2024/09/13 のログ
ご案内:「常世博物館/中央・西館連絡通路」に先生 手紙さんが現れました。
先生 手紙 >  
――中央館の一番広いスペースには、地球人類以降最も大きな生物の骨格標本――言ってしまえばクジラの――が展示されていた。

20mを超す体長。ニンゲンなんぞは一飲みにされてしまうであろう大きな口。……まあ大型のクジラの主食は大量の動物性プランクトンなので飲み込まれるような事態は限りなく0に近いのだが。

有名な創作の舞台に、この巨大な海洋生物の体内が選ばれる理由は、現実はさておき納得がいく。

骨だけになったとしてもその威容は、男の視線と思考を暫く釘付けにしていた。

進化論が一般的でありながら、未知なる奇跡論的な生物の変遷が学問に加わった時代(イマ)において、彼らはどうして海を選んだのかを改めて考えることになったーーなんて、学会系のニューストピックスを思うなどする。

さて。現在男が居るのはそんな現実の生き物と、かつて幻想だったはずの物語の住人の展示の間。連絡通路である。

先生 手紙 >  
現世で最大の生き物の骨格がクジラのそれであるのなら、この先の西館――同じように一等デカいスペースに文字通り君臨している骨格は異世界の王――つまりはドラゴンのそれである。

恐竜は遥か太古に存在していたが、ドラゴンは長らく本と脳みその中だけの生き物だった。

レプリカとはいえ、異世界から訪れた現物がこの先で永遠に眠っているのだ。すげえ時代になったもンです。いや、すべてが変わってから生まれた自分は何も言えないが。

先生 手紙 >  
(まァでも、デカさだけなら地球産だって負けてねえし?)

謎マウント。

そしてしばらく前に食べたドラゴンステーキ。困ったことにあちらさんではドラゴンは畏怖の対象と同時に狩猟資源なのです。向こうのヒト凄いね。ゲームでしか狩ったことないよドラゴンなんて。

異邦人街の異邦人御用達の店で食ったその肉はたいへん美味しゅうございましたが。狩ってみろ、と言われたらちょっと、こう。クジラに単騎で挑むのとどっちがヤバなのだろうと思ったりもします。

――そんなこんなで、特別な場所ではない此処は、人工的に作られた現世と異界の中間地点めいている。転移空間のような危険は無い。危険人物なら居るかもしれないが、それはもうどこのセカイも同じでしょう。

狭間に居る気分を味わう分には、インスタントかつ気楽な空間だった。

ついでに言うとガラス張りの窓から見える景色は、全体が博物館として出来ているので十分に良い眺めと言える。

全館終日禁煙なのが惜しいくらいだ。そんな場所の方が多いけどね。

先生 手紙 >  
(……そういや、彼女の出自は不鮮明だったな。)

出会いも確か此処だったか。どちら寄りのニンゲンかは――まあ、今考えることではない。すくなくともシーンにおいてはファンタジーよりロック路線だと思う。

懐郷があったのかね?などと思いつつ、西館へと向けて歩を進める。

「ま、ガクセーだしね。興味のある分野の単位は取っておきたい」

基礎魔術概論とかね。一線級とはお世辞にも言えないがこれでも異能・魔術使いではある。座学も必要で、好きで勉強する分には問題あるまい。担当のセンセイもイイ人だしね。

靴音を消す絨毯張りのフロア。

でもまあ。神秘的とか奇跡論的の一言で片づけるには『幻想』が過ぎるセカイだよ、向こう側。

光る石とかさ。

ご案内:「常世博物館/中央・西館連絡通路」から先生 手紙さんが去りました。