2024/08/24 のログ
クロロ >  
「ウルセェな、今更だろ。」

お互いもう知らぬ仲でも無い。
知らないことと言えば、自らも知らない記憶位だ
恐らくこの学園で生きていく以上必要なものではない。
だけど、失ったままというのも気持ちの悪い話だ。
欠けたままというのは我慢成らない。魔術師としての探究心。
だから、求めるのだ。厳重に封じられた本へ、掌を向ける。

「解く気はねェ。そンな事したら時間も掛かるし、図書委員会の連中にバレる。
 だから、"覗き見"すンだよ。ソレでもバレるだろうけど、オレ様達のことまではわからねェ。」

「……とは、思う。」

何せ向こうはその手のスペシャリストだ。
この世に絶対の痕跡を残さない方法は多くはない。
魔術だって、行使した痕跡というものが残ったり、魔力の残滓から何が起きたから予想は立てれる。
解除するよりかは幾分か安全だが、絶対の自身はない。

「合ってるかは知らン。だしな。
 いちいち中身見て確認出来るほど悠長に出来ねェよ。」

「ま、その場合は別の方法を考えるさ。」

此処は図書委員会の管轄だ。
この常世学園の組織を侮ってはいけない。
専門家(スペシャリスト)というのは、そういう連中だ。
この侵入も、閲覧行為もそのうちバレる。遅かれ早かれ、だ。
その覚悟で此処にいる。静かに目を閉じ、集中する。

封印室 >  
 
                    ──────瞬間、時が止まった。
 
 

??? >  
時が止まった。文字通り、何もかもが止まったのだ
クロロも、空気の流れも、何もかもが止まっている。
その中で唯一動けるのは、ともに付いてきた蒼月のみ。
月の女神ただ一人残された静止空間。否、一人ではなかった。
男がいた。真紅の髪に、真紅のマント。
そして、クロロと同じ金色の双眸。
彼よりも鋭く、そして威圧感のある風体。
何処まで行っても、人間の気配を隠しきれない
真紅の男はただじっと、女神を見据え……。

「……このバカに付いてくる女が何かと思えば、女を見る目すら無いとはな。
 俺がくれてやった"ガワ"だと言うのに、全く……女の趣味位は残しておくべきだったか?」

最初にでた言葉は、文句であった。

セレネ > 「まぁそれはそうですね」

こんなに危険な魔術所を保管し、管理しているのだ。
当然腕利き達も多いのだろう。
己も一時期所属しようか考えたくらいだ。

己も彼も、腕に自信のある魔術師。
であるからには当然、同じくらいの者も居る訳で。
侮っている訳ではないが、警戒するに越した事はない。
だから彼の言葉には同意する。

「──っ!?」

彼がそれの中身を覗き見ようと集中した直後。
止まった刻に警戒した。

…いや。見知らぬ者が居る。

『……初めましてにしては随分なご挨拶ですこと』

深紅の髪、金色の瞳。
当然知らない男だ。
だというのにいきなり蔑むとは良い度胸をしている。
咄嗟に紡いだ言葉は異国の言葉。

自信はないにせよ、見る目が無いと言われる程の
外見はしていないとは思っている。

??? >  
異国の言葉に男はハ、と鼻で笑い飛ばした。
嘲りだ。人を小馬鹿にした態度がありありと見て取れる。

「言葉が通じんなら威嚇にもでなると思ったか?
 聞こえているぞ。態度は悪いが肉付きは悪くない。
 少しくらいは女を見る目があるようだな。」

「まぁ、お前が付きまとっているだけのように見えるが……。」

クロロと全く変わらない金色の眼差しの色。
ただし、彼とは全く違う。悪意だ。
他人を見下し、平気で嘲る悪意の色。
さながらそれは、全てを見透かすように女神を見ていた。
態度にありありと出ているが、男からはいい知れぬ威圧感がある。
それは間違いなく人間である。
人間でありながら、人成らざる圧力を持った一人の人間。
ある種、何かの頂き、極めた人間のようだ。

「まぁいい。月の女神ア────……いや……。」

「この名はクロロ(そこのバカ)でなければイヤか?ん?」

くつくつと喉を鳴らし、嘲笑う。

「安心しろ。俺はクロロ(そこのバカ)にこびりついた残滓だ。
 本物の俺は、"此処ではない何処か"で当にくたばっている。亡霊というわけだ。」

「此処に現れたの一つのセーフティーのようなものだ。
 クロロ(コイツ)が記憶を求めるようになった第一段階……。」

金色が細くなり、射抜くように冷ややかになった。

「女、お前はクロロ(コイツ)をどうしたい?」

セレネ > 『聞こえているなら結構。
こっちの方が使い慣れてるから楽になるわ?』
『口説くのであればもっと紳士になった方が宜しくてよ。
折角の顔が残念でならないわね』

『恋人同士なのだから当然ではないかしら?』

本当に嫌なら彼だって隣に置くのを良しとはすまい。
…それにしたって、この男は嫌な雰囲気がする。
人間のくせに。

『不用意にその名前で呼ばれるのは困るわ。
私にだって事情があるのだもの』

嫌だという訳ではないが。
いちいち言い方が癪に障る男だ。気に入らない。

『死んでいるのによくもまぁ舌が回るヒトなのね』

『セーフティ…?何故わざわざそんな…』

『どうしたい……って。
それは、どういう事?
記憶を取り戻させたくないと望んだらそうしてくれる訳?』

??? >  
「お前のような何処にでもいるような女神ばいたに興味は無い。
 精々、そこのバカの機嫌でも取っていればいい。……クク、全く……。」

もう少し尊大に振る舞えないのか?神のくせに。」

ほくそ笑む言葉の一つ一つに隠す気の無い悪意が交じる。
見透かすような金色は本当に見透かしているのかはわからない。
ただ、間違いなく"意趣返し"ではある。そうなるように言葉は選んでいる。

「そうだろうな。ただの嫌がらせだ。」

何の悪びれもなく言ってのけた。
どういう人間かは既に知れるだろう。
真紅のマントを翻し、動かぬクロロの前に立つ。
コンコン、後頭部をノックしてみせた。まるで、石像を扱うかのようだ。

「"死者は黙して語らず"、とは言うが俺は違う。
 肉体が滅びようが簡単には黙らん。面白くない。」

ほくそ笑む表情から、悪意が消える。
真摯に女神を見据える金の瞳は、クロロと変わらない。

「コイツが常世島(ココ)に転移させ、"ガワ"まで用意したのは俺だ。
 この世界は良い。神性だの神秘だの、くだらん領域が格下げされた。
 神も人も、そこにいる一つの"人"に過ぎん。だから、この世界(ココ)を選んだ。」

人の世が変容し、偶像は当たり前の存在に成り下がった。
そこに神秘性はなく、近辺に潜む動植物と相違無い。
腕を組む仕草も、何もかもがクロロが行っている普段の行いと重ダブる。

「俺はクロロ(コイツ)を止める事は出来ん。
 クロロ(コイツ)と親しい人間に限定的に語り掛けるのが関の山だ。」

「────お前が知るよりも本来のクロロ(コレ)は単純で強大で、何も考えちゃいない。」

「いるだけで、人にとっては害悪な存在だ。思考も何も無い。
 だから俺が"ガワ"と"知性"を用意した。全てを思い出したその時……。」

鋭く、金色が女神を射抜く。

「コイツはクロロ(ガワ)を捨て、"あるべき場所に還るだろう"。
 別れだ。残念だったな。そうなりたいなら好きに手伝ってやると良い。」

セレネ > 『…私を売女呼ばわり?
そこまで馬鹿にされる謂れはないわ、人間風情が』

『尊大に振舞うのは馬鹿にだって出来る事よ。
”らしく”振舞ったとして、信仰して欲しい訳ではないもの』

神として崇められたい訳ではない。
己は対等に在りたいのだ。
だから敢えて不遜に、尊大に、ならないようにしているだけのこと。

『……』

あぁ。この男は嫌いだな。
普段はローズの香りを纏うというに、一切漂わせていない。

『……そもそも。貴方はどこの誰で、彼は何者なのかしら。
そこも教えてはくれないの?』

どうやら目の前に居る亡霊が、彼をこの世界に飛ばした張本人らしい。
やったのはきっと”本来の彼”だろうが。

『……』
『貴方は自身をセーフティと言ったけど。
彼が元に戻るのを阻止したいの?
…わざわざ、身体と知性を用意してまで』

『…当然、別れるのは嫌だけど』

何故そこまでするのだろうか。
理由が知りたい。

??? >  
ニヤリと男の口角が笑う。

神様(キサマら)の悪い所だ。だから人間風情に鉾を向けられる。」

今も昔も、貴様等を殺してきたのは人間だと言うのに
 自ら台座から降りている行為こそ、慢心であると知るべきだな。」

尊大な物言いはハッタリではない。
成し遂げてきた人間の重みがそこにはあった
神殺し、確かに目の前の男は人の淀みを掬ったような人物だ。
しかして、そこには並々ならぬ偉業を成し得た人物なのだろう。
故に、滅んだ。それだけに過ぎない。

「お前に答える必要はない。
 俺のことも、コイツの事もさしたる重要性は無い。」

「お前はクロロ(コイツ)と仲良しごっこがしたいなら、尚の事な。
 ……この世界で共に歩きたいのであれば、今後俺と会うことも無いだろう。」

即ちそれを知る時は、(クロロ)が還る時だ。
人差し指を立てて一歩、二歩、常闇に後退していく。

「いいや?ただ問いかけるだけだ。
 放っておけば、コイツは間違いなく全てを思い出す。
 そういう男だ。自分ひとりでは止まらん。」

「俺はただ、貴様に……クロロ(コイツ)の親しいものに問いかけるだけだ。」

自称セーフティ。セーフティの名の割には大して役にたたない。
当然だ。死者が、ましてや別世界の事に介入は出来ない。
嫌な程にわきまえている、この亡霊(おとこ)は。

「それなら精々、クロロ(コイツ)の事を見張っておくんだな。
 ……"きっかけ"は出来てしまった。放っておけばそのうち、コイツは導を辿る。」

「精々、引き止めて足掻くといい。」

……わきまえているのだろう。
それと同じくらい、女神が苦しむのならそれに楽しいことはない
そう言う悪意も滲み出ている。もう一歩と後退すると、真紅は闇に姿を消した。

クロロ >  
「──────…アー…?」

そして、時間が動き出したようだ。
間の抜けたクロロの声。漂い始める淀んだ空気。
ガシガシと自身の後頭部を掻いた後、肩を竦めた。

「こりゃ、当たりだけどハズレだ。
 目当てのモンの写本。完成度は言うほど高くはねェ。
 ま、ソレでも充分だッたけどな。ヨ~シ……!」

確かに何かを掴んだらしい。
ニヤリと口角を上げて、振り返った。
クロロは馬鹿だが間抜けではない。
彼女の機敏の変化にはすぐ気づく。
少し様子がおかしい。訝しげに、彼女を見やった。

「……どーした?ヘンなモンでも見たか?」

あの男と同じ金色が、女神を見ている

「体調崩したンなら肩貸すぜ?
 とりあえず、ココにもう様はねェ。
 もたもたしてッと、図書委員会にバレるぜ。」

ほら、行こうぜと顎で促す。

セレネ > 『…殺されるのは、殺されるが故の事をしてきたからこそ。
悪しき神を討つ人間は居れど、
善い神を討つ人間はそうは居ないでしょう』

大抵そういう神は、同じ神からも嫌われている。
けれどなんだか、この男からは違う何かを感じるのも確か。
本当に、嫌な男だ。

『…そう。どちらも教えてはくれないの』

結局何も分からずじまい。
けれど、このままでは彼とは別れる事になるのだけは判った。
…それは嫌だな。

消えて行った男を睨むように見つめれば、
動き出した刻に蒼を瞬かせる。

「…」

嬉しそうに振り返った彼。
喜ばしいやら、そうでないやら。
複雑な感情を抱えていれば、それが彼に伝わってしまったらしい。

「……。
ごめんなさい、ちょっと…歩くのもしんどくて。
貴方が良ければ抱えてくれますか?」

嘘だけれど。なんだか彼に甘えたかった。
頭を抱えて、深く溜息を吐く。
言語は此方の国の言葉に戻して、そう告げた。

クロロ >  
「お、おう……なンかオレ様がみてねェウチにしたか?」

何だか妙に疲れてるっぽいと言うかなんというか。
ほんの一瞬の間に何があったのだろうか
検討もつかないがそう言うなら仕方ない。
自らの全身に彼女を焼かないように防護魔法をかける。
せめて人間に成り代わるのは、彼女の部屋に戻った後だ。
よ、と抱きかかえるようにすれば相変わらず漂うローズの香りにちょっと顔をしかめる。

「……なンか何時もより濃くね?まァいいか。
 さ、とッとととンづらだ。こンな場所に長居する理由はねェ。」

「こッからちょいと長丁場になりそうだなァ……。」

思ったよりも記憶を取り戻すのは骨が折れそうだ。骨無いけど。
とは言え、焦る必要もない。二級学生は以外と自由。
そのまま振り返ることなく、禁書庫を後にした。


……後々図書委員会から何者かの侵入の痕跡が見られ、調査されたとかしないとか……。

ご案内:「禁書図書館 封印室」からクロロさんが去りました。
セレネ > 「いいえ?貴方のせいではないですよ。
ほら、その。私ってあまりこういう場所に居ると体調を崩すので」

正気が削れそうな場に居れば
尚更疲れもするだろうなんて尤もらしい嘘をつく。
体調を崩す事については前科があるので
信用はされやすいかもしれない。

「そうなのです?
そんな事言われたって、私には香りも何も分からないのですもの…」

「…」

ひょい、と軽々抱えられ、近づく彼の顔にほんのり鼓動が早くなる。
長丁場になるとの言葉には、安心する心地がした。
リミットまではまだ時間はある。
けれど、このままではきっと。

…どうにかして、阻止しなければならないな。

彼から抱えられながら、共に後にしつつ。
思い返すのは紅い男からの言葉だった。

ご案内:「禁書図書館 封印室」からセレネさんが去りました。