2024/10/14 のログ
ご案内:「常世博物館-中央館-古代エジプト文化展示」に緋月さんが現れました。
ご案内:「常世博物館-中央館-古代エジプト文化展示」に神樹椎苗さんが現れました。
■緋月 >
古代エジプト文化展示エリア、その宗教コーナーの奥。
そちらへ向かって、静かに足を進める人影がひとつ。
暗い赤色の外套を靡かせ、書生服姿の少女が静かに足を進める。
その表情は、どこか静かなもの。
「――――ふぅ。」
大きく息を吐き、目的のエリア――聖遺物の展示コーナーへと歩を進めて行く。
「あの人」の事である。恐らくは自分が今日、こうして訪ねて来る事も知っていそうな気がする。
もしかしたら、その用件についてまで。
(…やっぱり、少し緊張はしますね。)
■神樹椎苗 >
その日、正装に身を包んだ小娘は、ただ静かだからという理由で博物館にいた。
ソファの上で、アームレストに腕と頭を乗せて、ぐったりと。
「あー――シナモンロールになりてーです」
今にも寝そうな様子で、だらだらとしていた。
折角の高級そうな品の良いドレスも台無しだ。
そんなだからもちろん、後輩が訪れる事なんて、思ってもいなかった。
■緋月 >
何だか随分と煩悩駄々洩れな言葉を聞いた気がする。
ともあれ、例によって今となっては道順をすっかり覚えてしまったコーナーへ着けば、
随分とだらけた様子の先輩の御姿。
「…………。」
まあ、人間だらけたくなる時は誰しもあろう。
そんな時に訪ねて来たのは、少しばかり悪い事をした気がする。
だが、次の機会などと悠長は言っていられない。
なのでご機嫌が傾く事は承知の上で、心の中で謝りつつ、口を開く。
「――こんにちは、椎苗さん。
公園ぶり、ですかね。」
あまり深刻な空気は出したくなかったので、つとめて平常…よりやや高めのテンションくらいで。
■神樹椎苗 >
「んえ」
来客に、ヘンな音が盛れた
それでも起き上がらないので、きっとシナモンロールではなくてもバターロールくらいにはなっていたかもしれない。
「んあー、元気そーですね後輩。
お友達はいつものとこですよ、好きに戯れてくといーです」
ソファからはみ出た小さな手が、ぷらぷら、と少女に向けて振られた。
ぶらんぶらん。
なんなら、小さな欠伸までセットである。
まさか自分に用事があって来たとは思ってもいなさそうだ。
■緋月 >
「はい、お陰様で。
一人暮らしも始めましたので、前より健康には気を使うようには。」
随分とダラダラしてらっしゃる。
よっぽど怠けていたいのか、それとも何かあって疲れているのか。
そこの所は、流石に測りかねる。
「――恐縮です。」
ご厚意に甘える形で、一度、黒い仮面が収められているケースへ。
す、とケースに手を置けば、狼を象った黒い仮面がかたりと小さく揺れる。
その様子に、小さく微笑を返してから。
「……お休みのところ、申し訳ありませんが。
今日は、この子だけでなく、椎苗さんにも用事があって来たのです。
すみません、のんびり過ごしている所に事前の予約もなく押しかけて。」
そう言いながら、小さく苦笑。
間が悪かったなぁ、と、どうしても思ってしまう。
■神樹椎苗 >
「あー。
一人暮らし。
いいじゃねえですか、気楽なもんですよ」
そういう椎苗も、基本は女子寮で独り暮らしだ。
部屋はぬいぐるみで溢れていたりするが。
「――んあ、んー?」
半分閉じかけていた目が、ぼやんと少女を見つめる。
とろん、と眠そうにしている様子は、まあ見てくれの良さもあり、かわいく見えなくもない。
「気にしねーでいいですよ。
最近、仕事が多くてめんどーになってるだけですし。
今日も朝からずっと、挨拶周りですよ――ぁふ」
そんなふうに答えながら、小さな欠伸。
自分に用があると聞いても、態度は改めるつもりはなさそうだ。
まあ、それだけ気安くしていい相手と思っているのもあるが。
■緋月 >
「それは…何だか、ますます申し訳ない気が…。」
挨拶回り。どんな相手への挨拶回りなのだろうか、と気にはなったが。
そこは自分があまり突っ込むような事ではないような気がする。
欠伸までしているという事は、結構な仕事量なのではないのだろうか、と心配にはなったが。
「何と言うか…その、お疲れ様です。
色々とお忙しいようで…申し訳ないのですが。」
胡乱な表情で視線を向けられれば、ちょっと恐縮したような雰囲気。
それでも、この用事だけは外す事が出来ない。
「――お疲れの処、こんな話を振るのは申し訳ないですが、
私も色々と…用意など、時間がなくて。
本当は、「そうならない」のが一番ですし…そんなつもりもない、のですけど…
もしも、「駄目だった」時の為に、事前に、伝えて置きたくて。」
奇妙な物言い。其処からひとつ息を吐き、
「――今日は、「後輩」として、暇乞いに参りました。」
そう、一言。
■埋葬の仮面 >
少女の発した言葉に、傍らのケースからがたり、と大きな音。
見れば、狼を象った黒い仮面の位置が盛大にずれている。
■神樹椎苗 >
「あー、いいですいいです。
ここんところ、ずっとこんなもんですから」
なんだかんだと必要な仕事だ。
嫌いな仕事ではあるが、そういう物と割り切っている。
さて、少女の話に関して、なんだろうかと耳を傾けるのだが。
「はえ――?」
こう、畏まって言う側と、言われた側の温度差が著しかった。
椎苗は、きょとん、と閉じかけていた目を丸くし、ぽかん、と少女を眺めていた。
■緋月 >
「……突然の話で、申し訳ありません。」
キョトンとした顔の少女に、深々と頭を下げる。
なるべく、深刻にならないよう気を付けながら、書生服姿の少女は話しを始める。
「詳しい事は……諸事情で、口に出来ないのですが。
遠くない内に、ある方と「仕合」をする事になりました。
…「仕合」とは言っても、恐らくそんなものでは済まない段階のものになるでしょうが。
その方の言葉の受け売りになりますが、今の私は――「鈍り切っている」、と。」
ふう、と、一つ息を吐いて心身をリラックスさせる。
「……その人が求めるのは、この島に来て、様々な出会いに恵まれ、「人」としてある私にとって、
要らなくなった「鬼」としての在り方……言ってみれば、一振りの、無常の刃としての私の在り方でしょう。
当然、其処に「慈悲」などという心が入り込む余地はないでしょう。
刀は……人を、命を斬るものです。
その在り方に戻れば、私は呵責無く命を奪う、凶器になるでしょう。
当然……御神の、そして椎苗さんの授けた「禁忌」を守る事は、出来なくなる。」
其処でもう一度、息を吐いて平常心を取り戻す。
「――勿論、私もそんな形になって戻れなくなる事はしたくはありません。
ですが…あの人は、きっと容赦などないでしょう。
なので、それが叶わなくなった時の為に…情けない有様を晒す無礼を犯す前に。
最後の挨拶と、暇乞いを。」
その言葉と同時に、深々と頭を下げる。
世話になった者に、深く感謝を捧げるように。
「………それと、こんな事を喋った後で申し訳ないのですが。
私が「刃」に還って戻らない事を防ぐ為の「予防」として、ひとつだけ、お願いがあるのです。」
最後の言葉は、ひたすらに気まずそうな雰囲気。
――傍らのケースからは、カタカタと仮面が震える音がしている。
これでもかという位に、怒りのオーラが滲み出ている。
■神樹椎苗 >
「ん――」
流石に真面目な様子で話し始められれば、のそりと起き上がる。
しかし困ったことに。
椎苗にしてみればあまり、関係のない話だった。
「まあ、お前が少しばかりナマクラなのはわかりますが」
自身を凶器として、人を斬る鬼に戻る。
それは、この島での暮らしを楽しみ始めた少女にとっては、決意のいる事だったのかもしれないが。
「んー、お前。
まだ禁忌にこだわってたんですか?」
拍子抜けするほど、あっさりと。
なんだそんな事かと。椎苗は欠伸交じりに言った。
「あの時、お前を罰した時から、お前はもううちの信徒ではありません。
まあ、それでも教えを守ろうとするのは、勝手ですし、まあまあ感心な事ですが。
わざわざ、あらたまって、ことわりに来る必要なんてねーですよ」
好きにすればいい、と、乱れた髪の毛先を弄りながら。
本当にさしたる興味もなさそうに言う。
「――それに、相手はあの紅い女でしょう。
あいつにも『貸し出し』をしてますし、どうであれ、最期にはならねーと思いますがね」
そう言いながら、少女の態度に薄っすらと苦笑を浮かべる。
ほんとに、真面目過ぎるのも困ったものだと。
だからこそ、『可愛がって』やりたくなるのだが。
「あー、良いですよ別に、しぃとお前の仲ですし。
多少の頼みくらいは聞いてやります」
そう気まずそうにせず、とりあえず言ってみろ、というように。
ぽんぽん、と。
弾むように軽い調子で椎苗は眠そうに言うのだ。
■緋月 >
「――それでも、」
好きにすればいい、という言葉に、軽く己の掌を握り、開き、其処に目を落とす。
「理由やその結果に対しては兎も角、一度、生死の摂理に逆らった身の上です。
お言葉は有難い限りですが……それでもやはり、己が咎人である事を、忘れたくはありませんから。」
結果に後悔はないものの、罪咎を犯した身に変わりはない。
それを戒めるために、伝えられた禁忌を愚直に背負い、守ろうとしている。
愚か者と笑われようと、こればかりはどうしても軽く見る事が出来ない。
「相手」について指摘されれば、うっ、と隠し事を指摘された子供のような気まずそうな顔。
「……気が付いていたのですか。
それとも…「勘」、ですか?」
いずれにしろ、隠し事を見破られたので気まずさが先に立つ。
ちょっとしょぼんとしながらも、頼み事を聞いてくれるという様子に、恐縮そうにしながら口を開く。
「……椎苗さんから見てもやっぱり鈍らですか、私…。
ええ、少しばかり…いや、思った以上に居心地が良くて…日常という中で鈍っていたのは、否定できません。
だから、「生」と「死」の狭間を見て、鋭さを少しでも取り戻す為にも。
――ただの、一振りの刃に戻って、そのまま戻れなくなってしまわないためにも、」
「――椎苗さんの御神器を……あの紅い剣に、一度、触れさせて貰いたいのです。」
――己が最も、そして強烈に「死」を感じたのは、間違いなくあの剣だった。
道を違えた者を罰する為の、紅い剣。
それにもう一度触れれば…「死」を、「死を想う」事を、少しでも再確認できるかも知れない。
無論、危険は承知の上。危険を冒さず得られるモノなど、どうしたって限りがある。
■神樹椎苗 >
「ふむ、そういった心がけは良い物です。
ですが、それがただの重荷になるようでは、まだまだですね」
ふ、と笑いながら少女の様子を見守る。
少女の心がけ自体はいいものだが。
やはり真面目過ぎるのはも困りものだ。
「単なる、計算と推測です。
演算機――それがしいの本分ですからね」
ただ、少女を取り巻く事情や関係を計算し、推測しただけ。
くすくす、と気まずそうな少女に笑い。
「まあ、己を剣とするのであれば、ナマクラでしょうね。
とはいえ、個人的にはそんなナマクラの方がしいは好きですが――ほう」
少女の頼みはいささか、意外ではあった。
あれだけ、少女の中の大切な物を切り刻んだ、神器に触れたいとは。
「――お前、なんか変な趣味にでも目覚めちまいましたか?」
少女の心知らず。
椎苗は、至って真面目そうに、少女の性癖を心配していた――!
■緋月 >
「うぅ………。」
色々とボロボロに言われて、しょぼんとしてしまう。
確かにまだまだだという自覚はあるので、其処は反論できない。
とはいえ、流石に最後の言葉だけは看過できない。
「変な趣味って何ですか…色々覚悟とかしてきたのに…。
……私が感じた一番強烈な「死」が、あの剣だった、という事なんです。
あそこまで強烈で、そして恐ろしい「死」は…この島に来てから、幾らか戦いを経験はしましたが、
そのどれをも、完全に超えていた。
――死は、時として無慈悲に、何の前触れもなくやってくる。
それを思い出させたのが、あの剣だったんです。
同時に、だからこそ生きている事が…それだけで素晴らしい事だ、と。」
もう一度、しっかりと真剣に、頭を下げてお願い。
「……死を与える事に沈み過ぎたら、きっと私は刃に戻って還れなくなってしまう。
死を…そして、人としての生の実感を、今一度、身体に刻み込む為に。
どうか、お願いします――!」
今度は、もっと真剣にお願いの姿勢。
決して変な趣味に目覚めた訳ではなく、人として「当たり前」の事を忘れてしまわない為に。
■神樹椎苗 >
「趣味は趣味です、誤用の方のせーへき。
もし、しいがお前の性癖を歪めちまったようなら、流石にあの紅い女に謝っとくべきかと」
死に近づかないと興奮できない、なんて困った性癖に目覚めてしまっていたら、さしもの椎苗であっても罪悪感を覚えるのだった。
「はあ、覚悟はいいんですがね。
余裕が足りねえんですよ、お前は」
そう困ったように笑いながら。
ストン、という音と共に、少女の前に紅い刀が降ってきた。
「そいつもお前の事は気に入ってますからね。
別に触れるくらい構わねーですよ。
ただ、めちゃくちゃ腹が減りますから、うっかり餓死すんじゃねーですよ」
紅い刀は、妖しい輝きと共に刀身を晒す。
刀の形状なのは、少女に馴染みのある物になったのだろう。
しかし、どれだけ神器の意識が穏やかで優しくとも、その性質は飢餓と死。
触れているだけで、多大な生命力を失い、飢餓感に苦しむ事になり。
凝縮された『死』という概念に触れれば、己が死んだと錯覚しかねない。
■緋月 >
「だから誤解ですって……。」
しょんもり。
兎も角、目の前に降って来た紅い刀に目を向ける。
――形が違っていても、直ぐに分かる。刀から感じる雰囲気は、あの夜に己に「死」を
刻み付けたあの剣と、全く同じものだ。
「すみません…余裕がないのは、認めますけど…口にするには危険過ぎる
事情が絡んでいるから、とだけ、言わせてください。」
流石に色々と忙しいであろう先輩を巻き込むわけにはいかず。
そもそも、事情を話してしまったら彼女の身にも危険が及びかねない。
「気に入って頂けているのは…はい、恐縮です。
――では、失礼します。」
そう答えると、一度大きく深呼吸をして――
――ぐ、と、目の前に突き刺さる紅い刀の柄を握り締める。
■緋月 >
「――――――――――ぁ。」
次の瞬間。
凄まじい飢餓感と生命力の喪失。
そして、それそのものが『死』といえる刀に強く触れた事で。
両目の焦点が完全に合わない状態で、
書生服姿の少女は、ぱたりとその場に倒れ込んでしまった。
がたん、と大きな音がして、狼を象った黒い仮面の位置がまた大きくずれている。
■神樹椎苗 >
「――む」
倒れ込む少女。
その姿に、椎苗もゆっくりと立ち上がって。
軽々とその紅い刀を手に取った。
「ふむ――別に危険なほど『喰った』わけじゃねーですね」
椎苗がそう言うと、『当然ですっ』と言わんばかりに紅い刀身が光る。
慌てる様子の仮面に、ひらひらと手を振り。
「大丈夫、命に別状はねーですよ。
ただ――ちょっと夢を見てるだけです。
まあうっかり魅入られでもしたら、戻って来ねーかもしれませんが」
その心配はあまりしていない。
一時とはいえ、使徒としてその身を置いた少女だ。
まやかしの死の安らぎに魅入られるようであれば――あの女も必要とはしないだろう、そんな確信もあった。
「さて――この困った娘は、どんな夢を見てることやら」
倒れ込んだ少女の隣に座り込み、その顔を見守った。