。

「是非教えを請いたいものですね。ちなみに、最大どの程度まで隠せるものなのでしょう? やはり身体や衣服に隠せる程度で?」

話を聞くに、そもそも物を隠す術と言うよりも隠したり取り出したりする動きを見えにくくしたり悟られにくくしたりする技術のようだ。
隠しているスペースは物理的なものならば、例えば刀なんかをすっぽり隠すのは難しそう。

落花彩晴 > 「いえ、そのぉ…私なりに自負や自信はあるつもりなんですけど、日常使いが主なので…。」

真っすぐに評価される経験は何度経験しても慣れないけど嬉しいもの。
ちょっと学業などが芳しくないので、尚更にうれしく感じてしまう。…ちょろいですね私。

「えぇと…はい。」

あれ、桜先輩って物凄く実は豪快な人なのでは?と、少女は思う。
でも、ここまでの少ない会話で何となく、大まかな先輩の人となりは分かった気がした。
勿論、好印象だ。こういう人は裏表があまり無いだろうから、話していて楽なのだ。

「私くらい年季があると、刀剣類を2,3本くらいは隠し持てますね。
ただ、基本的には小型の道具や武器、日用品を携帯する感じが良いかと思います。」

おもむろに、右手を背中に回すとヌッ!と、鞘に納めた太刀を取り出して見せた。
そして、そのまま背中にまた仕舞い込む。ベンチに座ってたままで、だ。

「ここまで来ると、それこそ異能や魔術みたいですけどこれは極端な例といいますか。
あくまでとことん極めれば、というお話で基本は小型の刀剣や暗器、あとは拳銃とかでしょうか。」

先輩の推測は間違ってはいないのだが、明らかに物理的あれこれがおかしい今の行為。
ただ、実際に異能や魔術は欠片も作用していないのでしょうがない。

桜 緋彩 >  
「日常使いが出来るのならば尚更誇って良いと思いますよ。少なくとも私には出来ない事ですので」

そもそも便利ではないか。
自分だけ大容量のカバンを持ち歩いているようなものだ。
しかもかさばらない。
誇るに値する技量である。

「刀剣を、そんなに……? いや、出来ているのだからそう言うものだと認識した方が良さそうですね」

明らかに物理法則を無視しているが、実際に出来ているのだから出来るのだろう。
こういうものは出来るわけがない!と三回叫ぶより、ありえないはありえないと割り切った方が習得も早いと何となく理解している。

「出来ればその域まで達したいものではありますね。使える剣はあればあるだけいい」

そう言う意味では自身の流派とも相性がよさそうだ。

落花彩晴 > 「逆に私には出来ない事を桜先輩は出来たりするでしょうし、そこは個性と言いますか…。」

十人十色千差万別、だからこそ何でもこなせる天才なんて…居ない、とは言わないが。
”居て欲しくない”。上手く言えないが素直に認めたくないのだ、そういう人は。
ちょっとしんみりした思考になり掛けていたのを引き戻しつつ。
桜先輩は素直に称賛してくれているのだから、こういう暗い思考はむしろ失礼だ。

「まぁ、私は徒手空拳の方が多分多いかと思いますけど、刀剣も多少は扱いますので。」

刃は潰してあるけれど、それなりに頑強だし己の戦闘スタイルに合っている。
もしかしたら、桜先輩と手合わせする日もそのうち来るかもしれないけれど。

「…うーん、じゃあ今度簡単にお教えしましょうか?
ただ、口で説明するのは難しいので要点だけ絞って、後は桜先輩の工夫次第でアレンジもいいかなと。」

今から教えられたら、と思うがさっきまで補習だったので頭があまり回らないのが申し訳ない所で。

桜 緋彩 >  
「個性だとしても、その個性を誇ってはいけない理由などどこにもありませんので。誇りと言うのは人に見せつけるものではなく、自分の芯に据えるものですしね」

笑顔でそう語る。
出来ることは誇り、出来ないことは他で補えばいいのだ。
自分よりそれを出来る人と自分を比べて、自身は下位互換だと貶める必要もない。
仮に何でも出来る天才がいたとして、自分よりそれが出来る人がいないのならば自分の役割はあるのだから。

「彩晴どのも武芸を嗜んでおられるので? もし彩晴どのさえ宜しければそちらの方でも色々と教わりたいものです」

自身の流派が流派だからか、どうしても色々な技術を学んでみたいと考えてしまう。
流石にあれもこれもとねだるばかりでは彼女の負担が増えてしまうが。

「是非にお願いいたします! では都合のよろしい日など話し合うための連絡先をば……」

ポケットからスマホを取り出してメッセージアプリを立ち上げる。

落花彩晴 > 「……成程。…そう迷いなく言い切れる桜先輩は凄いですね。」

一瞬、息が詰まるような表情を浮かべたが…直ぐに小さく笑ってゆっくり何度も頷いた。
彼女のように前向きな思考に直ぐにはなれないが、少しくらい近づけるようになりたいもの。
まぁ、少女も頭ではちゃんと分かっているつもりだ…心情的なものが足を引っ張っているけれど。

「はい。ただ私の戦い方に合わせて改変、と言いますかアレンジと言いますか。
えーと、そこまで大したものでもないですよ?技術的な側面で言うといまいちですから。」

剛剣、という感じなので技術より身体能力を生かした豪快な真っ向打ち合いが真骨頂。
なので、絡め手や技術でいなされるとそこまで強くはない。
それでも、自分に合っている戦闘スタイルに最適化するのは大事な事。

「まぁ、武芸に関しましては、口であれこれ伝えるより実践が一番ですね。」

拳で…もとい剣で語り合う方がこういうのは手っ取り早いしダイレクトに伝わるだろう、お互いに。
ともあれ、連絡先交換については快く了承して、こちらも携帯を取り出しまして。

「…はい、これが私の連絡先です。なるべく桜先輩の都合に合わせられたらいいんですが。」

交換した連絡先を確認する。…つい口元が緩んでしまう程度には、お友達が全然居ない少女だった。

桜 緋彩 >  
「そう言い切る様にしているだけですよ。病は気から、と言うように、自信も気の持ちようでいくらでも変わります」

口に出していれば意外と自分自身でも騙されていくものだ。
自分だって、自信のないことはたくさんある。
少し困った様な顔で笑う。

「素晴らしい。教わったことを教わった通りにやれるだけではなく、教わったことを自分が使いやすいように出来るのは十二分に才覚と言えるでしょう」

最適化、と一言で言えば簡単だが、これがなかなか難しい。
そう言う思考にたどり着くだけでも難しいし、たとえ自分なりでも試行錯誤出来るのは一流の武芸者のポテンシャルを秘めているのではないだろうか。

「そうですね、やはり身体を動かすのが一番です。私は風紀委員の仕事が無ければですが、大抵は訓練施設で道場のような活動をしております。まぁ部活のようなものですので、もしよろしければそちらもご参加ください」

落花彩晴 > 「…確かに、気の持ちよう、心持ち一つで案外何とかなる事も少なくないですよね。」

そこは、ある程度実体験もしているので素直に頷ける。
先輩の言葉はシンプルだけど結構自分に刺さる…だから、少しでも見習えたらと。
やや困り笑顔の先輩に、同じような笑みを浮かべて。
きっと、先輩も色々と苦労や悩み、葛藤があるのだろう。

「複雑な動きが苦手なので、割とシンプルな動作を突き詰めていく感じでしょうか。
こう見えてもちょっと筋力とかには多少自信があるので…まぁ、パワー型になるかは分かりませんが。」

脳筋、とまで極まっては居ないが技術の拙さを筋力と身体操作でカバーする。
技は複雑すぎずシンプルに、されど力負けしないように鋭く速く力強く!
…が、一応理想ではあるのだけどそれが体現できているかは。まぁ、手合わせの時に判明しそうだ。

「風紀委員会…日々ご苦労様です。道場も少し気になりますね…分かりました。」

連絡先交換を終えて、携帯を仕舞い込みつつ色違いの双眸を瞬かせつつも頷いて。
ふと、空が茜色に染まっている事に気付けば、よいしょとベンチから立ち上がり。

「すいません、すっかり話し込んでしまいましたね。
私はそろそろ一度寮に戻りますけど桜先輩はどうしますか?」

桜 緋彩 >  
「シンプルな動きと言うのは、シンプル故に対応も基礎体力が必要になる場合も多いですからね。基礎も突き詰めれば奥義になる、と言うやつです」

出来ること出来ないことを切り分けて、出来ることで勝負していく。
力で押すと言うのも、対処法は限られるし、であれば想定がしやすい。
いい戦士だと頷く。

「なんと、もうそんな時間ですか。私も寮住まいですし、お送りしましょう」

気付けば日が落ちかけていた。
日が長くなってきたとはいえ、こうなるとあっという間に暗くなる。
そんな中女性一人で帰すわけには行かぬ、と共に屋上を後にしよう。
お互いの教室によって荷物を持ったあと――彼女は隠遁術でもう持っているかもしれないが――、二人で寮までてくてく歩こう――。

ご案内:「第二教室棟 屋上」から桜 緋彩さんが去りました。
落花彩晴 > 「私の場合、徒手空拳が混じったりもしますけどね。
刀剣の技術の低さはそれこそ、拳や蹴りの格闘でカバー…出来てるといいんですけど。」

少し自信無さげなのは、実家で死ぬほど鍛錬や実戦稽古はしたけれど。
例えば、彼女たち風紀委員会のように荒事に携わる事があまり無い。
無論、無いに越したことはないのだけども、実戦勘…みたいなものはどうしても劣る。
それでも、いい戦士と評価されているのなら、その評を崩したくはないものだ。

「え?わざわざ…いや、でもありがとうございます先輩。」

一瞬申し訳ない表情をしたが、ここで断わるのも野暮というものかもしれないので。
申し出に乗らせて貰いつつ、荷物は流石に教室に置いていたのできちんと取ってきてから二人で帰る事になるのでした。

ご案内:「第二教室棟 屋上」から落花彩晴さんが去りました。