2026/02/13 のログ
ご案内:「第二教室棟 家庭科室」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
放課後の家庭科室は、いつもより少しだけ甘い匂いがしていた。
二月の冷たい空気が窓の隙間から忍び込む中、エプロン姿の少女――凛霞は、背中を丸めてボウルを抱えている。

「よーし、ちゃんと溶けてる」

湯煎にかけたチョコレートが、つややかにとろりと流れるのを見て、ほっと息をついた。

今日はバレンタイン前日。
家では台所を長く使えないし母も忙しい。だから先生にお願いして、家庭科室を借りたのだ。

「失敗しませんよーに…と」

実は結構難しいといわれる、チョコ作りである。

伊都波 凛霞 >  
世間は凶悪犯の話題でもちきり。
風紀委員としてはこんなことをしている場合じゃない、のかもしれないけど。
学生と仕事の両立はこの島で生きている少年少女に課せられた課題だ。
イベントはイベント、仕事は仕事としっかり切り分けるのもまた重要である。

さて…気を取り直してまずは家族用。
父にはビターを多めにする。甘いものが少し苦手だから。
母にはナッツ入り。前に「歯ごたえが好き」と言っていたから。
そして、妹の分は――

「……ハート型は、遠慮されちゃうかなあ…?」

そう言いながらも、小さなハート型にチョコを流し込む。
喜んでくれるといいなー、なんて思いつつ。
愛情を伝える日なので、それでいいよねと開き直るのだ。

伊都波 凛霞 >  
型を冷蔵庫に入れ、次のボウルに向き直る。

ここからは…“特別”
幼馴染のためのチョコ。

「今年も作ってくるんだろうなあ…凄いの」

彼は、料理が得意である。去年は逆チョコがあった。
自分だってちょっとは自信があるのに、本職レベルで上回って来る。
女の子としてはお菓子作りくらいは負けていられないのである。

溶かしたチョコに少しだけ生クリームを混ぜる。
なめらかなガナッシュにして、丁寧に丸める。
ココアパウダーをまぶす手が、ほんのちょっとだけ、緊張。

――今年はもう、ただの“幼馴染”じゃないんだ。

伊都波 凛霞 >  
「……あっ」

ひとつだけ、少し歪んだ丸ができてしまった。
迷った末にそれを小さな箱の真ん中に置く。
一番伝えたい気持ちは、完璧じゃないほうが、きっと本当だから。

すべてを包み終えたころには、外はすっかり暗く。
家庭科室の電気を消し、窓に映る自分を見る。

「………」

少し赤い頬。
暖房、効かせすぎてかもしれない。

「よしっ」

胸元に箱を抱え、静かな廊下を歩き出した。

伊都波 凛霞 >  
明日。バレンタインダー。

家族には「ありがとう」を。
妹には「大好き」を。
そして…。

幼馴染には「これからもよろしくね」を。

歩みは、甘い香りを棚引かせて。

ご案内:「第二教室棟 家庭科室」から伊都波 凛霞さんが去りました。