2024/06/08 のログ
ご案内:「委員会街」に桜 緋彩さんが現れました。
■桜 緋彩 >
「いや無理ですよそんなの」
風紀委員会本部の事務室の一角。
ソファとテーブルがある、普段は来客の応対スペースで、風紀委員二人が押し問答をしている。
そのうちの一人、刑事課の風紀委員に頼み込まれているのが自分だ。
相手はひたすら手を合わせて頭を下げ、どうかこの通り、なんて言ってくるが、無理なものは無理だ。
「そんな頭を下げられてもですね。
私は刑事課じゃないですし、」
普段は相手が刑事課だろうがなんだろうが、困っているなら助けましょう、と言う自分なのだが、今回ばかりは話が別だ。
潜入捜査なんてしたことがないし、そして何より。
「こんな、バニースーツなんて着て人前に出たくないですもん」
二人が座る椅子の間、テーブルの上に置かれているのはカジノの写真。
映っているのは、そのカジノで働くバニーガールの姿だ。
いくら頭を下げられたって、こんなものは絶対に着たくない。
背中はがっつり空いているし、胸だって零れそうだし。
ご案内:「委員会街」に緋月さんが現れました。
■一般風紀委員 > そんな揉め事の最中に、更に揉め事を持ってくる足音がひとつ。
事務室を訪れたのは、一般風紀委員だ。
「すみません、どなたか対応お願い出来ますか。
委員会街を歩いていた不審人物を確保したとの事で、事情聴取に当たる人が欲しいという事です。
対象は女性、年齢は10代後半、所持品を検めた所、刀を所持していました。
抵抗などの意志はないようですが、しきりに勘違いだ何だと発言していまして――。」
…どうも、委員会街で不審者が確保されたらしい。
対応出来る者が出払っているのか、こちらに話を持ってきたようだ。
■桜 緋彩 >
「あ、では私が。
――とにかく、潜入捜査はしませんからね。
刑事課の方で何とかしてください」
ちょうどいいところにちょうどいい案件が舞い込んできた。
さっさと席を立ってとにかくやらないと念押しし、事務室に入ってきた風紀委員の方に向かう。
「さ、行きましょう。
あの刑事課の人はお気になさらず。
どちらでしょう?」
それでも尚食い下がってくる刑事課の風紀委員をガン無視して、さっさと事務室から退散。
アレはこちらが首を縦に振るまで無限に頼み続けてくる類の人だ。
逃げる口実が出来たなら無視してさっさと退散するに限る。
そしてやってきた風紀委員に案内を頼む。
■一般風紀委員 > 「あ、はい。
こちらになります。」
人手が確保できれば一般委員も助かった様子で、先に立つ形で案内を始める。
「事情を知らない自分が言うのも何ですが、良かったんですか…?
っと、こちらの部屋になります。」
もしかして体の良いダシに使われたのではないか、と疑問を抱くも、そんな間に取調室のひとつに到着。
扉は鍵がかかっており、中からは開かないタイプだ。
「暴れたり、傷害を起こす気配はありませんが、所持していた刀を取り上げたら酷い勢いで泣き始めて…。
返して返してとうるさいと思いますので、お気をつけて。」
■桜 緋彩 >
「いいんです。
どうせ潜入捜査に託けて、女の子にバニースーツ着せたいだけですよ、多分」
しらんけど。
とにかくやりたくないものはやりたくないし、そもそも刑事課じゃないからやる義理も義務もない。
そんなこんなで取調室である。
「ふむ。
――まぁ、わかりました、気を付けましょう」
刀を取り上げたら泣きだした。
自分の刀に愛着――と言うか執着がある人は、そうなるのもたまにいる。
彼女が鍵を開けたなら、中に入ろう。
さて、どんな人物だろうか。
■一般風紀委員 > 「えぇ………。」
流石にそれはドン引きである。
ともあれ、
「では、失礼します。
自分はまた受付に戻らなくてはいけませんので、何かあったら内線か緊急ブザーでお願いします。」
部屋の扉を中から開ける為の鍵を手渡すと、一般委員は鍵を開く。
外からは簡単に開く鍵なので、解錠は簡単だった。
何の感慨もなく、扉が開き、
■緋月 > ――部屋の中でパイプ椅子に腰掛けていたのは、16か17歳程の少女だった。
整っていると思われる顔が、涙と、あとあまり口に出すと女子の尊厳的にどうなのかという液体でぐしゃぐしゃである。
加えて服も普通ではない。何しろ何時の時代の浪漫だと言わんばかりの書生服にブーツだ。
部屋の隅の机には、きっちりと畳まれた外套【マント】が置かれている。
扉が開いたのを確かめたのか、一瞬びくりとしてから、くしゃくしゃしょぼしょぼの顔が扉の方――風紀委員ふたりのいる方向に視線を向けて来た。
■桜 緋彩 >
「ありがとうございます」
連れて来てくれた風紀委員に礼を言い、取調室に足を踏み入れる。
椅子に座っているのは自分と同じくらいの年の頃の少女だった。
顔面がぐちゃぐちゃだが。
ふむ、と短く息を吐いて、彼女の前に。
「初めまして、風紀委員の桜緋彩と申します。
あなたのお名前を教えていただいてよろしいですか?」
出来るだけフレンドリーに、笑顔で問いかける。
■緋月 > 一般委員は無言で会釈し、取調室の扉を閉じると少し急ぎ足で本来の業務へ戻っていく。
その様子を怯え切った小動物の如き目で眺めていた書生服姿の少女だが、声をかけられるとおずおずと視線を向ける。
恐らくは、自身と同じ年の頃の少女に声を掛けられると、ぐし、と小さく鼻を鳴らし、
「…っ、ひ、緋月【ひづき】…です……。」
と、いささか情けない返事を返す。
そして、返事を返した拍子に何かがフラッシュバックしたのか、涙がぼろぼろ。
「あっ、あの…わたっ、わたし、わたしの、刀…
月白――わたしの、つきしろ――――。」
其処まで声に出して、情けなく泣き始めた。
恐らく、これが先程一般委員の言っていた出来事だろう。
■桜 緋彩 >
「緋月どのですね。
私は風紀委員の桜緋彩と申します」
ぴしっと一礼し、椅子に座る。
机を挟んで、彼女の目の前に。
「落ち着いて下さい。
大変申し訳ないのですが、一応ここは風紀委員の本部です。
なので武器の類は一時的に預かっているだけです。
お話を伺って、問題が無いと判断できればちゃんとお返しいたしますので」
問題ありと判断したらその限りではないのだが、今はそれは黙っておこう。
余計なことを言ってこれ以上錯乱させるのもよくない。
「私も剣士の端くれですので、刀が大事な気持ちはわかります。
だからこそ、落ち着いてくださいな」
出来るだけ柔らかい声色を心がける。
まずは彼女からの信頼を得ることが大事だろうから。
■緋月 > 「ひっく、ひぐっ……うぇっ…うぅ………。」
穏やかに声を掛けられて少しは落ち着いてきたのか、泣き声は少しづつ小さくなってくる。
代わりにまた顔がくしゃくしゃのしょぼしょぼになり、こちらはこちらで悲しい事態だ。
「うっ、えぅっ…ほんとに…ほんとうに、かえして、くれますか…?」
くしゃくしゃの顔を袖でぐしぐしと擦る。
色々台無しだが、ティッシュもハンカチもこの部屋にはないので仕方がない。
涙混じりの声にあるのは猜疑心というより心細さだ。
疑っている訳ではなく、返してくれるという言葉に縋るしかないのだろう。
■桜 緋彩 >
「勿論ですよ。
いくら風紀委員であろうとも、誰かの持ち物を取り上げると言うことは致しませんから。
ほら、これで涙を拭いていただいて」
ポケットからハンカチを取り出して彼女に差し出す。
とりあえず落ち着いてもらわない事には何も聞けないし、刀も返してあげられない。
「落ち着くまでお待ちしますので。
気持ちの整理が付きましたらお声かけ下さいな」
彼女が落ち着くのを待つ間、報告書を読んでおこう。
委員会街で職務質問、所持品検査したところ、刀を発見。
学生証も持っていないようだったので任意同行して今に至る、と。
だいたい先ほど聞いた通りだ。
さてどこから聞いたものかと報告書を読みながら考える。
■緋月 > 「うっ、ぐしゅ…ぐすん……。」
差し出されたハンカチを少し躊躇しながらおずおずと受け取り、顔を拭き始める。
ハンカチが悲惨な事態になりそうだが、少し待てばくしゃくしゃしょぼしょぼの顔は少しは見られる状態に戻るだろう。
報告書に目を通せば、簡単にだが状況が書かれている。
【・委員会街にて周囲を気にするような仕草や歩き方をしており、挙動不審を疑い事情聴取
・身分証提示を求めるも、拒否 所持品を確かめた所、刀を所持していた事が発覚
・風紀委員会にて更に事情を確かめるべく同行を求める
・抵抗はなかったが、刀を取り上げた所、錯乱したように返却を要求
※不法入島者の疑い濃厚】
――との内容だった。
その中身を読み終えたタイミングで、細々と声が上がる。
「……生活、委員会、っていう所を、探してたんです。
少し前に会った、ここの学生さんに、困ったらそこに行った方がいいって、教えてもらって――。」
……という事らしい。
報告書に書かれていなかったという事は、説明の暇もなかったのか、あるいは身分証提示を求められて混乱して、説明が出来なかったのか。
■桜 緋彩 >
彼女の声に顔を上げる。
顔も様子も、先ほどよりは少しマシになっているようだ。
「あぁ、なるほど生活委員会。
すぐそこですよ。
お話を窺ったらご案内いたしますね」
生活委員会、と言うことは学生登録の意志はあるのだろう。
であれば少し話を聞けば刀も返せるだろう。
「ではいくつか質問させていただきますね。
ええと、そうですね……」
何から聞こうか、としばし考えて。
「まず、この島にはどうやって来られました?
本土から来たのか、それとも所謂「別の世界」と言われるようなところから?」
■緋月 > 「ほ、ホントですか…月白も、もどってくる…?」
本来の目的地にたどり着けそうで、活力が戻って来たようである。
沈んでいた赤い瞳に、少し光が戻った。
質問の内容には、少し思い出す様な仕草をみせながらぽつぽつと言葉を紡ぎ出す。
「……ここには、いつのまにか、来てました…。
休憩しながら、ちょっとうとうとして……気が付いたら、荒れ野の真ん中に…えっと、ここからだと――――」
小さな身振り手振りで方向を示し、その場所を告げる。
少し地理があれば、直ぐに転移荒野のある方角だと分かるだろう。
「……その、言っても信じて貰えるか、わからなくて…自分でも、本当に突然で…。
う、嘘じゃないんです! 本当なんです、信じて下さい…!」
■桜 緋彩 >
「勿論ですよ」
にっこり笑顔を浮かべて返事。
話した感じ悪意は感じないし、大丈夫そうだろう。
「なるほど、転移者と言うことですね」
報告書の続きを書いていく。
彼女が指し示した方向も転移荒野だし、間違いなさそうだ。
「信じますよ。
そもそもこの島に転移してくる人も少なくないですから」
もう一度信じますよ、と笑いかける。
■緋月 > 「ほ、ホント…ほんとうに…?
ううっ、よかった…よかったぁ……。」
安心したせいか、また涙腺が緩んだようで顔がちょっぴりくしゃくしゃになってしまう。
またしてもハンカチのお世話になる事に。
「…えっと、それで、こっちに来てからすぐの頃に会った、ここの学生さんに、
本当に困ったら、生活委員会に頼った方がいいよって…。
持ってたお金も、ここで使われているのとは違うし…早く行った方がいいかと思って……。」
書生服の上からぺたぺたと体を触り、財布を探す様な仕草。
少しして、刀と一緒に財布も預かられている体になっていたのを思い出してちょっとしょんぼりした。
「……それで、生活委員会の建物を探していたんですけど…
見回りをしてた人達に、身分証を出せって言われて、でも、身分証…持っていないから出せなくて…。
それで、怪しいって言われて、ここに連れて来られて…。」
其処まで口にして、またしょんぼり。
恐らく刀を没収された事を思い出して少し気落ちしてしまったのだろう。
戻って来る希望が大きくなったので、錯乱はしないようだが。
■桜 緋彩 >
「そうですね、生活委員会に行って学生登録をしていただければ何も問題はありませんので」
そうすれば晴れて常世学園の学生だ。
刀も返せるだろうし、身分も手に入る。
「身分証を持たない人の中には、その未登録と言う立場を利用して悪事を働く者もいます。
悪事を働いている故に生徒登録が出来ないと言う人もいますし、我々風紀委員としても警戒せざるを得ないのですよ。
それについては申し訳なく思います」
彼女の対応をした風紀委員も少し乱暴ではないか、と思わなくはない。
とは言え自分はどちらかと言えば穏健派と言うか、威圧的な態度を取らない方が良いと思っている方だ。
人によっては二級学生に対する認識は違うから口を出そうとは思わないが。
「あとは、そうですね。
失礼なことをお聞きするかもしれませんが、緋月どのの元の世界について少し聞かせていただきたいです。
緋月どのの世界では、理由の如何に関わらず、人に危害を加えた場合、何かしら罰則等はありましたか?」
とりあえず彼女の世界とこの世界の常識に付いて認識の違いを把握しておきたい。