2024/09/23 のログ
ご案内:「第二教室棟 真夜中の教室」に竜胆 襲さんが現れました。
■竜胆 襲 >
夏季休暇が終わってからそろそろ一ヶ月。
目に見えて夜の学園内の怪異の数が増えた。
その殆どは、無害。一般生徒には見えるものでもない。
ただ…そのナカに稀に混ざっている、危険なものがある。
凶暴で、人間を狙う。一般の生徒にも視認出来る程にドス黒い"害意"──
「──、アタリ、今日は」
ざ──。廊下を駆けていた少女が立ち止まる。
眼の前には大教室、──異形の黒い影を此処へと追い込んだ。
こちらを認識し、即、触手のようなモノを伸ばし攻撃してきた──危険な怪異だ。
応戦して見せるとこちらの戦力を感じ取ったのか逃げに転じ──今のこの場へ、という理由だ。
静かに、ドアを開ける。
紅い火の灯る瞳が教室を見渡しても、姿は見えない。
──隠れたか。
踏み込み、教卓の前までやってきた、刹那。
「──!」
教室に差し込む月光の影と同化した漆黒が、鋭い槍の様な触手を伸ばし、少女を攻撃していた。
咄嗟、手元の勾玉を変化させた刃鎌を振るい、打ち払う──が、二本、三本──手数を増やされる。
「っ…この……っ」
黒い影の怪異──占星術部が深夜の学園内で確認し、人知れず見敵必殺で葬っている怪異。
特に攻撃性の高い異形の形状をしたものは珍しい…人型の影と共に脅威だ。
寄声をあげない分、耳には優しいが───
ご案内:「第二教室棟 真夜中の教室」に緋月さんが現れました。
■緋月 >
「あぁもう…何て事を…!」
小走りで急ぎ足に夜の学園を駆ける少女がひとり。
暗い赤色の外套を纏い、書生服を着込んだ少女である。
向かっている先は、とある教室。
その理由は――
「いくら色々あったからと言って、忘れ物するなんて…本当、迂闊すぎます…!」
そう、忘れ物である。
予習に使う為の参考書をうっかり教室に置き忘れてしまったのだ。
それに気が付いたのは、部屋に戻ってさて予習の一つでも
しようか、と、荷物を探っていた時。
翌日の授業にも使うので、忘れたまま放置は出来ない物だった。
同居人に大慌てで頭を下げ、大急ぎで教室棟まで取りに戻って来たのである。
そして、後しばらくすれば忘れ物をした教室だ、と言う所で。
「………む?」
何やら、音が聞こえたような。
ついでに何者かの気配もするような。
「…気のせいですよね。」
多分気のせいだろう、あるいは自分と同じに忘れ物をして取りに来た
粗忽者の生徒でも居るのかも知れない。
そんな考えで以て、特に何も考えず――
――争いの起こっている教室のドアを、がらりと開けてしまったのである。
■竜胆 襲 >
───迂闊。
閉所での戦闘に際しては、逃さないためにも結界術を敷いてからするべきだ。
最近の夜間活動中に他人と遭遇しなかった故の、油断。
「───危ない、逃げて!!!」
咄嗟、教室で謎の異形の影と相対していた、刃鎌を手にする少女が弾かれる様にそう叫ぶ。
ドアの開いた音に反応した黒い影の怪異は、即座に。
新たに発生させた二本の触手の槍を、闖入者──緋月へと差し向け、襲いかかっていた。
しまった、"手"が多い。
既に三本、抑えている状況では手をまわすことが出来ない。
このままじゃ、一般生徒が怪異の被害に───。
■緋月 >
「へ―――――」
教室に入った途端、突然の「逃げろ」の声。
思わず間の抜けた声を出した瞬間。
視界に飛び込んで来たのは、謎の異形の影。
こちらに向けて飛んでくるのは、槍のように鋭い、触手のようなもの。
「――――」
――何が起きているのか、全く分からない。
分からない、が、わかることは一つだけある。
「これ」は、自分に害を及ぼそうとするモノだ。
ならば――「斬らねば」ならない。
例え神器を持たない身であろうが、かの御神を未だ信じる以上は
私心で「死」を与える事は禁じられている身の上。
――だが、これは恐らく…放置しては更に「死」を招くものだ。
ならば、自衛の為の行動は、容赦を願いたい所。
身体に半ば染み付いた動きで素早く刀袋の紐を解き、中から現れた
白い柄巻の柄に、左の手をかける。
そしてそのまま、
「――虚ヲ斬ル。」
これは恐らく、尋常の存在ではない。
ならば尋常ならざるを斬る技で以て、迎え撃つしかない!
虚ろなるを斬る一刀。
それを逆手持ちの左手で、迫る槍を払うように、二閃。
■竜胆 襲 >
『──!!!』
新たな獲物へと伸ばした槍。
それを斬り払われることは、その異形の埒外だったのだろう。
切り裂かれ、空中で黒い塵となって霧散し──即座に再生する。
しかし無機質なその動きが、僅かに鈍った。
「な……」
一瞬、呆気に取られてしまう。
──が、この学園の生徒ならばさもありなん。
怪異が動きを鈍らせた、その一瞬を逃さない。
「──! …"祓エ"!!」
触手を打ち払い一気に距離を詰め──黄金色の軌跡を棚引かせた刃鎌を袈裟懸けに、振り下ろす。
空間が瞬間ズレる感覚と共に両断されたその黒い影は──再生することなく、煤の様な塵となってその場に残滓となって散る──。
「………、……貴女、一体…?」
ふ…と小さな吐息を零し、月光に僅かに照らされる闇の中…赤く灯を灯すその瞳を向け、そう問いかけた。
■緋月 >
「ふー……。」
一つ息を吐きながら、書生服姿の少女は手にした刀を器用に腰の鞘に収める。
音も無い、静かな納刀。
幸いというべきか。
自身があの黒い「何か」の腕を払った結果、既に戦闘に入っていたと思しい人影が、
黒い「何か」を両断せしめた。
手にした得物は、巨大な鎌…だろうか。
振るった瞬間、まるで空間がズレるようなものを感じた。強いて言うなら、
「界断チ」や「斬空」のそれに似たモノを感じる。
そして、「それ」を行った人物――自分より幾分か背の高い、声からして女子、だろう。
彼女が、赤く光を灯す瞳で以て、書生服姿の少女に問い掛けの声。
「え……あ、その…。」
まさかこんな展開は想定もしていなかった書生服姿の少女。
言葉を詰まらせながら、視線を泳がせてしまう。
「あ、あの…私、その、忘れ物があって、此処に置き忘れた参考書を
取りに来たもので、怪しいものではないです、ハイ!」
あたふたと両手を振りながら必死の弁明。
余計に怪しく見えなくもない。
「えと、その…もしかして、見ちゃいけない出来事、でしたか…?」
だとしたらすごく気まずい。
自分も一時期同じような事をしていたのでちょっと理解できる書生服姿の少女。
■見えるモノ >
――刃鎌を携えた少女の瞳には、その少女が「普通の人間」である事はよく理解出来るであろう。
唯一。
今は遠く離れているが、その魂に繋がるように、黒い狼のような影が見える事以外は。
そこには、邪なものは一切感じられない。
敢えて言うならば、「死」。
それを伴った、神性の存在。
■竜胆 襲 >
──祓の力が籠もらない斬撃で黒い影を切断せしめた。
それ自体も正直驚嘆に値する、が…そんな面子を募り集めたのが占星術部だ。
未だ邂逅していない逸材は、まだまだこの学園にはいて然り。
…ただ一つ、僅かその瞳を細める。
何かしら、唯人でないことは視えてしまう。
「………」
「そうでしたか」
す、と瞳を閉じ。
再び開けば、紅い灯は消え、月光を移す様な黄金色の瞳が、眼の前の彼女を見つめる。
「怪我がなく何よりです。あまり、夜の学園に踏み入ったことはなさそう、ですね。
……今日のことはできればご内密にお願いします。悪戯に他の生徒の好奇心を刺激すると…犠牲者も出かねませんから」
丁寧な口調で淡々と、言葉を向ける。
「……いえ、むしろ──」
「"怪異"を物怖じなく斬る…その才……。
宜しければ、少し話を聞いてもらっても宜しいですか?」
──今晩は辺りにもう怪異の気配はない。
部員の占星術も、星の巡りが教える怪異の数は今日は今の異形で最後だった。
■緋月 >
「あ、はい、それはもう…。
妖事に他の方が巻き込まれるのは、私も本意ではないですので…。
ええ、今目にした出来事は、私の胸の内に。」
よかった。
とりあえず、今目にした事については、黙っているなら問題はなさそうだと
一安心の書生服姿の少女。
妙な出来事に他人を巻き込むのは、あまり良い気持ちではない。
と、其処で突然のお話のお誘い。
「お話を、ですか。ええと…。」
ちょっと考える。
…同居人には、忘れ物が思っていたのとは別の場所にあったので、
探すのに手間取った、とでも言えばいいだろう。
真剣そうなお話のようなので、耳を傾けた方が良いと判断。
「――ええ、構いませんけれど。
えっと…あ。」
肝心なことを忘れていた。
「失礼しました。えと、私、緋月と申します。
夏休み明けから、こちらに通う事になった新入生です。」
名前を名乗りながら、丁寧に一礼。
お話の前に、これ位はして置くべきだろう。
■竜胆 襲 >
「───あ。そもそも忘れ物を取りに来たのでしたね」
はた、と気づいた様に。
「どうぞまず忘れ物をお探しください。
あ、電気点けますね。
今日はもう、気配は感じられませんので──」
ローファーの底を鳴らし、教室の証明のスイッチまで歩いて、パチンパチンと証明を灯してゆく。
──怪異が散った教卓には、黒い煤の様な残滓が残っているがそれを気にする様子は見られない。
「緋月さんですね。
竜胆襲といいます。占星術部の部長を務めています。
──以後、お見知りおきを」
とりあえず忘れ物を探し終わるまで待つ構え。
いつもの明るさを取り戻した教室の風景に、黒い外套を羽織り手に大鎌を持った少女はあまりにもマッチしない存在感である。
■緋月 >
「あ、これはご丁寧にどうもです。」
照明が点灯したのは有難い。
警備の方に見つかった時が心配なので、手早く探しにかかる。
幸い、忘れたと思われた場所に問題の忘れ物があったので、
こちらの用事はあっという間に終わった。
「ありがとうございます、見つかりました。」
と、こちらの問題が解消したので、お話を聞く準備が整った事を報告。
こうして見ると、相手の方は自分と然程年恰好は変わらないように見える。
少女の手にする大鎌は――あの手の武器は、武器としては意外と扱い辛い、とされているが、
不思議と、不釣り合いには見えてこないから不思議である。
外套については…自分も似たような恰好なので、とやかくは言えない。
もしかしたら、目の前の彼女にも、常に外套を纏って刀袋を手にした
風変わりな書生服姿の女生徒の噂位は届いているかも知れない。
「ご丁寧にどうも。
……占星術部、というのは、その、所謂部活動…ですよね?」
此処で部活動の名を出して来た意味が、まず取り辛い。
「これ」も、その活動に関係した何か、なのだろうか。
とりあえず、荒事にはなりそうにないので、腰の刀袋を再び紐で閉じ、手近な所に立てかけて置く。
■竜胆 襲 >
「良かったですね。
なるべく、忘れ物はしないようにしたほうが良いです」
少女のほうと言えば、
学内の警備などについては全く何も気にしていないようにすら見える。
妙に堂々と、深夜の学園内に存在している。
「さて…それでは」
その手に握る大振りなそれを、少し念じるように眼を細めれば、
一瞬黄金色の光に包まれ、それはふっと消えてしまう。
正しくは少女の掌、漆黒の勾玉へと姿を変えたのだ。
「占星術部というのは……そうです。
星を読み、吉凶などを読む…一種の占いですね。それを学問として研究する部です。
天体観測のため、夜間の学園内での活動許可を貰っています───」
それが、何も気にせず堂々としている理由らしい。
「──でも。
それは建前。先程緋月さんも見たかと思いますが…。
この学園、範囲を広げれば周辺や島内には怪異が蔓延っています」
「無論、事件となれば祭祀局が動いてくれるのでしょうが、
小狡い怪異は大きな事件なんて起こさず…ひっそりと人に害意を向ける。
───部活動を隠れ蓑に、こうして深夜に姿を洗わう怪異を討伐するのが、この学園の占星術部です。
怪異を祓う力を持つ生徒を個人的に集め、立ち上げました」
今日のことを秘密裏に、といった後に向ける言葉としてはあまりにもな秘密を口にしている。
なぜ───といえば、答えは一つ。
「緋月さんも、アレを斬ることが出来た…」
「斬る"力"を、お持ちのようでしたので、明かさせていただきました」
つまり───秘密の共有。
勧誘だ。
■緋月 >
「う……面目次第もございません…。」
しゅん、としょんもり顔の書生服姿の少女。
お話が始まれば、その表情も軽く引き締め、黙って耳を傾ける姿勢。
その前に、手にした大振りな鎌がまるで手品のように消えてしまった…否、
手にした小さい勾玉らしきモノに姿を変えたのは、少しだけ驚いた。
(妖の器物、とは思えない。
……宗派は違うでしょうが、恐らく何かしらの御神器、でしょうか?)
今は己の元を離れている相棒のそれに、何処か似たものを感じ取る。
とはいえ、それを追求するような空気ではない。
今は、目の前の少女が語る事に耳を傾けるのが重要である。
(星から吉凶を読む……陰陽の術、みたいなものでしょうか。)
そちら方面に明るい訳ではない少女には、それ位の理解が関の山。
それでも、真剣に耳を傾ける。
(祭祀局……確か、神や精霊、超常の存在に関わる組織、でしたよね。
入学案内をしっかり読んで置いてよかった…。
しかし、このお話の仕方…祭祀局に繋がっているわけではない。
どちらかというと――)
…以前、自身が個人的に行っていた活動のそれに近い。
違いとしては、活動の場所と最低限組織という体を取っていたか否か、という事位。
(――これは、つまり。)
勧誘行為。流石に、其処は書生服姿の少女も分かるものである。
話を聞き終えれば、大きく一息。
「――えっと、竜胆さん、でしたね。
率直に、お訊ねします。
その事実を隠す事無く私に明かしたという事は――私に、
その占星術部に「入部」してほしい、と、そういう解釈でよいのですか?」
否定的な響きはない。
飽くまで、「確認」の色が強い問い掛け。
■竜胆 襲 > 確認のような、問いかけ。
その反応に少しだけ少女は黄金色の瞳を丸くする。
「えっと……」
「こんなに話の早い方は初めてです。
そうですね、その通りです。
本当なら、そういった力のある方は祭祀局に入ったほうが良いのでしょうが──」
一泊置くと、少女は視線を教室の窓の外…煌々と学園を照らす月と星々を見上げる…。
「組織の歯車となることは、色々な保証の代わりに自由を失うと同義。
───、怪異はこの島では身近なもの。フットワークの軽さは、重要でして」
いわば個人活動の延長。
情報共有と僅かな協力者、そして隠れ蓑として部活動を利用している。
その旨を、眼の前の少女へと明かす。
「お断りして頂いても構いません。
その…ちゃんと秘密を守っていただけるのなら、ですけど…」
二言目は、やや申し訳なさげに紡がれる。
■緋月 >
「――――分かります。
組織に属するという事は、その後押しを受けられる代わりに
少なからぬ自由を失うという事。
私も以前、似たような事をしていたので。」
秘密を明かされた以上、自身も秘密を抱えている事を黙っているのは公平ではない。
かつて、短期間ながら似たような事をしていたのを、少女はあっさりと目の前の人物に明かす。
「…はっきりとお返事を返す前に、いくつかこちらからも
話さなくては成らない事があります。」
ふぅ、と緊張をほぐす様に息を吐き、少し言葉を選んでから書生服姿の少女は口を開く。
「ひとつ。
私が怪異を斬る"力"を持っているという点は…実は、あまり正しくないです。
先程、あの影の攻撃を斬ったのは飽くまでも「技」。私が幼少より教えを受けた、
「斬れぬモノを斬る」為の技のひとつです。」
まず、それがひとつ。己の技は退魔の術や力ではなく、「斬る」為の技。
「そしてもうひとつ。
……諸事情で、現在私はその使徒の資格を預け、己の路を見つめ直している最中ですが、
私は「黒き神」という御神に信仰を捧げる信徒です。
授かった御神器を『先輩』に預け、使徒としての活動を停止はしていますが、
その「禁忌」として、「私心によって死を与える」事は禁じられている…
いえ、今も、自身に禁じています。
怒り、憎しみ――そういった心で死を与える事は、御神に信仰を捧げる以上、
犯してはならぬ禁忌です。
勿論、それを他の方にまで強制はしませんが。」
それを他の人物に強制はせぬが、己はその禁を破る事は出来ぬ。
それが、ふたつめ。
「これらをご承知頂いた上で。
それでも許容して頂けるのであれば、私としては吝かではありません。
理不尽な死を振り撒くものを放置は出来ませぬし…もし怪異の内に
「正しき死」を迎えられぬ亡者が居るならば、然るべき地へ
送るのは、大事な事でしょうから。」
そこまでを言い切り、大きく深呼吸。
後は、「部長」の判断ひとつだ。
■竜胆 襲 >
快い返事──と受け取って良さそうだ。
力であれ、技であれ──怪異を殺せるのであれば不問だ。
"私心によって死を与えることを禁ず"
その一言にのみ、ほんのわずか…気取られない程度に眉根を潜めた。
それは怒りや憎しみ、復習というものに根ざした使命感で怪異を殺す少女の意思とはすれ違う。
しかし結果として怪異が減る、それ以上に得られるメリットはない。
「私達の活動は、祭祀局に比べればとても小さなもの。
貴女が以前行っていた活動の延長に過ぎないかとは思います、が──」
「各々戦う理由は様々…それでも、
同じ志の仲間がいるというのは、良いものです。──ぜひ、我が部に。緋月さん」
そう言って、右手を差し出した。
──夜な夜な、怪異を滅ぼしているとは思えない、白魚のような手指。
しかし確かにこの手は、先程刃鎌を振りかざし一刀の下に怪異を斬り殺したばかりの手である。
「もちろん、昼間は普通の部活動も行っていますから、
…よろしければ占星術にも興味を持っていただけると嬉しいです」
■緋月 >
「――委細、承知しました。
以後、よろしくお願いします、『部長』。」
その返答と共に、差し出された右手に、書生服姿の少女は己の右手を伸ばし、返答とする。
一見普通の少女のそれと見えて、その掌には剣を振り続けた者特有の硬さが感じられるだろう。
――少しだけ、思う所がある、といった所は雰囲気としては感じられた。
怒りの心、復讐の炎。その力は、想像以上に大きいものだ。
目の前の彼女も、恐らくはそういった物を抱えているのかも知れない。
(――だから何だ、という話ですけど。)
怨讐で以て怪異を討つ者。
使命で以て亡者を送る者。
真逆に位置すれども、それが分かり合えぬ道理とはなるまい。
そもそもにして、己にそれを咎める資格はない。
ただ、互いの心に抱えるモノを否定せず、自然なものとして存在を認めればいいのだろう。
「それでは、改めて昼間の活動中に正式に入部届を出しに行きますね。
――ああ、それと、今更で済みませんが、私、風紀委員の方と今、同居状態でして…。
勿論、こちらの活動がバレないように注意します!
それに、そろそろ居候生活ばかりは気まずいですし、一人暮らしも考えてましたから…。」
肝心な事を最後に伝える事になってしまった粗忽者。
■竜胆 襲 >
差し出された右手をきゅ、と力強く握る。
──刃を振るい慣れた手だ。
先ほど狩った怪異は、かなり危険な怪異だった。
並の戦闘経験がある程度の生徒であれば、僅かな隙で触手に貫かれていたいた筈。
そこを咄嗟で打開、どころか手傷すらも与えてみせた。
十分以上の手練れ。
そんな人物が委員会に属さず、いる。
逃す手があるわけがなかった。
「部室棟のほうに占星術部の部室もあります。
こういった夜活動の日には部員でお泊りなんかもしていたりします。
お茶菓子なんかも常備してありますから…宜しければ寛ぎに来てください」
小さく、ほんの僅かに理解る程度の微笑み。
新しいな仲間を歓迎する嬉しみは、素直に心の中に在る。
「──あぁ、それは…そうですね…。
危険なことですから、バレてしまうと活動に制限がかかってしまうかもしれません…。
夜の活動についてのみで構いませんから、秘密厳守でお願いします」
部の説明や活動に必要な情報などは…入部の際に伝えることにしよう。
「それでは、引き止めて申し訳ありませんでした。
──速やかに下校致しましょうか。今宵の怪異についても…後に説明致します」
よろしいですか?と教室の証明のスイッチを一つ一つ落としながら、先立ち廊下へ───。
■緋月 >
「す、すみません…何しろ、こちらに転入する前からお世話になってた方でして…。」
同居人の彼女自身は悪い人ではないのだが、組織に属する者としては
この活動を見逃してはくれないだろう。
頑張って秘密にしなくてはならない事だ。用心用心。
「成程、それは有難い事ですね。
部活での活動ならば、怪しまれる心配もないでしょうし。」
恐らく、この誤魔化し方も部長である彼女が考えた事なのだろう。
書生服姿の少女はこういった細かい事にあまり気が回らないので、
そういった知恵については感心する事しきり。
「そうですね、誰かに見つかって怒られない内に、急いで。
説明の方も、助かります。怪異というモノには、まだ明るくはない方でして。」
刀袋を手に取り、忘れ物の参考書をしっかりしまうと、書生服姿の少女も
外套の少女に続いて廊下へと。
教室は二人の退出と共に、夜の帳に落ちる事だろう。
■竜胆 襲 >
「色々と、お話しましょう。
部室は居心地が良いですよ。お喋りには、最適です」
連れ立ち、教室を闇へと落とす。
「───……」
ドアを閉める前、教卓の上を僅かに一瞥する。
夜の学園に目に見えて怪異が現れ始めた。
夏季休暇中は殆どいなかった筈の、攻撃的な怪異が。
───矢張り、怪異を増やしているのは──生徒か。
「──行きましょう」
そう声をかけ、校門を出れば別れを告げる。
その背中を見送って……自らは、夜の部室棟へと。
新入部員の歓迎会、なんかもいいかも知れないな…。
なんて、少し浮ついた気持ちだったのは……仲間が増えた嬉しさ。
夜の顔と昼の顔…二つの顔を持つ学園の占星術部に、頼れる少女が、また一人。
ご案内:「第二教室棟 真夜中の教室」から竜胆 襲さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 真夜中の教室」から緋月さんが去りました。