2024/10/25 のログ
紫明 一彩 >  
「そんな俗物達の風習を理解する為に、わざわざここまでやって来たんだ。
 もしかしたら、合理的な考えの元に選んだ行動かもしれないけど。
 
 それでも私から見れば結構、君も物好きに見えるかも。
 高嶺のお嬢様かと思ってたけど、思ってたより親しみやすそうかも~、なんてね。
 君なら、結構俗物()達と、相容れることもできるんじゃない?」

あははー、と小さく笑いながら、歩を進めていく。
さて、いよいよ目的地だ。

「ささ、お嬢様。到着いたしました~」

おちゃらけた口調で、恭しく礼をする。
口調とは裏腹に、頭の天辺から爪先に至るまで、堂に入った動きだ。

「こちらの本がよろしいかと」

そのままの所作で本棚から一冊の本を手に取ると、
その表紙を上に向けて少女の前に差し出した。

『地球文化図鑑』と書かれたその本はそれなりに分厚かった。
どうやらあまり借りられていないようで、少々埃を被っているようであったが。
ぱらぱらと開けば、数多くの写真と共に、
近代からの様々な文化や風習が掲載されていることだろう。

「え~、と。
 それで、学生証か生徒手帳はあるかい~?」

執事ムーブは飽きたのか、
すっと普段通りの気だるげな口調になって、そう口にする紫明。

クロメ >  
「……馬鹿鳥の囀りが煩かったからな」

端で聞けば、意味不明な文言。一見関連性のない何かにしか聞こえない。
それを吐きだす。

合理的、といえばそうだろう。
アレの提言は……業腹だが、認めざるをえないところはある。
かといって、バカ正直に鵜呑みにする気もしない。

……度し難いものは、度し難い

「……ふん」

うやうやしいお辞儀。
別にそうしてほしいわけでもないが、堂に入ったそれはなかなか大したものではあった。
そこは評価してもいい。

「……む。『地球文化図鑑』?」

なるほど、そうきたか

「……なるほどな」

ハロウィンだけではない。人の文化を識れる、とでも言いたいのだろうか。
なかなかに小憎らしい選択である。
小癪だ、本当に小癪だ。
……が。気が利いてはいる

「……業腹だがな」

生徒手帳をどこからか、取り出して見せる。
思えば、これがすべての始まりだろうか。

紫明 一彩 >  
「今の君は、俗物(私達)領域(テリトリー)に居るじゃない。
 古城の深窓の向こう側でも、霧の立ち込める山の上でも、棺桶の中でもなく、さ。
 仲良くできるかも、面白そうかも、って。
 近づいてくる鳥は色々居るんじゃないかな~。ほら、私だってそうだし~?」

腰に手をやり、ふふん、と得意げに、しかし静かに笑って見せる。
馬鹿鳥が示すものは知る由もないが。

此処で暮らすというのであれば、そう。

これからも多くの俗物(人間)と関わるのであろう。

然らば。

彼女の眠っている内にも蓄積され続けてきた、知識の宝庫(テキスト)で以て。
その可能性(城門)を開く手伝いをするのが、
この学園に居る図書委員、紫明 一彩の務めである。

「確かに。えーと、クロメさん? 
 ちゃんと受け取ったよ、返却期限を書いた紙も挟んどくね。
 間違いなく返しにきてね、絶対だよ~」

生徒手帳を受け取り、端末でスキャンを行う。処理の完了は、一瞬だ。
指でオーケーサインを作った後に、胸元のポケットから用紙と紙を取り出すと、
さらさらと期限を書いて挟んだ。ついでに、図書委員の名刺も滑り込ませる。
無論、連絡先も書かれている。

「ついでにこれも! 私は、紫明 一彩って言うんだ。
 困ったり、知りたいことがあったりしたら、図書館でいつでも歓迎するよ~。
 
 今回のエスコートが君にとってプラスになったんなら、
 きっと君にとって、役に立つ名前だ。
 覚えておいて損はないだろうさ~」

図書委員が全て、このように気楽に接することができるとも限らない。
手続きを終えた紫明は、ズボンの両ポケットに手を突っ込んで朗らかに笑うのだった。

クロメ >  
「ハトでも気取る気か」

どうにも、壁を乗り越えてこようとする連中が多い。
これにしても、そうだ。
なるほど、時代が変わった、というのはこういうことなのかもしれない。

……厄介な

「約定は守ろう。
 たとえ、どんなものであろうとな」

一度結んだ約定を違えるようなつもりはない。
……そう。結んだのであれば、だ。

……

「強引だな。まあ、いい」

さらりと、自分の連絡先を差し込んでくる女。
さらに、売り込んでくる。なかなかに強気だ。
……不快ではない。快不快をいうほどのことでもない

「名前くらいは、覚えておこう」

笑顔を、冷徹な顔で受け止めた。

「ではな」

ご案内:「図書館 閲覧室」から紫明 一彩さんが去りました。
ご案内:「図書館 閲覧室」からクロメさんが去りました。