2024/06/10 のログ
■橘壱 >
「通りすがりで顔を合わせた位さ。名字が同じだから、そうなんじゃないかって。」
有名人かどうかも知らないし、興味もない。
素っ気ない言い方が、他人への興味の無さを物語る。
戸惑う彼女を一瞥し、無機質に鈍く輝くトランクに視線を落とした。
「……どうにも、興味の無い事しか熱意がわかなくてさ。
ソレが今の生きる意味にもなっている。……僕が常世学園にきた理由はそこさ。
企業の広告塔。外の世界のデカい企業に見定められてね、ソイツを示すために風紀にいる。」
「────"闘争"。兵器の価値。」
一見トランクにしか見えないそれこそが、AF。
「戦うのが好きというよりは、トランクを動かすのが好きなんだ。
でも兵器だからね。そこに付随するのは戦いだ。だから、僕はずっとそれを求めてる。」
「そして、それで誰よりも一番になりたいと思っている。」
戦いが好きな訳では無いが、その兵器の使い方がそうならそこに準ずる。
力で全ての頂点に立つ、傍から聞けば余りにもチャチだろうけど、少年は"本気だ"。
本人曰く、"負けず嫌い"、そして語ることを濁した理由。
何よりも、頂点に至るには"他人を蹴落とす"事で手に入る地位だ。
敵とは言わない。だけど、何時か蹴落とす対象。
目指す目標がそうであれば、少年の言葉は必然的にそうなるのだ。
それこそ自らの特技を語る子どものような無邪気さ、純粋さで少年は語った。
混じりっけもない子どもっぽさ。故に、人によっては狂気、獰猛。そんな色さえ見えるかも知れない。
■伊都波 悠薇 >
「兵器」
キョトンと、言われたことのスケールの大きさに間が開く。
「…………それ、ホントに戦いだけでしょうか」
自分は聞いているだけだとそう、感じた。
「使い方、それしかないんですかね。私には、分からないですが」
こくりと、喉を鳴らして飲みきって。
「私は、あなたのことよく知りません。何に興味があって、なにに興味がないのかは知りませんが」
勝手なことを口にするが。
「勝手を承知で、今までの会話から言うならば。他人の定規で、競い合っているように感じます」
たんたんと、他人だからこその無遠慮。
あれ、なんでこんなこと口にしているのか。
あぁ、もしかしたら“姉”と関わったからかとも思う。
「自分で決めた、使い方で一番という選択肢はないんですか?」
首をかしげて、少年ー見た。
さらり、髪が流れて覗く、左目のホクロ。
■橘壱 >
徐ろに少年は足を振り上げ、思い切りトランクを"踏み潰した"。
トランクがひしゃげたと思えばそれは徐々に立ち上り、二人の目の前には蒼と白の鉄人が現れた。
人と同じ姿をしているが、何処までも冷たい鋼鉄の蒼白。
「……人型汎用パワードスーツ。AssaultFrame。
アメリカの大企業が開発したパワードスーツ。民間用にも、軍用にも販売されているモノ。
僕はAFの有用性、ひいては僕の有用性を認めさせる為に常世学園に入学した。」
今でもテレビCMとかで、此の手の商品の宣伝はごまんと流れている。
此れもその中の一つであり、これらの価値を示すために少年は常世島へやってきた。
最先端のモデルケースとされるこの島なら何よりも申し分ない実験場となるからだ。
「……確かにコイツの技術の大元は義肢、医療技術が使われている。
事実、機能として存在しているよ。医療モード、人を救う機能が。」
ある意味、彼女の言うことは間違いじゃない。
髪の隙間から覗き込み彼女の瞳を、何処までも純粋に真っ直ぐな碧が見据えた。
「────そう言われたのは、初めてだ。」
不快感もない。興味深いという相槌。
「けど、此処に来るのも、兵器として見定めたのも僕自身がそう決めた。
何よりも僕のAFは、軍用だからね。闘争を行うための力。間違った使い方じゃないさ。」
「コイツを動かすことが何よりも楽しいし、一番の使い道が闘争なら迷いない。
そして、目的が闘争なら……僕は喜んで自分の命を賭けることすら厭わない。」
生き甲斐なのだ。もしそこで命を落としても、そうしたら"そこまでの人物だった"だけ。
そして、そこで一番になるということは、力で全てをねじ伏せて頂点に立つという事。
子どもが描くような絵空事を、少年は本気で実現しようとしていた。
だからこそ、立ちふさがるものは尽くねじ伏せ、蹴り落とす。そう宣言したのだ。
狂気を底に秘めて、本気にしているからこそ、得意気に語る。
「……"好きなように生き、好きなように死ぬ"。僕の芯だ。
…………ただ、まぁ、なんだ。"そうでない"、と真っ向から言ってくるのは、アンタで二人目だ。ちょっと考えはするかな。」
…但し、此処は少年だけの世界ではない社会だ。
この島にきて、何かを説かれたその狂気には綻びがあった。
コツン、と鉄人の脛を蹴ればまるでオモチャのように一瞬でトランクに戻った。
「……そんなに僕って、他人のレールで動いてるように見える?」
純粋な疑問だ。
■伊都波 悠薇 >
「だって、企業に言われたからそうしてるって言ってるじゃないですか」
だから、そう感じたと口にする。
「あくまで、言っていることを鵜呑みにするのなら、だけの話ですから」
飲みきった缶を横に振り、中に何もないことを確認してから立ち上がりゴミ箱へ。
「まずは、下地を整えるのが良さそうな気がします。どう使うのか、どう使えるのか、自分の目指せる方向はどれがあるのか」
自分の異能のときと、おなじ。
「がんばってください」
応援をして、からんと缶を捨てたあと。
「それじゃ、私はこれで。失礼します」
ぺこりお辞儀をして、去ることにした。
ご案内:「第二教室棟 ロビー」から伊都波 悠薇さんが去りました。
■橘壱 >
「……言われたから、ね。」
それはその通りだ。けど、そうしなければ舞台にすら立てやしない。
何の取り柄もない非異能者には余りにも酷な言葉だ。
だけど、それは甘んじて受け入れよう。そこまでは事実なのだから。
「ああ、悪いね。わざわざ付き合って貰って。また。」
そのまま彼女を見送れば、はぁ、と深い溜め息を吐いてもたれかかった。
片手で顔を多い、なんとも苦々しい表情のまま首を振った。
「言ってくれるな……。」
例えそのレールに従って入学していたとしても、この力は既に自分のモノだ。
この学園に来た時から、それを成し得ている道筋は全て、自分自身が決めること。
それが、自分の、自分だけの"闘争"だ。
……けど、それだけではダメらしい。
他人を知って、どうなると言うんだ。何時か蹴落とす相手だと言うのに。
それでも彼女たちの言葉が胸に残っているのは人間としての善性なのか。
それとも、異能者だから言えることなのか。
──────気安いものだ。
「……異能者でもない非異能者。
武術も、剣術も、魔術の適正さえないのに、どうしろってんだよ。」
誰にも言えない心底を吐き捨てれば、トランクを拾い上げ立ち上がる。
「…………。」
卑屈になっても仕方ない。
下地なんてものを作って何になるんだ。
それこそ証明してやる。"力"で。
密かに胸にしまい込んだ闘争心を燃やし、静かにその場を去ったのだった。
ご案内:「第二教室棟 ロビー」から橘壱さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 第四保健室」に焔城鳴火さんが現れました。
■焔城鳴火 >
「――で、あんたはその、なに?」
『テンタクロウくんよ、めーちゃん』
「そうそいつ。
そいつの事で巡回があるから帰りが遅くなるって?」
端末の投影する立体映像は、わざとらしく、頬に手を当てて困ったような顔をしている。
対して鳴火は、心底不愉快そうなしかめっ面である。
『そうなの。
だから、今日はよろしくね、めーちゃん?』
両手を合わせて朗らかに笑う映像に、眉間を抑えて溜息をつきながら一方的に通信を切った。
「はあ。
――面倒くさ」
大きな背凭れに凭れかかりながら、煙草のような箱から、煙草のような物を一本つまんで、口にくわえていた。
放課後の保健室は、珍しく静かだった。