2024/11/26 のログ
ご案内:「常世博物館-中央館-古代エジプト文化展示」に緋月さんが現れました。
■緋月 >
常世博物館の中央館、古代エジプト文化展示のエリア
ブーツの音を小さく鳴らし、白に近い灰色のポニーテールを揺らしながら、ひとつの人影が往く。
書生服に外套姿の、小柄な少女だ。
「――――さて、御使いが此処に居ると良いのだが。」
最大の問題がそこだった。
何しろ此処以外の心当たりがない。
住処など勿論知らないし、知っていても突撃が躊躇われる。
「盟友」の大事とはいえ、流石にその程度の機微を読み取る程度には、
「彼の者」の情操というものは人のそれを読み取れるようにはなっていた。
他に心当たりも無し、結局此処を頼るしかないのである。
「……全く、難儀な事だ。」
小さくそんな言葉を漏らしながら、小柄な人影は人の気配が少ない場所――
己と同じ気配を幽かに感じる一角へと、その歩みを進めて行く。
ご案内:「常世博物館-中央館-古代エジプト文化展示」に神樹椎苗さんが現れました。
■神樹椎苗 >
博物館の展示室。
図書委員の面目のためにあえて言おう。
ここは、誰かの私室ではなく、公共の施設である。
そう、ここは普段から人の入りが少ない博物館でも、特別に人が立ち寄らない場所であるのだが!
それでも!
個人の持ち物ではなく、公共の施設なのである!
誰がなんと言おうと、公共施設である博物館でなのだ。
だからこそゆっくりと観覧できるよう、休憩用に質のいい長椅子がある。
普段ここに我が物顔で座っている、傍若無人の小娘がいたりするが。
それでもあくまで、公共の! 施設! なのだ!
「――すぴー」
だからこの、ふわふわでもこもこの、虎柄ネコマニャンのきぐるみを着て、幸せそうに眠っているような小娘が居て良いはずがないのである!
なんでわざわざここで寝てるの!?
※――図書委員、今日の博物館管理見回り担当の心の叫び。
■緋月 >
「…………。」
確か、此処は曲りなりにも公共の施設、という代物であった筈。
そういう場ではそれなりの振る舞い方、というものがあるらしい、というのは
暇を見て読み取っていた盟友の記憶から何となく理解を持っていた。
然るに、この御使いの態度は如何なものか。
そう、確かこのような行いについての言葉の知識もあった筈。確か――
「……傍若無人、だったか。」
現状唯一の御使いがこんな有様とは。我等が神はこれでよいのだろうか。
思わずそんな事を考えてしまった。
……まあ、咎め立てられない事を見れば許されているのだろう。
御使いも色々と大変な立場なのだろうし。
恐らく。多分。きっと。
とはいえ、この有様に目を瞑るとしても、此処まで来た用件を果たす為には
申し訳ないが御使いには起きて貰わねばならない。
惰眠を貪っている所申し訳ないが、とりあえず御起床願う事にした。
「――――御使い。御使いよ、起きられよ。」
ゆさゆさ。
■神樹椎苗 >
そう、まさに傍若無人である。
ここはお部屋じゃないのだが。
そして本来それを咎めるべき、保護者でもある黒き神なのだが。
『――――』
博物館の柱の陰に座って、鼻提灯を作っていた。
白骨なのになぜ、とかそういうツッコミの段階をスキップで飛び越えていく、神と使徒だった。
大丈夫なのだろうか、この神と信徒。
さて。
それはそれとして、声を掛けられても起きないほど深く寝ていたわけでもない。
揺さぶられれば、もぞもぞと、それこそ猫のように頭を抱え体を丸めて――
「――すぴー」
ばっちり。
おやすみモードである。
ただ、こんどは明らかに狸寝入りだった。
■緋月 >
「………。」
起きている。確実に起きている。
流石にそれを見抜けぬ程、彼の者は節穴ではなかった。
我等が神の御使いともあろうものが寝たふりなぞしよって、こやつめははは。
「……………。」
などと和やかに笑って済ませられるほど、彼の者は大らかではなかった。
これが単に遊びに来た、程度だったらそれこそ笑って済ませて一人で何某か時間を潰す所だが、
今回はそんな軽い用事ではないのである。
寝たふりなんぞで誤魔化されては、流石に来るものもある。
少し頭に来たせいか、此処に来るまで何とか隠していた狼の耳と尻尾が頭の上と後ろ腰からこんにちは。
そのまま、片手を大きく振り上げ、
「――寝たふりで誤魔化せるとでも思っておられるのか。
こちらは重大な用事なのだ、疾く起きられませい。」
すこし怒ったような声と共に、振り上げた手を振り下ろす。
ぺちーん、ぺちーん。
そんな音が聞こえて来そうな程度には、威力の無い威力行使であった。
これで起きねば本格的な威力行使に訴えざるを得ない。
その位には焦りと急ぎのある用事でもあった。
■神樹椎苗 >
流石の狸寝入りも、武力行使をされてはたまらない。
茶虎色のまんじゅうは、もぞもぞと動いて体を起こす。
「はぁ。
なんですか『駄犬』。
お友達を寝かせてまで、何の用ですか」
むす、っと。
見た目相応の子供のようにむくれつつ、眠たげな眼をこすり、ふぁ、と小さく欠伸をした。
「こんどは、何の事件に噛んでやがるんです?
なんでもいいですが、しぃに聞けばなんでも解決すると思ったら大間違いですよ」
機嫌が悪いのか目が細い。
とはいえ、追い帰そうとするつもりはなさそうだ。
■緋月 >
「――好きで眠らせている訳ではない。」
ようやく起き出し、こちらへ結構な言い方をしつつ欠伸をする御使いに、こちらも思わずぶすりとした目つきに。
小さく咳き込み、目つきを改めると、機嫌を悪くしながらもようやっとお目覚めな御使いに向き直る。
「『司書』の「写し」を持つ者の関わる件――といえば、凡そ見当が付くのでは?
最も、あの者とまたぞろいざこざを起こした訳ではない。
互いに散々斬り合って、「すれ違い」には決着も着いたし、話もまとまったのでな。」
そこまで発言すると、ふぅ、と一息。
「……直接は関わらないが、間接的に関わる件だ。
盟友の「先生」の話になる。」
そこでもう一度言葉を切り、冷静になるように深呼吸。
「回りくどい回想はなしだ、単刀直入に行くとしよう。
「先生」が、今度は首から下を持っていかれた。
「写し」の持ち主の言葉を借りるなら、「元々の持ち主」への「返却」だそうだが――タイミングが悪すぎた。
よりにもよって、盟友が見舞いに訪れたタイミングだ。」
僅かに憂いを感じさせるように、緑を帯びた青色の瞳が揺れる。
「……完全に、頭に血が上っている。
例え身体を奪われた事が「先生」と「引き取り手」の同意の下であったとしても、だ。
人の身体を、まるで人形か道具か何かのように繋いだり捥いだりするやり方に、盟友は怒り狂っている。
このままでは、「写し」の持ち主との「契約」すら満足にこなせないだろう。
それどころか、感情に足を取られて命を落としかねない。」
ふぅ、とため息を一つ。
「……あの有様を、盟友は「写し」の持ち主にだけは見せたくないだろう。
かといって、他に相談できそうな知己もいない。
そもそも下手に口に出しては、巻き込む事になりかねない。
――故に、御使いに頼むしかなかった。」
恥を忍んで、などという心境ではない。
盟友が正気を取り戻す為ならば、恥を恥とも思う事はない。
不機嫌そうな着ぐるみの少女に、深々と頭を下げる。
「……何とか、盟友を諭すか、せめて話だけでも聞いて欲しい。この通りだ。」
■神樹椎苗 >
「――ああ、痴話喧嘩は終わったんですね。
まったく、世話の焼けるやつです」
んわぁ、と、大きな欠伸をひとつ。
「――『継ぎ接ぎ先生』の件でしたか。
それはまた、運が無かったとしか言いようがねーですね」
話を聞けば、椎苗も初等教育課程で顔を合わせている教師の事だった。
身動きもできない重態で入院していたところで、殺人未遂。
事件の仔細までは追っていなかったが、彼女の身体は回収されたのか、と。
「と、なると。
暴れ出しても大丈夫なくらいがちょうどいいですね。
――虚空蔵書」
椎苗の手に、黄金の立方体が現れる。
宙に浮かぶその立方体は、最初の神器であり、最大の神器だ。
「虚空蔵書、限定展開」
椎苗がそう短く命じると、立方体は無限に膨張し、椎苗と彼女らを呑み込んだ。
そして、周囲は無数の本棚に囲まれた図書館へと姿を変える。
虚空蔵書が創り出す、無限の書庫。
そこに、椎苗たちは現実から切り取られ、隔離される。
「――さて、これでいいでしょう。
『駄犬』、後輩を起こしてかまわねーですよ。
お前のお願い通り、話くらいは聞いてやりましょう」
そう言いながら、椎苗は紅い剣を呼び出した。
もし暴れ出すようなら大人しくさせるつもりだった。
■緋月 >
「全くだ。本当に、運が悪いというか場が悪いというか。
悪く言う訳ではないが、盟友はそういった「間の悪さ」を引き寄せてしまう星の下に生まれたのかと疑いたくなる。」
またしても憂うようなため息。
流石に少しばかり、友の運命が心配になった所だった。
景色が無限の書庫に移り変われば、その場に慣れるように軽く目を閉じて少し頭を振る。
「助かる。此処ならば、確かに問題にはならないだろう。
後は「司書」が余計な事を言わずに置いてくれれば、だが。」
それだけが目下、一番の不安。
ともあれ、準備は整った。後は自分が眠ればいいだけだ。
「では、後はよろしく頼む。……不謹慎だが、これでようやく我も休める。
「仮面」の身で何を抜かすと思われかねないが、誰かの真似をするというのは存外に疲れるものだな――。」
そんな軽口を言いながら、少女はゆるりと目を閉じる。
同時に狼の耳と尻尾は幻のように消え去り、髪の色も「本来」のそれへと変化していく――。
■緋月 >
そうして、一時、ぐらり、と姿勢を崩し、その拍子に書生服姿の少女は目を開く
「――――ぁ、」
赤い瞳だけが、まるで夢でも見ているような動きで、ぎょろぎょろと動き、周囲を見渡す。
戸惑いの色が強い雰囲気だが――紅の剣を携えた少女には、一瞬だが、「目覚めた」直後の
瞳の色が見えていた事だろう。
憤怒。
睨んだ相手も、自分自身さえ、怒りの炎で焼き尽くしかねない程の、苛烈な怒りの色。
「椎苗…さん……?
私、どうして……。部屋に、戻ってから……それから……。」
――大分長い間、眠らされていたらしい。
眠る前の状況と、今この時の状況に、大きな乖離を感じて強く戸惑っている雰囲気という所。
■神樹椎苗 >
「あのクソ金色は歓楽街に行ってやがりますよ。
美女と戯れるとか言ってやがりましたから、しばらく帰ってくることはねーでしょう」
目の前の『仮面』よりも明確で強い自我を持つ黄金の『司書』。
その力は他の神器と一線を画すが、その代わり、『司書』は誰の下にも仕えない。
力のほんの一端を使い、肉体を構築して好き勝手歩き回ろうとも、椎苗は勿論、黒き神ですら手を挙げるしかないのだ。
「ふん、随分と人間らしくなったじゃねーですか、『駄犬』。
後の面倒は見てやるから、好きに休んでるといいです」
そう言って間もなく――赤い目が開いた。
「――まったく、世話が焼けますね、本当に」
戸惑っている後輩を見て、大きくため息を吐いた。
無差別に暴れまわる、という事はなさそうだが、それでも強い感情が渦巻いているのが見て取れる。
「お前のとこの『駄犬』が、お前が暴走しないように寝かせてたんですよ。
随分と間の悪いところに出くわしたようですからね」
そう言いながら、書庫の床に剣を立て、その上に腕組をして顎を乗せた。
ふわ、とまた一つ、大きな欠伸が溢れた。
■緋月 >
「あ…え……?」
まだ混乱しているのか、瞳が泳いでいる。
それでも混乱しているなりに状況は掴めて来たのか、軽くこめかみに片手を当てる。
「寝かせてた――朔が?
間の、悪い、ところ――――――」
其処まで口に出した所で、
思い出す。
思い出す。
「――――せん、せい――――。」
瞬間。
瞳の赤が、血と炎の如き色に変わったかのような、錯覚。
■緋月 >
「……わたしのせいだ、わたしが気を抜いていたせいで、
先生は身体を持っていかれて、首だけにされたんだ。
わたしが、わたしが、わたしの、わたしがわるかった。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――」
思わず顔を両手で覆い、壊れた蓄音機の如く謝罪を繰り返し続け、かと思えば――
「――――――――――許さない。
許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない――――!!」
その瞳に、憤怒の色が再び舞い戻る。
至極シンプルな、それ故に強い、「怒り」の感情。
それだけが、今の自身を支える柱と化したかのように――
■神樹椎苗 >
「――はあ」
怒りと後悔のままに感情が暴れ狂う様子に、椎苗はいっそ、冷ややかとも言える視線を向けた。
「許さないなら、どうするつもりですか。
『継ぎ接ぎ先生』はあるべき形に戻っただけです。
それに今だって生きてはいるじゃねーですか。
相手を考えれば、死んで無いだけ温情があると言ってもいいくれーです」
そう、淡々と、冷ややかに。
椎苗は後輩をなだめるわけでもなく、事実を端的に突き付ける。
「お前が居たところで、なにが出来たと?
殺人未遂事件が、殺人事件になって、被害者が一人から二人になっただけでしょう。
『継ぎ接ぎ先生』がお前が巻き込まれないように、病室から離れさせたのが分からねーんですか。
――ま、わからねーんでしょうね、その様子じゃ」
そう、冷たく、突き放すとも言えるような言葉。
ふ、と鼻で笑い、呆れたような顔で後輩を眺めていた。
■緋月 >
「生きているから!?
最初は心臓、次は首から下すべて!
頭だけになって、とても人間とは思えない有様にされて!
それでも「生きているから良かった」と!?」
叫びと同時に力一杯顔を覆っていた手を引き剥がしたせいで、顔に引っ掻き傷ができてしまう。
出血量は然程でもないが、場所が場所だけに痛々しい。
「第一、温情って…何様の心算ですか!!
あーちゃん先生の首から下を、全く別の物に挿げ替えて!
それだけなら兎も角、自分の都合で勝手に挿げ替えられた身体を奪っていって!!
人を――人の身体を、何だと、思ってるんですか……!
血の通って、生きてる人の身体を、道具か何かのように、勝手に千切っていって……!
最初は…先生や、その、幼馴染たちが、望んでの事だったとしたって……
――――どうして、先生は、あそこまで、取られ続けなければいけなかったんですか…!
なんで、そんな……人の身体を、命を…道具か何かのように、扱われる事が、許されてしまうんですか…!」
怒りの叫びに、悲しみが混じる。
双眸から、赤い滴が――血の涙が、落ちる。
「……どうして、こんなひどい事が許されてしまうんですか…。
人は、道具じゃないのに……。
人から、神さまを作るなんて…その為なら、何をしても、良いんですか……?
教えて、下さい……椎苗さん……
何で、先生は、あんな事になっても…それを受け容れられたんですか…。
人に、都合のいい神様を作るなんて真似が……どれだけの人を、道具扱いしても、達成されないといけない程…
尊い行い、なんですか…?」
――憤怒を吐き出し切った後に残ったモノは、ただ、血の色をした悲しみだった。