2024/07/08 のログ
栖鳳院 飛鳥 > 「いえいえそんな、私の家が贅沢をし過ぎなだけですわ」

気を遣わせてしまっただろうか、と思いつつ、頭を下げつつ配膳してもらう。
こういう時、やはり見れないというのは不便だ。

「ありがとうございます、八坂さん。
それでは、いただきましょうか」

いただきます、と手を合わせ、こぉ、と、右手中指にある宝石指輪から淡い光を放つ。
宝石魔術で湯呑とカステラの位置を確認して、美しい所作でカステラを切り、口に運ぶ。

「ふふ、確かにコンビニのもののようですが、美味しいですわね」

高級品にあるような、舌が肥えていないと分からないような繊細な味、食感などはどうしても劣る。
だが、表現が難しいが『みんなが一律に美味しいと感じる』ように工夫して作られたその味は、別口の美味しさとして感じられた。

八坂 命 >  
「飛鳥ちゃんちお金持ちやもんなぁ。
 普段の生活とか大丈夫?
 困ってへん?」

彼女も寮生だったはずだ。
流石に自宅では目が見えないフリはしていないかもしれないが、元がお金持ちなだけに一人暮らしで大変なところもあるのではなかろうか、と。

「甘さの暴力みたいな味やけどな。
 これはこれで僕は好きやで」

こちらは雑にカステラを引っ掴み、口に放り込む。
糖質と脂質の暴力、と言った感じの味だ。
雑に美味しい。

「あ、お茶熱いから気を付けてな」

栖鳳院 飛鳥 > 「お気遣い、有難う御座います。
……正直、不便がないとは言えませんわ。
ですが、この目が暴走してしまってはいけませんもの。仕方のない事ですわ」

実家では、色々付きっ切りでサポートをして貰っていたが、寮では流石にそうはいかない。
一人暮らし自体はそれなりに楽しんでいるのだが、見れない不便ばかりは色々と何とかするしかないのだった。

「これはこれで、なんというのでしょう、繊細さに頼らない味、と言う感じがして私も結構好きですわ。
ふふ、お父様に聞かれたら怒られてしまいそうですが」

ころころと笑いつつ、湯呑に指輪を少し近づけて、光を放つ。
サファイアの、青い光。そこから『冷却』の属性を取り出し、少しお茶を冷やす。

「有難う御座います。これくらいで、ちょうどいいでしょうか……八坂さんのお茶も、冷やさせていただきましょうか?」

八坂 命 >  
「なんか困ったことあったら言うてな。
 同じ部活の部員やし」

いつでも手伝う、と言うその顔は、目を覆う前髪越しでもわかる程に輝いている。
むしろ手伝わせろと言わんばかりに。

「ジャンクな味やんなぁ。
 砂糖でぶん殴られてるみたいな感じする」

もふもふもふ、と一気にカステラを一切れ口の中に押し込んでしまう。
それを熱いお茶で流す。

「ん、んんーんー。
 ――ええよええよ、僕熱いお茶好きやし」

口の中にモノが入った状態でもごもごした後に大丈夫、と。
お茶は熱いに限る。

栖鳳院 飛鳥 > 「ふふ、頼りにさせていただきますわ。
八坂さんも、私にお手伝いできることがあれば、遠慮なく仰ってくださいな」

見えずとも、その言葉に嘘偽りがない事は感じられる。
故に、素直に受け取り、そして素直な言葉を返す。

「あらあら、豪快ですわね」

声や音から、一気に食べたことを察してころころと笑う。
そんな飛鳥は、小さく切り分けて一口、を繰り返していた。

「そうなのですね、覚えておきますわ。
私は、猫舌とまでは行きませんが、どうにも熱々と言うのは苦手で……」

舌を火傷しそうで怖いのです、と恥ずかし気に。

八坂 命 >  
「うん、そん時はお願いするなー」

テーブルに肘を付いて笑う。

「僕、手がコレやからねぇ。
 あんまり汚れんようにしてたらこうなってもた」

腕が義手なので、あまり汚したくない。
フォークなど使った方が良いのだろうが、それはそれでなんだかつまらない。

「コツがあるんよ。
 こう、空気と一緒に吸う、みたいな」

言葉通りに湯呑に口を付け、ずぞぞと吸う様に飲む。

栖鳳院 飛鳥 > 「ああ、義手、なのでしたわね。
なるほど、そのような理由だったのですね」

どうしても、見れない以上義手と言う認識が固定され辛い。
ちゃんと覚えておかなくては、とそっと胸に刻みつつ。

「空気と一緒に、ですか……?
ええと、こうでしょうか」

言って、一気に吸い込むように飲んで。

「! けほっ、こほっ!」

むせた。

八坂 命 >  
「義手ってのもちょっとちゃうけど」

厳密には「クニツカミ・インダストリ製霊力制御戦闘補助デバイス「モデル・タケミナカタ」」である。
けどめんどくさいので義手でいい。
めんどくさいもん。

「わ、だいじょぶ!?
 一気に吸ったら咽るよ!」

口の中に吸い込むのであって、その奥まで吸ってしまったら器官に入ってしまう。
立ち上がり、彼女の後ろに回って背中を擦る。
ついでにティッシュも取って手渡そう。

栖鳳院 飛鳥 > 「こほっ、こほっ……も、申し訳ありません……」

言いつつ、自分の声の反響でティッシュを手渡してくれていることを察し、受け取って口の周りを拭く。

「けほっ……難しい、ですわね……」

そして、背中を刺すってもらいながら、はぁ、はぁ、と大きく息をして呼吸を整えようとする。
やはりお嬢様、豪快な食べ方飲み方は不慣れであった。

八坂 命 >  
「もー、無理したあかんよ。
 だいじょぶ?」

ちょっとびっくりした。
このお嬢様、ラーメンも啜らず食べてそう。

「でもちょっと安心したわ。
 お嬢様でも苦手なことってあるんやね」

なんでもそつなくこなすと思っていた。
彼女の意外な一面が見れてちょっと嬉しい。

栖鳳院 飛鳥 > 「なんとか、落ち着いてまいりましたわ……」

ふーっと大きく息を吐く。
因みに、ラーメンもちゅるるちゅるるとちょっとずつしか食べないスタイルである。
そもそもほとんど食べたことが無いのだが。

「そんな、苦手な事、至らない事ばかりですわ。
この学園に来てから、殊更そのことを痛感するばかりですの」

家事全般は、盲目と言う事もあり極めて苦手だ。何とか部屋は綺麗にしてはいるが、それも宝石魔術ありきである。
最近ではようやっと最低限普通に出来るようになったが、人ごみの中を歩くのは本当に苦手で、気がつけば流されてよくわからない方向に行ってしまうなんてことはしょっちゅうあった。
大声を出すのも苦手。誰かを少し遠くから呼ぶというだけで一苦労である。
一般社会に揉まれて、自分がいかに温室育ちで、他人に頼って生きて来たのかを未だに再確認する日々である。

八坂 命 >  
落ち着いたようで一安心。
自分の椅子に戻ろう。

「そう言えば前から思っててんけど。
 飛鳥ちゃんってその目ぇ使うん五分くらいにしとるやん?
 それって普通に見るんもそうなん?」

彼女の魔眼。
前に聞いた話では、五分を超えると暴走する可能性があるからその制限を付けていると言うことだった。
それはただ見るためだけに目を開けるのが五分、と言うことなのか、と。

栖鳳院 飛鳥 > 「ええ。と言いますより、ただ見るだけ、が出来ませんの」

栖鳳院飛鳥(せいほういんあすか)が盲目『のフリ』をする理由である魔眼、『虹輝(こうき)の魔眼』。
命の言う通り、魔眼として使うのも五分くらいに制限しているが、それだけなら言う通り、常から目を閉じている必要はない。
しかし。

「この魔眼は常時発動していますの。目を閉じて、宝石魔術と言う形で宝石を媒介に限定することで制御しておりますが、この目を開けば即座に全力で励起し、周囲のあらゆる輝きを集め出してしまう。
開けば、もう制御できない暴れ馬さんですの。ですので、皆様に迷惑をかけてしまいながらも、このように振舞っているのですわ」

この魔眼が初めて発動したのは幼少期だったが、目に映る輝き全てが一気に目に入り、そして収集されて情報が脳に雪崩れ込んだその瞬間、思わず目を閉じたことを今でも思い出す。
その後、財力やコネクションを活かして様々な手を打ったが、制御することは叶わず。
盲目のフリをしてでも目を閉じ続けるのは、苦肉の策であった。

八坂 命 >  
「あー、僕のと似た様な感じなんかぁ」

制御出来ないタイプの異能。
自身の封印の異能も、目覚めたと同時に暴走して腕を飲み込んでしまった。
腕と連動しているタイプの異能だったためか、それだけで暴走が止まったのは不幸中の幸いだろう。
以降ずっと生身の腕が失われた生活をしている。

「お互い難儀なもんやねぇ」

自分はこちらで得た新たな腕が元の腕よりも便利なのでまだ良かったが、彼女の場合はそうもいかない。
なんせ目が使えないのだから、不便などと言うものではない。
フリだとしても結局視界が制限されていることには変わりない。

栖鳳院 飛鳥 > 「そう言えば、八坂さんの『封印』も、制御が出来ないものでしたわね」

目覚めると同時に己を封印しようとしてしまうような、あまりに強烈な異能。
それを想うと、自分はまだ恵まれている方だと思う。
少なくとも、目は残っているし、実らなかったとは言え、処置をする余地もあった。
制御こそできないが、暴走はあくまで危険性であり、開け続けていれば実は慣れる可能性も無ではない。恐ろしくて出来ないのだが。
だが、彼女の異能は本当にどうしようもない。制御出来れば、封印された腕が戻ってくるのかもわからない。
不可逆である可能性が、圧倒的に高いのだ。
良い義手が見つかって良かった、と心から思う。
彼女が日常生活を普通に送れていることは、心から喜ばしかった。

「ええ、本当に……ですが、正直厄介なだけでしたこの異能、役立てる場があったことは僥倖ですわ」

虹輝の魔眼は、無理矢理にでも使う分には、強大な出力を発揮する異能だ。
そんな魔眼を用いて、魔を祓い、誰かを守ることが出来る。
それもまた、喜ばしいことだった。

八坂 命 >  
「せやね。
 調べようにも封印されてしもた核が腕やったらしくてなーんもわからへん」

腕が封印されただけで収まったのは確かに不幸中の幸いかもしれない。
けれど、原因だったものがなくなってしまったので調べようもないのだ。
そのおかげである程度制御出来るようになったとは言え、根本的な解決ではない。
しかも万が一腕の封印が解けたとして、果たして腕が本当に核かどうかすらわからないのだから。
内心一生この身体と付き合っていくのだろうなぁ、なんて半ば諦めている。

「最初はびっくりしたけどな。
 怪異討伐する部活とか、ホンマに言っとるって思ったもん」

部長から勧誘されて驚いた。
そう言うのは風紀委員の仕事だと聞いていたのに、そんなことを考える個人がいるなんて思ってもいなかったから。
ちょっと怖そうだったけれど、自分の封印の力が役に立つかも、と言われてちょっと嬉しくなったのは自分も同じである。

栖鳳院 飛鳥 > 「何かお力添え出来ることがあれば良いのですが……」

それこそ、財力もコネクションも、実家のものだがある。
――だが、それでも、異能と言う個体差の大きいものに対しては、力を発揮しきれなかったと言わざるを得ない。
実際に、虹輝の魔眼に対して無力だったのだから。

「ええ、私もです。
何より、私を見てお声掛けしていただいたというのが一番驚きました」

飛鳥は、ぱっと見はちょっと宝石魔術を使えるだけの、その分盲目な一少女だ。
戦力としての期待値は0と言っても過言ではないだろう。
だが、飛鳥の秘める能力を見抜き、声を掛けて来たのだ。

「あの方には、何が見えておられるのでしょうか……」

八坂 命 >  
「だいじょぶだいじょぶ。
 僕結構この腕気に入っとるし」

ひらひらと手を振って見せる。
二つ繋げれば普通の腕と見た目はあんまり変わらないし、身体からある程度切り離すことも出来る。
座ったまま遠くの物を取ったりできて色々便利なのだ。

「襲ちゃんなぁ。
 なんかたまーにすっごい怖い目ぇしてたりするけど」

見えないものが見える異能だと言うことは聞いている。
けれどこの部活を立ち上げた理由は聞いていない。
たまに見せる怖い顔が何か関係しているのかな、と思うのだけれど想像でしかない。

「副部長とらぶらぶっちゅーことしか知らんしなぁ。
 羨ましいわぁ」

あとおっぱいが大きい。
羨ましいという言葉はどちらに向けたものか。
それは語らず机に突っ伏す。

栖鳳院 飛鳥 > 「ふふ、それは救いですわ」

本当に、いい義手があったというのは救いだ。
見えない不便を知っているからこそ、余計にそう思う。

「きっと、私のとは別種の魔眼の類なのでしょうが……こればかりはお聞きしないと分かりませんわね」

異能とは、ある程度のカテゴリングこそ出来るが、個体差の大きいもの。
系列に当て嵌めて全てを考える、と言うのは難しい代物だ。
故に、想像力を働かせても仕方ない部分と言うのはあったりする。

「ええ、仲睦まじい様子で、とても微笑ましいですわ。
私も、そういった殿方とお会いできれば良いのですが」

こちらは、素直にカップルへの羨望。
胸は(見えないし)あまり気にしていないお嬢様である。

八坂 命 >  
突っ伏した体勢で顔だけ動かし、彼女を見る。
彼女も相当美人だな、と思う。
あとおっぱいが大きい。

「――ちなみに僕はぁ。
 殿方じゃなくても大丈夫な人なんやけどぉ」

にんまりと笑って腕を伸ばす。
右手の肘から先を切り離し、向かう先は見事な山脈。
わきわきと指を動かしながらにじり寄っていく。

栖鳳院 飛鳥 > 「あらあら、申し訳ありませんが、私はそちらの嗜好は今のところ御座いませんの」

うふふ、と微笑みながら、右手を少し持ち上げ、サファイアの指輪を腕の方に向ける。
そして……先ほども使った『冷却』属性、と言うより『凍結』属性の輝きを照射する。

「おイタはめっ!ですわよ?」

流石に本気ではなく、滅茶苦茶冷たい程度ではあるが、腕は急速に冷却されていくだろう。

八坂 命 >  
「あぁんいけずぅ」

義手故に感覚はないのだが、何かされているのはわかる。
と言うか見ればわかる。
諦めて腕を引っ込め、和服の袖の中に戻していく。
冷やっこくて気持ちいい。

「でも襲ちゃんたち見とるとやっぱ恋人欲しいなぁって思うなぁ。
 ホンマ仲良くて幸せそうやもん」

改めてぐたーと机に突っ伏す。
恋人欲しい。

栖鳳院 飛鳥 > 「ふふ、いつかその良さが分かる日が来れば、考えさせて頂きますわ」

たおやかに微笑んで照射をやめる。
ちょっとしたじゃれ合いのようなものだ。

「それは、そうですね。
やはり、ああいった恋愛と言うものには、どうしても憧れてしまいます」

その姿を見ることは出来ないが、声のトーンや話している内容から、心から幸せなのは感じ取れる。
やはり、それは純粋に羨ましいと感じるものだった。

八坂 命 >  
「でもホンマの話、恋人作るなったらこの腕のことも言わなあかんやろし、部活のことも言わなあかんからなぁ」

この部活は秘密の活動なのだ。
あまり恋人に秘密を作りたくない方なので、それは傷害と言えば障害。

「恋愛したいぃ。
 いちゃらぶデートしたいぃぃぃ」

突っ伏したままじたばたともがく。
なんだかんだ年頃の女の子なのだ。
そう言うのに対する憧れはやはりある。
そんなガールズトークをして、占星術部らしいことはあまりせずに時間が過ぎていくだろう――

ご案内:「部室棟/占星術部部室」から栖鳳院 飛鳥さんが去りました。
ご案内:「部室棟/占星術部部室」から八坂 命さんが去りました。