2025/01/11 のログ
ご案内:「神技武練塾」に霜月 雫さんが現れました。
■霜月 雫 > 神技武練塾、神技堂。
多くの部員が、各々の持つ『武』を鍛え、高めるための場所。
拳、剣、槍、杖……その他にも、技術体系を問わず、様々な武の稽古が行われている。
そんな場所で、霜月流次期当主候補であり、霜月流系の剣術全般に加え、桜庭神刀流剣術をも修めた剣士、霜月雫は。
「……ほんっと~~~~~~~~~~~~~~~~に、ごめんなさい!!!!!!」
思いっきり、一部の部員たちに頭を下げていた。
■霜月 雫 > 『いやまあ、試験自体はちゃんとしたルールの中でやったわけだし』
『あの子が強かっただけだからさ』
そう言って部員たちが手を振るも、より深々と頭を下げる。
「とはいっても、どうせあの子のことだから、本来出来る加減をしなかったろうし……それにほら、凡才がどうこうとか、言ったでしょ……?」
妹……霜月霈は、大事な妹であり、ライバルだ。
向こうがどう思ってるかはどうにも掴みづらいが、シズクは姉として、可愛い妹だと思ってるし、お互いを高め合えるライバルだと思っている。
――だが、気が合うかと言うと、悲しいかなそうとも言えない。
いや、喧嘩しがちとかそういうわけではないのだが、とにかく性質が正反対なのである。
積み重ねた鍛錬こそ強さに繋がると信じているシズクと、自身の才こそが強さに繋がると信じているヒサメ。
卓越した技巧を誇るシズクと、奔放な剛力を誇るヒサメ。
そして――才の寡多を問わず武を志す者に敬意を示すシズクと、才無き者を顧みないヒサメ。
それゆえ、妹の外での失礼の後、姉として頭を下げに行くのは実家にいたころからまあまあなあるあるだった。
「あの子には、もう一度言い聞かせておくから……!」
『言ってることに理がないわけじゃねーし気にすんなって』
『実際才能はエグいもんを感じたしなぁ……』
『アレはヤバかったわ……』
「うう……それだからたちが悪い……」
そう。
才……その一点において、剣術のそれで妹に並ぶ存在を見たことがない。
そう言い切れるくらいには、才気に溢れているのだ。
つまり、才こそ至上と言う言葉を、自身で見事体現してしまうのである。あの妹は。
「(こう言うのもなんだけど、もう少し無難なレベルの才能だったなら……!)」
ここまで頭を抱えなくてもよくなりそうなのに、と頭を抱える。
■霜月 雫 > 『それに、あの感じは多分、言っても聞かないタイプだろ?』
『だろうなあ、あの傲岸不遜感……』
「うう……」
頭を抱えて膝をつく。
そう、まさに仰る通りなのだ。
シズクも、現当主である父も、何度もそういった点……特に、礼節面に関しては言い聞かせて来た。
おそらく、ヒサメも耳にタコが出来ているであろう。
それでアレなのである。見事なまでの馬耳東風。何を言っても右から左。
そんなことを気にしていたら歩みが逸れる、と言わんばかりに綺麗に無視して己が道を突き進んでしまうのだ。
「本当に、本当に……申し訳……」
シュシュシュ…と小さくなる…いや実際になっているわけではないが、申し訳なさで縮こまっていくシズクを、部員たちが『いいからいいから』と宥める。
『そんじゃ詫びついでに鍛えてくれよ。あの子と同じ流派なんだろ?』
『それいいな、次は負けねぇ!』
心が折れないどころか、どこまでも前向きな部員たちに、改めて敬意を抱く。
「うーん、確かに元々の流派は同じだし、同じ技は遣えるけど……剣筋は結構違うよ?」
言外に了承しつつ、違いについては確認を取る。
シズクは技巧派剣士。合理化された動作と戦術で『詰み』を作りに行くタイプの剣士だ。
だが、ヒサメはパワー型の剣士。天性の膂力と瞬発力で圧倒し、相手を『ねじ伏せる』タイプの剣士。
そこの違いはどうしてもある、と伝えると。
『参考になるのは変わんないしいいよいいよ』
ならば、と大太刀を抜き放ち、お互いに構える。
ご案内:「神技武練塾」に緋月さんが現れました。
■緋月 >
「…………むう。」
日頃の日課となっている、演習場の訓練施設へと向かおうとしていた、外套に書生服姿の少女。
だが、今日は少しだけ道を外れる事にした。
具体的には、部室棟の方へ。
何のことはない。何処か妙な盛り上がり…それも、仕合めいた気配を感じ、
思わず道を外れて部室棟へ引き寄せられたのである。
(普段は占星術部にしか用事がないですけど……。)
その分、他の部室などに目を向ける事が無いので、見て回るのが少しだけ新鮮。
そんな事を考えつつも、気配を辿り、行き付いた先は――
「……神技、武練塾…?」
また、大仰な名前である。
とはいえ、その大仰さに劣る所のない何か…熱気と、戦闘前の気迫らしいものを感じる。
「……窓は、ありますよね。っと。」
窓を探せば、ぱたぱたと足を進め、ちょっとお行儀は悪いが覗き見の姿勢。
■霜月 雫 > 「よろしくお願いします!
それじゃあ――いくよ!」
そう叫び、ダッと駆け出していく。
――この時点で、普段のシズクとは違う。
寧ろシズクは受け型の剣士。さらに言えば、仕掛けるにしても色々と手順を踏むタイプだ。
だが、今回は敢えてヒサメの戦型を出来るだけ真似してみることにする。
自分にとっても気付きがあるかもしれないし、ヒサメ対策となれば『待ち』は一番あり得ないからだ。
「はあっ!」
真正面からの斬り下ろし。
何の工夫もない、まさに正面突破。
『流石にそれはな!』
これは躱される。
そして、それで正解だ。
大太刀による一撃は、迂闊に受ければそれだけで磨り潰せてしまうパワーがある。
だが……その代償は、振りの大きさと、それに伴う打ち終わりの隙。
『ぜあっ!』
打ち終わりの隙に、抜け目なく打ち込んでくる部員。
普通であれば、綺麗に反撃が入りおしまいとなる場面。
しかし。
「ふっ!!」
踏み込んだ右膝を抜く。
これにより、身体は前に流れ……反撃の打ち込みの先からわずかに逸れる。
だけでなく。
「はっ!!」
そのまま半回転し、相手が打ち終わった瞬間の腹部に足刀を叩きこむ。
『ぐえっ!?』
加減はしたものの、流石にうずくまる部員。
それを見て、一旦手を止める。
「とまあ、こんな感じで……あの子の剣は、ただ真っすぐなだけのようで霜月流の剣風である転身、捌きがたくさん織り込まれてるの。
私は技術で再現したけど、あの子は身体能力でやってくるって違いはあるけどね。
今のは、敢えて威力は高いけど回避は出来る、って攻撃をして見せて回避を誘発、打ち終わりの隙を晒してそこに攻撃を誘導して回避、そして剣の返しは間に合わないから蹴る……って感じの手順かな」
基本的に隙を見せず、堅実に詰めていくシズクと異なり、ヒサメはぱっと見隙が多い。
だが、それは誘い。
相手に打たせ、それに対し強烈な後の先を叩き込む。
それが霜月霈の剣風なのだ。
『まんまと誘いに乗っちまったってか……そう言えばあんときも、イケる!って思って攻撃したら吹っ飛んでたな、オレら……』
あー、と天を仰いで記憶を掘り起こす部員。
「私のとは拍子も速度も違っただろうけど、基本理念はこんな感じ。だから結構な初見殺しなんだよね、あの子の剣。私も苦労したなぁ」
隙を突きたくなる気持ちを抑え、冷静に本物の隙を見出す必要がある。
本当に厄介な剣だ。