2025/03/11 のログ
ご案内:「神技武練塾-神技堂-」に霜月 雫さんが現れました。
霜月 雫 > 「ふぅ…」

木刀を振る手を止めて、一つ息を吐く。
普段使いの大太刀ではなく、通常サイズのそれを鞘に納めながら、正座。

「うーん、中々いい感覚にならないなぁ」

通常の太刀サイズを振るうのはやや久しぶりだというのもあるが、中々しっくりとくる感じにならない。
正座しながら、むむむと唸っている。

霜月 雫 > 「うーん、こういう時は、基本の型に戻るかなあ」

そう言って、柄に手をかける。

「――居合型『草薙』、一本目」

片膝立ちになり、そのまま立ち上がりながら、ススス、と前に出つつ抜刀。相手の脚を薙ぐ。
その後、足を斬られ反撃してくる、もしくは前に倒れてくる敵に対応するため、切り返して即座に逆風に斬り上げ。
流れで右霞の構えに移行、残心。
左足を引きながら切先を鞘口に持っていき、右足を引きながら納刀。
正座をして、礼。

「……うーん」

そして考え込む。うーん。

霜月 雫 > 「重心の問題…じゃないよね、多分。そこは問題ない感覚だし。
なんだろう、なんだかズレてるこの感じ……」

自分の演じた型を脳内で反芻する。
自分で言うのもなんだが、型としての動作におかしなところはなかったはずだ。
だが、何かがズレている。
首を傾げつつ、改めて柄に手をかける。

「――二本目」

先ほどと同じように、スススと前に出ながら抜刀。
だが、今度の想定は相手が足薙ぎを躱した状態。
故に、こちらに来るであろう敵を捌く斬り上げではなく、左右にやや斜めに踏み込み(千鳥に進み)ながら、右から左、左から右、右から左へと連続して横薙ぎを放つ。
そうやってリズムを覚えさせ(拍子を作り)ながら、最後の薙ぎの直後即座に前に踏み込んで平突き。
一撃で仕留めきれないことを想定し、突いたところから更に薙ぎ、そこから切り返して首を薙ぐ。
下がりながら平正眼に取り、残心。
左足を引きながら切先を鞘口に持っていき、右足を引きながら納刀。
正座をして、礼。

――問題ない。
動作は正確、型通りに出来ているはずだ。
なのだが。

「あれー?」

何故かしっくりこない。うーん、うーん。

霜月 雫 > 「なんだろう、なんだかこの……型通りに出来てるのに、型の通りに行ってない感じ……?」

首を傾げる。
当然だが、独演する型であっても、その型には想定される相手がいる。
相手の動きを想定し、それに対する適切な動作を纏めたのが武術の型の一面だ。これを繰り返し稽古することで、状況に応じた適切な動きを、思考ではなく反射で繰り出せるようにすることが、型稽古の意義の一つである。
だが、それが上手く行っていない感覚がある。問題なく、型通りに出来ているにも関わらず、だ。

「う~~~~~~ん……」

考え込む。
数秒考えこみ、今度はもっと明確に相手をイメージしながら演武することにしてみる。

「――三本目」

抜刀し、足薙ぎを躱された状態を想定するところまでは同じ。
そこから横薙ぎを放つが、今度は横薙ぎを相手が躱すのではなく受けた想定だ。
よって、薙ぎの連続ではなく、回し打ちによって連撃を放ち、拍子を作る。
右、左、右と順に打ち込んで受けさせ、パターンを記憶したところに切り返しを面打ちに移行……

「あれ?」

すかっ。

最初の打ち込みの際に、自分の中でそんな擬音が響いた。

勿論、身体は型通りに動いているため、寧ろちゃんとその位置で止まって切り返そうとしている。
だが、想定している相手に、切先が届き切っていないのだ。

「…………あっ!!!!」

そこで、思わず大きな声を出す。

――踏み込みが、浅い。

もっと正確に言えば、間合いの感覚が大太刀のそれから修正しきれていないのだ。

「こ、これかぁ……!」

自分が持っているのは、今は通常サイズの太刀(の木刀)だ。
全長で言えば自分の身長を越える大太刀、凍月(いてづき)の間合い感覚を引きずっていては、適切に踏み込めようはずもない。

「そっかぁ……ここしばらく、凍月ばっかり使ってたもんなぁ」

木刀を納め、天を仰ぐ。
今は稽古だからまだいいが、実戦の時に同じことをしていては、それが命取りになる。
今のうちに気付けて良かった……と思いつつも、対人稽古の重要性を思い知る。
太刀での対人稽古はここしばらく行えていなかった。
それにより、感覚を取り戻しきれずにいたのだ。

「稽古……凛霞や霈や緋彩に頼めるかなぁ」

考えて、とりあえず妹を除外する。あの妹は稽古とかしない。己の才能にフルベットオールイン、稽古なんて不要論者である。
――寧ろ、あの子の剣才なら、この程度の感覚のズレは、発生しないか、しても即座に修正できるのだろう。
己の未熟を噛みしめながら、木刀を抜いて平正眼に構える。
そして、間合いを意識しながらイメージトレーニング。より精密に、より正確に。
剣術において、間合いの管理は最重要事項の一つ。
様々な長さの武器を想定しつつ、それに合わせて間合いを調整しながら。

「……誰か相手いればなあ」

そんなことをボヤく。

霜月 雫 > 「まあ、流石にそう簡単に相手は見つからないよね」

ふぅ、と息を吐き稽古を終える。
納刀して、礼。
実際、自分の感覚のズレを矯正出来ただけで、大いに意味があった。
今後は、太刀や小太刀、そして組討の練習も増やしていこう、と考えつつ、木刀をしまう。

「あー……そう言えば組討とか、最近出来てないや。今度凛霞にでも稽古頼もうかな」

知り合いで最も『その手の技』に秀でている幼馴染を思い浮かべつつ、その場を後にするのだった。

ご案内:「神技武練塾-神技堂-」から霜月 雫さんが去りました。