2024/06/12 のログ
ご案内:「大時計塔」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
「そーっと」

悪いことをしている自覚はある。
でも、ちょっとだけ高いところで風を浴びたくて、こっそりこっそりとやってきた。

「だれも、いない……?」

確認しながら、身体を出して。
ほぉっと一息してから、身体をぐーっと伸ばす。

風が気持ちよい。

ふと、思い返すのは稽古、とテスト。

どちらも、成果はあったが、稽古に関してはとても、悔しい結果だった。

胸に手を当てる。

そこになにかある気はもう、しない。

「ーーやっぱ、凡夫、だよ、ね」

自分の実力を振り返りながら、ぽつりと、零れた。

「はぁーあ……」

大の字になって、どさり。

固い床、でも受け身を取れば気にならない。

寝そべりながら深いため息を吐いた。

伊都波 悠薇 >  
ごそごそ。

鞄の中に詰めていたビニール袋を引っ張り出す。

「えへ」

ふと笑みが零れた。

その中身は、ぎっしりな駄菓子。

噂で聞いた駄菓子屋さんで買った、自分の好きなもの満載よくばりせっと、だ。

最初に取り出したのはコーラシガレット。

ぱくり、咥えて、口でぶらぶら。

楽しい。

伊都波 悠薇 >  
ぷらぷら、シガレット揺らしながら。
僅かなコーラ味を楽しむ。

駄菓子はいろんな、楽しみ方があるのが良い。

姉は、最新スイーツとか、そういうのが好きだけれど、自分にはこれで十分。

ぽりっと、齧る。

甘い、美味しい。

つい、にまにましてしまう。

ご案内:「大時計塔」にリョーガ・パレコルタさんが現れました。
リョーガ・パレコルタ > 「ふんふ…んぁ?」

こちらも風に当たりに来たか。
【片腕】がない同学年の青年も其処へやってきた。
貴女が知るなら、彼は一年生の夏に転入してきた図書委員の彼だと認識するだろうか。

「なんでぇ、先客さんがいたんかい。
俺もいいかい、風に当たっても。」

なんて尋ねてみた。
風紀委員がこんなところにいるなんて、珍しかったものだから。

伊都波 悠薇 >  
「ぴょっ」

声がした。

首をそちらに向けると、人がいた。

「…………」

呆然。

ぽとり、と頬の横にシガレットが落ちて。

「どどどどど、どうぞ!?」

ばばっと、慌てて正座した。

リョーガ・パレコルタ > 「…なんでそんなに驚いてんで?」

こっちも吃驚したか、数秒固まった。
まさか独りでいたかったのか、と思いつつ。

「んゃ、そんな慌てるこたぁないと思うんだがねい…。
…で、何してんでい。」

苦笑いしながら、彼は拳一つか二つ分開けた距離で座りながらそれとなく尋ねる。
落ち着けよい、と付け加えながら。

伊都波 悠薇 >  
「え、あ、いやぁ、あの、いちおう、その…………あんまり、ひとこないばしょ、かなぁ、とか、おもって、まし、て?」

目をぐるぐる回しながら、テンパったように。

なに、なにをしてるかと言われると。

「ひ、ひとり、おちゃかい? ですか、ね?」

何故か疑問符がついてしまった。

リョーガ・パレコルタ > 「…深呼吸してからゆっくり聞くよい。
そんなんじゃ舌、噛んでしまうがよい。」

そんな貴女の様子に、むしろ。
ふ、と笑みがこぼれた。
あわてんぼうだな、と思いつつ。

「っしっかし一人お茶会ねぇ。
寂しくねぇかい、そんなん。」

そういいながら、自身も右手でリュックのサイドポケットに挟んであったお茶のボトルを引き抜いて。
そのまま地面に置いてキャップを開けると、手に持ってからちびちびと。

伊都波 悠薇 >  
「ひっひっふー……」

深呼吸といわれるとゆっくり息を吐いた。

「そ、そんなことないですよ?」

ひとりで寂しいかと言われるとそうでもない。
それはそれで、楽しいし、と思う。

まぁ、友達がひとりもいないあのときだったら寂しかったかもしれないけれど。

「あ、あなたはここに、なにをしに?」

リョーガ・パレコルタ > 「…それなんだっけねい。
なんかの呼吸法だったと思うがよい。」

呼吸法には深くは触れないでおいて。

「そーかい。
…俺かい?
んー。晩飯前に風浴びたくてねい。
ならいっそ高いとこで、ってな?」

ふ、笑いながら。
目の前の映る景色に目を向けた。
眼前に広がるは、この島を一望できる景色。
少年はただそれをのんびりと見つめて。

伊都波 悠薇 >  
「風を浴びたいことがあったんですか?」

体育座りしながら、シガレットの箱をあけて口に含む。
どうしてもぷらぷらする欲求に耐えられなかった。

リョーガ・パレコルタ > 「んや、気分。」

彼は、口元でにっ、と笑った。
気分で風に当たりに来たのはかなり変わってそうだが。
この白髪の少年はいつもこんな感じである。

「でも、ここ良いよねい。
あぶねぇんだが、風を思いっきり浴びるにゃ丁度いいんでい。
…そっちもそのクチかい?」

そう気になったから、尋ねるのみだ。

伊都波 悠薇 >  
「そうなんですか」

にこりと、笑われると、陰のものである自分には眩しい。

前髪を弄りながら目線を隠して、俯くことで直視から逃げた。

「まぁ、そんなところ、です」

ーー出来事があって、当たる”気分に”なったからきた。

嘘はついてない。

ぽり、シガレットを少し噛んだ。

リョーガ・パレコルタ > 「ん。」

貴女の心情も彼は知る由もなし。
そのまま景色を眺めながら。
でも、女子で同輩らしき彼女の様子には機敏したか。

「…なんかあったんかい?
ま、話を聞くしか俺にゃできんけど。
無理に話すもんでもないんでねい。」

と、そう口にした。
少年はそう思ったから、そう聞いただけだから。
そこに何の意図なんて存在はせず。

伊都波 悠薇 >  
なんか……と、こちらを気遣う言葉。

人柄が良い、ヒトなのかもしれない。初対面でもこうやって労れるのは、彼が、自分とは“違う”からだろうかと思う。

「あなたは、得意なこと、ありますか?」

質問に質問を重ねてみることにする。

目の前の少年を知るために。

リョーガ・パレコルタ > 「ん、得意なことかい?」

んー、と顎に手を当てながら考えてみる。
自分の得意なこと、か。

「…右手のペン回しとか右手を使った事くらいかねい。
片腕がねぇと、大した事出来やしないもんでね。」

自身を振り返ってみてそう零す。
それでもそれは努力して得意、または出来るようになったことだから。
いざ問われるとなかなか難しい。

「…なんでそんなん事、気になるんでい。」

伊都波 悠薇 >  
“やっぱり”

彼は乗り越えてきたのだろう。
大したことが、できないと口にするけれど、片腕でも問題なく過ごす。

それは、スゴいこと。

両手があるのが普通のなか、片方だけで少なくとも、今は、ひとりでいれるということが、どれだけすごいことかと、思う。

「得意なことがなくて」

えへと、笑いながら。

「だから、得意になるにはどうしたら、いいのかなと、黄昏てたからです。だから聞きました」

リョーガ・パレコルタ > 「得意なことが、ない、か。」

今話を聞いていた少女が口にした言葉。
少年は顎に手を当てたまま、んー。と。
こういう時に気が利ける言葉があれば、と思うが。

「得意になるったぁ努力しか、ねぇよい。
それこそ俺だって右手でこうできるまで努力を重ねたもんだがよい。
…でもこう考えてみることもあるよい。」

少年の白髪が風に揺られ。

「努力もする。
でもその中で今自分に何ができるか。

…ってねい。」

伊都波 悠薇 >  
ーーそう、だよね

予想のできる答え。
きっと、彼は気にならない普通の生活をするために努力したのだろう。

そして、いまここにいるのだろう。

あぁ、なんて。

「ふふ」

“羨ましい”

努力が、形になることが。
努力が、結果となることが。

努力が、報われることが。

微笑む。それしかないのが、わかっていても人から言われると、こうもすっと落ちるのか。

そう、もしかしたら自分は高望みしているのではと、思った。

「今のまま足掻くしかないですよね」

リョーガ・パレコルタ > 「…足掻くならとことん足掻く、それも一興でねいかい。
俺だってそーしてきたから、気持ちはわかるもんで。
…でも忘れちゃなんねーよい。」

少年は思いっきり風を浴び終えたか、立ち上がり。

「足掻いて足掻きまくれ。
そして自分の【武器】を見つけることが大事だよい。
ひたすら足掻いてちゃ、いつか潰れちまうから。」

覚えがあるようなそんな助言を投げかけながら。

伊都波 悠薇 >  
「覚えて、おきますね」

そう、彼からしたら、そうだろう。

なにせ、自分の身体にはあるのだから。

立派な、足掻ける、腕が。2本、あるだから。

「満足、したんです?」

リョーガ・パレコルタ > 「ん。
まぁねい。
たまにゃ静かでも人の声が恋しくもならぁ。」

ふ、と笑みを浮かべてから踵を返し。

「ずっと風当たって風邪引くんでねぇぜー。
足掻くったって健康なのが資本なんだからねい。
んじゃ。」

と、その場を後にしようと。
だが彼、一度も名乗ってはいなかった。
だけどその姿は、颯爽と、飄々と。

ご案内:「大時計塔」からリョーガ・パレコルタさんが去りました。
伊都波 悠薇 >  
「お気遣い、ありがとうございました」

後ろ姿を見送る。
特別、名前を聞くことはしなかった。

また、会うこともあるかもしれないから。

「……ふぅ」

緊張した。やはり、こういうお話しの場は難しい。

彼を、不機嫌にさせてしまっていないかが心配だ。自分の心情が言動で出ていないと良いけれど。

伊都波 悠薇 >  
口に含んだ、シガレットを噛む。

ガリっと強い音が鳴った。

あぁ、思っていたより自分は。

荒んだ気持ちをしていたのだと、今、気付く。

「…………ーー」

蓋、をしていた、感情が芽を出したような気がした。

伊都波 悠薇 >   


あぁーー


    いいなぁ…………






さぁっと、風に、言葉は呑まれて。
誰に聞こえることもなく。

シガレットを食べ終えると、時計塔を後にした。

ご案内:「大時計塔」から伊都波 悠薇さんが去りました。