2024/08/29 のログ
角鹿建悟 > 「…普通に生活委員の仕事で偶にあるな。宗教施設群に修繕補習の仕事とか出向いた事があるし。
…固有の色…か。何となくだが分かる気はする。」

ただ、”愛の色”は流石によく分からなかった。ピンと来ない。
そういう方面への経験値が圧倒的に足りないどころかマイナスなのもあろうが。

「――あの大きさとなると流石にアレだが、サイズは多少小さくてもインパクトはあるだろう。」

落第街の一角に、ある日突然そんなものが突然出現したら?
そして、”何か壊したらマズそう”、とか思われて放置されたら?それこそ痛快だ。
むしろ、落第街だからこそそんな突拍子も無いものが出現しても問題なさそうではある。
どうやらノーフェイスには受けたようで、これは矢張りやってみる価値はあるな…と、判断する。

――そして、彼女の視線にも気付かずに食い入るように眺める始末だ。
時々、ぶつぶつ呟いているのは配置や大きさ、構図の妙などを参考にしたり取り入れようと頭の中で試行錯誤しているのだろう。

「…それだとどっちも雷神になるが。
…実寸だと流石にスペース的に限界があるだろうからな。
城もそれはそれで興味深いが…。」

矢張り神社仏閣が血筋的なのも含めて一番関心が強い。
本人は無自覚に上機嫌のまま、風神と雷神に見守られるように雷門を抜けて先へ――…

「…これは宝蔵門…話には知ってたけど二重門だったのか。
…む、金剛力士像も再現されて――あっちは二天門か?
……五重塔も見事だな。あと、あっちの――…。」

青年、表情は変わっていないが目が少しキラキラしていた。
本堂だけでなく、その他の再現率に驚きながらも時々、何やらメモを取り出して書いている。

「…この朱塗りはどうにか俺の手で再現して取り入れたいが…色の比率は?原材料は?配合は?…流石に書いてないか。」

本当にここまでテンションが上がる青年は珍しい。
あと、まさに情報の洪水なので、上機嫌ではあるが脳内は結構一杯一杯だ。
ただ見て感動するだけではなく、取り入れたり参考にしようと頭を回転させているので疲労感も地味に大きい。

ノーフェイス >  
「考えろ、ってコトなのか、身を任せろってコトなのか……」

いずれにせよ、もう声の届かない昔日の天稟と、答え合わせはできるまい。
美しき城に寄り添う愛の化身は、今や生者にとって見上げるばかりのものとなった。

「建悟?」

果たして舞い上がる同行者に、今度は逆に圧される側になった。

「建悟」

小声、なのもあるが、邪魔するまいという気持ちが勝っているせいか。
脳内リソースを自分で阻まないために、くっくっ、と肩を震わせて黙っておく。
ポケットからオモイカネ8を取り出して、ストップウォッチ機能――いつの時代になっても役に立つ――を作動させる。
果たしてどれくらいの時間で、彼が現世に帰還するのか。並び立ちながら、こちらも視線をめぐらせた。

(――――、……どれも、これも、きれいだ)

まばゆく、力強く、荘厳で。
それでも、

(直接、観てみたいな……)

それが触れ得ぬ虚構だと感じたか、あるいは。
どこかずれているような、奇妙な寂寞を胸に感じながら、最先端の高精細のなかで、めまぐるしく数字が動いていった。

角鹿建悟 > 「…多分人によって解釈とか色々分かれそうではあるが。」

昔の人々と話せたら、色々と新しい発見や閃きが舞い降りそうだがそれは叶わない。
だからこそ、今を生きる自分たちはただ思いを馳せて各々なりの答えを見出すしかない。

ノーフェイスの声は完全に届いていないのか、それからしばらくはメモを取りながらミニチュアサイズとはいえ。
浅草寺を隅々まで堪能してからほぅ、と一息。彼女がストップウォッチを起動してどれくらい経過したか…

「―――あ。」

唐突に現世へと帰還する意識。手元のメモは何やらびっしり書き込まれている。
青年は字が綺麗な方だが、びっしり書き過ぎたせいで逆に読み辛い始末。
こういう時、端末ではなく手書きでメモをして考えを纏めるのが青年の癖らしい。

「……すまん、ノーフェイス…ちょっと我を忘れていた。」

少なくとも、5分10分程度では済まないくらいには熱中していただろう。
流石にちょっと恥ずかしいという感情が沸いたのか、小さく謝罪の言葉を彼女に投げかけようか。

(――でも、得るものは多かった…実物を見れれば一番いいんだけどな。)

それが叶わないからこそ、こうやって投影を眺めるだけでも十分に有難い。

「…そろそろ良い時間か。ノーフェイス、今回はこのくらいにしておこう。」

メモも後できちんと纏めておきたいし、何だかんだ結構時間が経過していたのを館内の時計をちらりと見て確認する。

ノーフェイス >  
「なに言ってんだ。お互い休日(オフ)だろ。とことんまで付き合うよ。
 まだまだ展示はあるらしいしな。あっちにゃ金だの銀だのがあるらしいぜ」

なにやら今更水臭いことを言う相手に、苦笑しながら踵を返す。進むほうへ。
新記録も観られるかもしれないし、と画面をふりふり、ポケットにおさめた。

「……世界が一回めちゃくちゃになって。
 これがそうかはわからないケド、ここにしか再現されてない建築物(もの)も多いんだろ」

かつてを保存して。
歴史を知るたびに思うのは、過ぎた時への寂寥でもある。
刻一刻進む時計の針は、ほんの僅かだけ止めるだけでも一苦労で、
どうにも抗いがたい波のなかに立たされながら。

「……キミのための土地は空いてる、ってコトだ。
 未来の地球を荒らすためにもしっかり勉強(カバレッジ)には時間かけるべきじゃないか?」

かつて、ぎゅうぎゅうだった時代とは違う。リセットされかけた世界。
キャンパスの余白が開けられたということでもある。描き記す、熱、色、愛のための。

「……そおだ。帰り、新潟(ニーガタ)の名物なり奢ってよ。
 いったいどういうのが美味しい土地なんだ?キミの生まれ育った場所ってさ――」

ご案内:「常世博物館 中央館 」からノーフェイスさんが去りました。
角鹿建悟 > 「――じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おう。」

…とはいえ、画面を振り振りする様子に「…待て、何でタイムを計っていたんだ」と流石に突っ込みはしておきたい。

「――そうだな。この世界はきっと空白がまだまだ多い筈だから。」

大変容以前の世界を青年は知らない――だからこそ、思いを馳せたりもするし。
かつての立派で荘厳で芸術的な――そんな建物を”超える”ものを創りたい。自分の手で。
それは目標であり挑戦だ。今はまだ駆け出しの身だが、少しずつ歩みは進めている。

――今日もまた一歩踏み出した。道は何処に続いているかは今は分からない。
それこそ白紙の地図のようで、空白地帯を埋めていくのは己自身だ。

「――名物か?ご当地グルメとかも含めるとそこそこあるが。そうだな――『へぎそば』とか『タレカツ丼』、あと海鮮も色々と――」

まさか故郷の名物を誰かに語るとは思わなかったけれど。
少しは次の展示を見る合間の穴埋めの話題にもなろうかと。
ノーフェイスに幾つか新潟のご当地グルメとか土産物を騙りながら。

――まだまだ見るべき展示物は色々ある。時間は気が付けばあっという間に過ぎていくだろう。

ご案内:「常世博物館 中央館 」から角鹿建悟さんが去りました。