2024/11/05 のログ
ご案内:「大時計塔」に武知一実さんが現れました。
武知一実 >  
秋は菓子パンが美味い。
放課後に時計塔真下のベンチに座り、ぼーっとしながら食べるアンパンは尚の事美味い。
100人に1人くらいは同意を得られるんじゃなかろうかと思う。 まあ、同意を得たいわけじゃねえけど。

「バイト前にしっかり腹ごしらえしとかねえとな……」

今日は久々の怪異討伐(夜勤)だから、途中で腹が減らねえようにしておきたい。
だからこうしてアンパンを齧ってるわけだが、アンパン1個ではたして腹ごしらえになるんだろうか。なるんだよなこれが。

「燃費が良いのは良いが、仮にも成長期の男子としてこれで良いのか……」

うーん、とどうでもいいような事を考えながら食べるアンパンは、やっぱり美味い。
学食のそばの売店の、ひとつ100円ぽっちなのにこんなに美味いと、舌がバカなんじゃないかって心配になってくる。
学園内の飲食関係に従事してる奴らにはホントに感謝してもしきれねえ。

武知一実 >  
「……今から飯食うのは良いんだけどよ。
 今日の現場、校舎だよな。 夜まで何してりゃ良いんだ」

久し振りのバイトだからとちょっと空回りしてる気が、今更ながらしてきた。
まだ仕事開始の予定時間まで数時間ある。はたしてもつのか、アンパン1個。
……ちょっと自信無くなってきたぞ。

「ま、開始前にも軽く何か食っときゃ良いか」

今回も調査も込みの上での討伐なので、討伐対象が出現しなけりゃ校舎内をうろつくだけで完了だ。
まあ変に手こずればテッペン回る可能性も大いに有り得るんだが。
その辺は運任せ、いつものこと。

「真夜中までに終わったら蕎麦でも食って帰るか」

0時過ぎまでやってる蕎麦屋が商店街の外れにあったはずだ。
そんな密かな計画を立てつつ、ぼんやりと秋空を眺めて食べるアンパン、美味い。

武知一実 >  
ただアンパンを食ってるだけで無心で居られれば良かったんだが、残念ながら頭空っぽにするのは性に合わないらしい。
糖分が回れば回る程、ぼーっとしたい気持ちとは裏腹に色々と考えてしまう。

「……神様、ねぇ」

思い返すのは、先日の菓祖祭のこと。
人が居るのは祭なんだから当然っちゃ当然だけど、神社にあんなに人が集まるのを見るのは何だか複雑な気分だった。
まあ、大半は本気で神様を信じて崇め奉ってる訳じゃないだろうことは分かってる。単にイベントに乗じてるだけだってことも。

「……それでも」

それでも、自分が異能を持たされ、そして失敗作として廃棄させられた経緯が否応にも思い出されて。
リリィに悪い事しちまったかな……純粋にただ祭を楽しみ、楽しませたかっただけだろうに。
もうちょっとこう、オレが割り切れりゃ良かっただけ、なんだよな。

武知一実 >  
「あー、ダメだな。
 あんまりボケッとしてると要らん事まで考える様になる」

辛気臭くなってきたところで思考を打ち止める。
アンパンの最後の一片を口に放り込み、モヤった頭を振る様にベンチから勢いよく立ち上がった。
腹ごしらえはしたし、次は準備運動だ。体動かそう。そうしよう。

「いったん家までダッシュするか。 二往復もすりゃ、良い感じに時間も潰せんだろ」

そうと決まれば即決即行。
オレは澱んだ気持ちを振り払うように、家への道を駆け出したのだった―――

ご案内:「大時計塔」から武知一実さんが去りました。