2024/07/12 のログ
ご案内:「第二教室棟 廊下」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
前期期末試験も概ねの日程を終え、あとは結果の発表を待つばかり。
そんな生徒も多くなってきたか、廊下は気難しい顔をしている生徒よりも、季節とは裏腹に晴れやかな表情をした生徒達が多く見られる。

もうすぐ夏が来る。
まもなく夏季休暇…要するに夏休み。
学生にとっては特別感のある期間。

プールや海水浴。キャンプ、行楽に夏祭り。
忙しないけれど、大切な期間だ。

廊下を歩く、ひときわ目立つ少女もまた、そんな時間を楽しみにする生徒の一人。
風紀委員という立場上、楽しみとはいえ気を緩めるわけにはいけないけれど。

伊都波 凛霞 >  
とりあえず成績に心配はない筈…。
心配が残るとすれば、最近噂になっている怪談話の噂や、一部エリアでの怪異の話題。

どちらも専門外なので口も手も出していないのだけど…

「とりあえず夜間の校内に用事なく残らないように広報くらいはすべきなのかな…」

廊下を歩きながら考えることはそんなこと。
あんまり公にそういうことを言うと、噂の信憑性が高いと思われてしまうかもしれないし。
だからといって噂のままに処理するには…。
夏休み前に提案くらいはしてみようか、と思案しながら歩いていると、曲がり角へと差し掛かる。

SNSにあった噂のポイント。
角を曲がったところに、黒い影が…。

「………」

ま、まぁ。
まだ放課後、夕暮れ時で明るいしね?

伊都波 凛霞 >  
確かにちょっと階段の影になって、見えづらい場所。
影が深くさしかかっている場所なので、何かあっても人目にはつきづらい。
それこそ角を曲がって、階段下の空間を覗きに行かない限りは何かいても見えない。…案外、死角かも。

そんなことを思いながら、ちょっとだけ緊張しつつ。

ごくり。

そ…っと、角からそこを覗いてみることにした。

伊都波 凛霞 >  
『なぁ…いいじゃん、試験ももう終わったしさぁ…』
『え~でもぉ~気が早いってぇ……こんなとこで誰か来たらどうするの…?』

いちゃいちゃちゅっちゅっ♡

「───っ」

気配遮断!
即座に回れ右である。

「(こ、校内でなんて大胆な…)」

さすがに心臓が跳ねた。
何やってるのこんなところで!

…風紀委員として注意すべき?
いやいやさすがに出歯亀じゃ……不純異性交遊とは限らないし。

伊都波 凛霞 >  
「あぁびっくりした……もう、そういうことは学校外で…」

現場から離脱して、ため息交じりに廊下を歩く。
青春…うん、青春だよね。夏真っ盛りが目の前なんだから、それくらい。

「……!」

ふと、気付く。

あれ…?

廊下を歩いている生徒達。

男女。男女。男女。
妙に距離感近く男女ペアで歩いてる子…多くない?

夏の魔物。
一夏の恋があちこちで生まれようとしている、そんな光景に気づいてしまった。

伊都波 凛霞 >  
仲睦まじく歩く生徒達。
これから訪れる季節、二人でどう過ごそうか…そんな楽しみに語らう男女の光景が、ちらりほらり。

一人廊下を歩いている少女には、その光景はやや眩しい。

「(いいなー…)」

ぽつりと心に落ちる言葉。

少女は、人の幸せな顔を見るのが好きである。
周りの誰かの恋バナなんかには喰いついてしまうし、ものすごく応援もしてしまう。
でも、自分は?…そう思うことは…ないわけない。

伊都波 凛霞 >  
今年度に入ってからも何人かの男子生徒から告白を受けた。けれどどれも、断ってしまった。
理由は……心に突っ掛かりがあるからに他ならない…。
なんとなくで、ごめんなさい。
彼らはきっと、すごく真剣で真摯に、勇気を出してくれたのに。

廊下の窓から、薄く曇った空を見る。

その手前にあるのは、自分の顔。
窓ガラスに映ったその顔は、なんともアンニュイな表情をしている自分。

「………」

伊都波 凛霞 >  
「やな女」

硝子に映る自分にそう呟く。
そのうちに小雨が降り始め、窓に映る表情は余計に曇ったものに見えてしまう。

「…はぁ」

雨足が強まる前に帰ろう。
楽しげに語らう男女達の中、少女は一人早足に下校するのだった。

ご案内:「第二教室棟 廊下」から伊都波 凛霞さんが去りました。