2024/06/13 のログ
■焔城鳴火 >
「あとは――『凶風』が三つ、『戮仙』が一つ、『紅天』が一つ、か」
机の上に、小さな獣の爪のような物を三つ、小さな亀の甲羅を一つ、真っ赤な牙が一つと並んでいる。
これらは、いずれもが、この島に赴任する事になった時に、幼馴染らから渡された魔道具だった。
「『麒麟』と『饕餮』にはメッセしとくか。
『応竜』は――うげ、また履歴溜まってるし」
メッセンジャーアプリを開いて、普段ミュートしている相手との履歴を確認すると、大量の未読メッセージが滝のように流れていた。
鳴火が『応竜』と呼ぶ幼馴染の男は、こういう頭のネジが消し飛んでいるところがあるのだった。
「ま、ったく。
どうせ構うなら嫁の事かまってやれっての。
――うげ、嫁の方からも着てる」
『応龍』からのメッセージは支離滅裂なため、いつも通り完全無視をするが、その妻の方からのメッセージは、本土の方で何があったか日々の喜びが送られてきている。
無視するのも気まずく、『相変わらず楽しそうでよかったわ』とだけ、メッセージを返した。
「――はあ。
荒事は私の担当じゃないってのに、迷惑な話だわ」
などと言いつつも。
その表情は珍しく機嫌が良さそうに口元が緩んでいた。
ご案内:「第二教室棟 第四保健室」に黒羽 瑠音さんが現れました。
■黒羽 瑠音 >
「そーっ、と」
そう、そーっと保健室の扉を開ける
前に言っていた焔城先生の言う通り、空いた時間でやってきた私である
「おじゃましまーす……」
一応手は完全に治っている、あの悲鳴の意味はあったんだなぁ、としみじみ思いつつ
椅子に座る先生の背中が見えた、あれ、何か首につけてる……湿布?
やっぱりお仕事大変なのかなぁ、何て思うけれど、取りあえずは他に患者さんはいないみたい
「えへへ、遊びに来ちゃいました、まぁ、悩み?も無い事もないんですけど……何て」
「あ、手はしっかり治りましたよ、ほら!」
そのまま、扉を閉めてゆっくりと先生のいるテーブルへと近づいてから両手を差し出して
しっかり治ったアピールをしておこう
■焔城鳴火 >
「――ん?」
小さな足音が保健室の前で止まり、ゆっくりと扉が開いた。
そこには見覚えのある学生の顔。
「ああ、よく来たわね、黒羽。
別に悩みやケガがないからって、出禁にはしないわよ」
そう言いながら、近づいて差し出してきた手をそっと持ち上げるように支えつつ。
「――ん、痕も残ってないわね。
よろしい」
ぺしん、と。
褒めるような気やすい調子で、ぺん、と少女の手を叩いた。
「それにしたって、遊びに来ても大したもんはないわよ。
遊び場ってわけでもないしね――ああ、いる?」
そう言って、差し出したシガレットの箱から一本、シガレットチョコが飛び出す。
差し出している鳴火の表情は、どことなく満足げで機嫌が良さそうに見えるだろう。
■黒羽 瑠音 >
「やーでも、前に通ってた学校だと要も無いのに保健室に行くのは割とタブーでしたから」
でも、思い切ってえい、ときてみました、とちょっと照れ臭そうに笑って
「わっ、とと」
「はい、先生のおかげです、ありがとうございます」
ぺちん、と手を打ち付けあう、痺れるわけじゃないけれど、思わず手をきゅっと軽く握って
何だろう、先生、前よりテンション高い?
「あ、この前の……はい、いただきます」
「割とよく買ってるんですか?私も今度買いに行こうかな、スーパーで売ってたっけ」
ぽりぽりとチョコを齧りながら前よりかはリラックスして椅子に座る
そうすると自然、今の先生の雰囲気に気が回るわけで
「……あのー、先生、何かいい事あったんですか?」
あからさまに機嫌がいい様子に好奇心が刺激された私は、そのまま質問を投げかけてみたりするのだ
■焔城鳴火 >
「ま、普通の学校じゃそうでしょうね。
ここは――保健室が気安い場所である方がいいと思うし」
そう言いつつ、自分のシガチョコを齧りながら、シガレットチョコの箱を見せた。
「ああこれ?
この島にも面白い駄菓子屋があんのよ。
『おおげつ』っていう駄菓子屋。
みのりって小さいロリータ好きなヤツが店主やってるとこよ」
『調べればすぐ見つかるんじゃない?』と、自分が常連客として通っている駄菓子屋を教える。
行くと多少驚く事になるかもしれないが――それもまた面白そうだと思いつつ。
「――ん、私?
別にいい事なんかないわよ。
首も背中も痛めるし、虎の子の魔道具を三つも使っちゃったし」
そう言いながら、ため息をしつつ気だるそうに首に手を当ててゆっくりと回す。
ただ、言葉のわりにはやはり、声音が若干明るいか。
■黒羽 瑠音 >
「そうなんですか?まぁ……怪我人は結構でそう、ですけど」
ふむぅ、と思わず唸ってしまう、確かに色んな能力があるなら、それによる事故も起こるよねえ
私自身もそれでこの前やってきただけに、それなら気安く来れる場所の方がいいというのは分かる気がする
「おおげつ、へぇ、そんな場所が……」
「いいですね、私も駄菓子好きですから、今度行ってみます」
ロリータ好き、ってどういう事だろう、確かロリータファッションってやつがあるんだっけ?
確かこう、ファンシーな奴……
頭の中で浮かぶ『おおげつ』は、ロリータファッションに身を包んだ小さな城のような外観の駄菓子屋だ
「え、大丈夫なんですか?……魔道具?」
「魔法の、道具?こう、魔導書とか杖とかみたいな……」
先生の口から出た言葉に思わず目を白黒とさせる、いや、そりゃ先生だって此処に住んでいるし
普通じゃない能力を持ってるのは当然……じゃなくって!痛めてるって何か怪我でもしたんだろうか?
「大丈夫ですか?いや、私がいまさら言う言葉じゃないとは思うんですけど」
「……か、肩もみでもします?」
悩んだ末に肩もみの仕草を空中で取る、之でも父さんには昔『瑠音は肩もみ名人だなぁ』と言われたことが……
いや絶対あれはお世辞でしょバカ!
と自分ツッコミを入れるが、既に言葉と手は動いてしまっているのである
■焔城鳴火 >
「くく、ああ、行ってみなさい。
なかなか面白い場所よ。
ま、行ったら感想でも聞かせなさいな」
あの店主に会った時、この少女がどんな反応をするか、楽しみではある。
直接その場で見れないだろう事が惜しまれるくらいだ。
「ハ、そんな大それたもんじゃないわよ。
その机の上にあるやつ」
机の上には、手の平に握り込めるような大きさの獣の爪と、牙。
あとは小さな亀の甲羅が散らかっている。
「大丈夫、って言うには痛いけどね、平気っちゃ平気か。
ちょっとばかり、落ちてきた人間を受け止めただけよ」
ちょっとというには、普通、人間が落ちてくることはないのだが。
なんてことないように言うのである。
「んー、カタモミ?
なによ黒羽、別に私に媚を売っても、保体の評価は上がんないけど?」
そう言いつつも、すでに身構えている少女を見れば、面白そうにうっすらと笑いつつ。
少女に背中を向けるように、椅子に座り直すだろう。
■黒羽 瑠音 >
「確かに面白そうですね……いってみます!」
ごくり、と息をのむ、焔城先生がおすすめする場所がどんなところなのか、今からわくわくする、かも
「……お守り?」
机の上に乗った『魔道具』を見て最初に出た感想はそれだった、こう、何というか
神社でかったお守りとかの中に入ってそう、みたいなそんなイメージの外観
「あ、そうなんですか、なーんだ、落ちてきた人間を受け止めただけかぁ」
「……」
「いやそれ結構大変じゃないですか!?私だったら絶対腰どころかそのまま一緒に潰れちゃいますって!」
どれくらいの高さから落ちてきたのかは分からないけれど、重力と共に落ちてくる人間を受け止めるって
赤ちゃんでもなければ相当な負担だよね、魔道具の力なのか、それとも先生が見た目より怪力なのか
……之は聞かないでおこう、場合によっては失礼になっちゃうし、うん
「そんなヒキョーな真似しませんよ~ただ単に、この前のお礼だと思ってくれれば」
ともあれ、肩もみの許可は貰ったのでそのまましずしずと近づいて、よいせっと肩に手を当てる
もみもみ……ちょっと強めの方がいいかな、よいしょ、っと……!
「どうですかー?」
ぐい、ぐいっと首の付け根から肩にかけて、手の甲を押し付けるようにしながら揉んでいく
むかーしこういうやり方がいい、って本で読んだうろ覚えだけど、まぁ適当にやるよりマシだよね
■焔城鳴火 >
「あー、そうね、お守りみたいなもん」
実際、そんな風に見えるだろう。
そして事実、似たようなものではあるのだ。
「そりゃあ、あんたとはフィジカルの鍛え方が違うからね」
驚く少女に、ふ、と鼻で笑う。
「これでも一応、格闘技の界隈じゃそれなりなのよ。
医者になる前は試合でお金貰ってたし――ったた」
首のスジを押されると、痛めた筋肉に響いたのか声が漏れる。
軽く揉んでみれば、筋肉がかなりしっかりと着いてるのが分かるだろう。
「黒羽、首の近くは避けてもらえる?
痛めてる所を押されると流石に痛い――あー」
それでも揉まれると、痛めたせいで強張っていた肩回りが心地よい。
「揉むときは手の力だけじゃなくて、身体の体重移動を使って揉みなさい。
あとは手首よりも肘と肩を動かして揉むように。
手先だけでやると疲れるし、なにより手首を痛める」
なんて、痛いと言いながらも怒らず、アドバイスをする辺りでもやはり機嫌が良いのは間違いない。
「ま――今の世の中、なにが起こってもおかしくないって事よ。
空から女生徒が落ちて来る事もあれば、馬鹿でかい蜘蛛に襲われることもある。
私も落ちてきたやつも、死ななかっただけ運がよかったわね」
そう、簡単に、かつ軽い調子で、遭遇した事件の事を話す。
本当は居合わせた異邦人の少女に助けられたわけだが。
自分以外の事までは話さなかった。
■黒羽 瑠音 >
「実際に力があるお守り、かぁ、いや、私が知ってるお守りにも、実際は力があるのかもしれないけど」
「之って、先生が作ったんですか?」
それはそれとして、ちょっとおしゃれでもある、流石に何時もぶらさげてるのは微妙かもだけど
「そーですか……おお、プロって奴だったんですね、私プロレスと柔道くらいしか知らないですけど」
「あ、ごめんなさい、えっとこんな感じで……」
むむこの筋肉、確かにこれは父さんよりよっぽど、とか考えてたらあっ、あっ、確かに怪我してたら勝手違うよね
怒って……はいないみたい、よかったぁ、よし、じゃあアドバイスに従って
「よい、しょっと、体重……それと肘と肩を活かして……」
「んっ、せ……」
ちょっとずつ動きを最適化していく、多分こんな感じかな……?
確かに最初より自然にもめている気がする、やっぱり本職は違うなぁ、なんて思ったりして
「死ななかっただけ、運が良かった……もう、じゃないですよ!」
「冗談かもしれませんけど、先生がいなくなったら悲しいです、蜘蛛だか蜂だか知りませんけど」
「まぁ、私がどうこう言える立場じゃないのは分かってますし、何か出来るわけでも無いですけどね」
それでも心配なものは心配なのだ、身勝手かもしれないけれど
それに、同時に思う
「でも、そんな事に巻き込まれるかもしれないなら……やっぱり、私も」
「元から魔術は使えるなら使ってみたいと思ってましたし、習ってみようかなぁ」
「異能が身を守るのに役立てられればいいんですけど、生憎まだまだそんな事もなさそうですし」
何てぼやきながらもせっせと先生の肩を揉んでいくのです
■焔城鳴火 >
「自分で作れるんなら、楽でよかったんだけどね。
お守りにもピンからキリまであるから、なんとも言えないわ」
確かにちょっとしたお守りとして身に着けるには、案外、見た目は悪くないかもしれない。
とはいえ、少々個性的ではあるだろう。
「いわゆるセミプロ、ってやつ。
レスリングも柔道もやってたわよ。
ま、一番名前が売れたのはキックボクシングやってた時かしらねー」
少しずつコツを掴んでいく少女の肩もみに、はあ、とリラックスしているように息を吐いた。
しかし、すぐに真剣な声になるだろう。
「冗談にならないのが、笑えないところね。
私みたいな無能力者は、バケモンに軽く絡まれるだけで死ぬ。
どこまで行っても、今の世界じゃそれが現実なのよ」
異能であれ、魔術であれ、怪異であれ。
超常のあらゆるものが、あらゆる能力や適性を持たない『少数派』には脅威であり、致命的なのだ。
「――まずは巻き込まれない生活を心がける事ね。
もちろん、身を護る方法を身に着けるのは悪い事じゃない。
ただ身を護る術は、同時に誰かを傷つける暴力にもなる事を忘れるんじゃないわよ」
肩を揉まれつつも、真面目に『力』というものが何なのかと話す。
手を伸ばして、亀の甲羅をひょいと手に取った。
「これだって、使い方を間違えれば誰かを殺す事ができる。
たとえ私が身を護れるように、幼馴染たちが用意してくれた『お守り』だとしてもね」
ふ、と自嘲するように笑いながら、亀の甲羅を再び、机の上に放り投げる。
「黒羽、もういいわよ。
ありがと、最初に比べてなかなか上手くなったわね」
そう言いながら、『お駄賃』と言ってシガレットチョコを一箱、少女の手に載せるだろう。
■黒羽 瑠音 >
「へぇ、じゃあ伝手、ってやつですか」
そういうのもちょっと憧れるなぁ、なんて感じつつ
「キックボクシング!っていうか色々マルチにやってたんですね先生」
何だろう、なんとなーくだけどイメージには会う気がする、まだあって二回目なんだけどね
きっとリングでの先生、かっこいいんだろうなぁ、と、最初に会った時の雰囲気を思い出しつつ
「あははー、巻き込まれる事なんて、無いと思ってましたし」
「実際、今まで一回しかそういう事は無かったんですけどね」
正直、鮮烈さ、という意味では先生から受けた消毒の方が上だけれど
それでも此処に来る切欠となった事を忘れた事は無い、巻き込まれた、なんて被害者ぶるのは簡単だけど
「でも、誰かを傷つけようとする人の前にたてるのが自分だけだったなら、なんて」
「そう思っちゃうのは、悪い事なんでしょうか?……なーんて」
「私何て、基本立ってもらう方なんですけどね!」
「巻き込まれないように、それで迷惑をかけないように気を付けて生活します」
「もし何かあったら、皆心配するでしょうしね」
先生が言っている事はきっと正しくて、厚意によるものなんだろう、それはよくわかる
無理して背伸びしたって、きっといいことに何てならないのだ
私だって傷つけたいわけじゃないし、そんな事が無ければきっといいとは思う
……此処については、私自身がもっと自分の考えをまとめるべきところなんだろうなぁ
ともあれ
揉み揉み、ぎゅっぎゅっ、自分なりに優しく、労わる様に揉み続けた肩もみも終わりを告げた
「……それは素敵な幼馴染さんたちですね、ふふ」
そのお守りが、先生の幼馴染によるものと聞いて、素直にそう思った
先生の優しさも、きっとそんな人たちとの日々で培われたものなんだろう
私よりずっとずっといろんなものを見てきたその目と言葉に、今は人生の後輩として聞き入るばかりってやつだ
「おっとっと、わーい、ありがとうございます!」
「ふふふ、之だけあればルームメイト皆に配れそうかも、本当にいいんですか?」
……結局、今の私が受け止められる重さは、精々このシガレットチョコくらいなんだろうなぁ
■焔城鳴火 >
「――悪い事じゃないわよ」
少女が冗談めかした言葉に、呟くように答えた。
もし。
鳴火があの日、誰かを救いたいと思わなかったのなら。
焔城鳴火という医者は、この世界には存在しなかっただろう。
もし。
鳴火があの紅天の日に、友人たちを守りたいと思わなかったのなら。
焔城鳴火という格闘家は、この世界に産まれなかったことだろう。
だからこそ、その思いは否定しない――否定できない。
けれど、なによりもそんな思いを強いたこの『世界そのものを憎んでいる』鳴火は、少女の様に優しくはなれなかったのだ。
「――ばーか」
呆れたような声は、いつもよりも覇気がなかった事だろう。
それを優しく感じるのか、弱弱しく感じるのかは、人によりけりだろうけれど。
「あんたはまず、上手な迷惑のかけ方を覚えなさい。
誰かに頼って、助けてもらえるように、誠実な生き方を学ぶこと。
あんたは私と違って、そういう生き方が出来る子よ」
そんな事を言いながら改めて、椅子に座り直して少女に向き直った。
「ふん、くそったれな腐れ縁よ」
そう幼馴染たちの事を口悪く言いつつも、視線は自然と机の上に向いていた。
鳴火が何よりも『守りたかった』もの。
そして――『二度と戻らない』ものでもある。
「なによ、ルームメイトが居るならその分もあげたのに。
別に高いもんでもないんだから、遠慮なく貰いなさい。
子供がそんな駄菓子一つで大人に遠慮すんじゃない」
そう言うと、再び、本物の煙草を吸うかの様に、箱を軽く叩いて一本だけ取り出すと口に咥えた。
■黒羽 瑠音 >
「…… ?」
意外、だった、目の前のこの人が、何よりも『先生』なら、きっと軽く嗜めてくるだろうな、と思ったから
同時に、少しだけ胸がざわめいた、なんだろう、ばつが悪い、みたいな、そんなちょっとだけきゅん、とする気持ち
「あ、あはは、 バカだなんてひどいじゃないですかっ」
それをかき消すように言うその言葉は、何処か……
ううん、多分それは、今の私が言葉にしてはいけないものなんじゃないか
何となくそう、思った
「誠実な、生き方ですか」
「保険医なのに、まるで道徳の先生みたいですね」
「褒めてくれてる、のは分かるんですけど、えへへ」
「はい、じゃあ先生にも、困ったら頼りますね」
きっと自分が今返すべき言葉はこういうものなんだろう、と小さい頭で考える
其処にどれだけの意味や思いが籠っているか考えるには、やっぱりまだ私は子供すぎるんだろうな
「……じゃ、遠慮なく、子供の特権って事で」
だから今は、子供らしく大人に甘える事にしようと決めて、くすくすと嬉しそうに笑ってみるのだ
こうして、保健室に遊びにこようと決めた時の様に
■焔城鳴火 >
「保体の教員なんて、半分道徳の教員みたいなもんよ。
はいはい、どうぞお好きに頼りなさいな。
――死んでさえいなければ、何とかしてやるわ」
シガチョコを噛みながら口元を歪めて生まれるのは、意地悪な笑みだった。
「はん、そうしてなさい。
子供でいられる間は、子供らしくしてりゃいいのよ。
どれだけ子供でいたくても、いつかは大人にされるんだからね」
子供の様に――否、子供らしく。
笑った少女の頭に、以前と同じように手を置いた。
「まあ、遊びに来る分にはいつでも来なさい。
甘やかすつもりはないけど、甘え方くらいは教えてやる。
とりあえず、今は学生として、子供として、限られた時間を思いっきり楽しみなさい」
それは恐らく、自分に足りていなかったもの。
子供としても弱者としても、他者に甘えられなかった。
そんな鳴火に出来る事は、自分に出来なかったことを反面教師として伝え教えていくことくらいなのだから。
■黒羽 瑠音 >
「死んでさえいなければ……いや、流石にそんな切羽詰まったお願いをする予定は無いですけどっ」
さっきの事を考えると割と冗談に聞こえない言葉と笑みに、一瞬だけぶるっと震えちゃった
「……そうします、やりたい事、今はまだまだ一杯ありますから」
「だから、また遊びに来ますね?先生」
頭に手を置かれながら、じっと先生を見上げる
今の私の瞳は、一体どのように見えているんだろうか、なんて
「とりあえず……次は駄菓子も持ってきちゃいましょうか!」
「先生のお気に入りの店で、私もお気に入り、見つけちゃいます」
だから楽しみにしててくださいね、何て言って部屋の出口へと向かう
保健室に駄菓子を持ち込むというのはちょっとどうかと思われそうだけれど
まぁほら、そこは汚れにくいのを選ぶって事で、一つ
「じゃあ、また!」
最後に、自分に出来るとびっきりの笑顔をしてから頭を下げてから私は保健室を出るのであった
■焔城鳴火 >
「――はいはい、いつでもどうぞ」
じっと見上げる少女の瞳は――あまりに眩しく。
濁り切った憎悪の焔にくべるには、清澄に過ぎた。
だから、困ったように笑うしか、鳴火にはできなかった。
「あのねえ、ここはお茶会する場所じゃないの。
でもまあ――面白い物でも見つけたら持って来なさい」
そう答えて手を引くと、眩しい笑顔を向ける少女に――
「ふん、また、ね」
笑い返せた自信は、無かった。
ご案内:「第二教室棟 第四保健室」から黒羽 瑠音さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 第四保健室」から焔城鳴火さんが去りました。