常世学園にある大図書館群である。常世学園では異能や魔術含めてあらゆる分野の書物を集めており、いくつもの大図書館が立ち並んでいる。
稀覯本など特殊な書物などは特別な手続きが必要だが、それ以外の本は正規の学生証を所持している学生や職員なら自由に借りることができる。
それ自体が魔力を持つような強力な魔導書はある程度魔術についての知識や技能があるものでなければ借りることはできない。
また、図書館群の奥には「禁書図書館」というものも存在している。主にこれまでの歴史で禁書とされたり、焚書にされてしまった本などが置かれている。
強力で危険な魔導書なども置かれており、普通の生徒は入ることを許されておらず、存在も公開されていない。
しかし、その割にはあまり厳重な警戒とはいえず、普通の図書館から迷い込んでしまう可能性もある。
参加者(0):ROM(1)
Time:08:01:32 更新
ご案内:「図書館 閲覧室」から大神 璃士さんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」から泳夢さんが去りました。
■そんなお話 >
――二人が消えた先からは、衣擦れの音と、荒い息遣い。
其処で、何があったのか…知っているのは、二人だけ。
本の森の中の赤ずきんと、偶然其処に出くわした狼。
少しばかり鼻が利き過ぎた狼を、赤ずきんは花園へと誘い込み――
そこにはおばあさんも、狼を狩る猟師もいない。
最初からふたりきりの、ふたりだけの、少しだけ残酷なおとぎ話。
狼に食べられる事を望んだ赤ずきんと、その望みを叶えた狼の、めでたしめでたしなどないお話。
ただ、それだけの。
この島では、珍しくもないかもしれない、そんなお話。
――――それでもお話の最後にはこの言葉を。
めでたし、めでたし。
■泳夢 >
あぁ、自らを求めてくれた。その欲望に呑まれてくれた。
少女はその事実に笑みを深めて、華奢な体を彼へと差し出す。
義肢もなければそれこそ、子供ですら抱えられるほどの少女の体重。
きっと人狼の腕力も合わせれば、軽々と運ばれてしまう事だろう。
「ふふ…いいんだよ、だって──」
私のせいで、そうなったのでしょう?
……少女は彼の囁きにそう返し、閲覧室の影へと連れていかれるのだろう。
少女はきっと拒むことはない。
猟師を呼ぶこともなければ、おばあさんに会いに行くこともない。
ただ食まれる為に、狼を暴いたのだから。
■大神 璃士 >
「――――――――――!!」
ほんの一言の、言葉。普段ならば、歯牙にもかけずという筈の代物。
だが、今回は……今回だけは、状況と相手の体質が、悪すぎた。
ギリギリで持ち堪えていた理性の決壊は、ほんの小さな、蟻の穴の如き一突きで、充分であった。
人狼のそれと化した右腕が、するりと少女の首から離れ、その身体を抱えるように持ち上げる。
ただでさえ四肢が義肢であり体重の軽い相手、それに対して腕のみとはいえ人狼の力である。
片腕だけで充分過ぎる程だった。
同時に、黒いジャケットの男の顔が少女の耳元に寄せられ、荒い呼吸と共に、囁くような声。
――すまない、という謝罪の言葉と、後悔するぞ、という責めるような言葉。
二つの、全く相反する言葉。
車椅子から少女を抱え上げたまま、黒いジャケットの男は閲覧室の、
人目につかない場所へと僅かに荒々しく歩を進めて行く。
その先に向かえば――――
――赤ずきんを待つのは、狼に「食べられる」という結末。
■泳夢 >
それが異能かと問われれば、少女はくつくつと笑うばかり。
事実、異能めいた”体質”でもあり、否定すべき要素でも無し。
だから、些細な誤解はそのままにして、少女は続ける。
首へと伸びるそれにも恐れず、直ぐにでも手折られそうな様に笑みすら浮かべて。
「そっか、そうだよね。
隠してたんだからこれって、内緒にしてたことだよね」
寧ろそれを受け入れるように。
作り物の手で、優しく受け止めるように毛だらけの右手に添える。
「いいんだよ、私を食べても♪」
そうして告げる。
きっとそう、今の彼を惑わすであろうその言葉を。
「場所は選んで欲しいけど」
だなんて言葉を続けて見上げる顔は、まるで娼婦のそれのように。
■大神 璃士 >
「お、前……この、香りは…異能…かっ………!」
――常に隠し続けている、左手の刻印。
それは偏に、己の本性を他の生徒に対して伏せる為であった。
自身の真の姿を知る者は…敵対して「その姿」を目にした犯罪者以外には、
ごく一部の教師位しか居ない。
黒いジャケットの男は表向き、「人間」として学園に所属し、活動を行っていた。
――しかし、その擬態は少女が放つ甘い香りで亀裂を入れられ、更に刻印を見られた事で
ほぼ完全に破られた、といっていいだろう。
目にも止まらぬ速さで、空いていた右腕が車椅子の少女の細い首へと伸びる。
ぶちり、ぶちりと音を立て、少女の首を掴むように伸びた手は、グローブが破れ、
長い毛に覆われ、刃物のような爪が指先から伸びている。
だが――その首を圧し折るような力は、込められてはいない。
「………誰にも、言うな――!」
伸ばした右腕を軽く震わせつつ、黒いジャケットの男はそれだけを口にする。
表立った変異は、右腕と……瞳だけ。
少女が指摘した通りの、狼のような瞳が青く光を放っている。
■泳夢 >
少女が初めに目にしたのは輝くの手の甲、其処に刻まれた刻印であった。
次にそれがまるで狼をかたどったかのようなそれだと目にする。
不思議と、それに少女が呑まれ、正気を失うことはなかった。
否、それはきっと正確な表現ではないだろう。
少女は魅了こそ"別の魅了"でレジストし、正気を保ってはいた。
されどもそれは少女の裡の別のものを、より明確に表出させた。
「わぁ……♡」
それが意味することは即ち、正気のままに、少女は欲に魅入られた。
「……素敵な印だね…、まるで狼さんみたい。
ねぇ、あなたは──もしかして、この刻印みたいに、狼さんなの?」
問いかけるその瞳は爛々と。
甘ったるい少女の香りは、更に濃く。
獲物を前にした獣の前に、自らを差し出すように身を乗り出した。
■大神 璃士 >
ふらついた拍子に、車椅子の少女に向かった、黒いレザーグローブの左手。
その手を取られただけでも、黒いジャケットの男の頭は更に眩暈のような、奇妙な感覚が増す。
それを形容するなら…文字通り「色香に惑わされた」状態というのが、最も適切だろう。
「!! や、め――――」
グローブを外そうとする、車椅子の少女の動きには流石に気が付く。
事故か、あるいは故意か。そんな事を考える余裕すらない。
現実としてあるのは「少女が男の左手のグローブをずらし」、「その手の甲を露にした」、それだけ。
グローブの下から現れたのは、狼の意匠を思わせる刻印。
目にする者に牙を剥き、睨むような形状のそれが、月の如き光を発する。
――今日が満月でなくて、幸いであったかも知れない。
もしも今夜が満月であったなら…それを目にした瞬間に、刻印からの野性の光に、
少女は正気ではいられなかっただろう。
それでも、今日は月が出ている。
刻印の光――そして牙を剥く狼の似姿が、持つ者の精神に引き摺られて放つ野性の本性は、
少女を魅了し、正気を乱すには充分である…かも知れない。
■泳夢 >
それは全く嘘ではない。
少女は香水など付けておらず、常人ならばその香りは感じない。
否、感じるとしても入用後の肌の香り程度のそれ。
即ちそれを強く感じるのであれば──それは人ではない証である。
少女はそれを”つい最近に自覚した”ばかりであったが。
「わ、大丈夫?」
そう心配の声を掛けながら、体勢を崩して顔の前に来た左手を義肢で支えるように取る。
それは実に自然な動作で、一見すればただの自己のそれに写るものだ。
されどもその行為には明確な意思を伴って、
グローブを外しこそしないがその甲が見える程度にずらしていた。
■大神 璃士 >
「――――何?」
香水をしていない、と、車椅子の少女は語る。
感じるのならば「鼻」が良いのだ、と。
(どういう事だ…これ程、強く匂いを感じるというのに……っ…!?)
そこまでを考えた所で、くらり、と頭がふらつくような感覚を覚える。
迂闊だった、としか言いようがない。ただの香水の類だと思って、香りを嗅ぎ過ぎた。
無警戒に、しかも嗅覚に刺激を加えられた事で、頭がぼやけてしまう。
ふらり、と男の身体が姿勢を崩した事で、レザーグローブで隠された左手が
無防備に車椅子の少女に向けて近づいてしまう。
少女が義肢の身体だとして、今のふらついている隙をついてグローブを外す位は難しくはないだろう。
■泳夢 >
「あはは…それはうん、その通りで。
ご心配、ありがとうございます…でもうん、無理はしないから」
自らの義肢を一瞥し、少女は小さく頭を下げる。
苦笑が浮かんでしまうのも致し方のない、耳の痛い指摘であった。
しかして、続く言葉には目を丸め……
そうしてすぐに、口角をニマリと歪めた。
「香水はしてないよ?
もし感じるならたぶん……きっと”鼻”がいいんだと思うな」
少女は、首を小さく傾けながらそう告げた。
口元に人差し指を当てて、クスリと笑って見せた。
その視線の先を、彼の手の甲に定めながら。
■大神 璃士 >
「そうか。ならいいが。それでも、この暗さだ。
流石に今は地面が凍ったりはしていないようだが、それでもいつ雪が降ってもおかしくはない。
一度半端に溶けて凍ると――その身体と、車椅子では辛いだろうからな。」
黒いジャケットの男も、流石に馬鹿ではない。
車椅子の少女の手や足の様子、何より車椅子を使う様子から、
それらが義肢の類だろうと見当はついた。
深く詮索しないのは、それこそ様々な存在が多数住まう常世島だからこそ。
自分もあまり深く詮索されたくない事情があっての事、だった。
だから、それ故に。
「――――不躾だとは思うが、香水の類はもう少し控えた方がいいと思う。
少し香りがきつい。悪いとは言わないが、良くない輩を引き寄せてもおかしくはない。」
自身の立場もあって、そんな忠告を出してしまう。
――男がその香りを感じ取れてしまったように。
少女もまた、男の左手…黒いレザーグローブを嵌めているその手の甲に目をやれば、
奇妙な昂りを感じてしまうかも知れない。
其処から漏れる…グローブでは隠し切れない魔とは似て非なる、「月」の波長に。
■泳夢 >
「大丈夫です。ちょっとびっくりはしましたけど」
ぺこりと頭を下げながら、少女は苦笑を携え顔を上げた。
少々鋭い目つきであったが臆することはなく、実に素面での対応であった。
……尤も、彼が感じる少女の反応への印象は別かもしれないが。
「はい、そんなところで。
家も直ぐ近くなので、大丈夫ですよ」
とはいえ、少女は表面上は至って普通の反応そのもの。
強いて気になるとすれば、きっと其の匂いだろう。
何処か甘く、煽情的にも魅惑的にも感じる香りが、"人類種でなければ"感じ取れる。
■大神 璃士 >
「――いや、注意を疎かにしていたのはこちらの落ち度だ。
怪我がないなら良いが、大丈夫か?」
黒みを帯びた青い瞳が、車椅子の少女を見下ろす。
本人には特に問題などはなかったのだが、元々の目つきが鋭いのもあって
もしかしたら威圧感か多少の恐怖感は与えてしまうかもしれない。
こればかりはどうしようもないので、黒いジャケットの男は諦めているが。
「……何かの調べ物か、それとも冬期休暇の課題か?
どちらにしても、暗くなるのはまだ早い時期だ。
帰宅に不都合がないよう、気を付けた方がいい。」
普通の委員であれば簡単なお知らせ位の話が、目つきと少々無愛想そうな雰囲気で
威圧的な様子に見られてしまうかも知れない。