2024/06/21 のログ
■アージェント・ルーフ > やはり、ボクと同じ目的を持った人の様だった。
まぁ、他の目的のために来ることなんてほぼないだろう。
それこそロマンティックな告白であったり…みたいなイレギュラーなイベントが無い限り。
そう思いながらコインを器用にトスしたり、指の上でコロコロしていると、隣の学生が気にし始めてくる。
確かに、こんな高い所でコインがすっぽ抜けて、下にいる人に当たりましたとかになったら大変な事だ。
「あ~…確かにそうだね~…」
と言った所で、ふと思う。
硬いモノでなければいいのでは、と。
少しばかりいいことを思い付いたとにやけつつ、隣の学生に見えないように小道具…1枚のトランプを準備し、
コインを学生の見える位置に持っていき──振る動作をしつつすり替える。
そして、すり替えた後のコインをそっと見えない所でしまいつつ、
「なら、これで落としても安全だね~」
そう言いながら、トランプを手の上で回す。
■武知 一実 >
高いとこに来たい、とか学生街を見下ろしたいとか、風を浴びたいとかそんな理由でないとここまで上がって来ないだろ普通。
あ、いや、単純に階段の昇り降りが筋トレになりそう、とかそういう理由で来る奴も居そうな気がする。
まあいずれにせよ誤って転落した時に命に代えても為したい理由かと言われればそうでもない。
そんな事をぼんやりと考えていたら、何だか得意げな雰囲気で銀髪がコインをトランプへとすり替えた。
「えっ?……飛ばされねえ?」
確かに落としても安全だけどもだ。 だからってより落としやすくしてどうするよ。
トランプを見て思ったのは、そんな感想だった。 驚くところおかしい? 気のせいだ。
物が一瞬で別の物に変わるというなら、前にプ〇ッツがめっちゃしょっぱいカリ梅に変わったのを身をもって経験してしまってるので驚かなくても文句言わねえでくれ。
■アージェント・ルーフ > 「えぇっ!?突っ込むポイントそこぉ!?」
気分よくちょっとばかし胸を張っていると思わぬ反応が返ってきたため、
思わず逆に驚いてしまう。と同時にちょっとしょんぼり。
まぁ、異能とか蔓延ってるこの島ですし?これ以上にもっとすごい現象起こってる所沢山ありますし?と、
心の中の小さなボクが人差し指と人差し指を突きつつ、口をとんがらせて言い訳してる。
「…まっ、まぁ!普段から使い慣れてるってのもあるし…こっちの方が手に馴染んでるから飛ばされにくいって言うか…あはは」
口でも相次いで言い訳とか何やらを並べるが、恥ずかしさによる頬の赤みは隠せていないだろう。
あぁ、これで安全だね~とかドヤってたボクを消したい…
■武知 一実 >
「いや、まあ……なんつーか、その……悪い」
やっぱり驚くところ違ったか。けどまあ、クッソしょっぱいカリ梅に比べたらコインからトランプに代わるだけじゃインパクトは……。
「いや、手際の良さは感心したけどな?
今のは異能とかじゃねえだろ? 随分と器用なんだな、アンタ」
一応フォローは入れておく。 ここ数日で随分とオレも感性がこの島に毒されて来たみたいだ。
何だか言い訳し始めた姿を見れば、ちょっと申し訳ないというか、居た堪れなさが物凄い。
悪かったって、悪かったと思ってるよマジで。
■アージェント・ルーフ > 「そっ、そうでしょ!これでも一応、マジシャンが本業なんだからね!」
えっへんと言ったように胸を張ってみるが、身長差も相まってどんどん自分が小さく見えてくる。やっぱやめよう。
しかしながら、先程の反応はこの島では珍しいものではない。
それこそ、手から火を出せる人であったり、物を自由自在に空中で操ってみせたりなどをタネ無しで出来ちゃう人がごまんと居る訳だ。
そこに更に、並外れた動体視力ですり替えた動きなども見破ってくる猛者などもいる。
そんな中マジシャンとして活動しているボクであるが、本当によくやっていると思う。よしよし。
頭の中で自分自身の頭を撫でて慰める動作をしつつ、別のポケットに手を入れ、
「え~とぉ…ほらっ、本当に活動してるんだから!」
活動時にいつも渡してる、トランプを模した名前などが書かれているだけの簡易的な名刺を手渡す。
■武知 一実 >
「へえ、奇術師か。
道理で器用なわけだ、大したもんじゃねえか」
喧嘩の最中ならまだしも、何でもない時にわざわざ相手の一挙手一投足をつぶさに観察するほどじゃねえ。
コインをトランプとすり替えた手際は大したものだと評価出来るので、オレは素直にそういう事にした。
きっとやり方さえ覚えればオレも出来ちまうとは思うが、進んでやりたいとは思わねえ。むしろそういうのは見てる方がずっと良い。
「別に疑っちゃいねえ……ふぅん、アージェントってのかアンタ」
手渡された名刺を見て、ここでようやく駄弁ってた相手の名前を知る。
名刺かあ……別に只の学生の身分なら、わざわざ作る必要もねえからな。 生憎オレには渡せるようなもんは何もねえ。
「一方的に名前を知ってても据わりが悪いしな、オレは武知一実、一年だ」
■アージェント・ルーフ > 相手からもお褒めの言葉をいただき、自己肯定感をまた持ち直した所で、自己紹介をされる。
大方、名刺に書いてあった名前を読み取ってくれたからだろう。名前も復唱してくれていたし。
「あっ、一年の人だったんだ!じゃあ、色々と恥ずかしいところを見せちゃったね~…
何はともあれ、よろしくね!一実クン!」
正直、身長的に同学年や年上かと思った。あぁ、ボクも身長高かったらなぁ…。
にしても、色々と人柄がちょっと怖そうと思っていたけれども、案外優しそうで安心した。
人は見かけによらないって言うのも大きく頷ける。
「こんな所で出会えたのも何かの縁だし…はいっ、どうぞ~」
そう言いながら、出会った時に食べていた種類の飴を渡す。これも赤いため、多分イチゴ味だろう。
やはり一期一会だし、こういった甘味でのコミュニケーションは大切だろう。甘味は全てを繋ぐのだ。
■武知 一実 >
「まあ、気にすんな。 オレは別に気にしてねえから。
よろしくな、アージェント。 あ、名前で呼ばれんのが嫌だったら苗字……ファミリーネームで呼ぶけどよ」
一応確認はしておかないとな。 というかそもそも、ルーフの方がファミリーネームで良いんだよな……?
口振りからしてどうやらあちらさんは上の学年っぽいし、多分年上でもあるんだろう。 だからと言って別段、オレが気を使う様なことは無いが。
「ん……飴? ああ、ありがたく貰っとくぜ」
渡された飴を一瞥し、制服のポケットに仕舞う。
帰りがけにでも食うとして、さてそろそろずらからねえと風紀とかに見つかりそうだ。
「それじゃ、オレはそろそろ行くとする。
そっちはもう少し居んのか? 居るなら風紀委員に見つからねえよう気を付けろよ」
■アージェント・ルーフ > 「あ~、別に呼びやすい方でいいよ!アージェントでもルーフでも!」
特段呼ばれ方を決めている訳でもないし、どちらで呼んでも良いと促す。
もっとも、ルーフというのは本当の苗字では無い訳だし。
小さい頃師から何かの意味を持って付けられたはずだけど…なんだっけな?
と、飴を受け取りつつ、一実クンが帰り支度をし始める。
確かに、放課後という事もあって傾いていた太陽がより一層傾いているように感じる。
「うん、ボクはもう少しだけここで風に当たってるよ~
一実クンこそ怒られないように、ね?」
少しばかりの間ではあったが、怒られるような場所に立ち入っていた者同士であるため、お互いの身を案ずる。
階段に向かう一実クンに手を振った後に、もう一個だけ残ってた飴を口の中に放り込み、再び振り返り景色を眺める。
ご案内:「大時計塔」からアージェント・ルーフさんが去りました。
■武知 一実 >
「そうか、じゃあなアージェント。
まあオレの方は何かと怒られ慣れてっからな、心配無用だ」
無事に時計塔から離れられても、帰るまでの道中で喧嘩しないという保証もない。
立ち入り禁止区域に入った事を怒られるのか、喧嘩して怒られるのかに然程差は無えんだ。
その場に残るというアージェントへとひらりと手を振って、オレは階段を下り始めたのだった。
ご案内:「大時計塔」から武知 一実さんが去りました。