2026/02/19 のログ
ご案内:「大時計塔」に武知 一実さんが現れました。
武知 一実 >  
「あ゛~~~~」

良く晴れた午後。
オレは大時計塔の頂きで焼きそばパン片手に空を仰いでいる。
先日の商店街での“夜バイト”で遭遇したヤベー奴について、報告しようかすまいか悩んでいたら挙動不審で風紀に取り囲まれていた。
しばらく喧嘩は控えてたってのに、一応、名前と経歴は根強く記録されているらしい。

「空は良いなあ……青くて……」

しょーもない押し問答の末、隙を見て逃走を図ったオレもオレだが、そこから追いかけてくる奴らも奴らだ。
結局小一時間鬼ごっこを繰り広げ、こうして逃げ切って今に至る。

……逃げ切れたはず、たぶん、きっと。

武知 一実 >  
―――撒き切れてなかったら、どうすっかな。

視線を空から、地上へと移す。辺りを探し回るような風紀委員の姿は無い。
が、万一既にこの時計塔の上へと向かっているとしたら、どこに逃げるか。
この高さは、ちょっと飛び降りるには勇気が要る。覚悟も要る。
怪我をする……心配は無ェけど、飛び降りる現場を見られたらそれはそれで後で怒られる理由が増えるだけだ。

「……けどまあ、背に腹は代えられねえしな」

そこまでして逃げる必要があんのか、と思わなくもないが。
いっぺん逃げちまった以上、少なくとも今日一日は逃げ切りたい。
――理由になってなくねェか、まあいっか。

焼きそばパンの包装を破り、口へと突っ込んで頬張る。
遅めの昼飯。走り回ったから、まー腹が減った。
と言うか、商店街での戦りとりから、ずっと腹減ってて回復しきれてない。

武知 一実 >  
「やっぱ、造形ってのは思ってたより疲弊すんだな」

中々満たされない空腹の原因は、やっぱ雷で刃なんて造ったからだろう。
普段が拳や得物に纏ってぶん殴るか、直接放電するか、特別製のハンドガンに弾丸として詰めて撃つか(発砲音で色々面倒だから滅多にやらない)のどれかで、
何かを形作るなんてやろうともしなかったもんな……。
いやしかし、本番一発勝負で上手く行って良かったというか何というか……

「ま、そうでもしなきゃ、あんな不意打ち綺麗に決まらなかったよな……」

本当に、アレは何だったんだ?
人のカタチをしていた、言葉による意思疎通も出来た。
けれど、上手く言えねえけど明らかに人間とは別物だった。かと言ってそこらに沸く怪異とも違った。

……そんなもん商店街に沸くんじゃねえよ、と今更ながらむかっ腹が立ってきた。
腹減ってるからだな、焼きそばパン食お。

武知 一実 >  
「っし、ごちそーさん」

焼きそばパン一つを平らげて、少しばかり満足した気がする。
正直全然足りてねえっていう自覚はあるが、どーにもこれ以上食っても仕方ねえ気もしてきた。
きっとこの空腹は、腹を満たしても納まる類のものじゃねえんだろう。

「……夜バイト、今週末は多めに入れとくかァ」

少し頭空っぽにして、馬鹿みたいに身体動かさねえと腹ァ減りっぱなしなんだろう。
先日の一件、第一に考えてたのは逃げる事だったのは間違いが無いけれど、
その裏でテメーの身が危ない状況を、楽しんでた自分が居たのも否定出来ない。
あの場から離れてから気付くほど、小さなモンだったけど。

……時間が経つごとに、じわじわとデカくなって来やがった。

「あ゛~~~~~~」

丸めた包装をポケットに捻じ込んで、空を仰ぐ。
天気が良くて、日差しが暖けェ。春が近いってのも肯ける。

「空は良いよな……」

特に意味を成す訳でもないボヤキを溢しながら、オレはしばらく、空を眺めていたのだった――

ご案内:「大時計塔」から武知 一実さんが去りました。