2024/06/02 のログ
ご案内:「部室棟」に田中 浩平さんが現れました。
田中 浩平 >  
部室棟の裏に俺はいる。
待ち合わせの時間、誤差は3分以内。
早くてもダメだ。遅いなんて許されるものではない。

そう、取引はパンクチャルに行われるべきなのだ。

俺は“A”を待つ。

七曜の君 >  
「時間通りだな、ボブ」

声をかける男もまた、コートにハットだ。
6月なのに。

「場所の指定が部室棟だから素人だと思ったが…」

田中 浩平 >  
「ここでヘマする奴は平凡に暮らせばいい」
「俺は野心を持たない人生なんて御免だぜ、アリスよう」

暗号だ、AliceからBobへ───AからBへ取引が行われる、という。

「ジャスティンの庇護の下であるからこそ、マロリーの邪魔を受けない」

ジャスティンはjustice、司法のことだ。
マロリーは邪悪な攻撃者を示すmalicious attackerを意味する。

要するに悪漢の邪魔を受けずに目立たない場所、を厳選したのだ。

七曜の君 >  
「なるほど、考えたなボブ」
「意外性があり、時間を守る男は嫌いじゃあない」

トランクケースを取り出す。

「お前が欲しいものはこの中だ」

まずは焦らす。相手より優位に立つ。
交渉を有利に進めるための基本中の基本だ。

田中 浩平 >  
「アンタを信頼しないわけじゃないが」
「初めての取引なんでな……」

「“トレント”は誰だ?」

トレント。信頼された調停者 (trusted arbitrator)だ。
品質を保証する者がいなければ、掴まされる可能性だってある。

確認をするだけだ、誰も気分を害したりはしない。
そうだろう、七曜の君。

七曜の君 >  
口笛を吹いた。
こいつはやるかも知れない。

「いいだろう」

携帯デバイスを開くと、事前に記録されていた映像が画面に映し出される。

『ボブ、俺だ。今回の取引は俺が保証する……純正品だ』

例の喫茶店のマスターだ。
彼にとってもお馴染みだろう……ククク。

田中 浩平 >  
……!!
なるほど、信頼できる第三者として彼以上の存在はない。

「マスターが今回のトレントだったとはな……」

指を二本立てる。
2万円で買う、という意思表示だ。

「別にウォルターなんて立てちゃいない、これでいいだろう」

ウォルターは見張り番 (warden) を示す暗号だ。
コストをかけていないのだから、これくらいで買わせろと言っている。

七曜の君 >  
指を三本立てた。
3万円で売る、という意思表示。

「買い手ならいくらでもいる」
「ウォルターがいない今、オスカーには気をつけたほがいいと思うがな…?」

オスカーは敵対者 (opponent) を示す暗号。
この場に風紀が来れば、お前もタダでは済まないという脅しだ。

田中 浩平 >  
七曜の君。
七人で構成された“秘匿された部活”。
インヴィジブル・セブンとも呼ばれる彼らは。

如何なる商品でも用意するという噂だ。
したたかなりし商人たち。だが。

「雑談はここまでにしてもらおう七曜の君」

「いや………七曜の君ナンバー2、アクジキ・マンデー」

相手の正体を暴いた。
いや、確証はない。
ただ自信はある。ブラフだ、引っかかってくれ。

暴れる心臓をポーカーフェイスの下に隠した。

七曜の君 >  
口元を歪めた。
当たりだ、ボブとの会話をこれ以上続けるのは危険だろう。

「降参だ、2本でいい」

トランクケースを差し出して。

「ケースは例の場所に返却しておいてくれたまえ」

まさかこの時代に七曜の君の名前を暴く者がいようとは。
面白くなってきた。
これからだ。全ては。これからだ。

ご案内:「部室棟」に蘇芳 那由他さんが現れました。
蘇芳 那由他 > 本来、帰宅部の少年だが帰りに用務員さんに捕まってしまったのが今回の切欠。
片手に大き目のビニール袋、そして草狩り鎌を携えて。首にはタオルを引っ掛けつつ。

「…えぇと、確か部室棟の裏側…だったかな。」

夏になって伸び盛る前に草刈りをして欲しい、という頼みだ。
勿論、少年が引き受ける義理も何も無い。が、どうせ帰宅してもやる事も無いし。

「…草刈りなんて初めてだけど、まぁ何とかな――…」

少年、思わず足を止める。視界の先には季節にそぐわない格好の人物が二人。

(…凄い、どう見ても不審者だ…。)

ハイライトの無い目付きと物静かな表情で思わず眺めながらも、妙に感動している自分が居た。

七曜の君 >  
足を止めた少年に気付いて。

「ボブ、イブだ!」

イブ……盗聴者 (eavesdropper) を示す暗号。
そう、監視者を立てない以上。
こういう結末はあり得たのだ。

「私はこれで失礼する」

二万円を受け取って。

「お手並み拝見といこうか、ボブ?」

そのまま駆け出していった。
6月にコートのまま。

田中 浩平 >  
「ここでイレギュラーだと……!?」

素早く取引を終えると、
トランクケースを抱えたまま少年を睨む。

「ここは俺に任せろ、A」

とはいったもののノープランだ。
汗をかいてきやがった……!!
(6月にコートなので)

「何か用かな、少年……」

いや少年て。同い年くらいだろ。

蘇芳 那由他 > (え、僕がイレギュラー?)

どういう事だろう?と、不審者さん達の片割れの呟きが聞こえたのか首を傾げ。
あぁ、もしかしてマズい現場に遭遇しちゃったのかな?と、ワンテンポ遅れて把握したらしい。

取り敢えず、こういう場合は相手を刺激してはいけない…気がするので。
高々と両手を上に挙げて降参のポーズ。荒事は苦手なので平和的に行こう。
…草刈り鎌に関しては、まぁ大目に見てくれると僕としては助かるのだけど。

「あ、えぇと…さっき用務員さんから、ここの草刈りを頼まれまして。
それで、まぁ早めに済まそうと思って来た訳なんですが。」

素直にここに参上した経緯を話しつつも不審者さん達を観察。
…見れば見る程蒸し暑そうな格好だ。もう6月だし常世島の気候を考えるとキツいのでは。
と、変な所でどう見ても不審者全開な二人の心配をしてしまう少年だ。

田中 浩平 >  
むぅ、両手を上げた。
片手には草刈り鎌……まさか。
形意拳十二形……それも凶暴なりし熊形。
熊掌拳(ゆうしょうけん)、その実践型……

武器持つ振り下ろしの型、人熊(ヒトグマ)か!!

草刈り……これも暗号。
我らを路傍の草に例え、雑草の如く刈り取るという意思表示だ。

「フッ……早めに済まそう、か…」

どうやら相手は強者らしい。
人生17年……何の武もこの手に宿すことなく。
だが、取引相手を逃がす時間くらいは稼げる。

「この俺が安く見られたものだなッ!! 奥義!!」

田中 浩平 > 安心救命阿(ネイシンジュウミンア)ッ!!」
田中 浩平 >  
すごい勢いで土下座をした。
見逃して下さい。

蘇芳 那由他 > 物凄い深読み、という名前の誤解をされている現状に少年は全く気付いていない。
ビニール袋とタオルも持参しているし、草刈りを頼まれたのは本当だ。
だから、素直に信じてくれると彼としては有難いのだけど…。

「…はい?あの、すいません何か盛大な勘違いをして――」

あれ、これはもしかして喧嘩…いや戦闘?の流れになってしまったのか?
首をゆるゆると左右に振って誤解です、違うんです、と少年なりにアピールするが…何か奥義とか言い出してます!?
反射的に逃げようと万歳ポーズのまま踵を返そう…と、したが。

蘇芳 那由他 > 「――まさかの土下座っっ!?
蘇芳 那由他 > 少年にしては大きい声で思わず叫んだ。え、何で土下座!?
むしろ土下座されるほど僕は強くも何でも無いんですが??

思わず逃げようとした足が向き直り、「あの、一先ず落ち着いて下さい別に取って食いやしませんので。」
と、宥めてみようとする。むしろ土下座されたままだと落ち着かないんですよ…!!

田中 浩平 >  
「へへへ…このスケベでスケベでしょうがねぇエロゲーがないと明日を生きれねぇんでさ……」

そう、取引したものは。
伝説の絶版泣きエロゲー、『魔族計画』だ。
エロもストーリーも一級品のそれを。

苦心して手に入れたはずだったのに……!!

「へっ?」

なんかこっちを気遣う言葉?
これ本当に勘違いしてない俺?

立ち上がって。

「そうか……つまり、君はたまたま通りがかっただけで」
「風紀の息がかかった抹殺者(ニゲイター)ではないと」

そのまま顔を手で覆って。

「良かった……終わってしまうかと思った…」

空は青い。雲は白い。
夏に色づく木々は美しい。
この世界の美を、改めて感じ取った。

蘇芳 那由他 > 「…はぁ…エロゲーですか…。」

そういえば、たまーにクラスの男子とか男子寮の人達が熱く語り合ってるのを聞いた事があるような?
少年、エロゲー歴は完全に白紙状態なので、存在を知っている程度なのが悲しい所。

「ええ、通りすがりというか頼まれて草刈りに来たら、偶々貴方達と遭遇してしまっただけというか。」

あ、どうやら分かってくれたらしい。ほっとしたように安堵の吐息。
万歳ポーズのままだったのを思い出し、ゆるゆると両手を下す…所で『にげいたー』とは何だろう??

「…つまり、えぇとお二人でエロゲーの裏取引をしていた、とかそんな感じです?」

ちょっとテンポがズレたりする事もあれど、少年も馬鹿ではない。
漸く、彼らが何をしていたのかを大まかに理解したのか、納得したように頷いて。

(…まぁ、確かに風紀委員とか教職の人達に見つかったら没収とか色々あるだろうなぁ。)

少年、エロゲーはど素人だが同じ男子としては理解はあるつもりだ。
なので、風紀とかに告げ口するつもりは全くない。彼らの心底安堵した様子を見たのもあるが。

田中 浩平 >  
「そういうことなんだ…」

少年は察しがいい。
いやこの場合、俺が察しが悪いだけか。

「すまない、とんだ茶番に巻き込んじまったな」
「俺は二年の田中浩平だ、アンタは?」

立ち上がってコートを脱いで帽子を脱ぐ。
いつまでもこの姿のままだと帰り道で目立つ。

「どうしても欲しいものがあった、それだけなんだ」

そう、世界は複雑なように見えて。
実はネジを巻く鳥が世界のネジを巻くように。
構造としてはシンプルなものなのだ。

蘇芳 那由他 > 「いえ、何かに情熱を抱けるのはいい事だと思いますよ僕は。」

これは本当にそう思っているから。自分がそこまで情熱を抱けるものがまだ無いに等しいのもあって。
だから茶番だろうが滑稽だろうが、不審者全開なのはまぁ、うん。ともあれ決してどうこう言えないんだ。

「あ、先輩だったんですね。僕は1年生の蘇芳那由他といいます。ナユタで構いません。」

二年生の田中浩平先輩か。コートと帽子を脱いだ素顔をまじまじと眺めつつ、こちらも名乗りと会釈を一つ。
後ろの人も矢張り学園の生徒…だよね?多分。きっと。

「それだけ欲しかったのなら、いわゆるレア物なんでしょうね…。」

ちょっとエロゲー文化というものに興味が出てきたかもしれない。
いけない傾向かもしれないが、多分この年代の男子としては真っ当な成長?なのかも。

「ちなみに、好奇心で聞くんですけど田中先輩が取引したエロゲーって大まかにどんな感じのやつなんです?」

ここでそれを聞くのか。ちょっと興味が出てきたからしょうがない。

田中 浩平 >  
「ナユタか…いいよ、呼び捨てで。これ、名刺代わりだ」

そう言ってラーメン店のクーポン券セットを差し出した。
まぁ、煮玉子サービス券とか大盛り無料とかが五枚綴りになってるやつだ。

「異邦人街近くで“麺処たな香”ってラーメン屋系部活やってる」
「これ持って来てくれればサービスするからさ」

ハハッと笑って。
爽やかな笑顔、そうだ。俺達は分かり合うことだってできるはずだ。

「ああ、もう正規ルートじゃ手に入らないレア物だよ」

ナユタがエロゲーについて大まかに聞くと。

「まずこれはシナリオがオメガロメオっていうシナリオライターなんだが」
「今ではライトノベルなんかで大人気の山田ロメオの過去に使っていたペンネームなんだ」

「人である以上、人と人の間にある軋轢に苦しみながらも」
「それでも人との関わりを求めてしまう切なさみたいなのが身上の作家だな」

「それがなんとこの魔族計画では人外たちの交流を描いてるらしい」
「なんとも興味深いよな……!」

「そして原画は非公開だが恐らく美罪MAXさん」
「ゲーム会社自体も今は解散したタツノスっていうブランドで…」
「もう二度と見ることはできない、華やかなりしオールスタースタッフなんだ」

「声優さんも今は引退したり一般作に行ったりしてる人ばかりで…」
「男性声優もまた、魅力的にサブを固めている」
「そして当時にしてはオーパーツと呼ばれた革新的なUI」

「現代に残っていないことが文化の損失とも呼べる伝説のエロゲーなんだよ…!!」

熱。

「今日は徹夜だな……」

蘇芳 那由他 > 「え、呼び捨てですか?先輩を呼び捨てにするのは…。」

流石にちょっと抵抗があるな、と。いや、でも親睦を深めるなら頑張るべきか?
ちょっと悩む時間を挟みながらも、逡巡してもしょうがないと思い。

「じゃあ、えぇと…浩平?」

いきなり名前の方で呼び捨てだった。この辺りのさじ加減がよく分からないのもある。
あと、やや疑問形になってしまっているが、これは全然呼び捨てに慣れてないだけだろう。
差し出されたクーポン券セットを受け取り、まじまじと眺める。あ、ラーメンそういえば最近食べてないや。

「異邦人街近くの…”麺処たな香”…ラーメン系部活…。」

凄いなぁ、と素直に思う。自分とおそらくほぼ同年代だろうにラーメン屋を部活動としてやっているのか。
彼の笑顔に釣られてか、少年もめちゃくちゃ淡いが口元に笑みを浮かべて。

「…成程、だからわざわざ裏取引を…。」

今回のイレギュラーな遭遇だが、これはこれで知己が増えて世界が広がった気がする。
そして、思わず興味本位で尋ねてしまった彼の入手したエロゲーについてのあれこれだが。

「成程、葛藤と切なさのシナリオを書かせたら凄い人なんですね。
人外との交流、というのもこの島の日常的な光景とも重なりますね。」

彼の熱い語り口に気圧されながらも、分からないなりに嚙み砕いて少年なりに理解を深める。
原画、声優、ゲームシステム等もエロゲーど素人の少年は殆ど分かっていない。
…分かっていないが、今となっては”二度と作れない”名作なのだろう、と朧気に理解する。

「…うん、浩平が熱く語るのも少しだけど僕なりに理解出来た気がします。」

エロゲーというと、偏見の目も多いだろうが…これも一つの”作品”であり馬鹿にできるものではない。
奥が深いなぁ、としみじみ思いながらも、徹夜宣言している彼に小さく苦笑を。

「徹夜は止めませんけど無理は禁物ですよ。でも、一気にのめり込むと止まらないでしょうし。」

本当に徹夜でやりきりそうだなぁ、と彼の様子を見て思う。

田中 浩平 >  
呼び捨てにされると笑顔でサムズアップして。

「おう、ナユタ! 名前で呼びあったらダチだ、なんかあったら呼んでくれ」
「とはいっても俺になんか解決する力はねーからさ」

「一緒に悩むくらいはしてやれると思うぜ」

ラーメン出すくらいはいつでもできるか、と笑って。

「俺は常世で最新の経済学を学んでるんだ」
「学生のうちにモデルケースとして店を持てて腕を磨ける」
「そんでもって経営・経済・流通を修められるってんだ、良いガッコーだよな」

「基本塩ラーメンだけど色々出してっからさ、今度来てくれ」

はははと笑って。

「なぁに、気にするな。部活や授業に影響するまでのめり込んだりはしねーからさ」
「俺さ、情熱を持って取り組めるうちに色々やりてーんだ」

「バカな青春送ってるけどさ、未来の俺が良かったなって思える今でありたいんだ」

良いこと風に言っているが。
手に在るのは変装グッズとエロゲーの入った黒のトランクケースだ。

蘇芳 那由他 > 「えぇ、その時はお世話になります。逆に僕も出来る事は…あまり無いですけど、何か力になれる事があれば。」

サムズアップを返す。ちょっとぎこちないが慣れてないだけだ。今日は色々新鮮な体験しているなぁ。
それに、一緒に悩んでくれるというのは同じ目線で真剣に考えてくれる、という事ではないだろうか?

(…何か凄い力を持ってる訳じゃなくても、そうやって一緒に考えてくれるのは十分に凄いし有難いよ。)

心の中で呟く。知己もまだ殆どおらず、過去も空っぽの少年はそう思う。
それに、大層な力や技術が無くても、情熱と努力で人は”挑戦”していける。

「…凄いなぁ、僕なんてそんな建設的なビジョンを立てる事すら出来ないのに。」

ただ先輩ってだけじゃない。この人は自分のやりたい事が明確で、その為に努力している。
それを少しでも見習いたいものだ。今すぐには無理だとしても。

「塩ラーメンいいですね。こってりも好きですけど僕はあっさりも好きですし。」

ぜひ今度食べに行きたいものだ。…問題は自分はちょっと地理や位置の把握に問題がある事だが。
つまり、辿り着くのに無駄に時間が掛かりそうな可能性。…頑張ろう。

「――未来の自分かぁ。僕は想像した事も無いですけど…。

きっと、何時か思い描いて努力できるようになりたいな、と思う。
…それはそれとして、しみじみ良い話をしているけれど浩平の持ってる物が変装グッズとトランクケースだ。
…あぁ、これはこれで怪しまれそうだなぁ、と思う。帰り道大丈夫かな?

「ちなみにですけど、今の時間帯は風紀の人は学園内には少ないので帰るなら最短距離で行くのがベストかと。」

用務員さんとかからちらっと聞いた情報なので間違いではない筈。
何だかんだで彼の裏取引については完全に黙認というか、むしろ完遂に協力する姿勢。

田中 浩平 >  
「いいんだよ、俺も辛いことがあったら遠慮なく泣きつくからよ」
「そういう時にそりゃつれぇなぁって言い合えたらいいよな」

携帯デバイスを取り出して。

「連絡先交換しとこうぜ」

すごいなぁと言われると首を左右に振って。

「俺はまだ口先だけの若造だ」
「それにな、何もビジョンがないってのもいいもんだぜ」
「これからどんな夢だって描けるんだ、お前の中にある絵の具でな」

無限の可能性を語った。エロゲーを手に。

「気軽に長居できる店を目指してっからさ」
「おう、塩ラーメン良いよなッ。俺のプライドを丼に盛ってるんだ」

まだまだ改善の余地はある。
ラーメン、奥深し。

「なんでもいいんだよ、ナユタが今日という日に」
「用務員さん手伝って、変な友人ができたって思い出した時に」

「笑顔になってるかどうかのシンプルな問題さ」

と、器用に片目を瞑って笑った。

そして逃走経路のアドバイスを受けると真顔で。

「おう、サンキュー! 恩に着るぜ、ナユタ!」
「今日のところは退散だな……またな!」

新たなるフレンドに手を振って、俺は家路についたのだった。

蘇芳 那由他 > 「僕のフォロー力が試されるような気がしますねそれ。」

まぁ、でも。知り合ったし友人と言ってくれたなら僕なりにやれる事はやりたい。
ともあれ、まだ連絡先とか全然スッカスカの携帯端末を取り出して浩平と連絡先交換をしておこう。

「僕の中の絵の具……。」

少し黙り込んで、彼の言葉を己の中で消化するように反復する。そうか、そういう考え方もあるんだな。
…と、少年はしみじみ感じているが友人の手にはエロゲーの入ったトランクがあるのがシュールだ。

「…浩平のそういうポジティブな所は、きっといろんな人の助けになると思いますよ僕は。」

じゃあ僕は?それは今はまだ分からない。…分からないだけだ。知っていくんだ、自分自身を。過去が無い事なんて気にせずに。

「ええ、折角のブツを没収されないように気を付けて!お疲れ真です、浩平。」

一足先に退散する彼を会釈で見送ろうと。考えたら呼び捨て以外敬語が抜けてなかった。
まぁ、これは直ぐにどうこうは流石に難しいので長い目で何とかしたい。

「おっ…と。僕も草刈りしないと。」

頼まれ事を投げ出すのは”性分じゃない”。真面目に律義に、友人が去った後は草刈りに勤しむとしよう。

ご案内:「部室棟」から田中 浩平さんが去りました。
ご案内:「部室棟」から蘇芳 那由他さんが去りました。