2024/10/07 のログ
ご案内:「委員会街 祭祀局本部」に蚕比古 玉繭さんが現れました。
蚕比古 玉繭 > 「――――はい、…はい」

こくり、頷、耳澄まし。

筆取り標す身共の名。

「これで、よろしかった?」

判子一つ、押し給うて。

入学手続きと云ふもの。永く退屈だけれど。
終えなければ外、歩けぬもの。

「ええ、はい」

「わたくし、お役目は存じております」

とってつけた、よふなもの。
けれど。

名目無くちゃやってこれないから。

「祭祀局の、お役目の援助。
 しかと承りました。

 わたくしの生糸、とんと、給うてゆきます故。

 良きように。えぇ」



「蚕比古の羽衣ですので」

「悪鬼夜行の伴侶とするには、不足しないと約束しますわ」

これは、お役目。
これから先の、身共に託れる、任。

固く苦しいもの。
承り。

蚕比古 玉繭 > 手続きが終わった、留学生の乙女一人、祭祀局の本尊から解放されて。
すこし伸び。叱る手合いも、いないものだから。

「んっ、ん……」


堅苦しいもの。どこにでもあるもの。
だけど苦は楽の為なれば。

我慢もできるものだもので。

「ここが…常世学園」

待ちわびたものを、本尊の窓から眺める。
鉄骨でできた岩柱のよふな建物の数々。
彩具散らせたかのよふな絢爛の街。

暮れる夕日がそれを照らして。

緑がこんなに少ない景色は、きっと初めて。

「…はふ」

窓の方、少し速足。
寄って、見つめて。

瞳は夕日より、輝いた。

蚕比古 玉繭 > 「あれは、なになのかしら」

大きな泉みたいな平たい地面に楕円の模様。
身共と同じよふな年の子駆けて。

「あっちは」

遠く夕日が陰ってきてるのに、今度は土の上光って星より眩しくて。

「あれは」

鉄の棒の上走る大きな荷車の音、ごうごう響いて。

知らぬもの余りあり。

「……!」

身が震えるのを一息我慢。
だけど抑えられなくて、羽織りの裾、引っ張って。

この何もかも知らぬ地、足付けて。
ゆくのはきっともふ少し先の事かも。

蚕比古 玉繭 > 「浮足立ってしまうわ」

とん、ととん。
その場で軽く、跳ねてしまうのははしたないこと。

「でも仕方ないの」

鉄の手すりをつぅとなぞって。
埃なんて気にもしないわ。

「ずっと来たかったのだもの」

お目付けは一緒にこれなかったから。
どんなにはしたなくてもいい…訳ではないけれど。

「常世学園…!」

今くらいは。
だってこんなに、どきどきしてるのだから。

蚕比古 玉繭 > この扉の先に想ひ馳せて。

まるではじめて遊園地に来た子供のよふに。

遊園地なんて、知りもしない生娘であれど。

その高鳴りは同じもの。

ご案内:「委員会街 祭祀局本部」から蚕比古 玉繭さんが去りました。