2024/08/20 のログ
ご案内:「大時計塔」に神樹椎苗さんが現れました。
神樹椎苗 >  
 久しく訪れなかった、この『使徒』にとって特別な場所。
 片手に『友人』の形見であるオイルカンテラを持って時計塔を登り切ると。
 風に吹かれれば落ちてしまいかねないような、縁に腰を下ろして、小さな足を外に投げ出しながら、膝の上にカンテラを抱えた。

「――まったく」

 その口から零れるのは、呆れたような、疲れたような声。
 それもそのはず。
 己が信仰する神の怒りを、極近くで連日、感じ取っていれば疲れもするだろう。
 

神樹椎苗 >  
「わかってますよ、だから働いてはいるでしょう」

 『使徒』も黙っていたわけではない。
 連日連夜、己の役割を静かに努めていたのだ。
 ただ、最近はそれで片付けられないほどに、対象が多すぎるのだ。

「――歪な命に、歪な死、歪な生。
 大きなものは一つ、先日討たれたようですが。
 はあ、身体が一つじゃ足りねーですよ」

 そう言いながら、学園を見下ろし――遠く街を、島を眺める。
 

神樹椎苗 >  
「――ん」

 いくつかの場所で『死』を感じ取る。
 いくつもの場所で、それらは無秩序に氾濫する。
 ただ、眠りを妨げる者が居れば、眠りを与える者もいる。
 そして――偽りと歪の安寧に惹かれる者も。

「ふむ――」

 目を閉じて、感じる事に集中する。
 カンテラの熱が、夏の暑さとは異なる温かさを『使徒』に与えていた。

「後輩――あいつは、危ういですね。
 妙なものに惹かれなければいいですが。
 ――怒りはわかりますよ、ただ、『アレ』は悪意のようにはみえねーです。
 『アレ』に関しては、まあ、『後輩』に任せてみましょう」

 そしてまた別の場所へと意識を向ける。
 血の色の娘――それと、困った『所有者』。

「陰気巫女に単細胞――まあ、こっちも大丈夫でしょう。
 陰気巫女だけなら少しばかり、放っておくには危ういですが。
 単細胞も、あれでも、確かに『所有者』ですからね」

 いくつかの大きな『流れ』を感じ取って。
 それを一つ一つ、静かに『解析』していく。
 

神樹椎苗 >  
「――ふむ、他にも厄介そうなのがいますね」

 大きな『歪み』を見つけて、『使徒』は、ふわりと塔の外へと身を投げ出す。

「面倒ですが――仕事と行きましょう」

 その軽い体は真っ逆さまに地面へと向かっていく――

『――死を想え――
 ――安寧をその身に宿せ――』

 死を想う(・・・・)祝詞が風に乗る。

『――吾は黒き神の使徒――』

 その宙を堕ちる小さな体は。
 黒い霧と共に、いずこかへと消え去るのだった。
 

ご案内:「大時計塔」から神樹椎苗さんが去りました。