2024/07/08 のログ
ご案内:「第二教室棟 深夜の廊下」に竜胆 襲さんが現れました。
竜胆 襲 >  
太陽が沈み、月が煌々と学園を照らす。
時間にして深夜、23時30分。

当然、学園内に残っている人間はそう多くない。
既に講義も終わり人気のなくなった廊下なんて、尚の事。

なので、そこに佇む黒い外套の女生徒は否応なく、目立つ。

手元には学生手帳。
最近発売されたばかりの最新バージョン。
それに僅か細められた視線を落とし…。

「……まだ噂にはなってないけど、SNSでは放課後の目撃例が出てる」

「ミコちゃんの占星術で出た結果の通り…数が増えてるのかもしれない」

ぽつ、ぽつ…と独り言を零し、月灯りで比較的明るい廊下を歩いてゆく。
ローファーが叩く、硬質なタイルの音がいやに大きく聞こえる…。

竜胆 襲 >  
視界の中、素早く隠れた黒い影を捉えた。
小動物、多分…兎とか、猫くらいの。
あれくらいなら多分、被害はない。
一般生徒が遭遇したとしても、…うん、びっくりする程度。

手元に視線を落とす。
SNSでの目撃例を探すと、夜間の学園内で黒い影を見た…という投降の中には。

『人型の』

という文言も見られた。
…可能なら、被害の出ないうちに。

少し早足に、小さな黒い影が隠れた曲がり角へと歩いてゆく。

竜胆 襲 >  
角を曲がると、階段の下…奥まった場所にそれ()はいた。
小さく縮こまって、こちらを警戒する様に。
…此方を襲ってくるような様子は見せない。

「───……」

眼を凝らすように、その影を見つめる。
やがてそれ()の輪郭がぼやけてゆく。
……怪異、だけに留まらずその本質を見透かす力"燐光眼"───映し出されたのは、…。

「…霊じゃない…?」

動物霊…と当たりをつけていたのに。
その場に見えたのは、小動物のような行動をとる、ただの"黒い塊"
どういう存在なのかはわかりかねる、けれど。

竜胆 襲 >  
少女は黒い外套の下で何かを握り込む。
一瞬の後、鋭い金属音と共に、外套を翻し現れたのは、漆黒に月灯りを照り返す刃鎌。

振り上げられたそれが黄金の軌跡を描き、その小さな黒い影を容赦なく、切り裂いて。
…短い悲鳴の後、後には黒い煤のようなものだけが残っていた。

今は無害に見えるこれが、後に肥大化し人を害する怪異へと成長する。
そんな光景、いくらも見てきた。

再び外套を翻し踵を返すと、
少女の手に握られていた筈の刃鎌はまるで手品のように外套の下へと掻き消える。

廊下の窓からは差し込む月の光と、第一教室棟が見える。
この学園は広い。学園内外を全て一人で見回るのは難しい…。

もう少し部員が増えたら。

そう思うこともあるけれど、おいそれと人を増やせるようなわけもない。

ご案内:「第二教室棟 深夜の廊下」に焔城鳴火さんが現れました。
焔城鳴火 >  
「――っんとに、独身だからって理由で宿直押し付けるの、セクハラじゃないの?」

 深夜の廊下に遠慮のない声が響く。
 広域タイプの懐中電灯を持って歩く、白衣の小さい人影。

「えー、と、なんだっけ?
 『夜間の学園内に人影が出る』って噂なんだっけ。
 そんなもん、どんな学校にだってあるでしょうよ――んとに、はぁ――?」

 愚痴を隠そうともしない――というか、他に誰かがいるとも思っていない様子の声は。
 しかし偶然にも、小さな物音を聞く。

「――ちょっと、そこに残ってるのはどこのどいつ?」

 そう言いながら、廊下の角を曲がり、少女が怪異を祓った直後の姿を灯りで照らすのだ。
 

竜胆 襲 >  
「──!」

見られた──…?
いや、一瞬だった筈…。
とりあえずは、知らぬ存ぜぬで通そう。

「…あ、今晩は」

懐中電灯で照らされた先で、一礼する黒い外套の少女。
頭を下げながら、視線は床に残った黒い煤へ。
……kれくらいなら掃除の不手際で済ませられるレベルかな、と内心思って。

「…占星術部です。夜間の部活動中でして」

そう、当たり障りのない言葉を返す。
…おかしいな、今日の宿直の先生は、この人じゃなかった筈なのに。

焔城鳴火 >  
「はいはい、こんばんは」

 そう言いつつ、少女に近づいて、周囲を確認しつつ。
 床に残った黒い煤を見つけて、眉をしかめながら首を傾げた。

「あー――そういや、引継ぎに在ったわね、なんか。
 夜間活動の申請は――あったあった。
 一応、照合するから、学生証見せてもらえる?」

 そう言いながら、自分の手帳を開いて、夜間活動の申請や居残りの申請のリストから占星術部を見つける。
 今回の申請の責任者は、部長の竜胆襲という一年生だ。

「えーと、竜胆でいいの?
 念のために聞くけど、他に部員は来てる?」

 と、教員らしい振る舞いをするあたり、なんだかんだ根が真面目だったりする。
 そのために急遽宿直を押し付けられたり、損ばかりするハメにもなるのだが。
 

竜胆 襲 >  
──床を気にはしてるけど、それと怪異とは繋がらない。はず。単なる掃除のし忘れ、汚れの痕跡。
そう思ってもらえれば良いのだけど。

「どうぞ。部長の竜胆(りんどう)(かさね)です。
 …今日は、私一人です。次の観測会のための下見と言いますか、場所探しというような感じです」

ほら、と窓の外を指差す。
こんな廊下からでも教室棟の隙間から十分に星が見れる。
屋上や時計台でも良いのだろうけど、夜間に開放してもらうには別途申し付けを加える必要もある。
そんな、とりあえず通じるだろう程度の、お決まりの説明。

「…今日の宿直、先生じゃありませんでしたよね?何かあったんですか」

カマをかける、でもないけれど一応の問いかけ。
もしかしたらSNSで噂になりかけている黒い影が関係しているのかもしれないと思ったから。

焔城鳴火 >  
「ん――オッケー。
 なるほど下見ねえ。
 活動熱心で、大したもんだわ」

 少女が示した先、窓の外を見て目を細める。
 星の海(・・・)にはあまり良い覚えはないが。
 それでも、それに風情を感じる程度の感性はあった。

「――ん、ああ」

 問われると、盛大に、大きなため息が一つ。

「竜胆、あんたは結婚したい相手が出来たら、さっさと籍いれちゃいなさいよ。
 じゃないと、私みたいに、『どうせ帰っても酒飲むだけでしょ』みたいな理由で、仕事を押し付けられたりするわよ」

 恨み言が漏れる漏れる。
 懐中電灯を持っていない手は、ギリギリと握りしめられていた。
 とはいえ、それで宿直を結局変わっているのだから、相当にお人好しではあるのだろう。
 無自覚ではありそうだが。
 

竜胆 襲 >  
「はい。まだ発足して間もない部ですので。
 夏は星もよく見えますから、試験期間後にたくさん活動できるようにと」

つらつらと言葉になって流れ出る、用意された言い訳。
こういう(秘密裏に)活動する以上は、こうやって生徒や教師に接触することも想定の上。
…想定したのとは、違った先生だったけれど。

どうやら宿直を押し付けられたらしい女教師からは恨み言がだだ漏れる。
それにかけて、いい人がいたらさっさと結婚してしまえ、なことを言われればふと考えるようにしてから。

「結婚は私だけの都合で出来ることでもありません。
 お互いの家のこともあるでしょうし、もちろん資金面やその後の生活の不安なども…。
 いずれしなければいけないもの、として考えるならばそれは可能な限り勿論早いほうが良いのかもしれないですが、
 私は独身貴族も素敵な生き方だと思います。先生」

恐らく慰めの言葉、までを含めてスラスラと答えていた

焔城鳴火 >  
「いいわねえ、青春ってやつ?
 応援してるわ、そういうの」

 どことなく、羨望と諦観の混じった、眩しそうな目。
 表情はほんのりと柔らかく、微笑んでいたかもしれない。

「――はあ、真面目ねえ。
 その上、いい娘ときた」

 握りしめていた拳を腰に当てて、またも大きなため息。

「ごめんごめん、ありがとね、慰めてくれて。
 別に私も独身でいたい訳じゃないんだけどねえ。
 『あー、きっとコイツとこのままなるようになるんだろうなぁ』って思ってたやつが、コロっと居なくなられると、流石にね。
 ――って、こんなこと言ったらまた気を使わせちゃうじゃない。
 わるいわね、竜胆」

 くっく、と自嘲気味に笑いつつ、少女に謝る。
 そして、改めて咳払いし。

「それで、この後もまだ下見を続ける感じ?
 というか、占星術ってどんなもんなの?
 私、医療系の分野以外で、その辺の術知識はからっきしなのよね」

 そう、気安い雰囲気になるよう、こちらから話題を変えようとした。
 流石にうっかり重たい話を漏らしてしまったと、申し訳なく思ってるらしい。
 

竜胆 襲 >  
「よく言われます。あまり真面目すぎるのも、とは思うのですけど」

性分らしくなかなか直すことはできそうにない。

「先生は、大人ですから。
 私達以上にたくさん経験をしていらっしゃいますよね。
 …いえ、気にかけていただけるのはありがたいことです」

そうって、頭を下げる。
受け答えもはきはきとはしているものの、やはり堅苦しいというか真面目くさい…。

「そうですね。今日はこの教室棟を…明日も時間が取れれば他を」

「占星術について…ですが?
 うーん…古代バビロニアを発祥とした占いのようなもの。…というのが分かりやすいかと。
 天体の位置などから見ての…ええと、西洋、東洋などで違いもありますけど。
 細かく説明すると大変なので、一度占星術部のほうに遊びに来てみて下さい」

放課後くらいに、と付け加える。

焔城鳴火 >  
「真面目な性分、ってのは損もするけど、美徳よ。
 ま――悩み事も多くなりそうだし、そういうときは頼んなさい?」

 そう言いながら、自分の白衣をひらひらと揺らして見せる。
 生徒たちの悩みを聞くのも仕事の内であり、この教師のやりたい事の一つでもあるのだ。

「ああ、明日も希望ね。
 じゃあ夜間活動の申請、こっちで出しといたげるわ。
 ――それと悪いけど、不審者の噂があるから、見つけちゃった以上、独り歩きさせらんないのよ。
 邪魔はしないから、同行してもいい?」

 そう訊ねながら、『あっち?』と廊下の先を指さしつつ。

「へえ、術って方に気を取られてたけど、占いの方が軸なのね。
 星かぁ――まあ、縁がない訳じゃないし。
 そのうち遊びに行かせてもらおうかしら」

 『部室ってどの棟?』なんて聞きつつ、好意的に興味を持っているらしいとは伝わるだろうか。
 

竜胆 襲 >  
「それは……」

同行する、との言葉にそれまではっきりと言葉を返していた少女が少し、どもる。
宿直の先生が同行することまでは想定していなかったらしい。

「(──仕方ない。今日は廊下までで調査は済ませよう)」

無駄に怪しまれても仕方がない。
それに…この先で怪異に遭遇する危険性もある。

部室の場所の話や、術の話などを交えつつ、それでは、と廊下を先に立って進みはじめる

「あの、不審者の噂、とは?」

黒い影の怪異についてはまだそれほど広くは知れていない。
また別の案件なのかな、とも思いつつそう尋ねる。