2024/08/27 のログ
ご案内:「大時計塔」にシアさんが現れました。
シア > 「立入禁止」

その文字を認識した少女は、時計塔の外壁を登り始める。
僅かな取っ掛かりを、指で、手の平で、足先で、足裏で、一つずつ一つずつ丁寧に引っ掛ける。

「……問題ない、これなら」

そして、たどり着いた頂上で、隙間を見つけてするり、と中に入る。
気づけば、遥か高み。ここからならば、島のあちこちを見渡すこともできるだろう。

「……うん。高い」

シア > 「あれだね、あっちは。これか、こっちは……」

右に左に見て回る。遠くを見渡す目は、島の隅まで見渡そうとしているようでもある。
見えるのは、大きな街、大きな施設、その一方で広がる自然、大きな畑

「……広いな、思ったより」

ぼつり、と言葉が漏れる。
しばらく、そうして島を見渡して……

「……ぁ……」

突然、しゃがみ込む。
ジャージの中から、竹筒を取り出して中の物を口にした。

「……ふう」

小さく吐息をついた

シア > 一息をついてから、座り直す。
結跏趺坐 美しい形である

「……こんなだっけ」

静かに目を閉じる。
静かに 静かに 静かに

「……………」

透明に、沈み込むように、存在感が薄まっていく

シア > 「……」

静かだ。何も聞こえない。
音はあるが、それが気にならない。

問いかける。
答えは――ない

「……」

広がるのは闇
覗いても深淵しか存在しない

なにも ない

「……」

静けさだけが過ぎ去っていく

ご案内:「大時計塔」に橘壱さんが現れました。
橘壱 >  
「──────此処は立ち入り禁止だよ。」

静寂を破ったのは、一人の少年の声。
少女の背後には何処となく呆れ顔の白衣姿の少年がいた。
腕には風紀委員の腕章、片手には重厚なトランクをぶら下げている。
どうにもこういう場所は人気スポットらしい。
度々こういう場所に誰か来る。だからこうして、見回りにだってくる。

「何とかと煙は高いところが、とは言うけどね。
 まぁ、僕も空の上とかは好きだけど……所で、何処から入ってきたの?」

シア > 「……」

人の気配が肌を刺激する。人の声が耳を打つ。
誰かが来たことが分かる。

「……えと」

目を開ける。相手の方を見る。
見れば、風紀委員の腕章が見える。

「入ってない、立っては」

そんなことを真顔で答えた。

「どこ? 外から」

嘘はいっていない

橘壱 >  
一言言えば、不思議な雰囲気のある子だった。
"場馴れ"、と言うんだろうか。何処となくよそよそしさを感じる。
それに返ってくる返答もだいぶ頓珍漢。
思わず少年も訝しげに顔をしかめて眼鏡を上げた。

「えっと……。」

何を言っているんだコイツ…とは返さず一旦言葉を反芻。
多分、からかってはいない。嘘も吐いていない。
じー、と碧色の両目で少女を見ながら思考を巡らす。
もしかして……。

「……"立ち入り禁止"って言うのは、そもそも入っちゃダメな場所だよ。
 何かしらやんごとない理由や仕方ない事情がない限り、ダメな場所。OK?」

先ず第一に、言葉の意味を理解していない可能性。
だからやんわり、優しく教えてみる事に。
無論、釈迦に説法なら皮肉にもなるし、それでいい。

「だから、立って入るとかの問題じゃない。
 ……後別に、外から登るのもなしね?」

「というか……登ったの???凄いな。異能……とかじゃなくて?」

単純なフィジカルならそれこそ凄い身体能力だ。
少年も思わず目を丸くする。

シア > 「……え」

そもそも入っちゃダメ。端的かつ真っ当な説明。
少女はカルチャーギャップを受ける。本当にカルチャーなのかは議論が必要だろうが。
少なくとも、少女の心理としてはそういうところであった。

「ダメなの……?」

最初は匍匐なら、とも考えたが中で立ってはいけない、とかずっと匍匐は少々時間がかかるだろうか、などいろいろ考えたものである。前提から違ってるなど少女は夢にも思っていなかった。

「……逮捕?」

腕章を見ながら、ポツ、とこぼす。
注意をしてくる風紀委員。つまりは、そういうことだろうか、と。

「異能? そんなものないよ、ボクには。」

異能について聞かれれば、素直に答える。
そんな物は持って産まれた覚えがない。

橘壱 >  
凄いわかりやすいくらいショックを受けてる。
どうやらドンピシャに何も知らなかったらしい。
立ち入り禁止。字面的にはまぁ、言わんとすることは理解出来なくもない。
少年も流石に困り顔で頬を掻いた。

「因みに匍匐もダメだからね。逮捕はしないよ。
 逮捕するような事じゃない。人によっては連行するけど、僕はしない。」

エスパーではないが、なんとなく考えてることはわかった。
立ってダメなら座るから寝そべるか。あらかじめ釘は打っておく。
なんとなくだけど、演技ではない。
別に少年は人の心底を見透かせるような力はない。
ただ、節々から出てくる"世間知らず"には、ある種の純朴ささえ感じる。

「……それなら超人だね。どっちにしろ、凄いことだよ。」

こんな小さな子でさえ、一芸持っている。
仕方ない、そういう場所だ。
異能ないし超人の集まる時代の最先端。
何時だって苦い現実は不意にやってくるものだ。
そして、それを飲み下す位には余裕は出来た。
思うことを流し込み、さり気なく少女の隣に座った。
どかっ、とトランクを傍において、足を広げる形。
育ちの悪さが少し垣間見える。

「まぁ、次から気をつけてくれればいいよ。
 ……此処は島を一望出来るから、くる人の気持ちはわかるんだけどね。」

「それで、キミは何を見ていたんだい?」

シア > 「? しないの、逮捕。
 ……尋問、じゃあ?」

首を傾げた。
違反行為、すなわち逮捕、といったような構図でも浮かんでいるのだろうか。
そして続く言葉はだいぶ突飛といえば突飛なものであった。
茶化すでもなく、冗談でもなく、本気のようにも思える声色。
少女の中では、一体どういう思想が渦巻いているのか。

「超人? できないの、貴方は?
 ……そっか」

また、首を傾げる。
それが当たり前のことであると、想っているかのように。
馬鹿にするでもなく、ただただ、不思議そうな空気で。

「ボク? 見に来た、島の様子を。
 良いと想った、高いところのほうが。」

隣に座る男に、特に思うことはなかったようで結跏趺坐のまま座り続ける。

「……あれ? なにしにきたの、逮捕じゃないなら?」

なにかに気づいたようで、聞き返した

橘壱 >  
さも当たり前のように辿々しく答えてくる。
そこに悪意とかは一切ない。恐らく、彼女にとっては当たり前なんだろう。
だから、不思議そうなんだ。多分、彼女の周りではそれが普通だった。
この島も、そういう連中ばかりだ。いや、外も変わらないか。
今や異能も神秘も幻想も、何もかも当たり前になってきた。
思えば、今手元にあるトランク(コレ)だってそうだ。
一昔前ならそれこそ、ただのSF作品だったろうに。

「……普通の人は、出来ないよ。
 こんな高いところを登ったり、凄い力を持ったりはね。」

そう、それが普通。今やそんな物自体が珍しいかもしれない。
そんな普通に取り残された少年はなんとも言えない表情だ。
そうだろう。どうしようもないし、彼女を責めることもお門違いだ。
だから、ほんの少し淡々と事実だけを答える。
そうして、苦い笑みを浮かべて軽く首を振った。

「逮捕も尋問もしない。僕はただ、見回りに来ただけ。
 キミ以外にも、立入禁止って場所に入る人は多いからね。」

「だから、こうして見かけては注意してる。
 酷い場合は連行くらいするけど、キミはそうじゃないだろ?」

少なくともなにかしているわけじゃない。
景色を眺めるくらいならどうということもない。
視線の先は広大に広がる地平線。何時見てもこの景色は、見ていて清々しくなる。

「確かにいい景色だよね。島の全部が見えてくる気もする。
 ……キミが言うと、本当に細部まで見えそうな気がしてくるけど……。」

「というか、凄い座り方だな。修行僧というか、武芸者みたいな。」

少年の中では凡そ女の子がする座り方ではない。

シア > 「……ああ。
 お山で育ってないんだ、貴方は。」

高いところくらい、登れなければ話にならない。
そもそも、生きていけない。少女にとっての当たり前、というのはそういうことである。

「……………」

じっと、事実を述べる相手の顔を見つめる。
少女の語彙では、説明も難しい、なんと言っていいのかわからないような顔。

「……いやなの?」

よくはわからないが、気分のいい顔では多分ない。
何が気に障ったのかもよくわからない。わからないから、ただ素直に聞いてみた。
なにかいやなことがあるのか、と。

「そうなんだ。大丈夫だね、じゃあ……
 ……ひどい? どんなの、ひどいって。」

うっかり、ひどいこと、というのをしないとも限らない。
なぜなら、知らないのだから。何が引っかかるのか、知っておく必要がある。

「無理だけど、全部は。一杯見える、でも。
 小さいけど、大きい島。あるよね、いろんな物が」

流石に細部まですべてが見えるわけではない。山育ちの視力の良さで常人よりは見えるのはそのとおりだが。
見渡して……想像以上に色々なものがあることには少々驚いていた。

「これ? えっと……瞑想? というののやり方。
 初めてなんだけど、ボクも。」

どうやら、聞きかじりらしい。その割に堂に入ってみえていたのも確かである。