2024/06/07 のログ
ご案内:「第四視聴覚室」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
「……で、あるから。基本的には警備と言っても普段通りのスケジュールで学業や必要なカリキュラムをこなして貰って構わない。委員会活動の為に学業が疎かになる、と言うのは本末転倒だからな」

プロジェクターによって教室の最前面に備えられたスクリーンには、学生通りや常世渋谷。歓楽街の大まかな地図が大きく映し出されている。
その直ぐ横。壇上で訥々と──しかし、尊大さを以て居並ぶ生徒達に声を上げるのは、金髪紅眼の小柄な風紀委員。

「今回が初めてのイベントの警邏任務、という者もいるだろう。巡回任務と違い、人が大勢集まるイベントでは何が起こるか分からない。それを不安に思う事も、立候補に及び腰になる事も理解は出来る」

壇上の少年に視線を向けるのは、1年生を中心とした下級生の風紀委員…つまりは、新米委員達。……自分より背が高い者が多い。

「しかし、今回の警邏では落第街と呼称されるエリアや、違反部活に関連性の高い区域は極力排除している。大規模なイベントでの警邏任務は、此処で躊躇っていても何れは回ってくるものだ。
であれば、早いうちに…特に、今回の説明会に進んで参加してくれた君達の様な熱意ある風紀委員には、経験して欲しいと願っている」

今回は、とこコレなるイベントの警邏任務増員に当たっての下級生を対象とした事前説明会。勿論任意。
本庁ではなく態々視聴覚室での説明会となったのは、未だ学園生活に慣れ切っていない可能性のある者や、部活動の時間帯を考慮したもの。
態々本庁に訪れてから午後の用事に向かわせるのは、可哀相ではあるし。

「と、まあ。それは私個人の意見に過ぎないがね。
さて、説明は先程の通りだ。何か質問はあるかね?」

新米風紀委員 > 「えーと、警備任務が今自分達の研修とは別で入るって言うのは分かるんですけど、実際務まるものなのでしょうか?」

こわごわ、と手を上げたのは4月に入会したばかりの委員。そろそろ研修も終わる頃合いだが、まだ半人前の自覚をきちんと抱えた彼は、理央の言葉にもやはり不安を拭えない。

神代理央 >  
「務まる務まらない、と言うのは、そもそも君達が悩む事では無いし、君達の責任になる訳でも無い」

やっぱり、自分より背が高いよな…と、起立して手を上げた委員に視線を向ける。

「謂わばこれは、風紀委員の業務の一端を体験する様なものだ。言葉は悪いが、大規模な研修と言い換えても過言では無い」

と、小さく肩を竦めて。

「研修期間中の君達が失敗するだろう、と言うのは織り込み済み、と言う訳だ。勿論、期待していない訳では無い。唯、所謂上級生…ベテランの委員に比べれば、状況対応能力に差があるのは当然の事でもある」

「だからこそ、失敗出来る内に失敗しておくのは寧ろ良い事だ。特に今回の様に比較的危険度の低い臨時の警邏任務ではな」

壇上に置かれたコップを手に取り、冷水で喉を潤す。
喋り続ける、と言うのは喉を酷使するものである。

「とはいえ、島外からの訪問者も増える事だろう。彼等は、新米だろうがベテランだろうが『風紀委員』に声をかけている。
そういう時、君達は何を聞かれる?何を尋ねられる?生徒や訪問者が困っている時に、どの様にそれを解決する事が出来る?」

「私達は島外の言葉で表せば警察官。謂わば街のお巡りさんだ。しかし此の学園では、それを全て生徒が運営し、実際に活動する。年齢や性別、果ては種族に関係無くな」

「だからこそ、そう言った枠組みに囚われず。失敗を恐れず。
困っている人に話しかける機会が増えるであろう此の任務には、積極的に参加して欲しいと思っている。まあ、何。仮に失敗したとしても…」

其処で、尊大な声色で話し続けていた少年は、少しだけ微笑む。

「その時は、私の奢りで愚痴くらいは聞いてやるさ。失敗を抱えた儘、と言うのは気分も悪かろうしな」

ご案内:「第四視聴覚室」にホロウさんが現れました。
ホロウ > 「ここで聞く事ではないかもしれませんが、私も一つよろしいでしょうか」

壇上の彼が回答を終えたところで、彼よりも僅かに背が低い代わりに、腰の辺りが物理的な存在感を醸し出す少女が挙手する。
腰のソレが邪魔なせいか座る事が出来ず、壁際に一人で立っている。

少し間をおいて、続ける。

「私は通常時であれば指定された地域の観測を命じられることになりますが、とこコレ期間中も同様となるのでしょうか?
それとも、期間中は私も警邏に参加することになるのでしょうか」

風紀に配属されることとなった少女は、室内の風紀委員らとはかなり事情が異なる。
それゆえ、その扱いがどうなるかは未だよくわかっていない。
それを誰に尋ねればいいかもわからない。
なんなら、ここにいるのも校舎見学のついでで偶然である。
とこコレと言えば自分が推薦される予定のイベントだし聞いておこう程度の気持ちであった。

神代理央 >  
「ああ、構わない。何でも聞いて────」

と、視線を向けて…少し驚いた様に瞳を瞬かせる。
尤もそれは一瞬の事で、直ぐに続けたまえと言わんばかりに軽く首肯するのだが。

「ふむ…私は直接君に指示を出す立場では無いが、概ねその様になると思う。と言うよりも、君の場合は機動力を活かした任務を与えられる事になるだろうから、細かく任務が変更になる、と言うよりも緊急時に都度都度現場へ向かう事になるだろう」

玉虫色の回答だが、現時点で神代理央が答えられる内容はまあ、こんな所だ。
常世学園の上空を飛行しているアンドロイド…と定義される存在。
彼…彼女?まあ、ホロウと呼称されるアンドロイドの指揮権を自分が持っている訳では無い。

と言うより、仮に任務に赴くとなれば大体が鉄火場の自分では、そもホロウを任せられないのではないか、と思わなくもない。
此れはホロウの戦闘能力に関する事では無く…まあ、自分の受け持つ任務が、多少血生臭いから、という理由だが。

「とはいえ、催し物に参加すると言うのも学生生活においては重要な事だ。警邏任務への参加を要請されるとは思うが、学業、委員会活動、そしてプライベートは分けて考えて欲しいものだな」

と、質問に対しての回答を締め括った。

ホロウ > 「わかりました。ありがとうございます」

室内の数名がこちらを見ている。
興味、恐怖、疑問。それぞれ異なってはいるが、いずれにせよ、風紀委員であっても自分は浮いた存在であるのだなと再確認。早く馴染みたいものだ。

それは兎も角、壇上の彼の回答に感謝を伝え挙げた手を下ろす。
性能的には、仮に島の反対側に居たとしても一分あれば駆け付ける事が可能である。
であれば、特定の指令に拘らずに臨機応変に対応させられることとなるのは、理にかなっているだろう。
状況を俯瞰できる性能は、様々なトラブルで求められる能力でもあろう。

(プライベートと委員会活動を分けて考える事は今の私には出来ているのでしょうか)

少し混同して考えている節があるななんて思った。


質問が締めくくられ、そのまま説明会が終了する。
他の風紀委員らが各々退出を始める中、壇上の彼の場所へと向かう。

「初めまして、神代理央様。私はホロウと申します。
少しお時間よろしいでしょうか?」

少女は、彼の事を知っている。
名前は説明会で名乗っているのを聞いて知ったが、その姿については遠目ではあるが何度か見たことがある。
場所は、落第街やスラムなどであったから、もしかしてそっち側の人間なのではないかとも思っていたが。
実際は風紀委員であったようで、少し驚いたものだ。

神代理央 >  
その後は、特に目立った質問も無かったのだろう。
最後に資料を持ち帰らせ、警邏任務への参加を検討する様に申し伝えたところで…説明会は終了する。
さて此方も…と、説明用の資料を鞄に仕舞い込んだところで、投げかけられた声に視線を向ける。

「…む?ああ、特に急ぎの用事がある訳では無いし、構わないよ。警邏任務について、の事かな」

丁寧な名乗りを上げた少女には、此方も勤めて穏やかな声色で言葉を返すのだろうか。
此方の名前を知っていた事には少し驚いたが…まあ、彼女の任務の特性を考えればさもありなんか、と内心で納得しておいて。

「警邏任務以外の事であれば、私に答えられる事は限られるが…可能な限りは答えよう。何でも聞いて構わないよ」


ともあれ。質問されれば丁寧に答えるのも仕事の内。
ましてそれが同僚であれば猶更である。と言う訳で、同期が見れば少し驚く程の穏やかさで、ことり、と小さく首を傾げてみせるのだろうか。

ホロウ > 「いえ、個人的な事です。何度か落第街で神代様と思わしき方を見たことがあるのですが、何をされていたのかお伺いさせていただきたく」

恐らく風紀の任務、なのだろうが。その様子がかなり過激で、他の風紀らしき者らと比べても一線を画していた。
1人であったり、他の者を連れていたりと、状況や程度に違いはあれど、彼は周囲に死を生んでいた。
彼が風紀であると思えなかった理由の一つが、それでもある。他にも複数あるが。

「ご存じかと思いますが、私は以前より常世島の上空より様々なものを見てきました。
その中でも、あなた様の様子は特異なものでした。ですので、その理由をお聞かせ願いたいと思いまして」

あのような異形を引き連れ、死の渦中に立っていた彼がこれほど穏やかな表情を見せている様子は少々不気味さすら感じる。
実は双子で、別人なのではないだろうかなどと考えたぐらいだ。

神代理央 >  
「ほう、私が何をしていたか…か」

答えるのは容易で、語るのは容易ではない。
何をしていたか────意味のある単語として語るに難しい事は無い。

「風紀委員としての任務の一環。落第街と呼称される区域を中心に、違反部活に対しての制圧任務。私の場合は、その中でも特に苛烈なものが多かったからな」

過去形ではない。唯、今は自分が積極的にその"立ち位置"に立つ時期が過ぎてしまったのではないか、と考えている。
要請があればその様な任務も務めるし、それが必要だと今でも考えている。

「この様な事務的な答えで君が満足してくれるのならそれで良い。しかして、それ以上の答えが必要だと言うのなら」

表情は穏やかな儘。声色も穏やかな儘。

「何故君が、私の行動を特異だと感じたのか。その理由を教えて貰えれば、より詳細に、詳らかに。答えを出す事が出来るやもしれぬな」

しかして、君を見つめるその瞳には、燃え盛る焔では無く、冷えて固まった溶岩────岩と化した表層の下に、未だ煮え滾る何かを潜めている様な、そんな熱が籠っている。
それは紛れも無く『鉄火の支配者』として立つ少年。落第街を火の海に包んだ風紀委員が、其処に立っていた。