2024/10/14 のログ
ご案内:「常世博物館-中央館-古代エジプト文化展示」に緋月さんが現れました。
ご案内:「常世博物館-中央館-古代エジプト文化展示」に神樹椎苗さんが現れました。
緋月 >  
古代エジプト文化展示エリア、その宗教コーナーの奥。
そちらへ向かって、静かに足を進める人影がひとつ。

暗い赤色の外套(マント)を靡かせ、書生服姿の少女が静かに足を進める。
その表情は、どこか静かなもの。

「――――ふぅ。」

大きく息を吐き、目的のエリア――聖遺物の展示コーナーへと歩を進めて行く。
「あの人」の事である。恐らくは自分が今日、こうして訪ねて来る事も知っていそうな気がする。

もしかしたら、その用件についてまで。

(…やっぱり、少し緊張はしますね。)
 

神樹椎苗 >  
 その日、正装に身を包んだ小娘は、ただ静かだからという理由で博物館にいた。
 ソファの上で、アームレストに腕と頭を乗せて、ぐったりと。

「あー――シナモンロールになりてーです」

 今にも寝そうな様子で、だらだらとしていた。
 折角の高級そうな品の良いドレスも台無しだ。
 そんなだからもちろん、後輩が訪れる事なんて、思ってもいなかった。
 

緋月 >  
何だか随分と煩悩駄々洩れな言葉を聞いた気がする。
ともあれ、例によって今となっては道順をすっかり覚えてしまったコーナーへ着けば、
随分とだらけた様子の先輩の御姿。

「…………。」

まあ、人間だらけたくなる時は誰しもあろう。
そんな時に訪ねて来たのは、少しばかり悪い事をした気がする。

だが、次の機会などと悠長は言っていられない。
なのでご機嫌が傾く事は承知の上で、心の中で謝りつつ、口を開く。

「――こんにちは、椎苗さん。
公園ぶり、ですかね。」

あまり深刻な空気は出したくなかったので、つとめて平常…よりやや高めのテンションくらいで。

神樹椎苗 >  
「んえ」

 来客に、ヘンな音が盛れた
 それでも起き上がらないので、きっとシナモンロールではなくてもバターロールくらいにはなっていたかもしれない。

「んあー、元気そーですね後輩。
 お友達はいつものとこですよ、好きに戯れてくといーです」

 ソファからはみ出た小さな手が、ぷらぷら、と少女に向けて振られた。
 ぶらんぶらん。
 なんなら、小さな欠伸までセットである。
 まさか自分に用事があって来たとは思ってもいなさそうだ。
 

緋月 >  
「はい、お陰様で。
一人暮らしも始めましたので、前より健康には気を使うようには。」

随分とダラダラしてらっしゃる。
よっぽど怠けていたいのか、それとも何かあって疲れているのか。
そこの所は、流石に測りかねる。

「――恐縮です。」

ご厚意に甘える形で、一度、黒い仮面が収められているケースへ。
す、とケースに手を置けば、狼を象った黒い仮面がかたりと小さく揺れる。
その様子に、小さく微笑を返してから。

「……お休みのところ、申し訳ありませんが。
今日は、この子だけでなく、椎苗さんにも用事があって来たのです。

すみません、のんびり過ごしている所に事前の予約もなく押しかけて。」

そう言いながら、小さく苦笑。
間が悪かったなぁ、と、どうしても思ってしまう。
 

神樹椎苗 >  
「あー。
 一人暮らし。
 いいじゃねえですか、気楽なもんですよ」

 そういう椎苗も、基本は女子寮で独り暮らしだ。
 部屋はぬいぐるみで溢れていたりするが。

「――んあ、んー?」

 半分閉じかけていた目が、ぼやんと少女を見つめる。
 とろん、と眠そうにしている様子は、まあ見てくれの良さもあり、かわいく見えなくもない。

「気にしねーでいいですよ。
 最近、仕事が多くてめんどーになってるだけですし。
 今日も朝からずっと、挨拶周りですよ――ぁふ」

 そんなふうに答えながら、小さな欠伸。
 自分に用があると聞いても、態度は改めるつもりはなさそうだ。
 まあ、それだけ気安くしていい相手と思っているのもあるが。
 

緋月 >  
「それは…何だか、ますます申し訳ない気が…。」

挨拶回り。どんな相手への挨拶回りなのだろうか、と気にはなったが。
そこは自分があまり突っ込むような事ではないような気がする。
欠伸までしているという事は、結構な仕事量なのではないのだろうか、と心配にはなったが。

「何と言うか…その、お疲れ様です。
色々とお忙しいようで…申し訳ないのですが。」

胡乱な表情で視線を向けられれば、ちょっと恐縮したような雰囲気。
それでも、この用事だけは外す事が出来ない。

「――お疲れの処、こんな話を振るのは申し訳ないですが、
私も色々と…用意など、時間がなくて。

本当は、「そうならない」のが一番ですし…そんなつもりもない、のですけど…
もしも、「駄目だった」時の為に、事前に、伝えて置きたくて。」

奇妙な物言い。其処からひとつ息を吐き、



「――今日は、「後輩」として、暇乞いに参りました。

そう、一言。
 

埋葬の仮面 >  
少女の発した言葉に、傍らのケースからがたり、と大きな音。

見れば、狼を象った黒い仮面の位置が盛大にずれている。
 

神樹椎苗 >  
「あー、いいですいいです。
 ここんところ、ずっとこんなもんですから」

 なんだかんだと必要な仕事だ。
 嫌いな仕事ではあるが、そういう物と割り切っている。
 さて、少女の話に関して、なんだろうかと耳を傾けるのだが。

「はえ――?」

 こう、畏まって言う側と、言われた側の温度差が著しかった。
 椎苗は、きょとん、と閉じかけていた目を丸くし、ぽかん、と少女を眺めていた。
 

緋月 >  
「……突然の話で、申し訳ありません。」

キョトンとした顔の少女に、深々と頭を下げる。
なるべく、深刻にならないよう気を付けながら、書生服姿の少女は話しを始める。

「詳しい事は……諸事情で、口に出来ないのですが。
遠くない内に、ある方と「仕合」をする事になりました。

…「仕合」とは言っても、恐らくそんなものでは済まない段階のものになるでしょうが。

その方の言葉の受け売りになりますが、今の私は――「鈍り切っている」、と。」

ふう、と、一つ息を吐いて心身をリラックスさせる。

「……その人が求めるのは、この島に来て、様々な出会いに恵まれ、「人」としてある私にとって、
要らなくなった「鬼」としての在り方……言ってみれば、一振りの、無常の刃としての私の在り方でしょう。

当然、其処に「慈悲」などという心が入り込む余地はないでしょう。
刀は……人を、命を斬るものです。
その在り方に戻れば、私は呵責無く命を奪う、凶器になるでしょう。

当然……御神の、そして椎苗さんの授けた「禁忌」を守る事は、出来なくなる。」

其処でもう一度、息を吐いて平常心を取り戻す。

「――勿論、私もそんな形になって戻れなくなる事はしたくはありません。
ですが…あの人は、きっと容赦などないでしょう。

なので、それが叶わなくなった時の為に…情けない有様を晒す無礼を犯す前に。
最後の挨拶と、暇乞いを。」

その言葉と同時に、深々と頭を下げる。
世話になった者に、深く感謝を捧げるように。

「………それと、こんな事を喋った後で申し訳ないのですが。

私が「刃」に還って戻らない事を防ぐ為の「予防」として、ひとつだけ、お願いがあるのです。」

最後の言葉は、ひたすらに気まずそうな雰囲気。

――傍らのケースからは、カタカタと仮面が震える音がしている。
これでもかという位に、怒りのオーラが滲み出ている。
 

神樹椎苗 >  
「ん――」

 流石に真面目な様子で話し始められれば、のそりと起き上がる。
 しかし困ったことに。
 椎苗にしてみればあまり、関係のない話だった。

「まあ、お前が少しばかりナマクラなのはわかりますが」

 自身を凶器として、人を斬る鬼に戻る。
 それは、この島での暮らしを楽しみ始めた少女にとっては、決意のいる事だったのかもしれないが。

「んー、お前。
 まだ禁忌にこだわってたんですか?」

 拍子抜けするほど、あっさりと。
 なんだそんな事かと。椎苗は欠伸交じりに言った。

「あの時、お前を罰した時から、お前はもううちの信徒ではありません。
 まあ、それでも教えを守ろうとするのは、勝手ですし、まあまあ感心な事ですが。
 わざわざ、あらたまって、ことわりに来る必要なんてねーですよ」

 好きにすればいい、と、乱れた髪の毛先を弄りながら。
 本当にさしたる興味もなさそうに言う。

「――それに、相手はあの紅い女でしょう。
 あいつにも『貸し出し』をしてますし、どうであれ、最期にはならねーと思いますがね」

 そう言いながら、少女の態度に薄っすらと苦笑を浮かべる。
 ほんとに、真面目過ぎるのも困ったものだと。
 だからこそ、『可愛がって』やりたくなるのだが。

「あー、良いですよ別に、しぃとお前の仲ですし。
 多少の頼みくらいは聞いてやります」

 そう気まずそうにせず、とりあえず言ってみろ、というように。
 ぽんぽん、と。
 弾むように軽い調子で椎苗は眠そうに言うのだ。
 

緋月 >  
「――それでも、」

好きにすればいい、という言葉に、軽く己の掌を握り、開き、其処に目を落とす。

「理由やその結果に対しては兎も角、一度、生死の摂理に逆らった身の上です。
お言葉は有難い限りですが……それでもやはり、己が咎人である事を、忘れたくはありませんから。」

結果に後悔はないものの、罪咎を犯した身に変わりはない。
それを戒めるために、伝えられた禁忌を愚直に背負い、守ろうとしている。
愚か者と笑われようと、こればかりはどうしても軽く見る事が出来ない。

「相手」について指摘されれば、うっ、と隠し事を指摘された子供のような気まずそうな顔。

「……気が付いていたのですか。
それとも…「勘」、ですか?」

いずれにしろ、隠し事を見破られたので気まずさが先に立つ。
ちょっとしょぼんとしながらも、頼み事を聞いてくれるという様子に、恐縮そうにしながら口を開く。

「……椎苗さんから見てもやっぱり鈍らですか、私…。

ええ、少しばかり…いや、思った以上に居心地が良くて…日常という中で鈍っていたのは、否定できません。

だから、「生」と「死」の狭間を見て、鋭さを少しでも取り戻す為にも。
――ただの、一振りの刃に戻って、そのまま戻れなくなってしまわないためにも、」


「――椎苗さん(先輩)の御神器を……あの紅い剣に、一度、触れさせて貰いたいのです。


――己が最も、そして強烈に「死」を感じたのは、間違いなくあの剣だった。
道を違えた者を罰する為の、紅い剣。
それにもう一度触れれば…「死」を、「死を想う」事を、少しでも再確認できるかも知れない。

無論、危険は承知の上。危険を冒さず得られるモノなど、どうしたって限りがある。
 

神樹椎苗 >  
「ふむ、そういった心がけは良い物です。
 ですが、それがただの重荷になるようでは、まだまだですね」

 ふ、と笑いながら少女の様子を見守る。
 少女の心がけ自体はいいものだが。
 やはり真面目過ぎるのはも困りものだ。

「単なる、計算と推測です。
 演算機――それがしいの本分ですからね」

 ただ、少女を取り巻く事情や関係を計算し、推測しただけ。
 くすくす、と気まずそうな少女に笑い。

「まあ、己を剣とするのであれば、ナマクラでしょうね。
 とはいえ、個人的にはそんなナマクラの方がしいは好きですが――ほう」

 少女の頼みはいささか、意外ではあった。
 あれだけ、少女の中の大切な物を切り刻んだ、神器に触れたいとは。

「――お前、なんか変な趣味にでも目覚めちまいましたか?」

 少女の心知らず。
 椎苗は、至って真面目そうに、少女の性癖を心配していた――!
 

緋月 >  
「うぅ………。」

色々とボロボロに言われて、しょぼんとしてしまう。
確かにまだまだだという自覚はあるので、其処は反論できない。
とはいえ、流石に最後の言葉だけは看過できない。

「変な趣味って何ですか…色々覚悟とかしてきたのに…。

……私が感じた一番強烈な「死」が、あの剣だった、という事なんです。
あそこまで強烈で、そして恐ろしい「死」は…この島に来てから、幾らか戦いを経験はしましたが、
そのどれをも、完全に超えていた。

――死は、時として無慈悲に、何の前触れもなくやってくる。
それを思い出させたのが、あの剣だったんです。
同時に、だからこそ生きている事が…それだけで素晴らしい事だ、と。」

もう一度、しっかりと真剣に、頭を下げてお願い。

「……死を与える事に沈み過ぎたら、きっと私は刃に戻って還れなくなってしまう。

死を…そして、人としての生の実感を、今一度、身体に刻み込む為に。
どうか、お願いします――!」

今度は、もっと真剣にお願いの姿勢。
決して変な趣味に目覚めた訳ではなく、人として「当たり前」の事を忘れてしまわない為に。
 

神樹椎苗 >  
「趣味は趣味です、誤用の方のせーへき。
 もし、しいがお前の性癖を歪めちまったようなら、流石にあの紅い女(クソ女)に謝っとくべきかと」

 死に近づかないと興奮できない、なんて困った性癖に目覚めてしまっていたら、さしもの椎苗であっても罪悪感を覚えるのだった。

「はあ、覚悟はいいんですがね。
 余裕が足りねえんですよ、お前は」

 そう困ったように笑いながら。
 ストン、という音と共に、少女の前に紅い刀が降ってきた。

「そいつもお前の事は気に入ってますからね。
 別に触れるくらい構わねーですよ。
 ただ、めちゃくちゃ腹が減りますから、うっかり餓死すんじゃねーですよ」

 紅い刀は、妖しい輝きと共に刀身を晒す。
 刀の形状なのは、少女に馴染みのある物になったのだろう。
 しかし、どれだけ神器の意識が穏やかで優しくとも、その性質は飢餓と死。
 触れているだけで、多大な生命力を失い、飢餓感に苦しむ事になり。
 凝縮された『死』という概念に触れれば、己が死んだと錯覚しかねない。
 

緋月 >  
「だから誤解ですって……。」

しょんもり。
兎も角、目の前に降って来た紅い刀に目を向ける。
――形が違っていても、直ぐに分かる。刀から感じる雰囲気は、あの夜に己に「死」を
刻み付けたあの剣と、全く同じものだ。

「すみません…余裕がないのは、認めますけど…口にするには危険過ぎる
事情が絡んでいるから、とだけ、言わせてください。」

流石に色々と忙しいであろう先輩を巻き込むわけにはいかず。
そもそも、事情を話してしまったら彼女の身にも危険が及びかねない。

「気に入って頂けているのは…はい、恐縮です。
――では、失礼します。」

そう答えると、一度大きく深呼吸をして――


――ぐ、と、目の前に突き刺さる紅い刀の柄を握り締める。
 

緋月 >  

「――――――――――。」

次の瞬間。
凄まじい飢餓感と生命力の喪失。
そして、それそのものが『死』といえる刀に強く触れた事で。


両目の焦点が完全に合わない状態で、
書生服姿の少女は、ぱたりとその場に倒れ込んでしまった。


がたん、と大きな音がして、狼を象った黒い仮面の位置がまた大きくずれている。
 

神樹椎苗 >  
「――む」

 倒れ込む少女。
 その姿に、椎苗もゆっくりと立ち上がって。
 軽々とその紅い刀を手に取った。

「ふむ――別に危険なほど『喰った』わけじゃねーですね」

 椎苗がそう言うと、『当然ですっ』と言わんばかりに紅い刀身が光る。
 慌てる様子の仮面に、ひらひらと手を振り。

「大丈夫、命に別状はねーですよ。
 ただ――ちょっと夢を見てるだけです。
 まあうっかり魅入られでもしたら、戻って来ねーかもしれませんが」

 その心配はあまりしていない。
 一時とはいえ、使徒としてその身を置いた少女だ。
 まやかしの死の安らぎに魅入られるようであれば――あの女も必要とはしないだろう、そんな確信もあった。

「さて――この困った娘は、どんな夢を見てることやら」

 倒れ込んだ少女の隣に座り込み、その顔を見守った。