2024/07/10 のログ
ご案内:「とある放課後の教室」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「とある放課後の教室」に緋夜鳥 子音さんが現れました。
■伊都波 悠薇 >
とある日。
ボロボロの制服姿をメールで送られてきて。
心配をしていたが、とある理由で、会いにいけなかった。
ーーが、既に通学していると聞いて、ようやく気持ちが落ち着いたから、教室へ。
「あの、ヒヨドリさん、はこちらにいらっしゃいましゅ、か?」
噛みながら。
入り口にいる女生徒へ、少し、大きな声で尋ねた。
緊張、が声に出ていた。
■緋夜鳥 子音 >
落第街での激闘から数日後。
少し前に検査入院を終え、学園にも復帰した子音は、今までと変わらない日々を過ごしていた。
流石に祭祀局の仕事は控えめにして、コンディションを整えるのに専念するつもりではあるけれど。
そんな折、放課後の教室で自分の名前を呼ぶ声がして。
帰り支度の最中だった子音は顔を上げ、教室の入り口へと振り向いた。
「ん……あら、伊都波はん?」
呼び声の主は顔見知り。ほんの少し表情が柔らかくなる。
今、ちょっと噛んだな……と微笑ましい気持ちになりながら、彼女の下へ歩み寄っていった。
「お久しぶりどす。ふふ、お元気そうで何よりやわぁ。
うちになんか用事ですのん?」
その身に纏う制服は真新しい黒のセーラー服。
以前までとの違いは、それが対穢装束ではないということくらい。
あれは特殊な装備であるため、全損すると再発注に時間が掛かるのだ。
もっとも、関係者でもなければ見た目では違いも分からないだろう。
■伊都波 悠薇 >
ぼっちには、最初の難関。
訊ねた女生徒は、はてとした顔をしていたが、お目当ての人物が来たとなると手を振って去っていく。
「あ、ヒヨドリさん。ひ、久しぶり、です」
人が多いのは苦手だが、今はそう言ってられない。
「あの、学校通えるようになったと聞きまして。お身体、大丈夫、ですか?」
■緋夜鳥 子音 >
応対してくれた女生徒には礼を言っておく。
特別親しいわけでも不仲なわけでもない、ただのクラスメイトだ。
向こうも自分が無関係と分かれば興味を失って別のグループに混ざりに行った。
「ええ、おかげさんで全快ですわ。
うち怪我とかすぐ治ってまう体質なもんで」
両腕を広げ、その場でくるりと小さく回って元気をアピール。
実際、見た感じは傷ひとつ残っていないように見える。
■伊都波 悠薇 >
なんともないようで、安心する。
もし、もし、そのままの状態であったのであればと想像すると、怖かった。
ボロボロの制服から、今の陽気さとはまったくかけはなれた状況であったことは予想できたから。
「えと、良ければ帰り道、一緒にしませんか?」
少し声が震えていたのは、緊張、のせいだったかもしれない。
■緋夜鳥 子音 >
「帰り? ええけど……
ひょっとして、そのために呼びに来てくれたん?」
彼女の方から誘ってくれたというのが少し意外で、きょとんとした顔で頷いて。
ちょいと待っててや、と断りを入れて自分の席に鞄を取りに戻り……
軽く深呼吸をして、前髪を指で直してから早足気味にUターン。
「お待たせ。ほな行こか」
なんでもないように言って教室を出ようとするが、そっちは閉まっている方の扉である。
■伊都波 悠薇 > 「はい」
今日は、ちゃんと伝えないといけないことがある。
だから意を決して、やってきたのだ。
「あ、え……そ、そっち閉まってます」
ヒヨドリさーん、とまた呼び掛けた。
■緋夜鳥 子音 >
「へぶっ!?」
静止むなしく、気付かないまま扉にビターン! とぶつかってしまった。
大きな音がすれば流石にクラスメイト達も注目するというもの。
赤くなった鼻っ面を押さえ、よろめきながら扉から離れる。
「だ、大丈夫。ちょっとドジってもうただけやから」
周囲にそう伝えつつ、悠薇を連れて逃げるように教室を後にした。
「あかんわ、もう恥ずかしい……」
廊下に出るなり溜息を吐いて、まだ少し赤い鼻をさすっている。
■伊都波 悠薇 >
「だ、大丈夫ですか? もしかして、怪我のせいで平衡感覚が!?」
連れて、教室の外に出たヒヨドリを心配するように声をかける。
まさか本当は全快ではないのでは……
「あの、蟻の人に、ひどく、されたんですか?」
怖い、が。
聞かなくてはいけないことだった。
■緋夜鳥 子音 >
「や、そういうわけやないけども……
友達から一緒に帰ろ言われたん初めてやし……」
珍しく口ごもり気味にごにょごにょ。
後半は聞こえていてもいなくてもよいものとする。
「……あの蟻ンこ、思てた以上に曲者やったわ。
うちが火ぃ使える異能やなかったら危なかった」
結果は痛み分け。とはいえ、苦戦は必至の相手であった。
秘中の秘を切っても仕留められなかった悔しさに歯噛みする。
が、それもほんの一瞬のことで。
「伊都波はんこそ、あんなんと出くわしてよう無事やったわ。
えらい怖い思いしはったやろ? ごめんな、逃がしてもうて」
困ったような笑みを浮かべて、心配の言葉を返す。
■伊都波 悠薇 >
「えっと?」
序盤は聞き取れなくて、首を傾げ。
隣にようやく、追い付く。
「私は逃げただけですから……」
自分の無力を痛感した日だった。
「いえ……でも、その」
だから。
「ごめんなさい。私の『ために』、怪我をさせてしまって」
本当は、せいで、といいたい。
けど、それは、きっと失礼だから。
そう、謝った。
入院している間に行きたかった。
でも、怖くて、いけなかった。
自分のせいで、した、怪我という事実から目を反らしたかったから。
■緋夜鳥 子音 >
「んんっ……こほん」
聞こえていなかったなら好都合。
口をついて出た本音は咳払いで誤魔化して。
「……伊都波はんが謝らなあかんことなんて、なんもあらへんよ。
悪い怪異を討滅するっちゅうんが祓除課の仕事。
そん中でうちがヘマしてもうたってだけのことや。
むしろ、伊都波はんに心配かけてもうて逆に謝りたいくらい」
ああなったのは決して彼女のせいなどではない。
件の怪異は、危険な存在として祭祀局でも問題視されていた存在だ。
私怨が無かったと言えば嘘にはなるが、どのみち対峙は避けられなかっただろう。
負傷して心配をかけてしまったのはこちらも同じ。
「せやから、そない悲しそうな顔せんといてや。
お互い無事で良かった、でええやないの」
もし俯いてしまっているのなら、そっと撫でてみようと試みる。
■伊都波 悠薇 >
「私が、助けてと、メールを出さなければ」
そう、思わずにはいられなくて。
例え、彼女の職務であったとしても。
自分が強ければ、起こり得なかったことは確かだったから。
でも。
撫でられると……姉にされたことを思い出し。
そこから先の言葉は出なかった。
「はい。そういうことに、しておきます」
謝ることは、止める。
ここからは前を見ると決めたから。
「ヒヨドリさんは、火を使う異なんですか?」
■緋夜鳥 子音 >
「一人で手に負えへんと思たら周りを頼るんは当たり前やろ。
……って、うちが偉そうに言えた義理やないけども」
たはー、と頬を掻いて苦笑いをする。
単身あの地に赴いて、救援要請も出さずに戦っていたわけだし。
そうしないと使えない技もあったので、止むを得ずということで許してほしい。
「ん、それでよし。
また伊都波はんになんかあったら、今度は絶対助けに行くからな」
―――あの時、メールにすぐ気付いて行動できていたら。
そんな後悔だって数えたらキリがないのだから。
「正確にはちょっと違うんやけど、まぁ大体そんな感じやね」
詳しく説明すると長くなる上に複雑な異能。
なので対外的には"火を操る能力"ということにしている。
■伊都波 悠薇 >
「ヒヨドリさんは、運動が得意なんですか? それとも、操作が? それともどっちも?」
首をかしげて、共に帰るヒヨドリのことを質問していく。
彼女は自分のために動いてくれた。
その事実は確かで。それなら。
より知ることで、お返しとしたいと考えていたから。
■緋夜鳥 子音 >
「おおぅ? えらいグイグイくるなあ。
ほな『ヒヨドリさんに100の質問』コーナーといこか」
質問攻めに気圧されかけたが、ここまで興味を持ってもらえるのも満更ではないらしい。
途中からは乗り気で質問に答えていくだろう。
「運動はそれなりに得意な方やな。
陰陽術も習ってて、式神と組み合わせて使たりするで」
渡り廊下の少し開けた場所に出たところで、懐から人型の紙を取り出して。
いわゆる形代というやつで、式神の材料になるものだ。
それを一枚ぽいっと宙に放ると、空中で発火して小さな鳥の形を模った。
■伊都波 悠薇 >
「わぁ」
取り出した人型の札を見て、感嘆の声を漏らす。
つまり、彼女は。
「陰陽師、みたいなもの、なんですね」
改めてしっかり、理解した気になって。
「五行の火が得意、という話なんでしょうか」
ふむふむと、噛み砕きながら理解していく。
■緋夜鳥 子音 >
「そゆことやね。
緋夜鳥の家は元々、五行の火を司っとってな。
異能もそれに関係したもんが代々発現するっちゅう話や」
生み出した式神は全身もれなく炎なので、火傷しないよう離れたところで旋回させておく。
自我は持たず、簡単な命令しかできないと解説も交えつつ。
「ここまで話したんやし、伊都波はんの事も聞かせてえな。
もちろん、言えへんことは言わんでええけども」
指をパチンと鳴らせば、一瞬で炎は消えて形代は燃え滓になった。
それを掌で受け止めて回収し、改めて悠薇に向き直る。
■伊都波 悠薇 >
「なるほど。家系的な」
自分の家にも似たようなものがあるから、すんなり飲み込んで。
飛んでいく火の鳥におぉ、と息を漏らした。
「私ですか? えと、なにをお話しましょう?」
■緋夜鳥 子音 >
「せやなぁ……」
顎の下に指を添えて、少し宙を見上げて思案顔。
「好きな食べ物とか、好きな動物とか?
ちなみに、うちは和菓子と狐が好き」
小さく笑みを浮かべて、問いかけたのはごく普通な質問だった。
■伊都波 悠薇 >
「あ、えと」
改めて聞かれると気恥ずかしい。
もじもじしながら。
「好きなのは辛いもの、と駄菓子、です。動物は、馬、です」
和菓子と狐。
陰陽師、と聞いてからイメージからブレないのすごいな、と思いながら。
「ヒヨドリさん、ホントに陰陽師なんだ……」
つい、口からも漏れた。
■緋夜鳥 子音 >
「やっぱり好きなんやなぁ、辛いもん……」
いつぞやの激辛ラーメンを思い出して若干遠い目をした。
心なしか口の中がヒリヒリしてきた気がする。
「本職っちゅうわけやないけどな。
にしても馬とは……別に変とは思わんけども、ちょっと意外や」
もっと小さくて可愛らしい動物が好きそうだと勝手に思っていた。
例えば、ウサギと戯れる姿が絵になるというか。
■伊都波 悠薇 >
「ヒヨドリさんは、辛いもの、苦手そうです」
くすりと、思い出し、笑う。
辛いものは、無理して食べるものではないとあの日に痛感したものだ。
「歴史の馬が好きなんです。松風とか、赤兎馬、とか」
意外と言われると。
「かわいいですよ、ギャップがあって」
■緋夜鳥 子音 >
「アレはよっぽど辛いもん得意やないと無理やろ……!」
彼女と店員にはひぃこら言う様を見られてしまったので、恥ずかしそうに。
今となっては良い思い出だけれど、当分 辛いものは勘弁願いたい。
「なるほどなぁ。仰山おるもんな、歴史上の馬。
武将を乗せて戦場を駆ける姿と、普段の姿のギャップがええみたいな話?」
言わんとすることはなんとなく伝わってくる。
■伊都波 悠薇 >
「そうかもしれないですね」
笑みは深まり、わかりての言葉に食いついた。
「そうなんです。駆けてかっこよく、毛並みもまた、筋肉のつき型に体型の大きさまで、すみからすみまで基本的イケてる顔つきなのに、仕草は動物特有の愛らしいさがとても!」
なんて、早口で。
■緋夜鳥 子音 >
今日一番の食い付きっぷり。
というか、こんなに饒舌でイキイキとした悠薇は見たことがない。
またしても気圧され気味だが、楽しそうに語る様に自然と笑みが零れた。
「ほんまに好きなんやなぁ。
うちも今、ギャップの良さが分かってきたとこやわ」
大人しい印象を持っていた少女の新たな一面。
それを目の当たりにできたのが嬉しくて、口元に手を当ててくすくすと笑う。
■伊都波 悠薇 >
「馬の良さから、ですか?」
そうなら嬉しいですね、なんて。
少し明るめの声で、共に帰路につく。
最初抱いていた心配や恐怖は、もう、なくなっていて。
別れのみちまで、楽しく話をしながら。
日常の、下校と、なることに。
「ありがとうございます。ヒヨドリさん」
感謝した。