2024/06/08 のログ
ご案内:「第二教室棟 第四保健室」にジャスパーさんが現れました。
■ジャスパー > 放課後、そんな気だるげな女医さんがぐったりしているところに…
どたどたどたどた、と騒がしい足音
「せんせえええええ!!先生!!助けてください!!」
切羽詰まった様子で、男子生徒が飛び込んでくる
金髪の…一応長くは学校に居る端正な見た目をした生徒だ
もしかしたら知っているかもしれない
ただし馬鹿である
「…お、おれの…。俺の…頭がおかしくなっちまったんだ…
助けてくれ…先生…。……女子が、みんな魅力的に見える…
放課後の楽しそうな姿を見てると、こっちに笑いかけているような気がして勝手にどきどきしちゃうんだ
もうだめだ…このままじゃ急に女子に告白する変な奴になりかねない…」
至極欲望に塗れた悩みであった
思春期にありがちなものの酷いバージョン
【話しかけられても無いのにあの子俺の事好きなんじゃね症候群】である
「あ、あとごめんなさい。興奮しすぎて転んだから絆創膏ください………」
しかも情けない実害付きであった
■焔城鳴火 >
「――はぁ」
聞こえてきたあまりに騒がしい足音で、誰が来たのか大体わかってしまった。
「帰れ」
飛び込んできた男子に、冷たい視線でバッサリと一言。
お前の頭がおかしいのはいつも通りだろ、と言いたくなったが、流石に暴言すぎるので言わなかった。
「お前は知らないだろうけど、昔からお前みたいなヤツに着ける薬ってのは存在しないのよ。
勝手に告白でもして腰でも振ってればいいでしょうよ」
そう言いながら、引き出しから消毒不要のパッチを一包装取り出して、男子にぺい、と投げつけた。
■ジャスパー > 心と体にけがをした生徒が飛び込んできたというのにこの先生は冷たい
だがそれがいい
異能を未だにあまり発展させられず、気を遣われたりすることも多い中
このばっさり感は逆にありがたい
「こ、腰とか…。いやそんな、猿じゃないんですからぁ
付き合って半年は手なんて出しませんよー」
照れ照れ
実際に誰かと付き合ったとしてそうなるのはその言葉より更に後になるであろう
何せヘタレである
放られたパッチを取ってベッドに座り、膝をまくり上げる
結構擦ったらしく、なかなか広範囲に擦過傷ができている…
「いやーでも冷たい事言っても、こんなパッチくれるなんて優しいんだからさぁ
惚れちゃいそうだ・ZE★
あ…、せ、せんせい。ごめんなさい…思ったよりえぐかったからもう2枚くらいちょうだい…」
馬鹿をやっているからケガをすることも多い
そして興奮のあまり目に入っていなかったため追加のパッチを懇願しよう
涙目である
■焔城鳴火 >
「ハァ?
思春期ど真ん中の癖にどれだけヘタレなのよ。
手を出す度胸もないなら部屋に籠ってマスでもかいてることね」
あまりにも情けない男子学生に浴びせられるのは、情けの欠片もない言葉である。
ただ、市販サイズではない医療用サイズの大きなパッチを、呆れつつも渡すのだから仕事はちゃんとしている――のかもしれない。
「だれかれ構わず惚れるとか言ってるようなヤツを相手にするわけないでしょうが。
相手してほしければ、私が興味を持てそうな事くらいやってみなさい」
ひらひらと手を払いながら、再び自分の椅子にどっかりと座る。
とはいえ、無理に蹴り出そうとはしない辺り、今日はまだ優しさがあるかもしれない。
■ジャスパー > 「マスとか、相変わらず刺激が強すぎるぜ…。
当然先生も最高だと思っているけどさあ…そうそう。ヘタレなんだよ~」
軽口を言いつつ、大きなパッチを貰って代わりに患部へ
うひぃ、とひんやりした感触に身震いするが、膿んだりはしなくなったため一安心である
ちなみにマスをかいているかは秘密である
ちょっと凹んでいたが、相手をしてもらえる条件を聞けばにやりと笑って
「……ほほう。
興味を持てそうな事をやれば相手してくれる、と言質取ったぜ
見な、俺の異能を……!」
録音しておいた先ほどの自分の叫び声を再生する
しかもリピート再生である
3回、『せんせええええええええ』という情けない声が響くことだろう
「…進歩ねえよな…もっと操れるようにって言うけどさあ。
これ以上どうしろっていうんだろうなあ」
一応録音の速度向上訓練などは行っているが、それが果たしてどうなるのだろうという疑問
煩悩は落ち着いたが、代わりに悩みが出てきた
■焔城鳴火 >
「――煩いヘタレ」
見な、と言われても当然の如く、学生の異能情報のほとんどは頭に入っているので目を向ける事すらない。
代わりに、シガレットチョコが真っすぐ男子の額に向かって飛んでいくだろう。
しかも、それなりの勢いで。
「進歩が無いのも当然でしょ。
お前、その能力で何ができるか、真面目に考えた事あんの?」
ぐる、と椅子を回して、足を組んで、腕を組む。
背もたれに寄りかかっているため、思いっきり見下ろしているような形になる。
「何のために、どうやって、能力を使うのか。
目的が無い努力なんて、どこまでやっても効率なんか上がるわけないでしょうが」
悩みに対しても容赦がない。
他の教員なら優しい言葉を掛けるかもしれないが、鳴火は躊躇なく切り捨てるのだった。
■ジャスパー > 「ぐえ。いてて…、ナイスコントロール…」
シガレットチョコが額に直撃してのけぞる
一応落ちたチョコを拾って膝の上に置こう
「やー、だってさあ~………………」
言い訳しようとしたところでん?と思う
確かに、能力からわかる部分を鍛えているだけ、と言われればそれまでだ
見下ろされるのもぞくぞくしている…というのも振り払い
「確かに、そーだなー
――昔っから持ってるせいで、その辺忘れてたかもしんねーわ」
あまりに身近にあったものだから、深く考えずに…いわゆる惰性で鍛え続けていた
大体の教師はそのままがんばれ、という程度であったから
そのままでいいのかぁ、という思いが積もっていた
「ふふーん。さっすが先生!さいこーだぜ♪
…ま、やれることはやってみるかっ、なーんも浮かんでないけどさ」
び、と親指を立てた
道筋が見つかれば厳しい言葉でもへこまない、バカの特権である
「さんきゅー先生!今度購買で何か買って来るわ!チョコ貰ってくよー
あ。先生も彼氏とか作るんなら頑張れよ!…何なら俺も立候補するぜ」
すっく、と立ち上がる
チョコを咥えて扉を開ける
余計なお世話であろうことを付け加えつつ、いい笑顔でお礼を言うだろう
■焔城鳴火 >
「――なまじ、昔から馴染みがあるもの程、本質ってもんを見失いやすい。
それは異能者も、私みたいな無能者も変わらない。
ま、精々、まずは地に足を付けて自分と向き合う事ね」
そう言いながら、しっし、と追い払うように手を振りつつ。
――一瞬こめかみに青筋が浮かんだ。
「余計なお世話が過ぎるぞ、ヘタレ。
――たく、お前を拾うくらいなら、豚でも飼うわ」
そしてうっかり左手で中指を立てそうになり――代わりに人差し指を立てた。
「私に構ってほしいなら、リングに上がって来い。
そしたら、徹底的にかまい倒してやるから」
そう言いながら、男子が去るのであれば、それを呆れつつ見送る事だろう。
■ジャスパー > 「豚は酷くね!?…いやでもあいつら結構すごいからな…」
もしかしたら負けるかもしれん、と真剣に危機感を抱いた
「リングは勘弁!
俺は…ほら、頭脳派!だからサ★」
すっかりおちゃらけた調子が戻った
ふごふごとシガレットチョコを咥えながら、騒がしい馬鹿は去っていった
ご案内:「第二教室棟 第四保健室」からジャスパーさんが去りました。
■焔城鳴火 >
真剣に豚と自分を比べる男子を冷ややかな目で見送り。
「ハア――あいつ、真っ向勝負でバカやってやがるわね」
個人的な好みで言えば、嫌いではないが。
指導する側としては、頭が痛い事この上ない。
「そのうち真面目にリングの上に引きずり上げてやろうかしら。
多少なり殴ったら、少しはマトモにな――らないか」
がりがり、とシガチョコを噛んで、呆れながら保健室の利用者リストに名前を書く。
一応、怪我の治療をしたのだから、書き留めておく必要があるのだった。
「あー――面倒くさ」
簡単に必要な事を書いてから、机に頬杖をついた。
退屈は嫌いだが、面倒も嫌いなのである。
だからではないが、面白いと思える来客が来ないかと、不機嫌そうな顔で待機してるのだ。
ご案内:「第二教室棟 第四保健室」に黒羽 瑠音さんが現れました。
■黒羽 瑠音 >
「おじゃましまーす……」
やや、というか結構もうしわけなさそーなひょろっとした声が自分から出る
いやぁ保健室に入るのって緊張しない……?独特な匂いとかしたりするし
「ちょっと異能の訓練中に火傷しちゃって……」
「塗り薬とかも家にあるので訓練所にいた人に聞いたら、保健室のどれかを訪ねなーっていわれて」
「というかめちゃくちゃ沢山あるんですね保健室、びっくりしちゃいました」
まさか保健室を選ぶ時点で悩むことになるとは思わなかったなぁ
ぴりぴりと痛む手と足、特に足の指先がじんじんするのでつま先を少し上げながら入るのである
あ、女医さんだった、ちょっとだけ安心かも、いや、男の人がいやってわけじゃないんだけどさ
■焔城鳴火 >
「――あ゛?
ああ――はいはい」
一瞬、不機嫌な調子のまま声と顔を上げてしまって。
緊張した様子の女子を目に留めると、やってしまったとばかりに頭を掻いた。
「悪いわね、ちょっとした悪癖。
火傷ね――こっち来て見せてみなさい」
そう言いながら、自分の前に椅子を転がせて引き寄せた。
「保健室が多いのは、まあ、単純に一つじゃ学園全体の面倒なんて見切れないからよ。
それに、教員によっても専門が色々あるしね」
机の上の棚から、薬箱を取り出して蓋を開ける。
緊張している女子生徒になるべく優しい声で話しかけながら、手招きした。
■黒羽 瑠音 >
「ひゃいっ」
「ぁ、はいっ」
最初のドスの聞いた……もとい、低い声に一瞬声を裏返してしまった
うぅ、普通に失礼だぞ私、とはいえ、先生も気にしていない、っぽい?
もしかして忙しかったんだろうか?私も夏休みの宿題を登校日数日前に駆け込みでやってる時とかカリカリしながらカリカリしてたし
「いえ、大丈夫です……忙しかったならごめんなさい」
「確かに……学園っていうけど、実際は街とか、或いは国っていう人もいるくらいですもんね」
そういって先生の前の椅子に座り、靴と手袋をとって差し出す
一応冷水ではあらったけれど、まだじゅくじゅくと赤くなっている手足の指先が自分にも見えた
とはいえ本当にただの火傷なんだよね、あんまり邪魔しないうちに帰った方がいいかな、何て思うけど
やっぱり始めてきた場所への好奇心も少しだけあって、少しだけきょろきょろと保健室の中を眺めてみるのだ
■焔城鳴火 >
「ごめんごめん、気にしないで。
さっきまでバカがいたもんだから、そいつ用の態度のままで迎えちゃっただけよ」
ばつが悪そうに、眼鏡を外して机の上に置いた。
それから少女の患部を見ると、もともと目つきの悪い顔が、さらにしかめっ面になる。
「黒羽、で間違いないわよね。
あんたの異能、『下位互換』だっけ?
なにを変換したらこうなるのよ。
随分と器用な火傷じゃない」
そう言いつつ、少女の手首を柔らかく握って、指先を観察する。
幸い、火傷としては浅達性Ⅱ度熱傷、範囲も狭く軽症ではある。
とはいえ、炎症と痛みがあり、体液の浸出も認められる以上、放置すれば痕が残るだろう。
「運がよかったわね。
もう少し深かったら外科手術も考えるところよ。
――たかが火傷、とか考えていたわね?」
手足の患部をよく観察してから、眉間にしわを寄せて少女を見た。
■黒羽 瑠音 >
「そうなんですか?」
思わずきょとん、とした顔になる、バカみたいと思われないだろうか
多分自分を安心させるためにいってくれたんだろうな、とおもってやっぱりちょっと申し訳なく思いつつ
「はい、黒羽瑠音です…… あー」
其処から続く言葉を聞いて少し気まずげな言葉が零れる
此処は正直に言うしかないよね、隠す理由も無いし……
手首に触れる柔らかで優しい感覚に、少しだけ気を解されながら言葉を続けるのだ
「私の能力は『何に変化するか』選べるわけじゃないんです、結果として、私が『変わってほしくない』同ジャンルの何かになるだけで」
「それで、ガラスコップの中の水を変化させたんですけど」
「どろっとした滅茶苦茶熱いのに変わって……思わず手が滑って手と足にかかっちゃったんですよね」
「冷やしてから気づいたんですけど、出来立てのシチューでした、具無しの」
熱湯より被害が出たのって多分そのせいなんだろうなぁ、と反省しつつ
自分が火傷した状況を出来る限り正直に答える、それくらいしかできないし
「う、わかっちゃいますよね……はい」
「反省します……次からはもっとちゃんとした手袋とか用意しようかな」
外科手術という言葉の響き、「たかが火傷」という見透かされたかのような続けての言葉
まるで見透かされているかのようできゅうぅう、と胸が締まってしまう
罰が悪そうに少しだけ視線を逸らしてから、それじゃダメだろ私、と首を振って視線を戻した
■焔城鳴火 >
「黒羽瑠音、熱傷、継続的通院不要、と」
少女の手首を支えたまま、片手で器用に書類に名前を書き込む。
「なるほどね、だから『下位互換』ってわけか。
具なしのシチューねえ。
面白い異能ではあるけど、本人にしてみれば扱いに困るでしょうね」
薬箱から消毒液、棚からステンレス製の深皿を取り出して、深皿の中にドボドボと消毒液を注いだ。
「別にあんたが謝る事じゃないでしょ。
あと、別に反省しなくてもいい、悪い事をしたわけでもないんだから。
それに――今からとびっきり後悔するから、嫌でも対策考えるだろうし」
『息を止めなさい』と声をかけてから、少女の手を消毒液が満たされた深皿に浸した。
消毒液に火傷した指が浸されれば、強烈に沁みるだろう。
しかし、少女が暴れたり悲鳴を上げたとしても、少女の手首を抑える手は、びくともしないだろう。
■黒羽 瑠音 >
「今思えばもーちょっといい名前もあったかもしれないんですけど、ぱっと思い浮かんだ名前が之だったので」
「まぁ、だからこそ学園に来たって所が大きいですから、上手い付き合い方……見つかるといいんですけど」
はふ、と息を吐きながら器用に仕事をこなす姿を眺める
最初はちょっと怖かったけど、こうしてみると何というか……出来る人、って感じもしてくる
てきぱきと治療の準備を整えてくれる姿は頼もしいくらいかも
「いやでも、私の事で時間を使わせちゃってるのは確かで… ぇ」
「ぃ"っっ!?」
手を掴まれたまま息を止め、その数瞬後には薬液の中である
っっっ
「っぃ~~~~!!」
っっっ たたたた、しみるしみるしみる!!
指が半ば反射的に動こうとするけど先生力、つよっっ!!
涙目、いや涙零れてる、もう零れてるよ之!!口閉じるので精いっぱいだって!!
「~~~~ ってぇ……」
結果、今の私の脳内は反省とか申し訳なさは一瞬で吹っ飛んでこれ一色です、さんはい
■黒羽 瑠音 >
はやくおわってぇ~~~~!!!!!
■焔城鳴火 >
「はいはい、悲鳴を上げるならどうぞ。
別に『第四保健室』で悲鳴が上がってもだれも気にしないから」
それはつまり、悲鳴を上げるような治療が必要な患者がよく来る場所という事。
当然、言いながらも、手を離してはくれないだろう。
そして、漬け込んでから三十秒ほど経ち、ようやく消毒液から手が引き上げられる。
「きっちり消毒するなら、おまけにしっかり擦り込んでやるんだけど。
まあ十分でしょ。
よく我慢したわね」
そう言いながら、少女の手にたっぷり滴るほどの消毒液を、大きなガーゼで柔らかく包むようにふき取っていく。
そして、次は独特の匂いがする紫色の軟膏をカーゼで掬いとり、火傷した指へ擦らない様に塗り付ける。
今度は幸い、沁みたりはせず、むしろ多少痛みが和らぐ様な感触だろうか。
「――はい、これでよし」
そう言いながら、半透明なジェルパッチで指一本ずつ綺麗に包んだ。
「このままニ三日置いとけば、綺麗に治るわ。
ああ、お風呂も手洗いも普通にやっていいわよ、沁みたりもしないから。
まあさすがにモノに触れば痛いだろうけど、一晩寝れば痛みは引くでしょうね」
そう言いながら、掴んでいた少女の手、その甲を優しくぽんぽん、と撫でる。
鋭い目つきは相変わらずだが、ほんの少し優し気に目が細められただろう。
「これは余計なお世話だけどね、黒羽。
あんたも女なんだから、傷跡が残るような事にならないよう気を付けなさいよ。
その年で傷物にはなりたくないでしょ」
そう穏やかな声で言って、少女の手をゆっくりと、少女自身の膝の上に降ろし。
――今度は反対の手を掴んだ。
「――さ、あと三回、気合入れていきましょうか」
にっこりと。
怖いくらいの引きつった笑顔で、そんな処刑宣告をするのだった。
■黒羽 瑠音 >
「ぅぅ~~~!!」
それこそ乙女の意地なんですって!最後の砦なんですって!
「っっ~~はぁあああ……」
何とか終わり引き上げられた手をぴくぴくさせつつ、軟膏を塗りたくられる
じんわりとした感覚に少しだけ涙が引いて
「あ、ありがとうございますぅ……」
いやまだ全然引いてないなこれ、息をすると零れてきそう
「はーい、助かります……お風呂は入りたいですし」
「わ、わかってます、そりゃあ私だって女ですし、その、はい、えっと……」
指が綺麗にパッチに収められていく手際は相変わらず滅茶苦茶いい、んだろう
こういう処置をしてもらった経験は正直ないので比較できないけど
手の甲を撫でられる感覚は何だかくすぐったくて、今までの痛みを少しばかり忘れられた、んだけど
「じゃあ、これ……ぇ”っ」
はい、そりゃそうですよねだってまだ片手だけですもんね、いやぁ参ったなぁ
全神経集中!声は、声だけは死ぬ気で抑える準備をするんだ黒羽瑠音!乙女の矜持のためにっっ!!
「ガ、ガンバリマス」
あ、顔も声もひきっつてらー、だめっぽい
■黒羽 瑠音 >
「~~~~っだぁあああああ!!」
結局、最終的には乙女もへったくれもない泣き声が保健室内に響く事だろう―――
■焔城鳴火 >
「――はい、よくがんばりました」
少女の両手足がしっかりと医療用パッチで包まれると、ようやく拷問じみた時間は終わりを告げる。
「なかなかいい悲鳴だったわよ、黒羽。
気分はどう?
二度と火傷したくない、って思ったでしょう」
いじわるそうににやりと口角を上げながら、精魂尽き果てて良そうな少女を見る。
とは言え、鳴火も鬼ではな――いや鬼かもしれないが。
少女の前に煙草の箱のような物を差し出して、その箱からは一本、煙草のような物が飛び出していた。
「ほら、一本あげる。
まだ痛むだろうけど、少しは気が紛れるでしょ」
そう言いう女医の表情は、どことなく楽しそうに見えるだろう。
■黒羽 瑠音 >
「ほぉおおお、ぉおお……」
「はぃ、がとうございましたぁ……」
絞り出すように声を上げながら大きく息を吐いて
足をばたばたさせたいけど今はそれやっても痛くなるだけなのである
「こんな目にあったら誰でもそう思いますって、うぅ、恥ずかしい……」
痛みよりも大声を出した羞恥心が勝ってる当たりギリギリで心は保てたと思いたい、うん
そんな私の前に差し出されるのは……タバコ?
「ちょ、私14歳ですよ?そーいうのは二十歳になってから、ってよくCMとかでやってるじゃないですかっ」
「…… あ、でも、えーっと、之って……」
いや冷静に考えろ瑠音、この流れで本当にタバコを進めてくる先生がいるか…?
もしやこれはフェイク…実際は別の何か、未成年でもOKなやつかもしれない
もしかして常世ならではの鎮痛的な効果のあるアイテムなのでは!?
取るべきか取らざるべきか、それが問題だ、と私は目の前で唸ってしまう
うんうん唸りながら顔をしかめっつらにしたり変な想像をしたりする私の表情はまるで百面相である
……っていうかよく考えたら先生に直接何なのか聞けばいいのでは?そうだ、そうしよう
「先生、これは本当にタバコですか!?」
なお、そもそも先生は別にタバコだなんて言ってないじゃん、という事に気づいたのは発言後である
後悔先に立たずってこういうことだね!
■焔城鳴火 >
「――――ぷっ」
少女の反応に耐え切れず、小さく噴き出して、顔を逸らした。
「く、くく――黒羽、あんた、なかなか面白いわ」
そう笑いを堪えつつ言ってから、差し出していた煙草のような物を自分の口で咥えて。
「シガレットチョコ。
今時のお嬢様には、縁遠いお菓子だったかしら?」
そう愉快そうに、揶揄うように言って、あらためてもう一本差し出した。
■黒羽 瑠音 >
「ぐっ―――」
反論の余地――無し!完全に治療の痛みで頭が回ってなかった気がするぞ私!
此処は深呼吸しておこう、すー、はー、すーはー……よし
「あ、シガレット…… し、知ってますよ、結構好きですし……」
「ありがとう、ございます」
思ったよりも普通の答えに、羞恥で真っ赤に染まった頬が少し冷静さを取り戻していく
今度こそありがたく受け取って、ぽりっ、と一口元気よく齧った
うん、おいしい
「その、何というか、さっきのとか今のとか、誰にも言わないでくださいね?」
「特に友達にあんな叫んでたの知られたら、恥ずかしくて死んじゃうかも……」
既に割と死にかけなんですけどね実際ね
ポリポリポリポリポリ
赤面は隠せないけどこれ以上恥ずかしい所を見せまいと、沢山シガレットを齧って頭を冷やすのである
■焔城鳴火 >
「へえ、知ってんのね。
地元に駄菓子屋でもあったりした?」
チョコを齧って元気そうな様子に、また面白そうにしつつ。
本物の煙草でも吸っているかのように、シガチョコを指で挟む。
小柄なものだから、やけにアンバランスに見えるだろうか。
「言うわけないでしょ、医者には守秘義務ってもんがあるの。
教員である前に医者なのよ、私は」
『教員にも守秘義務はあるけど』なんて言いつつ。
シガチョコを咥えて笑う様子は、あまり教員らしくも、医者らしくもないだろう。
「――ま、無理をするなとは言わないけど。
怪我をするのはほどほどにしときなさい。
それと、明日になっても痛みが引かない様だったらまた相談に来ること。
大丈夫だとは思うけど、軽症の火傷で一番怖いのは細菌感染だからね」
そう言いながら引き出しを開けると、新品のシガレットチョコの箱を取り出す。
「これはよく我慢したご褒美にあげるわ。
それと、火傷が治るまではルームメイトの連中に甘える事ね。
指先を使うような事は手伝って貰いなさい――髪を洗うとか」
やはりまた、揶揄うような人相の悪い笑顔で言うのだった。
■黒羽 瑠音 >
「ありましたよ~、ボトルに入ってる10円の飴とか人気で……」
「ふるーくて、隣、っていうか店内が床屋に繋がってて、大人しく髪を切ってもらうとご褒美に駄菓子を買ってもらえて」
懐かしいなぁ、何て笑顔を浮かべてしまう自分の現金さにちょっと笑っちゃう
「……ふふっ、それなら安心ですね、ありがとうございます、えっと……」
「何先生、でしょーか!」
此処まで来て気づくのである、名前を聞いていない、と、もしかして表札とかあったかもしれないけど
本当は最初に聞くなり確認するべきだった気がしてならないぞ私
「分かりました、何から何までありがとうございます」
「今度からちゃんと訓練所にも救急箱持ち込もうっと……ぅぅ、そこは、はい」
「アリガタクイタダキマス……」
ルームメイトにお願いする自分を想像して、はぁ、とやっぱりちょっと赤くなってしまう頬を両手で抑えて
よいしょ、と意を決して立ち上がる
「長居するような場所でもないですし、そろそろお暇しますね、本当にありがとうございました」
「またお世話にならないようにしますねっ」
ぺこん、と頭を下げて改めて治療にお礼を言う
心を込めて、なんて大層なものでは無いけれど、それでも改めて言う事は大事だと思う
■焔城鳴火 >
「いいわね、そういう場所。
うちの近くにもあったのよ、面倒な口うるさいばあさんがいてね」
ほんの少し、懐かしむような気持になる。
――もう、当時のようには戻れない。
「――ああ」
教員の名前なんて学生からしたら重要でもないだろうに、なんて思いながら。
背凭れに凭れながら目を細めた。
「焔城鳴火」
歯だけで軽くシガチョコを咥えたまま、端的に名乗った。
「あのね黒羽、念押ししておくけど、素人療法で治療したつもりになるんじゃないわよ。
最低限の応急手当したら、ちゃんと保健室なり病院になり行く事。
今回だって、もう少し深かったら病院に放り込んでやってたところよ」
そう言いつつも、下げられた頭には、手を伸ばして。
ぽん、と優しく、少女よりも少し小さな手が頭に触れるだろう。
「黒羽、一人で頑張らないようにしなさい。
人間ってのは、どこまで変わったところで、一人じゃ生きられないもんなのよ」
そう言って静かに手をはなし。
「またいつでも来なさい。
暇つぶしでも、悩み相談でも。
コレ、を咥えにでも、ね」
指で挟んだシガチョコを少女に向けながら。
どことなく、嬉しそうな表情――には見えない笑みを向けた。
■黒羽 瑠音 >
「あはは、何処も同じなんですね、そういうのって」
ちょっとだけ共通の話題が出きて少しだけ声も気持ちも弾んじゃって
「焔城先生、ですね!えへへ、ありがとうございます」
自分を治療してくれた人の名前も知らないまま何て失礼にも程がある
そんな当たり前の事をスルーしなくてよかったぁ、と心底ほっとするのである
「う、わかってます、よー」
「でも、出来る事はちゃんとしないと、頼るのも頼られるのもしっかり意思表示しないと」
「伝わらないってことほど怖い事は無いって母さんもいってましたから」
自分なりの信念……っていうには大げさだけど、守っている言葉を焔城先生に伝えて微笑んだけれど
頭に乗せられた手の暖かさに無性にくすぐったくなって直ぐに崩れてしまった
何だろう、焔城先生って結構心配性なんだろうか、何て思ったのは閉まっておこう
「ふふ、何でも屋みたいですね、それならまたそのうち、お邪魔するかも、です」
「それじゃあ、またっ」
「お邪魔しました~~」
踏みしめた脚から伝わる痛みはささやかで、パッチの力と治療の成果が伝わってくる
さて、どう頼もうかなぁ、なんて頭の片隅で考えながら、くるりと出口で向き直り
もう一度だけゆっくり頭を下げてから保健室を後にする
……いい先生にあえたなぁ、なんて口元を緩ませながら
ご案内:「第二教室棟 第四保健室」から黒羽 瑠音さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 第四保健室」から焔城鳴火さんが去りました。