2024/06/09 のログ
緋月 > 「あっ……。」

身分証未所持の立場を悪用する者、そういった為に生徒の登録が出来ない者。
悪事のレベルは分からないが、確かにそういった者は取り締まるべき対象だ。
書生服姿の少女もそこは分かったらしく、ちょっとだけ神妙な顔。

「いえ、それなら仕方ないです。
自分の身分を悪い事に使うのは…それはよくない事だから…。」

少し沈んではいるが、納得のある声。
一歩間違えば自分もそうなったかも知れないのである。
むべなるかな。

「あ、はい…里を出る時に、人を斬るものではないと、言いつけられてはいます。
稽古で真剣を使った事はよくありましたけど、今の世の法では人を斬ったら捕まると厳しく言い含められました。
揉め事に巻き込まれた時も、出来るだけ体術で済ませるか、逃げるようにしてます。」

少なくとも、人を斬れば警察かそれに相当する機関に捕まる事は確実な世界であるらしい。
最も、言葉からするにこの少女の育った環境は少々普通からは離れているようだが。

桜 緋彩 >  
「ご理解頂きましてありがとうございます」

深く頭を下げる。
そう言ったことがないのが一番なのだが、どうしてもそう言うわけには行かない。
そうなると強硬な態度を取る風紀委員が出てくるのも避けられない。
とは言えそれはそれである意味での抑止力になっていることも否定は出来ないので、せめて自分は真摯に対応しよう、と。

「ふむ。
 こちらの常識とそう変わりはないようですね」

ならば話はそこまで難しくはないだろう。
生活委員会での生徒登録もスムーズに行きそうだ。

「聞いた限りでは特に問題はなさそうですね。
 刀もすぐお返し出来るかと思います」

常識のずれも少なそうだし、悪意もなさそうだ。
ならばこれ以上風紀委員で拘束する必要もないだろう。

「――ところで、未登録と言うことは住むところもないのでは……?」

寝泊まりとか、どうしているのだろう。

緋月 > 問題なし、刀も戻ると聞けば、書生服姿の少女は安心したように大きく息を吐く。
同時に気が抜けたのか、へにゃへにゃと姿勢が悪くなってしまった。

「よかった…ありがとうございますぅ…!」

何とか姿勢を正してから深々と頭を下げる。
どうやら解放されそうな流れで一安心、と言った所か。
しかし、最後に質問されると表情が一変。

「う゛っ。」

ちょっと顔に汗が浮かんで目が泳いでいる。
口元も何か気まずげな…何と言うか、バッテン口のウサギさんのような形になっている。

「……その、こっちで一晩過ごした時は、大きな公園の木の上を、借りました…。
住む所は、生活委員会に行けば…なんとかなるんじゃないかな、って……。」

随分と野性的だった。

桜 緋彩 >  
「――ま、まぁ、確かに、そうするしかないですが……」

確かに、身分証が無いと部屋も宿も借りられない。
まだにおいは目立たないようだけれど。

「うーん、しかし、困りましたね。
 確かに生活委員会に行けば色々支援はありますし、宿を借りるのも可能ではありますが……」

とは言え一応風紀委員からすれば不審者である。
生活委員会に連れて行ってはい終わりと言うのもどうなのだろう。
慣れぬ異世界で不安だろうし。

「――差し出がましいかとは思うのですが。
 もし緋月どのさえ宜しければ、とりあえず生活の拠点が見つかるまで、うちに泊まって頂くと言うのはどうでしょう。
 私個人としましても、問題ないとはわかっていても一度保護した方を放り出すのも、と言うところはありますし……」

かなり差し出がましい申し出とは思う。
生活委員会に任せればホテルかどこか、仮宿などはすぐに見つかるだろう。
だからこれは余計なお節介だ。
受けるかどうかは彼女次第。

緋月 > 「はい…えっと、元居た世界のお金とこっちのお金、似ているけれど微妙に違うのが分かって……。
下手に使ったら偽物扱いされるって、分かったので。」

以前の世界の所持金が使えたらまだなんとかなっていたのだろう。
それが無理だと分かったのも、生活委員会を頼る事にした一因には違いない。
実際問題、書生服姿の少女は安宿でもどこでも、雨風凌げる部屋があれば満足なのである。

「――ええっ!?
えっと、その、確かに私は助かりますけど、その……緋彩さんは、迷惑ではないですか?」

なので、目の前の風紀委員の少女の申し出には正直吃驚である。
この話を受ければ、恐らくは生活委員会からの手続きの時間を飛ばして、宿になる場所が見つかる。
だが、何しろ自分一人の問題ではない。
申し出てくれた方に迷惑が掛からないかの方が心配らしい。

桜 緋彩 >  
「迷惑ではありませんとも。
 ただ元々一人暮らし用の部屋なので、少し狭くはありますが……」

迷惑だと思ったらそもそも提案などしていない。
正直このまま生活委員会に引き渡して終わり、だと、文句を付けてきそうな過激な連中もいるかもしれないし、それに対しての言い訳と言う意味合いもあると言えばある。
ただそれ以上に自分が放っておけないと思ったのだ。

「お金に関しても生活委員会から支援こそありますが、少し時間もかかります。
 それまでの当面の生活費も、私が個人的にお貸し致しますよ。
 後々生活に余裕が出来てから返していただければ結構です。
 なに、これでも蓄えには結構余裕がございますから」

確かに生活委員会の一時支援は存在する。
存在するが、申請すればその場ではいどうぞと言うものでもない。
それも困るだろう、と。

緋月 > 「そ、そうですか…。
うーん、う~~ん………。」

すっぱりと返って来た返答と補足の説明に、書生服姿の少女は軽く腕を組んで考え込む。

確かに、お金の事は簡単には解決しないだろう。
あまり相手の厚意に甘えるのはよろしくないが、生活費の面倒も見て貰えるのは、正直ありがたい。
それに――あくまでこれは少女の主観によるものだが、目の前の彼女は「善い人」である、と思う。
普通であれば、生活委員会の方まで送り届けてはいさようなら、で済むような話である。
何より、風紀委員とは厄介事…まではいかなくとも、揉め事を起こしたばかりだし、下手をしたら目を付けられてる。
だというのに、拠点が見つかるまでの期限付きとはいえ、自分を引き取ると言うのだ。

相手に迷惑がかかる真似はしたくはないが、だからといって厚意を無碍にするのはそれはそれで無礼な話だ。
ゆえに、考えた末に、

「――あの、それじゃ、どの位になるかわかりませんけど…
しばらくの間、お願いします!」

勢いよく、頭を下げて頼み込む。
勢いが付き過ぎて、机と額が軽く激突する音が響いた。

桜 緋彩 >  
「はい、こちらこそよろしくお願い――!?」

了承の言葉と共に頭を下げる彼女。
そして響く鈍い音。

「だ、大丈夫ですか!?」

結構いい音がしたけれど、大丈夫だろうか。
思わず立ち上がり、彼女の方へ机を回り込んで。

緋月 > 「――う~ん…。」

ちょっとふらっとしながら頭を上げる。
少し目を回しているようである。
ぶつけた額は軽く赤くなっていたが、怪我とまではいかないようだ。

「だ、だいじょうぶでしゅ…ちょっと、勢いがつきすぎて…。」

こめかみを掌で軽くとんとん。
直ぐに胡乱な姿勢が元に戻った。
少々粗忽者の気があるが、どうやら普通の人よりは丈夫な方のようである。

桜 緋彩 >  
「そ、そうですか。
 いえ、それならよいのですが」

報告書からもうっすら感じたし、実際に話してもしかしてと思ったのだが。
もしかしてこの人、結構抜けてる……?

「で、では緋月どのの荷物を受け取って生活委員会の本部に向かいましょう。
 生徒登録をして、学園についての説明がありますので」

報告書をまとめ、立ち上がる。
この報告書と風紀委員の自分が今後しばらくの生活の面倒を見ると言う証言があれば、文句を言うものはいないだろう。
内線で最初の同僚に報告し、部屋の外に出る。
そのまま彼女の荷物を返し、そのまま生活委員会棟まで案内して。
彼女の用事が済むまで待合室で待ってから、彼女と共に自宅まで向かおうか――。

緋月 > 「あ、はい、わかりました!
えっと、改めてよろしくお願いします、緋彩さん!」

退室の準備となればこちらも立ち上がり、部屋の端に置かれていた外套を纏い直す。
外套の方には特に何も仕込まれていなかったようで、取調室に持ち込む事が許可されたらしい。

内線からの報告を受けた一般委員は、一時とは言え引き取り先を務めるという話に少し考える様子は見せたものの、
取調の内容その他には文句はない様子であった。
荷物の返却はすぐに受理され、書生服姿の少女は刀袋を抱き締めて大泣きする事になる。
もしも目にしていたら、まるで自分の身体の一部が戻って来たような様子にも見えたかも知れない。

その後は先導する少女の後に続いて生活委員会の窓口へ、手続きが終われば彼女の自宅へと向かっていく事になる。
到着して最初の問題は、借りたハンカチの洗濯と寝間着になりそうであった。

ご案内:「委員会街」から緋月さんが去りました。
ご案内:「委員会街」から桜 緋彩さんが去りました。
ご案内:「委員会街」に蘇芳 那由他さんが現れました。
蘇芳 那由他 > 普段ならまず訪れる事が無い、各委員会の本部などが立ち並ぶ委員会街。
何かしらの事務手続きや、風紀のお世話になる不祥事を起こした以外で訪れる機会は殆ど無い。
そんな少年が珍しくここに足を運んでいたのは、生活委員会の本部への報告の為だった。

「……この空気感みたいなもの、保護されて初めて来た時を思い出すなぁ。」

覇気がいまいち無い、ハイライトの光が無さそうな黒瞳を瞬かせて、委員会街をぐるりと見渡す。
足を運んだ事があるとはいえ、頻繁に訪れる事が無い場所だからお上りさんみたいにもなる。
ましてや、少年は何処か特定の委員会に所属はしていない無所属帰宅部だ。

(…でも、生活委員会への定期報告、って言っても特にこれといったものは無いんだよね。)

死神の神器の事とか、先日成り行きで知り合った異邦人かもしれない少女の事は報告していない。
それに後ろ暗さは無い訳ではないが、時にはそういう処世術も必要かな、と彼は思う。

蘇芳 那由他 > 記憶喪失で保護されて数か月、保護観察期間という名目で検査されたり催眠療法で記憶遡行を試みたり。
結果は殆ど何も分からず仕舞いであったが、無能力者で危険性も極低、と判定された。
お陰で、仮の戸籍やら学籍やらを正式に頂いて現在の少年の生活がある。

「……あ、でも僕の方向音痴の事は一応報告した方がいいのかな…。」

空間認識に一部問題がある、というのは検査結果の時点で既に判明していたが本人にいまいち危機感が無かった。
けれど、ここ数か月の暮らしで自覚せざるを得ない程度にちょっと支障が出る事が嫌という程に分かった。
携帯端末のナビ機能とかまさに必須だが、仮にもしそれが使えない状況になったら詰む。

「…とはいえ、まだ報告予定時間までかなりあるし、どっかで小休止しようかな。」

生活委員会の本部に程近い場所にあった、ちょっとした憩いスペース?みたいな所へと足を向ける。
委員会街にあるだけあって、ベンチも無機質だけど良いものっぽいなぁ、とか思いながら腰を下ろし。

蘇芳 那由他 > ぼけ~っと、ベンチに座り込みながら時間を潰す。
自然と委員会街の往来を眺める形となるけど、本当に色んな委員会の人が居る。
どれも自分とは直接の縁は無い。無いけどその人たちのお陰で僕みたいなのも暮らせているのだなぁ、と。

「…多分、大まかな括りだと僕も異邦人と同じような立場というか扱いなんだろうな。」

昔の記憶が無いから、自分が地球で生まれ育ったのかもよく分からない。
まぁ、無くしたものは戻らない。だから気にしない事にしている。

(でも、方向音痴は遠慮したかったなぁ…異能や魔術はまぁ、別に無くてもいいけど。)

僕は別に凡人でいい。何か変な神器の所有者になったりしてしまったけど、まぁ、凡人…で、ありたい。

蘇芳 那由他 > まぁ、でも何かしら夢というか目標は欲しいな、と思う。
今の自分はそういうのは無い空っぽだから、いずれって事になるけど。

「…人並みに暮らすといっても、人生日々戦いみたいなものらしいからね。」

後見人、みたいなものである蘇芳さんが言っていた言葉だ。僕にはまだ全然実感が無い言葉だけど。
まぁ、何かチャレンジ出来るものがあるかを探してみるのもいい。…荒事は勿論無理ですハイ。

でも、”お仕事”を考えると少しは自衛の腕前も上げないといけない気がする…悩ましい。

蘇芳 那由他 > 自分の手を見る。腕を見る、足を見る。…モヤシっ子ではないとは思うが、筋肉が付いてるとは言えない。
何度か落第街や裏常世渋谷に迷い込んだ経験からして、体くらい鍛えるべきだろうか?

「……今度、訓練施設とかでちょっと頑張ってみようかな。」

あと部屋で筋トレとかも地道にやっておかないと。ランニング辺りもかな?
自分でも偶に思うけど、この色白の肌もあってつくづく優男というか頼りない感が何とも。
そういえば、往来で見かける…特に風紀委員の男子とかは、ガタイが良い人も少なくない。
やっぱり鍛えてるんだろうなぁ。仕事の内容的にも体は資本そうだしなぁ、と繁々と見つめる。別にそういう趣味ではない。

蘇芳 那由他 > 「…あ、そろそろ時間だ。」

小休止は終わりだ。ゆっくりとベンチから立ち上がれば、軽く伸びをする。
さて、実は定期報告というのは結構大変なんだけど頑張ろう。
そのまま、生活委員会の本部へと足を向けて、自称凡人の少年は歩いていく。

ご案内:「委員会街」から蘇芳 那由他さんが去りました。