2024/10/24 のログ
ご案内:「図書館 閲覧室」に紫明 一彩さんが現れました。
ご案内:「図書館 閲覧室」にクロメさんが現れました。
紫明 一彩 >  
常世学園に聳え立つ図書館群。
無数の書架が列をなすそこはまるで、
知恵の糸が織り成すテキスタイルだ。

そんな、知識の大海を閉じ込めた迷宮の探索には、道標が必要で。

そのカウンター(道標)には、
柔らかそうな椅子に腰掛けている図書委員が居た。
椅子に深くもたれかかる彼女は、
黒髪を無造作に片手で弄りながら、
もう片方の手で文庫本をゆっくりと読み進めている。

「この新着資料もなかなか……ささっと借りちゃおうかね~」

無限の知識(書架)の片隅で、
彼女はゆったりと欠伸をしながら、本を閉じた。
来訪者の気配を感じたのである。

「おや、いらっしゃい?」

気だるげな声色はそのままに、
図書委員の女――紫明は、そう声をかけることだろう。

クロメ >  
さて
アレに聞くのは業腹だ、ということで書を求めてきたわけだが

「……ふむ」

改めてみると、思ったよりは大きな施設だ。
この程度、調べること自体は造作もないことではあるが……
いや、大した労でもないのに惜しむのは沽券に関わる

「……」

面倒くささと葛藤しながらも、ゆっくりと施設内へ向かっていく。
入って程なくして、奥に見えるのは本の群れ
なるほど、想像通りではある

「……む」

番人だろうか。
椅子に座った女がこちらに話しかけてくる。
無視、するわけにもいかないか

「……本を見に来た。通してもらう」

用件を端的に告げる

紫明 一彩 >  
声をかけつつまずは相手の様子を見やる紫明。
互いに異なる色の煌めく瞳と、少し青がかった白髪。
背格好は――かなり小さい。

そして何よりも彼女の目に入るのは、
その胸に深々と突き刺さった杭だ。

「これはまた、出来の良い衣装だねぇ。
 君もハロウィン(聖夜)を楽しんでる(クチ)
 それとも――」

気だるげだった声色が少しばかり鮮明に際立つ。
輪郭を取り戻した音は、興味深げな目と共に眼前の怪異へと
向けられる。

「――本物かな~?」

ちらりと視線をやった杭から蒼と金(アシンメトリー)に目を移し、
に、と微笑んでみせる。
この常世学園、本物が紛れ込んでいたとて、珍しいことはない。

「本を見に来た、か。良いよ~?
 図書館の利用方法としては最も適切だし。
 でも、もしかして図書館の利用は初めてかい?」

そこまで口にすると、紫明は伸びをした後、椅子から立ち上がる。
そうしてカウンターから躍り出れば一礼し、
黒手袋を嵌めた手を誘うように差し出す仕草を見せて、
問いかける。

「なら、吸血鬼のお嬢様のエスコートを……
 務めさせていただいちゃおうかな~」

面白そうな相手なので、
ちょっと手助けついでに話し相手になって貰おう。
紫明の思惑は、ただそれだけだ。
交代時間まで退屈はしなさそうな予感があった。

クロメ >  
「好きに考えろ」

別に、問いに答える必要はない。
詮索されるのも好きではない。
それゆえに、端的に答える。

結果、どう考えようと知ったことではない。

「……む」

席から女が立ち上がり、こちらにやってくる。
どうやら案内をするつもりらしい。
人の手助け、だと……?

断ってもいいのだが……手間が省けるのは悪くない
少々考える。

「……まあ、いいだろう」

害があるでもなし、使えるものは使ってしまおう、と結論づける。
なにかあればあったで、黙らせればいい話だ。

「ハロウィン、とやらだ」

いまどきそれを知らないとは、というようなことを口にする。
起源、ということならあり得るだろうが

紫明 一彩 >  
「それじゃあ、ここは一つロマンのある解釈を選択しよう。
 ま、その場合。
 何で杭刺さってそのまま歩いてんのか分かんないけど~」

端的な答え。
人によっては冷たくも感じるだろうが、
そういうことは気にしない、からりと潔い女だった。
世の人はそれを、適当とも言うのである。

「じゃ、こっからは静かめにいこっか~」

知識の波(書架)をかき分けて歩く、すらりとした影と小さな影。
靴音は静かに、発する声も静かに。
大声で話すのはご法度だ。

「ん、ハロウィンについて調べに来たってこと?
 秋の収穫を祝って、悪霊なんかを追い出すドルイドの祭りだった~的な起源(やつ)
 もしくは……その祭文化の受容と変遷……なんかについて調べに来たのかな?」

黒髪の女は、白髮の少女の隣を歩きながら、問いかける。
己の顎に手袋を纏った細指をやりながら。

「……って。ま~、そんな感じじゃないよね~。
 そういう深堀りしたいヒトは、とやらなんて言葉使わないし。
 もしかして、この世界には来たばかり、とかかい?
 いや、何――」

学園において、異邦人の存在は無論、そう珍しくない。
その中には、この世界の文化に詳しくない者も、いくらだって居る。
故に、クロメに向けてそう問いかける。

「――君の探し物をきちんとお手伝いする為にも、
 ちょっと君のことを聞かせてほしいな~っと」

普通に問いかけても満足に答えてくれないヒトであろうことは予測済み。
故に、少しばかり補足をした上で、だ。

クロメ >  
 
「好きにしろ」

ロマン? そんなものは、度し難い存在だ
興味も関心もない
むしろ、余計なことを考えるな、と……思うが、言ったところで虚しい

軽く、あしらう

「……ふむ」

小さく呟く
それが流儀なら仕方あるまい。そもそも大声で騒いで回る趣味もないので望むところでもある。

「そうだな、ハロウィンについて……」

調べに来た、のだが。
多少は頭が回るやつだったか。
言葉尻を捉えて、こちらの存在を図ってきた

……まあ、いい。
度し難い、とまでは言うまい。自分の失態でもある。

「……そうきたか」

自分の情報が必要である、のが真か偽か。
それを量る術はない。
うまく図られたか、否か。まあ、いい。

「……この世界の存在だ。
 ただ、しばらく寝ていた。それだけだ」

ただ、この世界の住人だ、と言ったところで引き下がるまい。
付け足しを加える

紫明 一彩 >  
――尊大な態度だと思ってたけど、
  郷に従うだけの度量と礼儀(マナー)は持ってるタイプのヒトか。
  安心安心、一安心~。

小声になるのを感じ取って、好意的な笑みを返しておく。
無論、紫明とて笑みが返ってくることなど微塵も期待していない。

「あらら、お嬢様()とチェスを指してるつもりはないんだけどなぁ」

言葉()を交互に動かして、相手の言葉()を取っていく。
まるで勝負事(対局中)であるかのような物言いに、紫明は苦笑いを浮かべた。

そうきたか
寡黙なこの少女から漏れ出たその言葉は、
彼女の内にある警戒心、或いは隔意をありありと含んでいるように、
紫明には感じられた。
故に砕けた調子で返しつつ、何も持ってませんよ、とばかりに
手をひらひらと振って見せる。

「暫く、か。さっきちょっと口にしたけど、起源のドルイドの祭――
 サムハインは、今からざっと2000年以上前には存在してたんだったかな。
 だから、そっちなら、きっと寝坊助のお嬢様も知って――
 いや、まさか。それよりも昔から寝てた~、なんて言わないよね~?
 ……言わないよね?」

もし2000年以上も寝ていたとしたら、寝坊助の極みだ。
いや、数年数十年単位だって、十二分だ。三年寝太郎程度では太刀打ちできない。

「……しっかし、お嬢様は殊勝だね~。
 現代の文化をきちんと知ろうとしてるんだ?」

ある程度、どの辺りの本棚を案内すべきかは見えてきた。
右へ左へ、ゆっくりと先導しながら話を続ける。

クロメ >  
「……ふん」

この仕儀は盤上遊戯ですらない。
人というものに対する思いとのせめぎ合い。
すなわち、己との戦いに過ぎない。

……といったことなどは語り聞かせることでもないので置いておく
まあ、そのように思うのなら、それでいい。

「サヴァンのことか?
 ……あれは、あんなものではなかったはずだ」

街中で見た光景を。
そして、なぜか渡された菓子を思い出しつつ、否定する。
御魂帰りや収穫祭の性質はあっても、あんな妙な儀式は覚えがない。

「……あまりに奇態すぎてな」

何もかもが、意味がわからなかった。
仮装に意味を感じない。なぜ菓子を配る。
何がなんだかさっぱりだ

わからないままにしておいてもよかったが……
アレがまた挑発してくるかもしれない。
そう思うと、やや腹立たしい

「……度し難い」

そして、思わず呟いた

紫明 一彩 >  
「そそ、サヴァン。
 君が知ってるそれと変わらないよ。
 
 で、そうだね。君の知る祝祭とは全然違う雰囲気なのも無理ないよ。
 趣向も目的も、何もかも変わってるからね~」

書架の海でも迷うことはない。的確に、最短ルートを進んでゆく。
それでもこの膨大な棚の中では、結構な時間がかかるのだが。
 
「詳しくは書籍でどうぞ、って感じだけど。
 悪霊たちから身を守るためにつけた仮面は、好き放題できる仮装に。
 死者の魂をもてなすソウルケーキは、皆で楽しく食べるお菓子に。
 
 そんな感じで、一大イベントになってるってわけ。
 勿論、そうじゃない、本来の――
 君の言葉を借りれば、サヴァンをやろうとしてる人も居るみたいだけどね。
 
 少なくとも、学園全体としては、お祭りムードって感じなんだな~。
 形骸化する悲しさもあるけど、みんなが楽しければオッケーじゃない?」

ふっ、と穏やかに笑って見せる紫明。
それはもう、笑顔が返ってくるとは思わないのだが。

「おや、君は俗者とは相容れない、とでも?」

クロメ >  
「……」

思わず、くらりと目眩がしそうになる。
あの祝祭が、どこをどうすれば、あんな有り様になってしまうのか。

そんな、絶望的な会話をしながらも、女はすいすいと書架の海を泳いでいく。
なるほど、手慣れたものだ。
その部分は評価できるだろう。

「なぜ、そこがそうなる……」

目眩、再び
何をどうひっくり返したら、守護の面が仮装になり、
魂をもてなすケーキは万人向けのケーキになるのか。

祝祭ゆえの楽しみを享受するな、とまでは言わない。
ただ、これはやりすぎではなかろうか。
仮装であちこち練り歩き、菓子を要求する……
しかも、街中にそれが伝播している。

「人はみな俗物だ。」

それゆえに、気に入らない。
それ故に、遠ざける

「……相容れるかはまた別だが」