2026/02/28 のログ
上下院 禰喪 >


「先輩と言っても、未だ一年生ですが……。入学していないにも関わらず、学び舎を見に来るというのは、実に感心です。真面目な方なのですね。」

『先輩』という言葉が、どこかむずかゆく感じる。何だか照れ臭くて、微笑みながら頬を掻いた。自分が学園に入学する時は、下見などしなかった。きっと、学びに対して、相当に意欲的な人物なのだろう。少年は、そのように捉えることにした。

「そうでしたか、とはいえ……自身も敷地の全てを知っているわけではありません。ふむ……。」

取り敢えず、一番に案内するべきは目の前にある時計塔だろう。しかし、自身は入館許可証を持っていない。とはいえ、ここの警備が薄いことは知っている。それに、時計台からの風景を見せて、後輩を喜ばせてあげたい。罪悪感と、後輩への想いを天秤に掛けた結果……。

「時計台……行きましょうか?」

そう、提案することにした。



御雷 天華 >  
「一年の差でも、先輩は先輩ですよ」

先輩とはそういうものでしょう?と苦笑しつつ。

「まぁ、残り一か月の間にできるだけこの地には慣れておきたかったものですから」

真面目な方、という言葉には少し照れたように頬を掻く。
事実として学生としては真面目過ぎる理由であるのは否めない。

ともあれ、だ。
彼の事情など知る由もない少女は、その提案には二つ返事だ。

「はい、よろしくお願い致します。
 ……しかし時計台、ですか」

上下院 禰喪 >

どこまでも真面目な態度に、ほんの少しだけ疑問を抱く。そこまで、この学園で修めたいことがあるのだろうか。心中に湧いてきた疑問を、そのまま出力することにした。

「成程、でありますなァ……。その、何か、特別学びたいことがあるので?」

そして、時計台を見上げる。天を突くような高さの施設。その頂上から見える風景は、『絶景である』という噂を聞いたことは有れど、自身も見たことはない。でも、これだけ間近に噂の施設があると、流石に興味が湧く。それに、向上心のある後輩に、何かを持ち帰って欲しかった。美しい風景の思い出でも、何でも。

「ええ、この学園を一望できる場所です。この学園のことを、より知ることができると思いますよ。」



御雷 天華 >  
「あはは……、そこまで学業に熱心なわけでは」

是ばかりは染み着いてしまった性分のようなもの。
かつての少女であればいざ知らず、今の彼女にとっては当たり前の振る舞い。

なにより、"慣れる"ことでの付加価値のこそが、少女にとっては目的だ。
地形の把握、地理の把握、この学園に関する知識の蓄積。
それらが増えていくことで、より"使命"を果たしやすくなるからこそなのだ。

「なるほど、確かにそれは今の私に丁度いいかもしれません」

だから、彼の提案は実に渡りに船である。
実際に各所に足を運ぶのが一番なのは間違いないが、それを一望できるならそれでも十二分。
一か所だけを見るよりも、きっと多くを見ることが出来るに違いない。

上下院 禰喪 >

「そうなのですな、てっきり、何か目的があるのかと。……ですが、立派なことだと思います。自分もまだまだ未熟な身。これからも、共に精進していきましょう!」

少女の真面目さ、その理由はわからない。しかしながら、人にはそれぞれの事情がある。だったら、自分にできることは、それを応援することだ。ぐっとガッツポーズをすれば、時計台の方を向く。周囲に同僚がいないか、視線を彷徨わせたが、相変わらず人気が無くて安心した。

「でしょう!それでは行きましょう!」

彼女の言葉に、思わず笑みを浮かべる。正直、自分としても、時計台に登るのは楽しみだった。自身がこれから守るべき場所を一望できる機会など、中々在りはしないから。一つ結びにした髪をひょうと揺らして、時計台に向けて歩みを進めた。



御雷 天華 >  
「えぇ、お互いに精進していきましょう」

相槌を打ちながら、彼の後をついていく。

元より一人で宛てもなく歩くつもりだったのだ。
案内があるのなら幸い以上の何物でもない。

なにより縁が増えるのは純粋によい事なのだ。
未来の後輩として、その提案には全力で甘えることにしよう。

上下院 禰喪 >


「おお……これは。壮大な建物でありますなァ。正に、学園の大きさを示すようであります。自分の実家にも、このような建造物はありませんでした。」

時計台に入ると、装飾が施された屋内の様子に瞳を輝かせる。実家の剣術道場は、物心ついた頃には門下生が減ったこともあり、このような豪奢な建造物は見たことがない。

周囲を見渡すと、エレベーターを発見する。外にも人がいなかったため、当然、中にも人はいないようだ。

「階段を上るのは手間です。エレベーターを使いましょう。」

そんな風に呼び掛けて、エレベーターのスイッチを押す。金属製の音が鳴って、ドアが開いた。後を付いてくる貴女に振り向けば、先に乗るように促して。



御雷 天華 >  
「……その様子だと、先輩も時計台に登るのは初めてで?」

彼の反応に少しだけ首をこてりと傾ける。

とはいえ、それは少し考えれば納得のいく話。
なにせ彼は自称する通り、まだ一年生。
行ったことがない施設の一つや二つはあって当然。
特に時計台なんて、学校の行事で行くことはまず無いだろう。

「エレベーターまであるなんて、流石にハイテクですね」

そんなちょっとズレた感想を述べながら、エレベーターの中へと。

上下院 禰喪 >

「先輩風を吹かせたい所でありますが、全くもってその通り。一発で見抜かれるとは、自分もまだまだ未熟であります。」

自身に比べて冷静な彼女の対応に、見習わなければならないと苦笑を浮かべる。エレベーターの中に入ると、頂上に向かうボタンを押して扉を閉める。

機械の動作音、何かが軋むような音と共に扉が閉まると、エレベーターはゆっくりと移動を始める。段々と、外の風景が小さくなっていく様子に、思わず目を細める。

しかし、ふと、何かに気付いたように窓から視線を逸らせば、彼女の瞳を見遣り。

「全く以て、ハイテクですなァ……。しまった、あまり高所から外の風景を見ると、頂上での楽しみを損なうきっかけになり兼ねません!気を付けねば。」



御雷 天華 >  
「あはは、観光地に来たかのような反応でしたので」

少女が特別に敏い、という訳でもない筈。
それくらいに分かりやすい反応だった、と冗談めかして少女は微笑む。

会話の最中もエレベーターは、ゆっくりと上昇を始めて。
微かなGが少女の身体をほんの少しだけ重くする。
無論、常人でもほとんど感じないくらいに、些細な重みに過ぎないが。

「こうやって上がっていく景色もいいものですよ?
 まぁ、新鮮さを味わいたいって気持ちはちょっとわかりますけど」

そんな相槌を打つ少女の方はと言えば、特に気にした様子もなく外の景色を眺めている。
とはいえエレベーターから見える景色には遮蔽物がそれなりにある。
しっかりと一望できるのは、やはり頂上からの景色だけなのだろうな、と。

「……うん?どうかなさいました?」

上下院 禰喪 >


「自分にとっては、島の全てが観光地のようなものです。家が中々に厳しく、旅行などもして来なかったので……あ、いえ、別に家族と仲が悪いわけではないのですが。」

ほんの少しだけ、寂しそうに苦笑い。でも、こんな暗い話をされては、後輩も困ってしまうだろう。すぐに笑みを浮かべれば、弁解するように片手を振った。

エレベーターは、上昇を続ける。外を見れば、きっと美しい風景が待っているのだろう。しかし、折角なら、頂上で初見の感動を味わいたい。そのように考えれば、彼女の姿を視界に入れる。そして、漸く気が付く。

あれ、後輩……自分よりも、身長が高くないか、と。自分の方が先輩のはずなのに……。勝手に打ちのめされながら、掛けられた質問に答えた。

「いや、いや……その、自らの発達の未熟さに、嘆いていた所です。」



ご案内:「大時計塔」から上下院 禰喪さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に上下院 禰喪さんが現れました。
御雷 天華 >  
「あぁなるほど、私も似たようなものですから気持ちは分かりますよ。
 なにせ、私も本土から出ることは初めてでしたし」

真っ当な観光、という意味でならこの島が少女も初めての事。
尤もどちらかと言えば移住に近しいのだから、観光という表現が正しいのかは怪しいが。

「あぁ……私はその、周りの子たちよりも成長が早かったですから。
 まだまだ先輩は将来性があるって私は思いますよ?」

なにはともあれ、ちょっとしょぼくれたせんぱいにフォローを入れつつ。
程なくしてきっと最上階に辿り着いたことを知らせる音が鳴るのだろう。

「と、着いたみたいですね」

上下院 禰喪 >


「ふふ、それは重畳……楽しい学園生活になるといいですなァ。……や、優しくしないでください!尚更みじめになってしまいますので!」

後輩からの温かいフォローが、逆に心に突き刺さる。精神的なダメージでくらくらとしている内に、最上階に到着したことを示すベルが鳴った。

エレベーターが開くと、そこは屋上だった。時計台が秒針を刻む音が、はっきりと聞こえる。

そして、開いた扉から景色を見た瞬間、息が止まった。自らが想像したよりも、ずっと、ずっと、この島は美しかったから。思わず、駆け出して、落下防止の柵まで辿り着く。喜色を隠し切れない表情で振り返れば、大きく手を振って。

「こ、こっち!凄いでありますよ!」



御雷 天華 >  
「ふふふ、ちょっと今の反応は可愛かったですよ」

揶揄い交じりにそう返しつつ。
それ以上の追い打ちをしないのは、彼女のせめてもの良心なのかもしれない。

何はともあれ、くつくつ笑いながら手を振る彼の後をついていき……
ゆっくりとエレベーターを降りて柵の傍まで歩み寄る。

「さてさて、眺めの方は……ほぉ~……確かにこれは中々──」

視線を見やって瞳に映る景色は、正に絶景と呼ぶに相応しい。
思わず感嘆の吐息を零しながらも、少女は学園の校舎の位置取りを記憶する。

上下院 禰喪 >


「うぐ、複雑でありますなぁ……。」

先輩としては、『可愛い』よりも『格好いい』で憧れを集めたい所である。かと言って、褒められること自体は嫌ではない。

落下防止の柵から身を乗り出して俯瞰した島の風景は、実に壮大だった。本当に自分がこの島を守り切れるのか、不安になる程に広い。

いや、そんなことを考えていては、強くなれない。一瞬でも、不安を感じてしまった己を恥じるように首を横に振る。その際に、隣にいる彼女が、島の風景を見ながら何かを考えていることに気が付く。不思議そうに首を傾げると、身を乗り出したまま、見上げるように視線を向け。

「……どうか、しましたか?」



御雷 天華 >  
「……あぁ、何処に何があるのかな、少しだけ」

少女は嘘はついていなかった。
ここから見て、何となく推測が出来る施設に凡その目星をつけているだけ。

入学後か次の見学の時かはさておき、次の機会に迷わぬように。
次の時にはどこを見物に行くかをそれとなく検討しているだけの事。

「あっちにあるのが図書館でしょうか。
 ずいぶんと大きな建物ですねぇ……」

ともあれ折角なのでそれとなく、どの建物が何の施設なのかを尋ねてみることにしたらしい。

上下院 禰喪 >


「そうですか、位置の把握は大事でありますからね。自分も、怪異や事件が発生した際に迷わぬよう、目星を付けておかなければ……。」

この絶景を見てもなお、自らの向上に役立てようとする精神性は、拍手を送りたいほどに立派である。しかし、それとなく焦りを感じる。彼女は、きちんと楽しめているのだろうか。一瞬だけ不安に感じたが、建造物について質問をされれば、誇らしげに答える。

「そうであります!魔術や異能関係の本も置いてあるのですよ。自分も、自身の異能の本質を探るために、行ったことがあります。生憎、収穫はありませんでしたが。」

自らの異能は、発現手順が独特だったからか、あまり参考になる書籍は存在しなかった。しかしながら、自身の異能について学ぶことで、解釈が広がったという話も聞く。真面目な彼女には、適した場所だろう。


御雷 天華 >  
「(……ふむ、案外とその手の事件は珍しくないという事なのでしょうか)」

彼の言葉に少女はそのように推測を立てる。
学内は平穏なものかと思っていたが、もしそうなら中々に物騒な所であると認識を改める必要がある。
そして仮にそうであるのなら、それに対処する役割を担う者も居るのだろう、と。

「なるほど、確かにこの学園ならその手の本はあって当然ですよね。
 しかしふむふむ、つまり先輩は異能者、と」

彼の説明を頭の片隅にメモしつつ、次に行くなら図書館も候補だなと思案する。
少女にとっても役立つ知識が得られるかもしれないのなら、行く価値はある。
何より、自らにはない『異能』についても、知識を仕入れていて損は無い筈だ。

「で、あっちが校舎で…あっちは?」

ともあれ、他の場所も次々に指差して訪ねていくあたり、中々にしれっとしているのであった。

上下院 禰喪 >


「何故分かったでありますか!……って、自分で言っていましたね。ええ、自分は異能者であります。両親に修行を付けてもらい、異能を発現することができました。」

驚いたように目を丸くする。……が、自分で異能に関する話をしていたことを思い出した。別に、隠すような内容でもない。彼女が入学して、風紀委員の情報を調べれば分かること。そのため、図書館に向かった理由を、正直に話し始めた。

「自分は、怪異を呼び出す異能を持っています。ああ、怪異と言っても、自分の味方をしてくれる存在ですよ。でも、この異能については、分からないことばかりで……図書館で調べようと思ったのでありますよ。」

苦笑交じりに言葉を紡いだ後、彼女の指先が示す方向を見遣れば、そこが示すのは恐らく校舎の付近……学生通り。

「あれは、学生通りであります。カフェーや飲食店がありますよ。人が多いと、問題事も増えるので、良くパトロールをしています。」



御雷 天華 >  
「怪異を呼び出す異能、ですか。
 確かにそれは色々と知りたくなるのも頷けますね」

僅かに眉が歪むが、直ぐにそれは元に戻る。
何か思う所があるのか、或いは単に興味深かっただけかもしれない。

さておき、少女はその異能については深く追及はしなかった。
反応としては『なるほど、そんなものもあるのだな』といった所だろうか。
あくまで今は学園についての事を優先しているようだった。

「なるほどなるほど……あちらの通りで飲食を……。
 しかしパトロールとは、確かそういうお仕事は……風紀委員が行なうのでしたっけ?」

そんな少々気にかかる話が出てきながらも、会話がそれなりにはずんで来た頃。
少女の懐から着信音が鳴り、彼女は携帯端末を取り出し何かを確かめて……。

「と、失礼……ちょっと呼び出されてしまいました。
 島に一緒に来てる年下の子が居るのですが、その子の迎えがいるようで」

上下院 禰喪 >


「ええ、少々誤解されやすい異能で困っているのですが、正しき道を目指すためには、まずは自身を理解せねばなりません。」

微かに、眉が歪んだ気がした。何か間違いを犯してしまっただろうか。心中に、不安が訪れる。しかし、それも一瞬のこと。すぐに表情を戻して、会話を続ける彼女の様子に、それ以上は聞かないことにした。

「ああ、パトロールは殆ど個人的にしています。強く、正しく在るために、そして、人々を守れるような人間になるために。……おや。」

自身が行うパトロールの多くは、趣味で勝手にやっていることである。しかし、往くべき道を目指すために、必要な工程だと考えている。そんな思想を述べれば、唐突に聞こえる着信音。画面を見て、掛けられた言葉に、ぱちぱちと瞬きをして。

「成程、それは大変です。では、そろそろ時計台を後にしましょうか。もし、困ったことがあれば、いつでも頼ってください。小さくても、先輩ですので。」

そう言って、笑顔で胸を張れば、髪を揺らしてくるりと身を翻す。もう、十分に景色は堪能することができた。これで、明日からも職務に励める。さて、彼女は楽しんでくれただろうか。そう考えて、背後を振り返り。



御雷 天華 >  
「なるほど……いいですね、そういうの。
 個人的には応援したくなってしまいます」

自らもまた、正しく在るかはさておき……守りたいものは確かにある。
目指すべきものはあり、それに目指す為に邁進するその姿は、自分とそう変わりはない。

結局のところ、力は使いようなのだ。
仮にそれが自らが忌むべき存在を扱うものであるとしても、だ。

「はい、改めて……ありがとうございました」

少女は彼に対して丁寧に頭を下げると、そのままエレベーターの方へと。
乗り込むと同時に視線を横に、笑いかけながら告げるのだ。

「また次の機会があれば、今度は先輩の事を詳しく教えてくださいね」

上下院 禰喪 >


「ふふ、ありがとうございます。……自分も、真面目に何かに励む人は大好きです。貴女のことも、応援していますよ。」

純粋な応援の言葉が、嬉しかった。彼女もきっと、何かしらの事情を抱えているのだろう。だったら、自分もそれを応援してあげたい。助けてあげたいと思うのはきっと、高慢な事だから。

エレベーターは、下がる速度の方が早いらしい。ぐんぐんと、絶景がいつもの風景に変わっていく。何だか、別の世界から旅行した帰り道のようで、切なさと安心感に瞳を細めた。

不意に掛けられた言葉に、小さく瞬きをする。何だか照れ臭いような、むずかゆいような言葉。それに、緩く首を傾げながら、微笑み返した。

「もちろんであります。そして、天華さんのことも、教えてください。貴女の入学を、楽しみにしていますよ。」



御雷 天華 >  
「ふふ、それはもちろん」

尋ねるのであれば、当然こちらの事も曝け出すもの。

概要だけ聞いた彼の異能だって、気になる部分がある。
また話をして、色々と聞ける機会があるのならばその時には聞いてみようと。
そんな思案を潜めながら、地上に辿り着いたエレベーターから少女は降りる。

「それでは──また何処かで」

最期に再び軽く会釈を見せて。
少女はその場を後にするのだろう。

上下院 禰喪 >

「ええ、また何処かで……。」

島は広い。しかし、自分と彼女に残された時間は長い。いつかきっと、また会えるだろう。エレベーターから彼女が降りたことを確認すると、自らも扉を出て、時計台を去る彼女を見送る。

「先輩、でありますか。その称号に値するような人物にならねば。」

独りになった後、時計台でぽつりと呟く。
明日もまた、修行に励むことができそうだ。

同僚に見つからずに済んだことを安心しつつ、自身もその場を後にした。(↓)



ご案内:「大時計塔」から上下院 禰喪さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から御雷 天華さんが去りました。