2024/10/07 のログ
ご案内:「委員会街 祭祀局本部」に蚕比古 玉繭さんが現れました。
■蚕比古 玉繭 > 「――――はい、…はい」
こくり、頷、耳澄まし。
筆取り標す身共の名。
「これで、よろしかった?」
判子一つ、押し給うて。
入学手続きと云ふもの。永く退屈だけれど。
終えなければ外、歩けぬもの。
「ええ、はい」
「わたくし、お役目は存じております」
とってつけた、よふなもの。
けれど。
名目無くちゃやってこれないから。
「祭祀局の、お役目の援助。
しかと承りました。
わたくしの生糸、とんと、給うてゆきます故。
良きように。えぇ」
「蚕比古の羽衣ですので」
「悪鬼夜行の伴侶とするには、不足しないと約束しますわ」
これは、お役目。
これから先の、身共に託れる、任。
固く苦しいもの。
承り。
■蚕比古 玉繭 > 手続きが終わった、留学生の乙女一人、祭祀局の本尊から解放されて。
すこし伸び。叱る手合いも、いないものだから。
「んっ、ん……」
堅苦しいもの。どこにでもあるもの。
だけど苦は楽の為なれば。
我慢もできるものだもので。
「ここが…常世学園」
待ちわびたものを、本尊の窓から眺める。
鉄骨でできた岩柱のよふな建物の数々。
彩具散らせたかのよふな絢爛の街。
暮れる夕日がそれを照らして。
緑がこんなに少ない景色は、きっと初めて。
「…はふ」
窓の方、少し速足。
寄って、見つめて。
瞳は夕日より、輝いた。
■蚕比古 玉繭 > 「あれは、なになのかしら」
大きな泉みたいな平たい地面に楕円の模様。
身共と同じよふな年の子駆けて。
「あっちは」
遠く夕日が陰ってきてるのに、今度は土の上光って星より眩しくて。
「あれは」
鉄の棒の上走る大きな荷車の音、ごうごう響いて。
知らぬもの余りあり。
「……!」
身が震えるのを一息我慢。
だけど抑えられなくて、羽織りの裾、引っ張って。
この何もかも知らぬ地、足付けて。
ゆくのはきっともふ少し先の事かも。
■蚕比古 玉繭 > 「浮足立ってしまうわ」
とん、ととん。
その場で軽く、跳ねてしまうのははしたないこと。
「でも仕方ないの」
鉄の手すりをつぅとなぞって。
埃なんて気にもしないわ。
「ずっと来たかったのだもの」
お目付けは一緒にこれなかったから。
どんなにはしたなくてもいい…訳ではないけれど。
「常世学園…!」
今くらいは。
だってこんなに、どきどきしてるのだから。
■蚕比古 玉繭 > この扉の先に想ひ馳せて。
まるではじめて遊園地に来た子供のよふに。
遊園地なんて、知りもしない生娘であれど。
その高鳴りは同じもの。
ご案内:「委員会街 祭祀局本部」から蚕比古 玉繭さんが去りました。