2025/05/17 のログ
ご案内:「第三教室棟 屋上」に武知一実さんが現れました。
■武知一実 >
「……天気悪」
夕方の屋上。
天気が良ければまだまだ明るい時分だが、今日は朝から生憎の空模様。
一日中厚い雲が垂れ込めて薄暗く、少しばかり肌寒さも覚える。
「……こんな日にバイトか、ツイてねえな」
久々の学校での夜バイトの為に、日没まで屋上で暇をつぶそうと思って来たのは良いものの。
こんな天気じゃ人の姿もなく、オレは余計に暇を持て余してベンチに腰掛けていた。
……夜食として買っといた菓子パンでも食うかなあ。
ご案内:「第三教室棟 屋上」に青霧在さんが現れました。
■青霧在 > 夕方まで校舎に残るのは稀だ。
大体は風紀の本庁に居るか、帰宅しているか、落第街近辺にいるかの何れかだ。
それでも今日ここにいるのは、深夜の校内警邏に呼び出されたから。
「むしろ幸運だったかもしれないな」
階段の踊り場、嵌め殺しの横長の硝子窓から見える空模様は濁っている。
こんな天候で外任務よりかは、空調の効いた屋内の方が随分マシだろう。
そう考えながら向かうのは屋上。
約束の時間までの間、変に知り合いに出会わない場所は何処かと考えた結果、屋上を選んだ。
そういう意味でも、この空模様は幸運だろう。
屋上の扉を開くと、すぐに誰かが居ることに気付く。
しかし知り合いではないことはすぐに分かった。
しかし、どこかで見たことがあるような気はする。
(風紀委員会の報告書だったか……?)
(だが……要注意人物などではないな……どこで見た……?)
見覚えがあるような気がする学生を傍目に気にしながら、少し離れた手すりに近づく。
危険には感じないが、忘れたままというのも自分が納得しない。
思考を巡らせながら意識を向け続けている。
■武知一実 >
「……」
視線を感じる。
ナリがこんなな所為か、好奇やら何やら、色々な視線を向けられることがあるからか、慣れっこと言や慣れっこだけども。
……別に敵意や害意も感じねえし、別にスルーでも良っか。
そんな事より小腹が空いた。
此方に向けられたままの視線を一旦意識の外に追い出して、ボディバッグから焼きそばパンを引っ張り出すと封を開ける。
香ばしいソースの匂いに空きっ腹が刺激され、思わず溜息を零した。
「んし、いっただきまーす」
別に誰に咎められる事でもねえ、半分ほどを包装から出した焼きそばパンに噛り付く。
んー……評判の一品だけあって、噂に違わぬ美味さ。並んで買って良かった。
■青霧在 > そうして記憶を探っているうちに総菜パンを食べ始めた学生。
彼の声までは知らなかった筈だが、その声を聞いた瞬間に思い出した。
(思い出した。何度か喧嘩で補導されてる学生だったな)
(それで……自分から喧嘩を仕掛けたことは一度もない、だったか)
何時ぞや刑事課の知人を手伝った時に見かけただけの情報。
確か名前は……『武知一実』。
食事中に話しかけるのはマナー違反かもしれないが、一度意識を向けた以上、ここに俺が居座るだけで食事に集中出来ないだろう。
思い切ってその場を離れ、ベンチに座る学生に斜め前から声をかけることにした。
「食事中にすまない。少しだけ話をさせてくれないか?」
出来るだけ穏やかに話しかける。
聞きたい内容は少しばかし剣呑かもしれないが、第一印象ぐらいは悪くないようにしたい。
■武知一実 >
「んぉ?」
これから一仕事って時の腹ごしらえの最中、意識の外に出してた視線の出元が動いた。
近付くでも離れるでも、まあオレには関係ねえなと決め込んでいたんだが、流石に声を掛けて来るとは想定外。
口に突っ込んだ焼きそばパンを飲み下して、声を掛けて来た男を見遣る。
……知った顔じゃないな、いや知ってる奴なら畏まって話しかけて来ねえか。
「ん……別に良いけども」
まあ暇を持て余してたところなので、断る理由も特に無い。
話がしたい、って奴で碌な話を振って来た覚えは無いが、まあ喧嘩売られるよりはなんぼかマシだ。
いや、話をしようって言って取り囲んで来る奴らも居たから一概にマシとも言えねえか……。
■青霧在 > 驚いている。
それはそうだろう。自分も同じ状況にあれば驚くか不審に思うの二択だ。
それでもこうして応じてくれたのだから感謝しよう。
「ありがとう」と軽く頭を下げた。
「突然話しかけてすまないな。俺は青霧、この学園の学生だ」
「あなたは武知一実君で間違いないだろうか」
「隣いいか?」と尋ねて少し空けてベンチの隣に座る。
こちらが一方的に名前を知っているのも不気味だろう。
礼節の意味合いも含めて名乗った。
膝の上で掌を組み、面を武知に向けた。
あまり直視すると不気味がられることがある。目の直視は避けておいた。
■武知一実 >
「……ああ、そうだけど。
然したる問題が無いなら、かずみんって呼んでくれた方が助かる」
さて、向こうはオレの名前を知っている。
まあ一年以上もこの学園に居るわけだから、多少は名前も知られてて可笑しくは無ェか。
あちこちでバイトしてる手前、人づてに名前を聞いたって線もあるわけで……。
つまるところ、話しかけられた理由がさっぱり分からん。
「青霧……ねぇ。
それで、オレに何か用? 初対面だし、オレはアンタの名前を聞いたのも初めてなんだけども」
世間話をしようって腹でもあるまいし。
いや、決め付けんのは良くねえな……もしかすると天気の悪い日に屋上で世間話をするのが趣味なのかもしれない。
だとしたらまあ……オレが出来んのは違う趣味を持つことを勧めるくらいだけどよ。
■青霧在 > 「……ならそう呼ばせてもらうよ」
逡巡の後、希望に従う。
他人を渾名で呼ぶことは稀故に少しばかし抵抗がある。初対面の相手とあらば猶更。
「なら早速尋ねたいのだが……かずみん」
「売られた喧嘩を買う理由を聞きたいんだ」
「止めたり責めたりするつもりはなくて、ただそれを聞きたいってだけなんだ」
渾名呼びへの違和感を飲み込みながら尋ねた。
それに加え、やはり脈絡の無い問いに、自分でも籠った感覚を覚えつつ続ける。
「喧嘩がただ好きでやっているのか、それとも何か理由があるのか」
「知り合いにも喧嘩好き……がいてな。それで気になったんだ」
あいつは喧嘩好きとは違うが、他人に詳細に話すようなことでもない。
それでも共通項に関心が沸いたのだ。
■武知一実 >
「悪いな、あんまり自分の名前好きじゃねえんだ」
ぎこちなくもオレの申し出を受けて渾名呼びをしてくれる青霧に、少し申し訳無さを覚える。
けれどまあ、渾名呼びが良いというより、本名で呼ばれんのが嫌と言う方が強いから仕方ねえんだ。
「……喧嘩する理由?
あー、前にも訊かれた事があンだけど、大した理由じゃねえよ。
世間にゃ暴力でしかコミュニケーション取れねえような奴らって居ンじゃねえか、そいつらの話し相手になってるってだけだ」
オレ自身喧嘩が好きか嫌いかと問われたら、どっちでもねえと答えるが。
意思疎通の手段として、喧嘩……まあ殴り合いが一番性に合ってるっつーか……まあそんなとこだろう。
別に相手をねじ伏せたいとか、そういう嗜好は無い事は明言しとく。
「まあ、最近は剣術道場への勧誘が主になってっけどさ。
オレに関して言うならそんな感じ、喧嘩売って来る方の細かい事情は知らねえけどな?」
つーか、人間相手の喧嘩の頻度が落ちてっけども。
怪異とか、その辺を相手取る比率の方が大きくなってるのは否定出来ねえな……。
■青霧在 > 「それなら躊躇いなくかずみんと呼ぶことにしよう」
そういった理由であればこちらも躊躇わずに済む。
渾名呼びそのものへの抵抗は拭えないが、それでも随分と気が楽になる。
「誰かが担わないといけない役割を担っているということか」
献身的というには回りくどいが、悪性ではないことを確信する。
異邦人などおらずとも、暴力的なコミュニケーションを好む人が存在するのは何度も目にしてきた。
そういった人々との緩衝材。無辜の人々へと向かうかもしれない暴力を受け止める。
その役割は必須とまでいかずとも、無くて良いと言い切れないように感じた。
(確かにそれなら危険人物にはならないか)
「風紀委員会に入る気は無いのか?」
思わず口をつく。
「……入れという訳ではないからな」
慌てて補足する。
勧誘ではない。だが、彼が風紀委員会ではないことは知っている。
もし風紀委員であれば、彼のその活動も円滑になるのではないかと。
剣術道場への勧誘が更生を促す目的あってなのだとすれば猶更、体制に属することは悪いことではないと感じた。
■武知一実 >
「ああ、遠慮なく躊躇わずにかずみんって呼んでくれ」
やっぱり初対面で渾名で呼ぶのは抵抗があるんだろうな。
この辺もっと上手くやれりゃ良いんだが……うーん、儘ならねえもんだ。
「そういうこった。 まあ、単に喧嘩っ早い性根がかみ合ったってだけかもしれねえ」
殊更に自分で主張するのも、人から評価されるのもこそばゆくて落ち着かねえ。
だから、売られた喧嘩はほぼ買う喧嘩屋、くらいに思われてるくらいで丁度良い、とオレは思ってる。
別に善行をしてるって訳でもねえしな、持ち上げられる様な事でもねえ。
「風紀に? 無ェよ、まあ散々説教されたから忌避感があるのも否定は出来ねえが……」
風紀委員に入る、別に風紀に限らず委員会への所属を考えなかった訳でもねえが。
結局のところ、こうして委員会も部活も無所属で居る事にしている。それが何故か、とオレ自身で理由を考えるとするなら、
「肩書がついた時点で、オレはその気が無くとも肩書越しのオレになっちまうからな。
……それは公平じゃねえだろ、喧嘩しようって時によ」
相手もオレも、他の何でもない自分自身として喧嘩するには、所属やら肩書はむしろ邪魔になる場合がある。
腹割って話すなら、極力まっさらでないと、って……勝手にオレがそう思ってるだけかもしれねえが。