2024/06/03 のログ
ご案内:「ガラテア再現部 部室」にシェン・トゥアールさんが現れました。
シェン・トゥアール > ロボットと言っても、その様相は千差万別である。
工業用のロボット、人間と肩を並べて動くロボット、
軍事用、デモンストレーション用、あるいはヒロイックなもの…。
そんな中でも、「完全自律な美少女型」ロボを夢見て集った人たちの
部活が『ガラテア再現部』である。

そんなガラテア再現部にある会議室で、シェンと部員たちは激論を交わしていた。
「だから!!!これ以上可愛い衣服だの何だのは頼まれても困るの!
 俺が異邦人街で探偵やってるのはおたくらも知ってるでしょうが!
 あのねえ、事務所がねえ…事務所が可愛いの!!!ドールハウスみたいになってんの!!」
机を叩くのは、うさぎの耳が生えた幼い少女……のようにして、全身義体を用いる異邦人、
シェン・トゥアールであった。

『可愛いことの何がいかんのですか! それともなんですか!往年のSF映画みたいに
 スプリング飛び出たボロボロのソファ、映らないテレビ、焦げたコーヒーしか出さない
 ドリップマシン、タバコで穴が空いたコートとかそういうのがいいんですか!!』
腕を組み言葉を返す大柄な人物は、ガラテア再現部の部長である。
机を叩くシェンに応じるかのように、大きく手を広げてアピールしていた。
『シェンさんに用いられる技術を部分的に解析してどうにかやってるのが今なんです。
 リソースだって手一杯なんですから、ちょっとぐらい我々の希望を聞いてくださってもいいじゃないですか!』

反論にシェンは唸る。 うさみみも次第に元気なく、途中からへにゃりと折れ曲がった。
「恩義を感じてないわけじゃない。 感謝はしている。 だが、恩義を振りかざすのは良くないといっているんだ。
 恩人に言うセリフじゃないのはわかってるが…。 探偵は箔ってのが必要なんだよ。
 ”できるヤツ”感だ。 ふわふわの可愛い事務所じゃその感が出ないんだよ…。
 もちろん、俺自身もこれ以上おたくらに可愛くされるのは困る。
 その…商売ができなくなるんだ。」
そこまで言い切ってから、シェンは上目がちに部長を見やった。
異邦人街で探偵をやるには、もちろん第一に必要なものは実力である。
しかしそれと同時に、探偵という商売には【信頼されること】も必要なのだ。

シェン・トゥアール > ため息をついたあと、部長は重々しく口を開く。
『シェンさん、お気づきではないかもしれませんが…。すでに所作が…。』

そこまで口にしたところで、シェンの耳がぴんと立った。
目を見開き、驚愕の表情を浮かべるシェンに部長は続ける。

『これ以上…というのはわかります。 しかし、我々がシェンさんに
 協力しているのはデータ取りの貴重な機会だからでもあるんですよ。
 貴重なデータ収集の機会を放って置く事はできません!
 あと技術的な話をすると、シェンさんのボディについての
 ノウハウは我々が一番詳しいです!!』

シェンは口をぱくぱくさせるが、結局がっくりと項垂れ、両手をあげた。
「わかった、俺の負けだよ。 ボディのメンテナンスをしてもらってる都合上、
 あんまりお互いの関係を悪くしたくない。おたくらもそうだよな。」
そこまで言ってから、小さな手を差し出した。
「とりあえず、”これ以上”はやらないように頼むよ。それならいいだろ?」

小さな手…どこかつやつやとした作り物のようなそれを見て、
部長は頷き、しっかりと握手を交わした。
『わかりました、シェンさん。可能な限り努力します。なるべく…』

のちにこの”なるべく”を盾にして、ガラテア再現部にいいようにされるのは、
また別の話であった。

ご案内:「ガラテア再現部 部室」からシェン・トゥアールさんが去りました。