2024/12/14 のログ
ご案内:「【生活相談実施中】第三教室棟 教室」に都姫うずめさんが現れました。
都姫うずめ > 『生活相談実施中』…。簡素な看板が立てかけられた教室の中、
うずめは一人座っていた。


警察には、殺人犯を逮捕する人もいれば、近隣住民のお話を聞く人もいる。
自分がやっているのは後者であった。

例えば、落第街で不穏な動きがあるのを知った、不良生徒のたまり場がある、
あるいは異能の制御に失敗しているひとがいる、
違法ちゅるちゅる(ペット用おやつ)を製造している人がいる…。

そういったものを集め、委員会というふるいにかけるのだ。
そのはずなのだ。

視線を手元のメモに落とす。
『彼氏の髪型が気に入らない』
『学食のうどんが最近柔らかい。学食の人が調子悪いのではないか?』
『婚期を逃しそうで不安』
『常世島の外にロケットを飛ばす許可が降りない。
 領空を超えて宇宙空間に出れば度の国も領空を主張できないので、
 どうにか領空内から宇宙空間までロケットを飛ばす方法はないか』
『婚期を逃しそうで怖い』
『天津飯と天津麺を一緒に食べたら卵とりすぎですか?』
『にべもない の”にべ”ってなんですか?』
『年末に男子たちが行おうとしているお祭りってなんなんですか?』
『婚期を逃しそうで不安』
『小籠包と焼き小籠包があると思うんですけど、焼きは邪道だと思います』


メモを眺めてにんまりと笑った。これで良いのだ。
生活安全っていうのは、これくらいゆるくていい。

持ってきていたギターを抱えながら、うずめは一人考える。

風紀の人は荒事を求めすぎているのだ。
でも、本当なら治安維持する人たちが暇な方が良い。
みんなに迷惑をかけるのは良くないけれど、そうでないなら
お互いのんびりしていたらいいのに。
あくびを一つすると、持ってきていた携帯型スピーカーにギターをつなぐ。
赤いギターの弦に触れると、ギターはスピーカーを通して嬉しそうな咆哮を上げた。

都姫うずめ > 動画を思い出しながら指を動かす。
重厚でヘビーな音がでず、ぺろぺろにょいんとした音が出た。 目を細める。
自分が音を出そうと思っていて、それができることが嬉しい。

悪童王通りを訪れて演奏してみた際の評価は散々だった。
あまりに下手くそすぎて、見かねた観客がアドバイスをしてくれたぐらいである。
そのときの動画が、今のお手本だった。
基礎も基礎、基本も基本から、観客が教えてくれる様を撮影したのである。

何度も動画を真似て指を動かす。ぺろぺろみょいん。
『うまい下手じゃねえんだ。 発信するならせめて聞けるレベルにしろ。
 誰にも届かない曲だ歌だなんて俺はいやだ。悲しすぎる。』
あの時に説教された言葉を思い出し、何度も指を動かす。
彼を学校で見たことはない。 もしかしたら違反生徒かもしれない。
でも、言っていることも、思いもちょっとだけわかった。
だからこそ、こうして暇があれば練習をしているのだ。
そこかしこでやるからうるさがられることもあるけど。

都姫うずめ > ギターをぺろぺろと鳴らしている最中に、割り込んできたチャイムに顔を上げる。
気がついたら、生活相談タイムは終わっていた。

概ね、用事がある人は早めに来るし、飛び込みで来る人もほとんどいないのである。
『あっ、そういえば生活相談したかったんだわ!』というケースはあんまりない。

ギターとスピーカーを片付けてエイヤと教室を出る。
看板を抱えて、そのまま風紀の倉庫へと歩いていくのでありました。

ご案内:「【生活相談実施中】第三教室棟 教室」から都姫うずめさんが去りました。