2024/06/05 のログ
ご案内:「委員会街」にホロウさんが現れました。
ホロウ > 「すっかり夜ですね」

どこかぐったりした様子で委員会街を歩くのは、腰に立派なジェットを持つ機械の女。
存在しない筈の疲労感を感じながら見上げた空にはぽつりぽつりと星が見え、時刻が既に夜であることを示している。
今日ここに来たのは昼前の筈。数多の手続きと検査は体感以上に長時間をかけていたようだ。

「疲れはしましたが、これで私も生徒になれました。」

ジャンパーのポケットから取り出したのは、学生証。
と言っても、一先ず仮として渡されたもの。正式な学生証はまた後日となっている。

「これが学生になるという感覚ですか…新体験です」

常世学園の学生証と、それを手にしたという感覚。それは、別世界線とはいえ25年もの間常世学園を観測し続けたのにも拘らず初めて観測する感情。
緊張とも期待ともとれるような、無い筈の心臓が跳ねるような感覚。
これから見る景色と感じるものは、どれも初観測となる。そんな気がする。
活動開始から付き合い続けているこの好奇心が、初めて常世の空を飛んだ時と同じ高鳴りを見せる。

人間に近い感情を持つと言えど機械である筈の少女の表情は、口元のゆるんだ今にも笑いだしそうな歓喜の表情であった。

ホロウ > 「それにしても、私に監視役がつくとは思いませんでした」

以前出会った風紀委員の彼に教えられたように、生活委員会を訪れ生徒として登録をしようと思い、委員会街へと降り立ったのはいいのだが…
大騒ぎとなってしまった。Unknownが出た、と。
やはり、長い事常世の空を勝手に飛んでいたせいで、随分と悪目立ちしていたらしい。
Unknownなんて名を付けられ、風紀委員に監視対象とされていたようだ。
何をするでもなく、ただ空を飛び続け、ジェット機ですら追いつけず捕獲もままならなかった存在が、突然委員会街に降り立ったのだから、当然と言えよう。
幸いにも、これといった悪事を働いていなかったおかげか、攻撃を受ける事は無かった。
まあ、風紀委員に囲まれはしたが。

「常世は寛容ですね。別世界とはいえ、唯の観測機であった私を受け入れてくれるとは」

生徒登録をしたいと伝えた所、割とすんなりと案内された。
勿論風紀の付き添い付きでだ。
付き添いの風紀委員は終始こちらをにらんでいたが、最後まで何もしなかった私に『何もしないでくれてホッとしたよ。学園生活楽しめよ』と言って去って行った。
悪い人ではないようだ。それはそうか。

「さて…どんな監視役がつくのでしょう。また後程決まるとのことでしたが。
自由行動がある程度認められるという点は、安心しました」

不法滞在者であるとはいえ、犯罪行為を一切犯さなかったのはかなりいい方向に働いたようだ。
自由行動が認められるというのは、かなりありがたい。今後も心置きなく観測が出来る。

ホロウ > 「学費についても不安でしたが、なんとかなってよかったです」

学費、学園に通う上で欠かせないもの。
俗にいう異邦人であることや、風紀の監視対象であることなど様々な要素を考慮して、学費の大幅免除をしてもらうことになった。
残りは…

「風紀委員か、公安委員。どちらかへ所属し活動。どちらにしましょう」

生活委員らから提示された学費の支払い方法は、風紀委員や公安委員として活動だった。
常世学園では、委員会として活動することで手当てが出るらしい。
そこから一部を学費として徴収するというものだった。
委員会活動とは言うが、勤務とそう変わらない感覚なのだろう。
そして、観測を行う事で違反生徒や違反部活の摘発にその情報を役立てるとのことだ。

「何にせよありがたい条件です。観測は私の本分ですから」

使われる存在である事に異議を唱えるつもりはみじんもない。
元々使われる存在だったのだ、むしろ元に戻って安心したともいえる。
しかも、自由時間ももらえるというのだ。以前よりも好待遇である。

ホロウ > 「居住場所についても打診されましたが、どうしましょうか
生徒として活動する中で必需品が増える可能性もありますし、用意していただけるのであれば住むのも悪くありません。」

これまで、私物というものを所有した事が殆どない。
何かを所有する際も、ポケットに入る程度であったり、運搬の際はバッグを支給されたりなどとどこかに置いておくという事が殆ど無かった。
だが、生徒として活動するのであれば、教科書や参考書、資料などを私物として支給される可能性があるだろう。
そうなれば、それらの置き場として部屋が必要になるだろう。
ただ、これまで私室というものを持ったことがない為、その感覚が全くわからない。
絶対必要になるから準備しておくと生活委員の生徒は言っていたし、また明日にでもお願いするとしよう。

「決めなくてはならない事が沢山ありますね。」

初めての経験の連続に苦労する。だが、それ以上にこれから観測されるであろう新発見への期待を強く感じる。
こういう時は連続での手続きへの嫌気を感じるものなのだろうが、そんなことより期待が勝る。
観測機として生きているだけでは知れない部分を観測出来る。それは、在り方を越えた生き方。
即ち、自分だけの、自分なりの生き方と言えるであろう。
進化し続けるあなたと再び出会い、この胸中を語りたい。

「私の生き方探しは、これからです」

腰のジェットが展開し、その放出口からエネルギーが溢れ出す。
漫画の打ち切りのようなセリフだが、少女の学園生活は本当に始まったばかり。
機械とは思えないような入学したての少年少女のような期待に満ちた眼で、常世の夜空へと飛び立つ。

今宵も、常世の空には赫耀が映える。

ご案内:「委員会街」からホロウさんが去りました。